あした死ぬには、

あした死ぬには、

40歳を過ぎた本奈多子は、突然の原因不明の体調不良や更年期障害の諸症状に悩まされるようになっていた。心身共に変わっていく自分の体調に不安を覚える一方で、自らの置かれた状況を打開しようと懸命にもがく多子の姿を描いたヒューマンドラマ。「Ohta Web Comic」で2018年3月から配信の作品。「このマンガがすごい!2020」オンナ編第3位、第23回「文化庁メディア芸術祭」マンガ部門で優秀賞を受賞。

正式名称
あした死ぬには、
ふりがな
あしたしぬには
作者
ジャンル
ヒューマンドラマ
レーベル
太田出版
巻数
既刊4巻
関連商品
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あらすじ

第1巻

映画宣伝会社「ガールフレンド」に勤務している本奈多子は、ハードワークではあるものの、大好きな映画に関する仕事ができる環境で充実した毎日を送っていた。そんなある日、多子は突然激しい動悸を覚えたり、身体が火照ったりと、これまでにない体調不良に襲われる。何か恐ろしい病気ではないかとパニックに陥る多子だったが、更年期障害の代表的な症状だと知り、40代を迎えた自分の心と身体が変化していることを痛感する。この出来事をきっかけに、元恋人である岡田有司との関係や、自らの人生プランなど、多子はさまざまなことに漠然とした不安を抱くようになっていく。そんな中、ガンの宣告を受けているが前向きな有岡智之と親しくなったり、中学時代の同級生である小宮塔子と再会したりと、多子にとってよい転機も訪れる。

第2巻

本奈多子の取引先に勤務していた手嶋るみが自殺したことで、多子は改めて自分の身近に「死」があることを実感する。一方、多子の地元では小宮塔子鳴神沙羅が偶然再会する。しかし沙羅は、自らが10年以上無職でいることを言い出せずにいた。表面上は明るく振る舞ってはいるものの、何か言いたげな沙羅の母からのプレッシャーもあり、沙羅は自分がこれからどうなっていくのかと不安を覚えるが、何もできないまま日々が過ぎていく。そんな中、多子は有岡智之から、自分が亡くなった際の緊急連絡先として、プロ野球ファンの萩野を紹介される。多子は萩野に連れられて生まれて初めての野球観戦に興奮を覚え、自分にはまだ知らない世界があることを嬉しく感じる一方で、多子には更年期障害の影響から、不眠の症状が現れ始める。そして不眠が原因で、多子は重要な仕事を失敗してしまう。自己嫌悪に陥った多子は、なぜかインターネット通販で欲しいものを買いあさり、自分の行動が制御できなくなっていく。そこで多子は、同じく更年期障害で悩んでいたであろう元先輩の小森美保を思い出し、会うために連絡を入れる。

登場人物・キャラクター

本奈 多子

映画宣伝会社「ガールフレンド」に勤務している独身女性。年齢は42歳。映画好きが高じて現在の職業に就いた。入社以来ハードワークを続けており、40代になってから更年期障害による心身の変化に直面し、仕事とのかかわり方を改めて考え始める。そのほかにも貯金のことや本奈多子自身の人生プランなど、将来に漠然とした不安を抱いている。自らは大らかな性格だと思っているが、実際は短気で負けず嫌いな性格で、思ったことをはっきりと口にしてしまうタイプ。岡田有司と破局してからは、恋人どころか恋愛もご無沙汰となっている。

沢村 三月 (さわむら みつき)

映画宣伝会社「ガールフレンド」に勤務している既婚者の女性。年齢は28歳。本奈多子の後輩にあたり、チームを組んで仕事をすることが多い。多子から信頼を寄せられており、プライベートな相談をよく受けている。マイペースかつ前向きな性格ながら、あこがれていた手嶋るみが自ら命を絶ったことで、ふさぎ込むようになる。

梅木 (うめき)

映画宣伝会社「ガールフレンド」に勤務している既婚の男性。お世辞にも仕事ができるタイプではなく、よくいっしょのチームを組んでいる本奈多子からも嫌われている。周囲には理解しがたい家庭の都合での遅刻や業務上のミスが多いものの、人当たりのよさで許されており、そんな事情も多子からのひんしゅくを買っている。しかし、梅木自身は多子に好意を抱いているため、空気の読めない言動を続けている。いつクビになってもおかしくない仕事ぶりではあるが、社長である沼地茂夫と幼なじみであることから、解雇される様子はない。中学生の子供がおり、父親としてのかかわり方に悩んでいる。

沼地 茂夫 (ぬまち しげお)

映画宣伝会社「ガールフレンド」の経営者の男性。非常に有能で、業界内でも顔が広い。社員の本奈多子や沢村三月からも尊敬されている。その一方で社員である幼なじみの梅木には甘く、ほかの会社ではクビになるような働き方であることは理解しつつも、お茶を濁す態度に徹している。社員からは「社長」と呼ばれている。

小森 美保 (こもり みほ)

映画宣伝会社「ガールフレンド」に勤務していた女性。現在は退職しており、当時30代だった本奈多子の先輩にあたる。それまでまじめに勤務していたものの、40歳を過ぎて突然、露出の高いギャル服を着て出社するようになり、多子を驚かせた。小森美保と同年代になった多子から、更年期障害の一つの症状だったのではないかと相談を受け、会って話がしたいと誘われて再会する。現在はアロマ関係の商品を扱う会社を立ち上げ、忙しくも充実した日々を送っている。

有岡 智之 (ありおか ともゆき)

映画配給会社「岩田エンターテイメント」に勤務している男性。本奈多子の会社と取引があったことで、多子と知り合いになる。偶然にも多子の自宅の近くに住んでいる。医師からガンの告知を受けており、もう余命が長くないと自らも悟っている。有岡智之自身と同じ映画好きの多子に、自分がコレクションしてきたものを、譲り受けて欲しいと声をかけたことで、親しくなっていく。まだ身体の自由が利くうちに、自分の中でずっと温めていた脚本で、自主製作映画を作ろうとしている。

手嶋 るみ (てじま るみ)

映画配給会社「岩田エンターテイメント」に勤務している女性。営業部に所属している。年齢は28歳。本奈多子の会社と取引があったことで、多子や沢村三月と知り合いになった。特に三月とは仕事以外でも親しくしており、かっこいい女性だとあこがれられていた。人気モデルによく似た容姿の持ち主で、周囲からは順風満帆な人生を謳歌していると思われていたが、ある日、突然自ら命を絶つ。

木下 真礼 (きのした まあや)

広告会社に勤務している女性。年齢は42歳。仕事がきっかけで本奈多子と知り合いになり、マンガ家の日比のり子も交えてご飯友達になった。さっぱりとした性格で、多子の悩みに対しても歯に衣着せぬ的確なアドバイスをしている。3年間無職のうえに、資産家である実家の自慢が多いという曲者の男性と交際している。

日比 のり子 (ひび のりこ)

マンガ家を生業としている女性。年齢は44歳。仕事をきっかけに本奈多子と知り合いになり、木下真礼も交えてご飯友達になる。控えめでおとなしそうな外見ながら、言いたいことははっきりと口にするタイプ。多子の更年期障害による急激な身体の変化を心配しており、日比のり子自身の実体験を語って聞かせ前向きな言葉で励ましている。また、ハードワークな環境の多子に、自分で仕事量を調節できるフリーランスの道を勧めている。

岡田 有司 (おかだ ゆうじ)

以前、本奈多子が交際していた男性。破局してからも多子にたびたび連絡を取っている。多子からの返信はないものの、着信拒否されていないことから、日記的な内容のメールを一方的に送信し続けている。

萩野 (はぎの)

有岡智之の学生時代からの友達である男性。智之が映画好きの姉と気が合ったことから、智之とも親しくなった。智之がガンであることも知っており、彼が手掛ける自主製作映画にもかかわっていた。自らが死亡した時のことを考えた智之から、緊急連絡先の一つとして本奈多子とつながって欲しいと依頼を受け、多子と知り合いになる。非常に人見知りの性格で、口数も少ない。プロ野球チーム「シャークス」の熱狂的ファンで、試合の時だけは大声を出して声援を送っている。

小宮 塔子 (こみや とうこ)

本奈多子の中学時代の同級生の既婚女性。鳴神沙羅と同じ地方都市で暮らしている。年齢は42歳。娘の小宮ユキがもうすぐ家を出ることとなり、子育てがひと段落することから、久しぶりにパートに出ることにした。しかし、もう自分が世の中のリズムについていけなくなっている現実や、周囲が当然のようにおばさん扱いをしてくることにショックを受ける。これらの出来事から、なぜか久しぶりに多子に会いたいとの思いに至り、彼女が住む東京へと赴いた。色白の癒し系の容姿で、若い頃はほっそりとしており、異性から非常にモテた。年を重ねてもその頃の小宮塔子自身が忘れられず、中年になった自分を受け入れられずにいる。のんびりとしたマイペースな性格で、同年代よりも早く結婚・出産したこともあり、世間知らずな一面を持っている。

小宮 ユキ (こみや ゆき)

小宮塔子の大学生の娘。年齢は19歳。現在は実家で暮らしているが、間もなく友達とルームシェアをするために家を出ていくことが決まっている。オタク気質で、日常生活でもネット用語を多用し、塔子を困惑させている。しかし塔子との関係は良好で、仲も非常にいい。地方都市で暮らしているが、年に2度、コミックマーケットに出店するために上京することを何よりの楽しみにしている。

大野 (おおの)

小宮塔子のパート先でアルバイトをしている青年。年齢は20歳。ぶっきらぼうで愛想がない性格ながら面倒見はよく、自分の母親に近い年代の塔子にも親切に接している。塔子が「おばさん」と言われてひそかに落ち込んでいた時も、優しくフォローをした。そのことで、塔子から自分に恋心を抱いているのではないかと、誤解を招いてしまう。

鳴神 沙羅 (なるかみ さら)

本奈多子、小宮塔子の中学時代の同級生の独身女性。塔子と同じ地方都市で暮らしている。年齢は42歳。当時は多子や塔子とは特別に親しかったわけではなかったものの、お互いに存在は知っていた。20代の頃に勤務していた会社で上司の郷田と不倫をして、周囲にばれた際にあっさり捨てられたことで、自殺未遂騒動を起こしている。その出来事がトラウマとなり、ずっと定職に就かずに生活している。シングルマザーの家庭に育ち、沙羅の母が気遣ってくれていることを嬉しく思う反面、その存在を重く感じている。幼い頃から大人びた雰囲気を漂わせたクールな美人で、何もしなくても男性にモテるタイプ。そのため、痴漢に遭うことも多く気苦労が絶えない。

沙羅の母 (さらのはは)

鳴神沙羅の母親。夫とは沙羅が幼い頃に死別している。それからは懸命に女手一つで沙羅を育て上げ、郷田との不倫で沙羅が自殺未遂騒動を起こした際には、自分が沙羅に寂しい思いをさせたからだと激しく後悔した。そのため無職の沙羅に働けと強く言えず、遠慮して口を出さないようにしている。沙羅の前では温かく見守っている素振りを見せているものの、実際は自分が死んだら娘はどうなるのだろうと思い悩んでおり、このままでいいのだろうかと不安を抱いている。

郷田 (さとだ)

鳴神沙羅が20代の時に勤務していた会社の営業部に所属していた男性。饒舌で、既婚者でありながらも沙羅にちょつかいを出す。しかし、匿名での通報で沙羅との関係が会社で公になり、さらに郷田自身の妻にもばれてしまったことで、あっさりと沙羅のことを切り捨てた。それだけでなく、同じ営業部の同僚に沙羅の悪口を吹聴し、沙羅の自殺未遂騒動のきっかけを作った人物。

書誌情報

あした死ぬには、 4巻 太田出版

第4巻

(2022-10-17発行、 978-4778323165)

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