すずなり動物ハウス

すずなり動物ハウス

懸賞マニアの若い女性、山田すずは、懸賞で当たったポニーを引き取ってもらうためにペットホテル「すずなり動物ハウス」を訪れるが、成り行きからそこで経理として働くことになってしまう。そんなすずが体験する、さまざまな人間模様を描いたハートフルストーリー。「月刊JOURすてきな主婦たち」2018年5月号から2020年1月号にかけて連載された作品。

正式名称
すずなり動物ハウス
ふりがな
すずなりどうぶつはうす
作者
ジャンル
動物病院
関連商品
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あらすじ

第1巻

あらゆる懸賞への応募を繰り返していた懸賞マニアの女性、山田すずは、ペットショップのキャンペーンでポニーのアオを当ててしまう。そのせいでアパートを追い出され、アオを持て余したすずは、ネットで見つけたペットホテル「すずなり動物ハウス」に連絡を取り、アオを引き取ってもらおうとする。説明の過程ですずが孤児として育ったことを聞いた真行寺珠江は、すずが持つ簿記の資格に目をつけ、経理として彼女を迎え入れることを提案。この申し出を受け入れたすずは、すずなり動物ハウスに住み込みで働くようになる。動物と動物好きの素敵な従業員に囲まれ、働く喜びに満ちた日々を送ることになったすずだったが、経理を担当するうちに、すずなり動物ハウスの経営状況が厳しく、今月中に1000万円の借金を返さないと土地ごと競売にかけられることを知ってしまう。しかし、百貨店の懸賞に応募していたすずがなんと現金1000万円を当てる奇跡が起こる。かつて自分を育ててくれた園長の山田育雄の「いつか誰かの神様になる日が来る」という言葉を思い出したすずは、振り込まれた1000万円を珠江に渡すのだった。(第1話。ほか、3エピソード収録)

第2巻

4月なのに大雪が降るという、異常気象に見舞われた奥多摩。そんな中、アオを散歩に連れて行っていた真行寺華子は、崖から落ちた子熊と子鹿、そしてウリ坊を発見する。すずなり動物ハウスの獣医、瀬戸一郎が彼らを連れ帰り治療を施すが、子熊を取り返しにきた母熊がすずなり動物ハウスに姿を見せ、一触即発の危機に陥ってしまう。一旦は危機を回避するものの、猟友会の人たちが周辺の探索を開始。一郎は殺処分を回避するため、子熊たちを動物愛護センターへ移すことを決意するが、悪天候により事は容易に進まない。そんな時、雪上車による移動コンビニを運営している雪下透が、すずなり動物ハウスまでやってきた。彼の雪上車に目を付けた山田すずは、透に頼み込み、子熊たちを動物センターまで運び出すことに成功する。数日後、猟友会に撃たれた親熊を治療した一行は、無事に3組の親子を安全な山の奥へと放つ。すずは、礼をいうヒマもなく去った透が、生き別れた自分の父親だったのではないかと、一人思いにふけるのだった。(第5話。ほか、3エピソード収録)

登場人物・キャラクター

山田 すず (やまだ すず)

就職活動中の若い女性。年齢は22歳。懸賞が大好きで、ありとあらゆる懸賞に応募を続けている懸賞マニア。幼い頃に交番の前に捨てられ、児童養護施設で育った孤児で、何事にも一生懸命な性格をしている。数学が得意で、簿記1級の資格を持っている。4年間経理の専門学校に通い、就職活動を続けていたが、なかなか就職先が決まらない状態が続いていた。そんな時、ペットショップのキャンペーンでポニーのアオを当ててしまい、そのせいで大家にアパートから追い出されてしまった。ネットで探したペットホテル「すずなり動物ハウス」にアオを預けるため現地を訪れた際に、オーナーの真行寺珠江に簿記1級の資格を持っていることを買われ、経理として住み込みで働くことになった。孤独な人生を歩んできたが、すずなり動物ハウスで多くの人々の温かさに触れ、徐々に人間とのつながりを育んでいく。生まれ育った施設で優しくしてくれた園長の山田育雄のこと尊敬しており、彼の信条であった誰かの神様になることを目指している。生き別れた両親を、今なお探している。

瀬戸 一郎 (せた いちろう)

ペットハウス「すずなり動物ハウス」に勤めている獣医の青年。持ち込まれる動物の治療や、施設内の動物の管理を担当している。奥多摩で一番と謳われている非常に優秀な獣医で、包容力がある優しい性格をしていることから、すずなり動物ハウスのオーナーである真行寺珠江をはじめ、従業員から頼りにされていた。すずなり動物ハウスに経理として勤めることになった山田すずのことも優しく指導し、彼女の生き別れた両親と会いたいという願いが叶うように、陰から見守っていた。過去に経験した手術時のトラウマから、難しい手術ができない状態になっている。のちに、すずの激励もあってトラウマを克服し、再び手術ができるようになった。

真行寺 珠江 (しんぎょうじ たまえ)

ペットハウス「すずなり動物ハウス」を経営している女性。年齢は77歳。眼鏡をかけ、気難しい性格をした老婆で、笑顔を見せることはほとんどない。アオを持ち込んだ山田すずの人柄と能力を見込み、経理としてすずなり動物ハウスに迎え入れた。息子を早くに亡くし、孫夫婦も事故で失っているため、今はひ孫の真行寺華子と暮らしている。お転婆な華子を厳しくも優しい目で見守っている。預かった動物の飼い主が引き取りに来なくても、そのまま預かるなど、経営面は割といい加減。そのため、経理を担当したすずから心配されていた。

真行寺 華子 (しんぎょうじ はなこ)

ペットハウス「すずなり動物ハウス」に住んでいる未就学児の少女。オーナーである真行寺珠江のひ孫。年齢は4歳。みんなからは「ハナ」と呼ばれている。両親が事故死したため、今は珠江に育てられている。天真爛漫な性格で、動物が大好き。朝早く起きて、預かっているすべての動物の世話を積極的にしていた。実は赤ん坊の時に育ての親である真行寺雪雄夫妻に引き取られた養子で、すずなり動物ハウスの近くにあるパン屋の店主である藤野里美が本当の母親。

アオ

ファラベラと呼ばれる中型犬くらいの大きさのポニー。山田すずがペットショップのキャンペーンで当て、そのまま引き取った。そのせいで大家の不興を買ったすずがアパートから追い出されたため、ペットハウス「すずなり動物ハウス」へ預けられることになる。非常におとなしい性格で、真行寺華子にもよく懐いている。

藤野 里美 (ふじの さとみ)

奥多摩にある山のパン屋「アリス」のオーナーを務めている女性。笑顔が素敵な美人で、周辺の住民や近隣のキャンプ場にやって来る人々に向けて毎日パンを焼いている。真行寺華子の実の母親。夫を過労死で失ったあとに華子を出産したが、経済的にも精神的も余裕のない状態であったたため、真行寺雪雄夫妻の申し出を受け、華子を養子に出した。今も華子を愛しており、陰ながら彼女の幸せを願っていたが、華子が病院に入院した際に自分の正体を明かす。

小嶋 さゆり (こじま さゆり)

華やかな容姿の女性。自由奔放な性格をしている。息子の小嶋淳と共に飼い犬のモモタローをペットハウス「すずなり動物ハウス」に預けにきた。仕事一辺倒で家庭を顧みない夫と不仲になっており、ジムで出会った若いインストラクターのもとに逃げることを画策していた。しかし、インストラクターから息子の淳を連れていくことを拒否されたため、淳を捨てることはできず、結果的に夫とよりを戻す。

小嶋 淳 (こじま じゅん)

泣き虫の男子小学生。母親の小嶋さゆりといっしょにペットハウス「すずなり動物ハウス」を訪れ、飼い犬のモモタローを預けにきた。その後、さゆりがインストラクターと喧嘩し、家から出て行ったのを見て自分が捨てられたと思い込み、単身ですずなり動物ハウスに侵入し、モモタローを連れて山へ逃げ出した。夫とよりを戻したさゆりに連れられ、家へ帰って行った。

モモタロー

オスの柴犬。年齢は2歳。小嶋さゆりと小嶋淳の飼い犬で、さゆりがインストラクターのもとに行く際に、一時的にペットハウス「すずなり動物ハウス」に預けられた。優しい淳によく懐いている。

真行寺 雪雄 (しんぎょうじ ゆきお)

真行寺珠江の孫の男性で、故人。行動力にあふれ、自由奔放な性格をしていた。子供の頃から両親代わりの珠江を手こずらせていた自由人。大学卒業後、奥多摩のふもとに居を構え、夫婦でペットショップを経営していた。そこで不幸な動物を見続けたことで、捨てられる動物の預かり場所を作りたいと考え、珠江に懇願して土地を借り、ペットハウス「すずなり動物ハウス」を作った。子宝に恵まれなかったため、藤野里美から真行寺華子を養子として引き取った過去を持つ。ある雨天の夜に自動車事故に遭い、妻と共に亡くなってしまう。珠江からは亡くなった今でも愛情を込めて「バカ孫」呼ばわりされている。

マサオ

ペットハウス「すずなり動物ハウス」に預けられているオスの白猫。飼い主が迎えに来ず、宿泊料の振り込みだけがある状態なため、長らくすずなり動物ハウスで暮らしている。自由気ままな性格で、まるで人間に懐かない。オーナーの真行寺珠江からは「バカ猫」呼ばわりされていたが、その反面、珠江からはとても気に掛けられ、傍から見てもお気に入りの猫として扱われていた。

山田 育雄 (やまだ いくお)

児童養護施設で長らく園長を務めていた男性。誰にでも優しく接する誠実な人格者で、孤児となった山田すずを一生懸命に育ててくれた恩人。世の中に優しい人はたくさんおり、そんな人がすずの神様になってくれると教え諭していた。さらにすずに対し、「すずもいつか誰かの神様になれるかもしれない」と常々語っていた。真行寺珠江の古い知り合い。

ラビ

田村ゆきみが飼っているメスのウサギ。2年前に子宮ガンを発症し、瀬戸一郎が手術を成功させた。しかし、ラビを心配したゆきみが、一郎が寝ているあいだに麻酔から覚めたばかりのラビを取り落とし、死なせてしまった。このことが一郎のトラウマとなり、一郎が難しい手術ができない原因になってしまう。

田村 ゆきみ (たむら ゆきみ)

動物好きな女子小学生。ウサギのラビを飼っていたが、自らのミスで手術後のラビを死なせてしまう。2年後、ペットハウス「すずなり動物ハウス」の獣医となった一郎のもとに、病気になったラビの子供を連れて来る。事故以来、傷心の一郎をずっと探していた。

雪下 透 (ゆきした とおる)

雪上車を活用した移動コンビニを経営している中年男性。悪天候で外部との接触が絶たれたペットハウス「すずなり動物ハウス」を訪れ、商品を売っていた。山田すずの願いを快く聞き入れ、ケガを負った動物を動物センターへと移送する手伝いをした。実はすずの母親である野原すみれの古くからの知人で、すずのことは昔から知っていた。すみれのことを愛している。移動コンビニを開いたのも、児童養護施設から出たすずを探すため。

石倉 三蔵 (いしくら さんぞう)

車椅子に乗った、頭が禿げ上がった老人。頑固な性格で脳梗塞を患って以来、軽い認知症となり、より頑なになってしまった。2年前からペットハウス「すずなり動物ハウス」に預けられている2匹の猫の飼い主で、自宅に余裕ができたため、2年ぶりに彼らを引き取りにきた。しかし、成猫になった猫を自分が預けた猫と認識することができず、山田すずたちに激怒する。

山里 ふくみ (やまさと ふくみ)

美しい顔立ちをした少女。年齢は12歳。すずなり動物ハウスの離れに入り込んでいたところを保護される。わがまま放題な性格で、祖父である山里豪からイギリスへの留学を強制されたため、抗議のために家出した。父親の山里高良と共に豪とは血のつながりがなく、そのせいで豪が自分と高良たちを引き離したと思っている。

山里 豪 (やまさと ごう)

大会社の社長を務める老齢の男性。仕事一筋の堅物で、孫娘の山里ふくみと暮らしている。ふくみと血のつながりはないが、亡き妻の血を引く孫娘として、彼女を厳しくも大事に育てている。しかし、山里高良夫妻から強引にふくみを引き取った過去があり、ふくみからは教育方針も含め、今も強く反発されている。

山里 高良 (やまさと たから)

庭師を生業としている男性。山里豪の息子だが、実は豪の亡妻と屋敷に勤めていた庭師とのあいだに生まれた子供。そのため豪との血縁はない。幼い頃からずっと孤独を感じていたため、成人後に家を出て結婚した。娘の山里ふくみを授かるが、豪によって強引にふくみを引き取られてしまう。

野原 すみれ (のはら すみれ)

総合病院に入院している女性。山田すずの実母。早くに両親を亡くし、親せきの家をたらいまわしにされて育った。ヤンキーとして自由気ままに過ごしている中でケンジと出会い、若くしてすずを身ごもる。ケンジを事故で失ったあとに出産し、「命名すず」と記した紙を入れたお守りといっしょに、赤ん坊だったすずを交番の前に置き去りにした過去を持つ。その後は、雪下透の両親が経営する食堂で働いていた。すずを捨てたことを強く後悔しており、食堂で働く傍ら、たびたび児童養護施設まで足を運び、すずの成長を見守っていた。

ケンジ

バイク好きの少年で、故人。若かりし頃の野原すみれと出会い、彼女とのあいだに山田すずを授かるが、すずが生まれる直前にバイクによる事故で亡くなってしまう。

場所

すずなり動物ハウス

あらゆるペットを預かるペットホテル。奥多摩の山の中にある。数多くの部屋と十分な設備が備わっており、不便な場所にあるにもかかわらず利用客は多い。オーナーは真行寺珠江が務めており、経理として山田すずを迎え入れた。珠江の経営方針がザックリしすぎていることもあって経営は火の車で、銀行に1000万円の借金がある。借金の抵当で土地ごと差し押さえられる危機を迎えていたが、懸賞で1000万円を当てたすずが全額を珠江に渡したことで、事なきを得た。

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