ちはやふる 中学生編

ちはやふる 中学生編

末次由紀の『ちはやふる』の番外編である、時海結以の小説『小説 ちはやふる 中学生編』のコミカライズ作品。本作では『ちはやふる』本編では描かれていない、綾瀬千早、真島太一、綿谷新の中学生時代が描かれている。人生で特に多感な時期を迎えた三人が、競技かるたとかかわりながら将来を思い悩み、成長していく姿を描いた青春物語。2017年、講談社「BE LOVE」にて連載。

正式名称
ちはやふる 中学生編
ふりがな
ちはやふる ちゅうがくせいへん
原作者
時海 結以
漫画
ジャンル
頭脳スポーツ
関連商品
Amazon 楽天

あらすじ

中学校でもかるた友達を作りたい

小学校を卒業した綾瀬千早は、かるた仲間の真島太一綿谷新とは別の中学校に進学した。進学先の市立東大里中学校にかるた部がなかったため、千早はかるた仲間が欲しくてクラスメイトに競技かるたの魅力を伝え歩く。しかし、競技かるたへの熱意が空回りして、二学期に入ってもクラスになじめずに孤立する千早だったが、クラスメイトの堀川みちるに陸上部に誘われたのをきっかけに親しくなる。競技かるたと陸上は共に瞬発力が必要という共通点もあり、千早とみちるはどんどん距離を縮めていく。一方、超進学校である私立開明成中学校に進学した太一は、努力をしなくてもつねに成績トップのクラスメイト・平井悠貴に勝つことを目標に学校生活を送っていた。勉強時間を確保するため、競技かるたに割く時間を少なくすることを考えていた太一だが、悠貴の天才ならではの悩みに触れて、闘うべきは悠貴ではなく自分自身であることに気づく。そんな中、競技かるた好きの藤原先生の計らいでかるた同好会を発足し、太一は再び競技かるたにかかわる日々を送ることを決める。千早と太一は、共に競技かるたを続けることでいつか新とも再会できると信じていた。

新の成長

小学校卒業後に故郷の福井県に戻った綿谷新は、病床に伏す祖父の綿谷始の介護をしながら競技かるたの練習に励む日々を送っていた。始は競技かるたの永世名人で、幼い頃から新を鍛えてきた師匠だった。春休みのある日、新は始の親友である佐藤清彦の伝手で富士市の競技かるた大会に参加する。準決勝まで難なく勝ち上がった新だが、北央学園の須藤の攻め手に圧倒される。須藤に渡り手を破られてしまった新は、A級昇格を逃してしまう。春休みが明けて中学校に進学したある日、新のもとに清彦の訃報が入る。心筋梗塞による突然死だった。親友の死にすっかり覇気を失った始を元気づけるため、一層A級に昇格して名人戦に出たいという思いを強くする新は、始の介護の比重が大きい日常生活の中、一心にかるたの腕を磨き続けた。やがて中学3年生に進学した新は、始に背中を押されて全国競技かるた福井大会に参加することになる。A級への昇格を目指して順調に決勝戦まで駆け上がった新は、かつてまったく歯が立たずに敗北を喫した北央学園の須藤の後輩・甘糟と決勝戦で対戦して苦戦する。甘糟の素早い動きに翻弄されながらも、始の教えを思い出して冷静さを取り戻した新は、甘糟を打ち破り、みごとA級への昇格を果たすのだった。もともとの才能に加えて、努力に努力を重ねた新はすでに名人戦に目を向けていた。

若宮詩暢の憂鬱

中学2年生に進級したばかりの若宮詩暢は、史上最年少でA級に昇格したこともあって、競技かるた業界の期待の星だった。いずれ「クイーン戦」に出場してクイーンになるのだろうと周囲は期待するが、その重圧に耐えかねて、詩暢はいつの間にか勝ち負けにこだわることを避けるようになってしまう。そんなある日、元クイーンの猪熊遥エアかるたで対戦をすることになる。久しぶりに自分より強い相手と戦った詩暢は、感覚に頼りがちだった自分の弱点に気づく。同時に負ける悔しさを味わった詩暢は、成長して再び遥と対戦したいと願うようになる。

笹原美稀の事情

父親の転勤で東京から京都府に引っ越してきた笹原美稀は、弓道の日本一を目指している。そして同じクラスでとなりの席の若宮詩暢は、まだ中学2年生なのに競技かるたの女性競技者の日本一を決める「クイーン戦」に挑むほどの腕前だった。詩暢の可能性に感嘆する美稀だが、意外にも詩暢は勝負事に関心がないという。戦いに身を投じることを恐れているようにも見える詩暢が気になり、美稀は詩暢と共に行動するようになる。そんなある日、詩暢に転機が訪れる。偶然知り合った競技かるたの元クイーンの猪熊遥が、詩暢にエアかるたによる対戦を持ち掛けたのだ。久しぶりに勝負の世界に降り立った詩暢は、強く成長したいと心から願うようになる。競技かるた日本一のクイーンを目指すと決めた詩暢に、美稀は嫉妬心を抱くようになる。実は、美稀は子供の頃に患った心臓病の後遺症で、激しいスポーツには打ち込めない体だったのだ。激しい動きのないスポーツだからと医師に特別に許可された弓道も、やり過ぎれば倒れてしまい、自分にはそれだけの体力と才能がないこともわかっている。実力もあり、好きなものに打ち込むことのできる詩暢を羨む美稀だが、お互いに似た者同士だと詩暢に言われて俄然奮い立つ。そんな中、美稀は中学2年生の夏休み、再び父親の転勤で転校することになる。互いに進む道は違うが頂点を目指す好敵手として頑張ろうと約束を交わし、美稀は詩暢と別れる。時は流れて、中学3年生のある日、ついにクイーン戦に臨むことになった詩暢は、テレビの向こうで弓道全国大会で8位になった美稀の姿を確認する。

太一の進む道

中学3年生に進級したある日、いつものようにかるた同好会で競技かるたの練習に励んでいた真島太一は、顧問の藤原先生からショッキングな報告を受けた。来年で定年退職するため、二学期にはかるた同好会の活動を終了するというのだ。生徒が五人以上いれば同好会の継続は可能だが、昨年入部した貴重な三人の新入生は、太一のスパルタ指導についていけずに辞めてしまっていた。さらに二学期から父親の転勤で、平井悠貴がニューヨークに転校することも決まり、かるた同好会を存続させることは難しい状況となる。太一は、競技かるたに打ち込むあまり成績が下がってきていることもあり、競技かるたのない世界に放り出されることに恐怖を覚える。自分はどこに向かって努力すればいいのか、そしてその努力は報われるのか、答えのない自問自答に頭を抱えたその時、太一はジョギングをする綾瀬千早と再会する。不安を感じるスキもないほど競技かるたで頭が一杯の千早に、楽しくかるたをできているかと聞かれた太一は、小学生の時の勝ち負けにこだわらなかった楽しいかるた時代を思い出す。そして3か月後、かるた同好会は廃部となり、太一は無理することなく成績首位を狙える瑞沢高等学校への推薦入試を突破し、サッカー部に所属しながら塾で出会った女の子と付き合い始める。太一は、競技かるたは趣味の一つとして昇華させようと考えていたのだ。

千早の進む道

中学2年生に進級した綾瀬千早は、堀川みちるの所属する陸上部に入部したが、競技かるたは辞めておらず、放課後は府中白波会の集まりに顔を出すこともあった。だが友達のいない場所で、一人でかるたの練習をするのは気が滅入るもので、今の千早にとっては、友人に囲まれて過ごせる陸上部もまた、貴重な生活の場となっていた。進路を決める時期になり、千早は親友のみちるが志望している瑞沢高等学校に関心を持つ。そしてかるた部がないことから、これまでどおり友人に囲まれて陸上部に所属し、合間に府中白波会でかるたに励むことを決める。この生活になじんできていた千早だが、久しぶりに府中白波会で顔を合わせた木梨浩との対戦で大事なことを思い出す。千早は、福井に戻った綿谷新は、自分と違って孤独に負けずに競技かるたで腕を磨いていることを想像する。そして、小学6年生の時に新と誓った、競技かるたを続けていれば必ずまたつながれるという願いは、全力でかるたに取り組まなければ叶うことはないと、あらためて考えるのだった。こうして、かるた友達を見つけて再びかるたに全力を注ぐことを決意した千早は、猛勉強の末に瑞沢高等学校に合格する。そこで千早は真島太一と再会し、かるた部をつくって切磋琢磨しながら成長を果たし、クイーン戦へと続く道を歩み始める。

関連作品

小説

本作『ちはやふる 中学生編』は、時海結以の小説『小説 ちはやふる 中学生編』を原作としている。講談社から刊行されており、原作およびイラストは末次由紀が担当している。本編『ちはやふる』では描かれていない、綾瀬千早真島太一綿谷新の中学生時代を描いた内容となっている。

登場人物・キャラクター

綾瀬 千早 (あやせ ちはや)

市立東大里中学校に通う女子。のちに瑞沢高等学校に進学する。小学6年生の時に綿谷新の影響で興味を持った競技かるたに今も夢中で、かるた友達をつくるという熱い目標を持って市立東大里中学校に入学したが、クラスには競技かるたに興味のある生徒はいなかった。休み時間もCDプレーヤーで百人一首を聴くほどで、かるたしか見えていないために友達ができずに孤立しており、千早はますます競技かるたにのめり込む日々を送るようになる。競技かるたでは持ち前の向上心でD級からC級に昇級するが、B級昇級大会で真島太一に敗北。その際、最高の好敵手と認識していた太一にまで競技かるたを辞めると宣言されて衝撃を受ける。かるた仲間を失って落ち込んでいたが、陸上部への勧誘を受けたことで堀川みちるとなかよくなり、それをきっかけに友達の輪が広がっていく。競技かるたを続けるうえで体力をつけるために始めた陸上競技にも才があり、陸上部に入部して半年で市大会に出場するまでになった。みちるには親しみを込めて「ちーちゃん」と呼ばれている。

真島 太一 (ましま たいち)

綾瀬千早の小学生時代の同級生で、文武両道を地で行く男子。のちに瑞沢高等学校に進学する。超進学校として知られる私立開明成中学校に片道1時間半かけて電車通学している。小学生の時に惚れたよしみで千早のかるた好きに巻き込まれて競技かるたを始め、中学校入学後はB級に昇級する。教育熱心な母親の影響で、何事も1位でなければ意味がないと考えているが、平井悠貴のおかげで自分の敵は自分であると気づき、自分のために目標を持つことの重要性を見いだす。現在は公式な競技かるたの試合には出場していないが、在学する私立開明成中学校のかるた同好会に所属しながら、かるたの腕を磨き続けている。サッカー好きで、苦手なリフティングを猛練習の末に克服するなど努力家な一面がある。原田秀雄にはまつげが長いことから「まつげくん」と呼ばれている。

綿谷 新 (わたや あらた)

競技かるたの永世名人である綿谷始を祖父に持つ男子。幼い頃から始に競技かるたの英才教育を受けて育ち、その腕前はかなりのもの。小学6年生の時に福井県から東京に転校してきて綾瀬千早と出会い、千早に競技かるたの魅力を教えた。小学校卒業と同時に福井県に戻って千早とは疎遠になるが、競技かるたを続けていればまた会えると互いに信じている。福井県に戻ったのは寝たきりとなった始の介護のためで、母親と二交代で始の介護に心を尽くす。始の世話をしつつ、始と競技かるたの作戦を練ったり名人戦を見たりして、福井県に戻ってもずっと競技かるたの腕を磨き続けているが、佐藤清彦の訃報を受けて憔悴する始の好敵手になるべく、一刻も早くA級入りし、そしてゆくゆくは名人戦に出場するのが目標となる。努力のかいあり、全国競技かるた福井大会でA級に昇格を果たす。恋愛感情には疎く、芦野由宇が自分に触れてぎくしゃくした言動をするのを恋心だと気づいていない。福井県では福井南雲会という競技かるたの勉強会に所属している。

原田 秀雄 (はらだ ひでお)

競技かるた好きの医師を務める男性。東京都で府中白波会という競技かるたの勉強会を主宰している。綾瀬千早の向上心を買い、師匠として千早に競技かるたのいろはを叩き込んだ。子供は友達がいないとかるたを続けられないからと、千早や真島太一がかるたを続けられるようにプライベートな相談にも乗るなど、親身になって接する。その見た目から太一のことを、「まつげくん」と呼んでいる。

堀川 みちる (ほりかわ みちる)

市立東大里中学校に通う女子。綾瀬千早のクラスメイトで陸上部に所属している。陸上部では2年生でレギュラー入りし、着々と実力を伸ばしている。かるたのことばかり考えているため、クラスで孤立している千早を心配して陸上部への入部を勧める。一見穏やかな性格で、のんびりした雰囲気を漂わせているが、千早同様好きなことになると熱く語り始める熱血漢。試合に出場するために捻挫を隠してハードな練習をこなすなど、非常にストイックなところがある。かるたのことはよく理解していないし興味もないが、千早の競技かるたに対する熱意と集中力には感服している。千早を親しみを込めて「ちーちゃん」と呼んでいる。

綾瀬 千歳 (あやせ ちとせ)

綾瀬千早の姉。雑誌のモデルとして活躍している。わがままな性格で、自分をちやほやしていた千早が、競技かるたに夢中になっていることを快く思っていない。そのため、必要以上に競技かるたに熱中する千早にネガティブな発言を繰り返している。きつい性格ながら、芯は通っており、制服のかわいさで進学先の高校を決めるなど、モデルとして徹底した美意識の高さを持っている。

平井 悠貴 (ひらい はるたか)

私立開明成中学校に通う男子。2歳児才能開発教室に通っている頃に真島太一と知り合った。驚異的な記憶力を持つ天才少年で、なんの努力もせずにつねに学年首位の成績を収めているため、太一に敵視されている。何でもすぐにできてしまうゆえに何事も頑張った経験がないことに引け目を感じていたが、周囲はそうとは知らずに嫌みな人物と受け取るため、孤独を感じていた。文武両道で何事にも熱くなれる太一にあこがれている。教養の授業で触れた競技かるたでの太一の素早い動きに生まれて初めて対抗心を刺激され、太一と共にかるた同好会に所属するようになった。競技かるたの腕前は、太一に十枚ハンデをもらってやっと勝負になるかどうかのレベル。かるた同好会と同時にサッカー部にも所属して青春を謳歌していたが、中学3年生の二学期に父親の転勤でニューヨークに転校することとなった。

佐藤 清彦 (さとう きよひこ)

富士市在住の競技かるたの永世名人の男性。綿谷始の親友で、同い年の始とは高校時代からの好敵手と互いに認め合っている。始より先に名人五連覇を果たしたが、のちに始に奪還された過去がある。互いに好敵手として在り続けており、老齢になっても顔を合わせるのは試合の時のみと考えている。綿谷新が福井県に戻って以降、春休みに泊まりがけで競技かるたの大会に参加しないかと誘うなどかわいがっていたが、富士の大会が終わってまもなく心筋梗塞で急死する。生前は富士崎高校のかるた部の顧問を務めており、競技かるたの強豪である北央学園に打ち勝つことに闘志を燃やしていた。

綿谷 始 (わたや はじめ)

綿谷新の祖父で、競技かるたの永世名人。福井県在住。脳溢血で倒れて半身不随の寝たきり状態となってしまう。右手も麻痺して動かなくなっているが、左手でもかるたはやれると前向きにリハビリに励んでいる。病床に就いても競技かるたに対しての気持ちは誰にも負けないほど強く、新と共に勝利するための作戦を練ったり、名人戦やクイーン戦を見たりすることに楽しみを見いだしている。幼い頃からの英才教育で競技かるたの腕をみるみる上げていく新をかわいがっており、その成長を叱咤激励しつつ温かく見守っている。親友であり最大の好敵手である佐藤清彦が心筋梗塞で急逝した知らせを受けて、脳溢血を再発させて倒れるほどの衝撃に見舞われる。その後は衰弱し、一時は痴呆症状も現れるほどの重症に陥ったが、新の必死の介護と競技かるたへの情熱で元気を取り戻す。

芦野 由宇 (あしの ゆう)

綿谷新と家がとなり同士の幼なじみの女子。福井県在住で、新とは家族ぐるみの付き合いがある。中学校ではバレー部に所属しており、明朗快活な性格をしている。将来は看護師になりたいということもあり、綿谷始の介護を積極的に手伝っている。始が二度目の脳溢血で倒れたあとも、明るく前向きに新を励まし続けた。何があっても受け取る側が絶望しなければ大丈夫だという、亡くなった祖母の言葉を信条にしている。新にずっと片思いをしており、競技かるたの読手を率先して行うなど心を寄せているが、意識し過ぎてぎくしゃくしてしまい、新に不審がられている。綾瀬千早の話題が出ると、嫉妬心から不機嫌になる。

須藤 (すどう)

福井県の北央学園に通う男子。競技かるたが得意で、非常に素早い動きで相手を翻弄する。強気な姿勢で相手を追い込んでいくことから、仲間内では須藤のSは攻めまくりのSといわれている。藤野A・B級大会では、競技かるたの英才教育を受けている秀才・綿谷新の渡り手を破ってA級に昇格した。高圧的な態度を取っているが後輩の面倒見はよく、特に甘糟には怖がれながらも懐かれている。

栗山 勇 (くりやま いさむ)

競技かるたの勉強会「福井南雲会」を主宰している男性。佐藤清彦と綿谷始を師と仰いでおり、脳溢血で倒れた始の見舞いに駆けつけるなど親交も深い。福井南雲会に所属している綿谷新がA級に、ひいては名人戦に出場できることを願っている一人。頭髪がなく、いつも頭をピカピカと光らせている。

甘糟 (あまかす)

福井県の北央学園に通う男子。須藤の一年後輩で、身長が低いことにコンプレックスを抱いている。競技かるたの腕はそこそこで、いつか須藤に追いつき、追い越すことを目標としている。競技かるたでは素早さを売りにしている。全国競技かるた福井大会の決勝戦で綿谷新と対戦し、渡り手を得意とする新を素早さで翻弄して苦戦を強いる。最後には冷静さを取り戻した新に負けてしまい、B級にとどまることになったが、決勝戦で対峙した新から伝わってきた並々ならぬ闘志に敬服し、より一層努力していく覚悟を決めた。

笹原 美稀 (ささはら みき)

弓道好きな女子中学生。中学2年生への進級時に、父親の転勤で京都から東京に転校してきた。ギャル風のルーズなファッションと化粧をしているが、見た目とは裏腹に、目標は弓道で中学生女子として日本一になること。種目は違えど自分と同じく競技かるたで日本一を目指している若宮詩暢を気に入り、行動を共にしている。人懐こい性格で、とっつきにくい詩暢のことも「しの」と呼び、フレンドリーに接している。おばあちゃんっ子で、祖母にもらったミニかるたを詩暢にプレゼントして彼女の心を開くことに成功する。幼い頃に患った重度の心臓病の後遺症で、現在もかなり虚弱体質。比較的穏やかなスポーツということで医師に許可された弓道も、倒れるまで練習するために入退院を繰り返している。妹の笹原美沙とは洋服を貸してもらうなどして仲がいいが、実際は体調に制限なく運動できる美沙への嫉妬心から弓道に打ち込むようになった。自分には弓道しかないと考えており、同じように競技かるたしか興味のない詩暢に何か通じるものを感じている。父親の転勤により、中学2年生の二学期から再び転校し、詩暢の前から去っていく。

若宮 詩暢 (わかみや しのぶ)

京都在住で、極度の和物おたくの女子。休み時間も国語便覧の十二単のイラストを眺めるほか、古典の授業に強い関心を持つ。競技かるたが得意で、中学2年生の時点で既に全日本かるた協会五段の腕前で、周囲に「クイーン戦」出場を熱望されている。なお、史上最年少でA級に昇格しており、その記録はいまだ破られていない。静かに一人で過ごしたいタイプながら、笹原美稀には3分の1サイズのミニかるたをもらったことで心を開いた。美稀には、「しの」と呼ばれている。競技かるたというより、かるたの札そのものを愛している。かるたを愛するあまり和装束を着た姫たちが札の上に見え、彼女たちを大切に扱う感覚で札に触れている。小学6年生の時まで競技かるたの勉強会「明星会」に所属していたが、ちょうど伸び悩んでいる時期だったこともあり、大会で綿谷新に負けたことをきっかけに明星会から離脱した。その際、勝ち負けにこだわる醜い心も封印したが、猪熊遥とのエアかるた対戦により、再びクイーン戦を目指して邁進する情熱を取り戻す。祖母は京都府議会議員を務めており、非常に厳しい家庭環境で育った。ふだんは無口ながら負けん気が強く、嫌みを言われたら京都弁で何倍にも言い負かせるほど口達者である。

猪熊 遥 (いのくま はるか)

競技かるたの元クイーンだった女性。明るい性格で友達も多いが、勝負事では恐ろしいほどの貪欲さを見せる。クイーンの座の5連覇を目前にして、初挑戦者の宮崎涼子に敗れた。神奈川県在住だが、甥の透に競技かるたを教えるために京都府によく足を運んでいる。若宮詩暢のことは透を通して知り、最年少でA級に昇格したのに勝ち負けに興味がない様子を訝しみ、対戦して打ち負かして発破をかけた。現在は妊娠しており、お腹が邪魔になることで詩暢との対戦ではエアかるたを提案して詩暢を惨敗に追い込む。その対戦で負ける悔しさと、勝つ喜びを思い出した詩暢は、競技かるたの日本一すなわちクイーンを目指して再び腕を磨くようになった。

(とおる)

京都府在住の猪熊遥の甥。小学生の男子で、遥の影響で競技かるたに関心を持っている。文化会館で競技かるたの指導にあたった若宮詩暢を遥に引き合わせた人物。詩暢の競技かるたの腕前を認めつつ、勝ち負けに興味がないため名人戦「クイーン戦」に興味を示さないことを不服に感じ、遥によく愚痴をこぼしていた。

笹原 美沙 (ささはら みさ)

笹原美稀の妹。バスケットボールが得意な活発な女子で、心臓に負担をかけないためにスポーツを禁じられていた姉の美稀とは対照的な小学生時代を送っていた。友だちに囲まれて楽しそうにしている妹を見て美稀は嫉妬し、弓道に打ち込むようになった。

藤原先生 (ふじわらせんせい)

私立開明成中学校の教養の授業を担当する男性教師。競技かるたの経験者で、授業中に経験者の真島太一との対戦を望み、大敗退した。平和主義者で、勝ち負けにこだわらずにかるたを楽しみたいと考えている。楽しそうに競技かるたをする太一を誘い、かるた同好会を発足した。同好会では、主に読手として生徒たちの実力向上に貢献している。太一の中学卒業と同時に定年退職で学校を去ることになり、同時にかるた同好会の活動も終了することとなった。定年後はカルチャースクールで古典文学を教えながら、競技かるたを続けてのんびり過ごす予定である。腰痛持ちで、定期的にストレッチをして悪化させないように気をつけている。

木梨 浩 (きなし ひろ)

勉強会「府中白波会」に所属している男子。小学生の時から競技かるたをしている。しかしなかなか上達せず、とにかく練習を重ね、努力と根性で腕を磨いている。北央学園に通う生徒で、かるた部に所属しており、須藤の後輩として厳しく育てられている。中学校入学後は府中白波会の集まりにほとんど顔を出せなくなっていたが、進路に迷う綾瀬千早と久しぶりに対戦し、遠く離れていてもかるたを愛する仲間がいることを千早に思い出させた。細身長身の見た目と、下の名前から「ヒョロくん」と呼ばれている。

集団・組織

府中白波会 (ふちゅうしらなみかい)

原田秀雄が主宰する競技かるたの勉強会。綾瀬千早や真島太一が所属している。ふだんは市立文化センターで部屋を借り、会員同士で試合をするなどして活動している。小学生や中学生の会員は少なく、大人の部のみに活気がある。

かるた同好会 (かるたどうこうかい)

私立開明成中学校の教師・藤原先生の発案で発足した競技かるたの同好会。経験者の真島太一のほか、彼のクラスメイトの平井悠貴も所属し、日々競技かるたの練習を重ねている。藤原先生の発案で作られた同好会ながら、何よりも太一の、かるたを続けていれば綾瀬千早や綿谷新にまた会える日が来るという願いが込められ、継続している同好会である。所属する生徒も少なく、藤原先生の定年退職に合わせて活動を終了することとなった。

福井南雲会 (なぐもかい)

福井県の栗山勇が主宰する競技かるたの勉強会。綿谷新が所属している。競技かるたのさかんな土地柄であることもあり、非常に活気のある勉強会となっている。指導者として永世名人の綿谷始が顔を出すこともあった。

明星会 (みょうじょうかい)

京都府にある競技かるたの勉強会。小学6年生まで若宮詩暢が所属しており、若い所属者も多く活気のある勉強会となっている。若くても実力があれば、文化会館へ赴いて指導を受けることができる。

場所

瑞沢高等学校 (みずさわこうとうがっこう)

綾瀬千早が進学を希望している、偏差値が非常に高い高校。かるた部はないものの親友の堀川みちるが志望しているため、千早も進学を希望するようになる。在校生は1000人を超えるほどの大きな高校である。真島太一が推薦入試で合格し、入学が内定している。

その他キーワード

クイーン戦 (くいーんせん)

年に一度行われる競技かるたの大会の一つ。女性競技者の頂点を決める大会で、幅広い年齢層の競技者が競い合い、その様子はテレビ中継される。毎年、滋賀の近江神宮がクイーン戦の会場となる。

全国競技かるた福井大会 (ぜんこくきょうぎかるたふくいたいかい)

毎年福井県で行われている、競技かるたの全国大会。試合はC・D・E級とA・B級の計2日間行われる。この大会で綿谷新はA級に昇格を果たす。

スノー丸 (すのーまる)

笹原美稀が発信する形で、若宮詩暢を虜にしたキャラクターの名称。バケツ型の帽子をかぶった雪だるまの姿をしているが、帽子を取るとちょんまげという和風なテイストが人気を博している。Tシャツやハンカチにプリントしたグッズも展開され、女子中学生から老女まで幅広い年齢層に支持されている。

エアかるた

猪熊遥が考案した競技かるたの練習法。実際の札は使わず、頭の中で札を並べながら対戦する仕様となっており、まずはそれぞれ25枚の持ち札を決めることから始まる。交互に25枚ずつ決まり字を言い合い、それを脳内で並べていき、読手の読んだ決まり字をもとに取り札に書かれた文字を発する。同時に発言した場合は、自陣にその札を持っている方が取ったことになる。取り札に書かれた文字は、ふだん自分が取る目印にしている文字のみで問題ないため、例えば左角三文字でも相手より先に発声できればその札を取ることができる。

クレジット

原作

時海 結以

原案

ベース

ちはやふる

競技かるたという異色の題材を用いた、末次由紀の長期連載作品。女流選手の最高位クイーンを目指す綾瀬千早を中心に、少年少女の友情、努力、勝利と挫折、そして出会いと別れを感動的に描く。和歌や和服などを通じて... 関連ページ:ちはやふる

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