まどろみバーメイド

まどろみバーメイド

東京都内で共同生活を送る月川雪、伊吹騎帆、陽乃崎日代子の三人のバーメイド(女性バーテンダー)が、それぞれの問題に直面しながらも仕事を通じて人々と交流し、バーメイドとして、また人間としても成長していく姿を描いたお仕事ヒューマンドラマ。「週刊漫画TIMES」2017年3月24日号から不定期に掲載の作品。

正式名称
まどろみバーメイド
ふりがな
まどろみばーめいど
作者
ジャンル
水商売
 
レーベル
芳文社コミックス(芳文社)
巻数
既刊14巻
関連商品
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あらすじ

スコール

東京都内で、真っ青なデザインの屋台バーを営んでいるバーメイドの月川雪のもとに、この店舗を珍しがった中年の男性客が来店する。酒に詳しいという彼に焼酎を使ったカクテルを頼まれた雪は「村雨」という焼酎カクテルを、本来使うロックグラスではなく、カクテルグラスを使って出す。男性客はこのグラスはまちがっていると指摘するが、雪にはカクテルグラスを選んだ明確な理由があった。村雨の材料には沈みやすいリキュールであるドランブイがあり、時間がたつとグラスの底に甘いドランブイが溜まってしつこく感じられてしまうのだ。そこで雪は村雨をしっかりシェイクし、さらにカクテルグラスを使うことで、これを回避したのである。さらに村雨の中に、一年に一度しか咲かない月下美人を入れ、これを隠し味にしていた。男性客はそんな雪の丁寧な仕事ぶりに感服し、彼女を気に入って翌日同じ場所に訪れるが、雪はすでに屋台バーを違う場所に移動していた。

ヴァーサス

月川雪の屋台バーに、同居人である伊吹騎帆陽乃崎日代子がやって来た。朝ケンカをした二人は、お互いに気まずい思いを抱えながら雪の屋台バーを訪れたところ、偶然出くわしてしまったのである。そんな中、騎帆は雪に屋台バーよりも一般のバーで働いた方が安心なのではと雪に提案するが、日代子はこれに反対する。雪本人の自由にさせるべきだし、騎帆のそういったおせっかいで過保護なところが気に入らないと、再び二人はケンカを始めてしまう。その後、二人は店にあるものを使ってバーメイドとしての技術を競い出し、最後は雪が二人の本心を見抜いたことで、仲直りするのだった。

なみだのウイスキー

最近、月川雪の屋台バーに木下優という若い女性がよく顔を見せるようになる。優はお酒が飲めず、いつも水だけを飲んで帰っていくのだが、雪は優に姉のように接していた。そんなある日、突然優がお酒を作ってほしいと頼みにやって来る。優は山形県出身で、母親が亡くなるまで山形で暮らしていた。そんな優の母親は、一年に一度だけ「なみだのウイスキー」という非常に甘いウイスキーを飲んでいた。優はこのお酒を飲めたら、母親に会えた気分になれるのではないかと考えたのである。雪は優の話をヒントに「シングルモルト宮城峡」を使ってお酒を出すが、うまく再現することができずに優をガッカリさせてしまう。そこで雪は、翌日山形へ向かう。現地の人に話を聞くうちに「なみだのウイスキー」は「シングルモルト宮城峡」でまちがいないものの、これを割る水に秘密があることに気づく。その水の正体は、毎年2月にだけ山形県最上郡で採れる「イタヤカエデ」の樹液だった。

リヴァイブ

月川雪は未だに自分の屋台バーの店名を決めておらず、その店名を考えながら歩いていたところ転倒し、運んでいた屋台を壊してしまう。幼なじみの上森祥子に屋台を直してもらう中、雪は久しぶりに祥子といっしょにお風呂に入ったり、お酒を振る舞ったりして楽しく過ごす。一方の祥子は、このタイミングで雪に出会ったことに運命的なものを感じていた。幼い頃から祥子が落ち込んでいるときには必ず雪が現れ、何をするわけでもないがそばにいてくれ、最後にはお菓子をもらって励ましてくれていたからである。そして今回も、祥子が離婚したことに気づいた雪が、お酒を通じて励ましてくれたことで、祥子は雪をいつも誰かを優しく見守る衛星のような存在だと讃える。この言葉にヒントを得た雪は、店名を「SATELLITE」に決めるのだった。

月川雪の屋台バー「SATELLITE」に、雪が以前「村雨」を振る舞った男性客がやって来る。彼は剣堂寅雄と名乗り、雪に頼み事があって来店したのだと語る。寅雄は「アヴァロン東京」という外資系ホテルのテナントの仲介をしているのだが、最上階にできるバーの出店に対して、オーナーから「蛇」と呼ばれる中国人バーテンダーをチーフに据えるように命じられていた。しかし「蛇」は、オファーを受ける条件を「おいしいお酒を飲ませること」としているが、誰が作ったお酒も認めずにいた。そこで寅雄は、雪の作ったお酒なら「蛇」も関心を持つのではと考え、いっしょに中国へ行って「蛇」に直接お酒を作ってほしいと依頼する。報酬に釣られた雪はこの依頼に応じて香港に向かうが、現地に着くなり乗り物酔いしたうえに、寅雄とはぐれてしまう。そんな雪に声をかけてくれたのはシャノン・フーという親切な若い女性だった。シャノンと親しくなった雪が、今回の目的地である「蛇」の住む「モンスターマンション」の住所を伝えると、シャノンもまたそこに住んでいるのだという。そこでシャノンの姉であるアシュレイ・フーに迎えられる雪だったが、そこに寅雄が到着。そして「蛇」の正体が、アシュレイであることを知る。

夜明け

アシュレイ・フーがおいしいお酒と希望していたのは、以前参加した競技会で自分のお酒が古臭いと酷評され、本当においしいお酒とはどんなものかがわからなくなっていたからだった。そんなアシュレイにお酒を振る舞うことになった月川雪は、「アメリカン・ビューティ」を作る。このカクテルはシャノン・フーには好評だったものの、アシュレイはなぜか怒り出し、オファーは受けてもらえなかった。しかし雪はあきらめることなく、剣堂寅雄に先に帰国してもらい、その後2週間アシュレイとシャノンと共に過ごすこととなる。そんな中、雪はアシュレイだけでなくシャノンもまたバーメイドであり、「蛇」は二人のユニット名であることを知る。先日「アメリカン・ビューティ」を作ったのも、二層が混ざり合って一つになることで真価を発揮するこのお酒を、二人の関係になぞらえたのである。そんな雪に心を開いたアシュレイとシャノンは、競技会で酷評されたお酒を雪に作り、雪はそれに一工夫加えて今風にアレンジする。これにヒントを得たアシュレイとシャノンは、工夫次第で自分たちはまだまだやれると自信を取り戻し、寅雄のオファーを受けることにするのだった。

スターリースカイ

時は数年前にさかのぼる。母親を病気で亡くした月川雪は、母親が切り盛りしていた洋食店「グリーム」を、父親と共になんとか維持していた。しかしある冬の日、父親が独断で店を閉めてしまう。雪はこれに納得いかないながらも店の整理を行っていたが、その場にあったお酒を飲んで眠り込んでしまう。そこに偶然現れたのは伊吹騎帆だった。上森祥子の友人である騎帆は、これまでに何度か「グリーム」で食事したことがあった。しかしこの日、偶然通りがかったところ、店は閉店しているのに中で眠っている人がいることに気づき、心配になって声をかけてきたのである。この日、騎帆に「ブルショット」というホットカクテルを振る舞われたことで、雪は次第にお酒に興味を持つようになる。月川家の事情を察した騎帆は、雪と二人の奇妙な同居生活が始まるのだった。やがて雪はバーメイドとしての資質を見せるようになり、騎帆は自らのバー「エリシオン」で働いてみないかと提案する。

旧(ふる)い水

アシュレイ・フーシャノン・フーのユニット「蛇」がバー「アヴァロン」のチーフバーテンダーとなったことで、ホテル業界は「蛇」の話題で持ちきりとなっていた。これに危機感を覚えた「エリシオン」の料飲部監督を務める真下は、支配人の早馬明に何か強力なテコ入れをするように命じる。そのピリピリした雰囲気は伊吹騎帆たちにも伝わり、騎帆は余呉から月川雪について尋ねられる。雪は以前「エリシオン」で働いていたものの、勝手にカクテルをツイスト(アレンジ)して出してしまうことが原因で、クビになってしまったのだ。しかし余呉は、今でもこれが正しい選択だったのだろうかと思い悩んでいたのである。そんなある日、勤務中の明のもとに、娘の理香が行方不明になったとの報せが入る。明はすぐに理香を捜しに行こうとするが、そこに突如大量の客が店に押し寄せる。今夜近隣のコンサート会場で人気歌手の引退コンサートが開かれており、終演後に客が大量に流れ込んできたのである。明はひとまず店を優先するが、あまりの客の多さに従業員たちはパニックになってしまう。しかしそこへ現れたのが、クビになったはずの雪だった。

月川雪が急きょ「エリシオン」にやって来たのは、早馬明から「エリシオン」への復帰を打診されており、とりあえずヘルプとして働く約束をしていたからだった。雪のサポートもあり、次第に店は落ち着きを取り戻し、ようやく店を抜けられた明は、無事に理香を発見するのだった。こうしてその日は無事に仕事を終えるが、雪は閉店後に復帰することを正式に断る。雪は今の屋台バー「SATELLITE」での働き方が自分に合っていると考えており、「エリシオン」では働けないと判断したのである。明はこの返事を残念に思いつつも後日「SATELLITE」を訪れ、雪のツイスト(アレンジ)カクテル「ジャパニーズオールドファッション」を飲みながらあらためて二人で話をする。また、いっしょに働くことはかなわなかったものの、二人は以前よりも親交を深めるのだった。

トランスファー

「エリシオン」の従業員である若尾みちるが、突如店をやめたいと言い出す。みちるは先日のコンサート帰りの客で大混雑の際にミスを連発したことや、OGである月川雪と自分のバーメイドとしての力量の差に深く落ち込んでいた。どんなにがんばってもバーメイドになれないと自覚し、店をやめてアルバイト暮らしをしようと考えたのだ。このことを知った伊吹騎帆は、ひとまずみちるを屋台バー「SATELLITE」へ連れて行き、雪と共にみちるに業務指導をする。二人の励ましもあり、元気を取り戻したみちるは考えを改め、退職を撤回するのだった。

ラストワード

陽乃崎日代子は、最近スランプに陥って悩んでいた。フレアバーテンダーの日代子は、バー「STREAM」で毎日パフォーマンスをしているが、このところキャッチに失敗することが増えていたのである。そんなある日、屋台バー「SATELLITE」に、三人の若い女性が来店する。その場は問題なく接客した月川雪だったが、帰宅すると家の前に再び三人がいることに驚く。三人は愛知県に住む日代子の姉たちで、日代子を実家に連れ戻すために、東京までやって来ていたのだ。そんな三人の気迫に圧された伊吹騎帆は日代子を引き渡してしまう。その後、雪と騎帆は日代子が実家の名古屋で結婚させられるらしいことを知る。

取引

陽乃崎日代子は、経営難に陥っている実家「ブランドショップ ヒノサキ」を救うため、お見合いをすることになる。そのお見合い相手である神代祐樹は好感の持てる男性だったが、お見合い中、日代子は浮かない気持ちのままだった。このまま実家に帰ってくれば、つらいフレアバーテンダーの修業はしなくても済むし、さまざまな嫌なことからも解放される。しかし、姉たちに自分の仕事を見下されていることを知り、このまま彼女たちの言いなりになってよいものかと悩んでいたのだ。そんな中、なんとか日代子の居場所を調べて月川雪伊吹騎帆がやって来る。二人は日代子の働くバー「STREAM」の店長である人見柊と日代子たちをテレビ通話させ、柊の言い分を伝える。それは退職するとしても1か月後であること、そして1か月後に開催される杉並区民祭で日代子にパフォーマンスをさせるので、見に来てほしいというものだった。さらに柊は、杉並区民祭で「4アイテム」という高難易度パフォーマンスを成功させなければ、日代子をクビにすると告げる。日代子はこの提案に驚きつつも応じ、バーメイドとして最後になるかもしれないパフォーマンスに挑む。

マイカラー

杉並区民祭当日。陽乃崎日代子のステージが始まるが、そこは観客がほとんどいない完全なアウェー状態だった。しかし日代子は、幼稚園教諭時代の経験を生かして、炎や色の変わるカクテルを作って観客の興味を惹きつけるパフォーマンスで場の雰囲気を変えていく。いよいよ「4アイテム」のパフォーマンスを開始するが失敗し、さらに停電が起きてしまう。この様子を見ていた陽乃崎伊須香は、結果は決まったようなものだと、その場を去ろうとするが陽乃崎嗣実が伊須香を制止する。嗣実は、日代子が子供の頃から姉たちを気遣うあまり、自分に自信を持てなくなっていることを知っていた。その上、今回日代子に陽乃崎家の都合をすべて押し付けようとしているのだから、せめて最後までパフォーマンスを見るべきだと考えていたのだ。そして伊須香が席に戻ると、日代子は練習用の瓶でパフォーマンスを再開する。日代子の練習用の瓶には暗い場所でも見やすいように蓄光テープが巻かれていた。その直後会場が明るくなり、日代子はさらに場を盛り上げるべく、プログラムの変更を決意する。

幽霊船(ゴーストシップ)

陽乃崎日代子は杉並区民祭で、「4アイテム」を超える超高難易度パフォーマンス「5ボトルカスケード」を成功させた。これに観客は大いに盛り上がり、約束どおり陽乃崎伊須香が折れたことで、日代子と神代祐樹の結婚の話は白紙に戻る。さらに陽乃崎嗣実が、日代子を擁護して積極的に働きかけたことで、三人の姉たちにも心境の変化が生まれる。そして後日、杉並区民祭のニュースで日代子の姿を見た日代子の父親もまた、「ブランドショップ ヒノサキ」の再建に気持ちを新たにするのだった。こうして陽乃崎家の問題は解決するが、そんなある日、月川雪が杉並区民祭に出店した店に来ていた女性、生方麟が再び雪を訪ねてくる。麟は洋菓子店「パティスリー ライブラ」を経営するパティシエールだが、杉並区民祭をきっかけにお酒にも関心を持つようになり、特に雪の作るカクテルに興味があるのだという。そんな麟は、ある人物に復讐しようとしていた。

ペアリング

生方麟が復讐を誓う相手とは、実の姉であり、かつて「パティスリー ライブラ」を共同経営するビジネスパートナーでもあった生方操だった。「パティスリー ライブラ」は操が始めた店だったのだが、ある日突然操は引退してしまい、麟だけが店に取り残されてしまう。そんな麟に協力することになった月川雪は、操に会うべくいっしょに三重県志摩地方まで行き、操の家に泊まることとなる。そこで雪は操が退職した理由を尋ねるが、その答えはパティシエとしてある程度の結果を出したことで、飽きてしまったというものだった。しかし、この会話をひそかに聞いていた麟は、近日中に雪と操をあっと言わせるようなフロマージュとカクテルを作ると宣言するのだった。

スーパーノヴァ

月川雪は、生方麟の作るお菓子にぴったりなオリジナルカクテルを作ることになった。しかし最終的に雪は、あえてオリジナルカクテルではなく、定番カクテルであるソルティドッグを生方操に出す。雪は客との会話にヒントを得て、既にあるカクテルの中から、最も最適なソルティドッグを選んだのである。この選択が功を奏して食べ終えた操は、パティシエをやめた本当の理由を話し出す。それは、天才的な味覚を持つ麟といっしょに働くうちに、自らの限界を感じたというものだった。さらに操は、今回麟の作る最新のお菓子を食べたことで、パティシエの仕事への未練を完全に断ち切り、今の仕事に専念できるようになったと告げる。しかしこの言葉にショックを受けた麟は、その場を飛び出してしまう。雪は慌てて麟を追いかけるが、追いついた途端に大切にしていた操とおそろいのピアスを海に落としてしまう。

サブマリン

月川雪生方麟のピアスをどうにか回収し、麟と生方操はもう一度話し合った結果、雪と麟は晴れやかな気持ちで東京に戻る。雪は操から屋台だけにとどまらず、もっと上を目指さないのかと尋ねられて悩んでいた。そんなある日、雪がバンブーの散歩をしていると、動物病院からスローロリスをゲージに入れた男性が出てくる。その場はお互い珍しい動物を飼っていると認識する程度で終わるが、その直後に今度はお互いバーテンダーとして再会する。その日、銀座に出向いた雪が無許可で屋台を出そうとして注意を受けていた際に、助けてくれたのが彼だったのである。そこで彼に一杯お酒を出すことになった雪は、まだお店で出すには至っていないカクテルの話をする。結局雪は、その時も彼の名前を聞けずじまいとなってしまうが、今度はテレビで彼を発見する。彼は銀座にあるバー「メテオ」のオーナーの砕明寺で、テレビ番組で雪が教えたカクテルを披露していたのである。

メディアミックス

TVドラマ

2019年7月から9月にかけて、本作『まどろみバーメイド』のTVドラマ版『まどろみバーメイド ~屋台バーで最高の一杯を。~』がテレビ東京系列で放映された。脚本は池田千尋と古川豪が務めている。キャストは、月川雪を木竜麻生、伊吹騎帆を玄理、陽乃崎日代子を八木アリサが演じている。

登場人物・キャラクター

月川 雪 (つきかわ ゆき)

東京都内で神出鬼没の屋台バー「SATELLITE」を営むバーメイドの若い女性。黒のセミロングヘアを一つにまとめており、小柄な体型で、胸が大きい。何事にも動じない性格で、つねに穏やかで落ち着いている。一方でややマイペースなところがあり、表情に乏しく何を考えているのかわかりづらい。バーメイドでありながら夜遅くまで起きているのは苦手で、仕事中もぼんやりしたり、うとうとしたりしてしまうことがある。しかしお酒に関しては非常に真摯に向き合い、おいしいお酒を出すために決して妥協することがない。このような人柄から、月川雪の出すお酒を飲んだ人たちは、晴れやかな気持ちになったり、悩みを解決する糸口を見つけたりすることが多い。かつては両親が洋食店「グリーム」を営んでいたが、母親が亡くなったことで閉店。この決断は父親による一方的な判断だったために自暴自棄になり、そのまま実家には帰らず、客の一人だった伊吹騎帆の自宅で暮らすようになった。既存のカクテルをアレンジする「ツイスト」が得意で、バーでは、客の要望に合わせたツイストカクテルを出すことが多い。しかし、以前勤務していた老舗ホテル「エリシオン」では、ツイストが禁じられていたにもかかわらず作っていたため、クビになってしまった過去がある。上森祥子とは幼なじみで、今でも仲がいい。動物が大好きで、時間があるときは鳥の鳴きまねをして、本物の鳥がどれだけ集まってくるかの遊びをしている。身長は152センチ。

伊吹 騎帆 (いぶき きほ)

月川雪の同居人で、老舗五つ星ホテル「エリシオンホテル東京」内のバー「エリシオン」のバーメイドを務める若い女性。役職はセカンドチーフバーテンダー。焦げ茶色のショートヘアで、勝ち気で凛とした印象の美形。バースプーンでカクテルを攪拌する「ステア」が得意で、音を立てずにステアできることから「ミスサイレンス」の異名を持つ。まじめで細やかな性格の堅物で、少し乱暴な男口調で話す。雪、陽乃崎日代子と暮らす家は自分の持ち家であるため、大家として二人には厳しく指導しており、日代子には小姑扱いされている。父親がバーテンダーで、子供の頃からさまざまな技術を教わって育つ。しかし、父親のちゃらちゃらした性格が原因で母親が家を出ていき、父親が蒸発してからは、一人で高校を卒業してアルバイトしながら生活していた。そんなある日、アルバイト中にケガをしそうになったところを偶然来店していた余呉に助けられ、バーメイドとしての資質を見込まれ「エリシオン」に誘われる。そして20歳になってから、バーメイドとして働くようになった。上森祥子とは高校時代からの友人で、もともと雪も近所に住んでいた。そのため洋食店「グリーム」があった頃はよく食事していたが、ある冬の日に通りがかったところ、店が閉店しており、さらに店内で誰かが眠っていることに気づく。そこで心配して中に入り、寝ていた雪に声をかけたことがきっかけで親しくなった。また雪の境遇を知り、自宅に住まわせるようになった。

陽乃崎 日代子 (ひのさき ひよこ)

月川雪の同居人で、東京都高円寺にあるバー「STREAM」のバーメイドを務める若い女性。フレアバーテンダーという、ボトルやシェーカー、グラスなどを用いた曲芸的なパフォーマンスをしながら、オリジナルカクテルを提供する仕事に就いている。また、実家は愛知県にある「ブランドショップ ヒノサキ」を経営している。四姉妹の末っ子で、一番上の姉の陽乃崎伊須香からは「ピーちゃん」と呼ばれている。焦げ茶色のボブヘアで、胸が大きくスタイル抜群。それに加えて明るく積極的で物おじしない性格であるため、男性から非常に人気がある。しかし、周囲の女性からは誤解や嫉妬を受けることが多く、雪と伊吹騎帆に出会うまでは、同性の友人がいなかった。バーメイドになる前は幼稚園の先生をしていたが、同僚や子供の母親との関係がうまくいかず退職してしまう。幼い頃から何不自由ない暮らしを送ってきたものの、優秀な姉たちに見下されて育ち、いつしか自分が優れているのは容姿だけだと思い込むようになってしまう。それでも明るく振る舞っていたが、幼稚園を退職して今後どうするか悩んでいた際に偶然雪に出会って親しくなる。これがきっかけで騎帆の家で暮らすようになり、バーメイドとなった。

上森 祥子 (うえもり しょうこ)

月川雪の幼なじみで、実家の修理会社「なんでも修理工房 うえもり」で働く若い女性。黒のストレートロングヘアで眼鏡を掛けている。セクシーな見た目で非常に胸が大きい。明るく穏やかな性格で、ややのんびりとした口調で話す。技術者としての腕は確かで手ぎわがよく、会社に持ち込まれた故障したものを次々と修理している。屋台バー「SATELLITE」の屋台も上森祥子が作った。実家には最近離婚したのを機に戻ってきており、従業員たちとも仲がいい。自分がスタイルがよくセクシーなことを自覚しており、男性から性的な目線を向けられても気にせず軽くいなしている。自分の下着姿や露出度高めの姿を自分で撮影する趣味がある。雪とは子供の頃から非常に仲がよく、人にそっと寄り添う雪の心優しい人柄に、何度も救われている。そのため、雪のことは妹同然に思っており、あまりファッションに興味のない雪に服を買ってあげたり、自分で選んだ服を着せたりしている。伊吹騎帆とは高校時代からの友人で、いっしょにかつて月川家で経営していた洋食店「グリーム」に行ったこともある。お酒は好きで雪に作ってもらうこともあるが、少し飲むとすぐに寝てしまう。

アシュレイ・フー

東京都にあるバー「アヴァロン」で、バーメイドを務める若い中国人女性。シャノン・フーの姉で、シャノンと二人一組のバーメイド「蛇」として活動している。以前は香港にある鰂魚涌(クォーリーベイ)の「モンスターマンション」と呼ばれる住居にシャノンと二人で暮らしていたが、日本に招聘されてからは高層マンションで暮らしている。深緑色の腰まで伸ばしたストレートロングヘアで、ほっそりとした体型の持ち主。「蛇」という異名は、シェイカーを振るうときに軌道が蛇のような形を描くことからつけられた。アシュレイ・フー自身の容姿も、どこか蛇のようなしなやかな雰囲気を持つ。言葉は広東語と英語を話せるが日本語はしゃべれないため、日本人と接するときは日本語を話せるシャノンか、英語のわかる月川雪に通訳してもらうことが多い。男性のような口調で話し、やや近寄りがたい印象を与えるが面倒見のよい心優しい性格の持ち主。特にシャノンとは仲がよく、過保護になるあまりストーカー行為に及んでしまうことがある。ホテルバーテンダーとして成功するまでは、苦しい経済状況の中、シャノンと二人で露店で働いていた。この頃にシャノンがレシピを考えて味を調整し、アシュレイがシェイクを完成させるという「蛇」のスタイルを確立させた。これが評判となり、香港No.1のバーテンダーの名を欲しいままにするが、シェイク担当の自分だけが有名になったことで、「蛇」は一人であると誤解されていた。ある時、競技会でシャノンが考案した味が古臭いと酷評されてしまう。これに激怒し、審査員に暴力を振るったことで、一度は引退して隠遁生活を送っていた。そんな中、雪と剣堂寅雄に出会って彼らの誘いに乗って来日した。男女問わずふくよかな体型の人が好きで、シャノンには瘦せないでほしいと願っている。そのためシャノンのダイエットの邪魔をしては怒られており、この嗜好から、ぽっちゃりしている神代祐樹にも非常に甘い。

シャノン・フー

東京都にあるバー「アヴァロン」で、バーメイドを務める若い中国人女性。アシュレイ・フーの妹で、アシュレイと二人一組のバーメイド「蛇」として活動している。以前は香港にある鰂魚涌(クォーリーベイ)の「モンスターマンション」と呼ばれる住居に、アシュレイと二人で暮らしていたが、日本に招聘されてからは高層マンションで暮らしている。亜麻色の胸の下まで伸ばしたロングヘアで、非常に胸が大きい。ややぽっちゃりとした体型でかわいらしい印象を与える。太眉で、鼻の周りにはそばかすがいくつかある。中国人ながら、友人の祖母が日本人であったことから日本語に接する機会が多く、日本語も堪能。明るくおっとりした心優しい性格ながら、やや天然気味でアシュレイにいつも心配されている。ホテルバーテンダーとして成功するまでは、苦しい経済状況の中、アシュレイと二人で露店で働いていた。この頃にシャノン・フー自身がレシピを考えて味を調整し、アシュレイがシェイクして完成させるという「蛇」のスタイルを確立させた。これが評判となり、アシュレイ一人が有名になっていく中、彼女を支えてレシピの考案を続けていたが、ある競技会で味が古臭いと酷評されてしまう。これにアシュレイが激怒し、暴力事件を起こしたことで、一度は引退して隠遁生活を送っていた。また、この件を自分のせいだととらえ、思い悩んでいる。そんなある日、月川雪と剣堂寅雄に出会って彼らの誘いに乗って来日した。自分の体型を気にしており、ダイエットをしているが、ふくよかな体型が好みのアシュレイにいつも邪魔されている。

若尾 みちる (わかお みちる)

伊吹騎帆の後輩で、東京都にある老舗五つ星ホテル「エリシオンホテル東京」内のバー「エリシオン」で働く若い女性。案内係(グリーター)を務めている。すでに「エリシオン」で一年ほど勤め、将来的にはバーメイドを目指しているが、未だに案内係であることに強い劣等感を抱いている。黒髪をショートボブヘアにしており、小柄な体型で、目が細いために目を閉じているように見える。気弱で後ろ向きな性格のため、店で思うような働きができていない。また自分の容姿に自信が持てず、自らを地味な存在だと認識している。ある日「エリシオンホテル東京」の近くのコンサート会場で人気歌手の引退コンサートがあり、終演後「エリシオン」に押し寄せた客たちの前で何度もミスを繰り返し、自信を喪失してしまう。これによって一度は退職も考えるが、騎帆と月川雪に励まされ、この時に業務指導を受けたことで元気を取り戻した。地味だと自称しているが服装にはこだわりを持っており、派手な柄や色を好む。ストレスが溜まるとピアスホールを開けてしまう癖があり、耳はピアスホールだらけになっている。お酒を飲むと泣き上戸になる。

海神 志鶴 (わだつみ しづる)

伊吹騎帆の同期で、東京都にある老舗五つ星ホテル「エリシオンホテル東京」内のバー「エリシオン」のバーメイドを務める若い女性。バーに異動してくる前は、レストランで働いていた。額を見せたワンレングスのショートボブヘアで、左目尻にほくろが一つある。けだるくセクシーな雰囲気を漂わせている。入社時から高い実力を示し、特にワイン全般に造詣が深く、騎帆が同期一と認める存在だった。しかし、やがて手を抜くことを覚えてしまい、適当に働くようになったある日、「エリシオンホテル東京」の近くのコンサート会場で人気歌手の引退コンサートがあり、その客が終演後「エリシオン」に押し寄せる大混雑が起きる。この時にヘルプとして入り、その手腕を再評価されるようになる。これがきっかけで、バーへと異動した。同性愛者で、恋人の真絵にはとことん甘い。

早馬 明 (そうま あきら)

伊吹騎帆の上司で、東京都にある老舗五つ星ホテル「エリシオンホテル東京」内のバー「エリシオン」の支配人を務める中年男性。ショートヘアをオールバックにしており、近寄りがたい印象を与える。伝統を重んじて、基本に忠実な「エリシオン」の方針を非常に大切にしている。そのため、過去に月川雪が無断でツイスト(アレンジ)カクテルを客に提供した際には、好評だったが雪のいないときは同じ味を提供できないとの理由で彼女を解雇した。理香という娘がいるが、仕事に忙しいためになかなかいっしょに遊べずにいる。

余呉 (よご)

伊吹騎帆の上司で、東京都にある老舗五つ星ホテル「エリシオンホテル東京」内のバー「エリシオン」のチーフバーテンダーを務める老齢な男性。黒髪短髪をオールバックにして、前髪の一部が白くなっている。穏やかな性格で物腰柔らかく、面倒見がいいために周囲から非常に慕われている。かつて、レストランで客と従業員として出会った騎帆のバーテンダーとしての資質を見抜いて「エリシオン」のスタッフに誘った。そのため、騎帆にとっては恩人に当たり、もう一人の父親と言っていいほどの人物。バーテンダーとしての実力も高く「エリシオン」の方針を守り、基本に忠実な業務を行っている。しかし最近は体調を崩しており、休むことや早退することが多くなっている。そこで退職を決意するが、最後の大きな仕事として選んだテレビ出演で、砕明寺に利用されてしまう。

人見 柊 (ひとみ しゅう)

陽乃崎日代子の上司で、バー「STREAM」の店長を務める中年男性。フレアバーテンダーで、仕事柄つねに体を鍛えており、引き締まった体型をしている。髪をオールバックにした容姿は男性的だが、異性には関心がなく、リラックスした場ではオネエ口調で話すこともある。厳しくも面倒見のよい性格で、日代子のこともなんだかんだで気にかけている。日代子が愛知県名古屋の実家に無理やり連れ戻されそうになった際も、月川雪たちの協力のもと、陽乃崎伊須香たちとテレビ通話で交渉を行った。また「STREAM」のオーナーであり、あこがれの存在である宗方が目をかけている日代子に嫉妬してしまうこともある。

陽乃崎 伊須香 (ひのさき いすか)

愛知県名古屋市にある歯科医院「陽乃崎歯科クリニック」の歯科医を務める若い女性。陽乃崎日代子の姉で、陽乃崎四姉妹の長女。焦げ茶色の肩まで伸ばしたボブヘアで、自意識が非常に高い。明るく陽気に振る舞っているが、無意識に他人を見下す傲慢な性格をしている。特に日代子に関しては、日常的に小馬鹿にした態度を取っていた。実家の「ブランドショップ ヒノサキ」の経営が悪化していることを知り、これといった仕事をしていない、独身の日代子を神代グループの御曹司である神代祐樹と結婚させようと考えている。そこである日、妹の陽乃崎杙奈と陽乃崎嗣実を連れて東京に向かい、日代子を無理やり連れ戻して祐樹とお見合いをさせようとする。バーメイドの日代子を含めて水商売全般を見下しており、フレアバーテンダーのパフォーマンスを「お手玉」呼ばわりして、仕事だとは思っていない。歯科医院は夫といっしょに経営しているが、得意先は「ブランドショップ ヒノサキ」関連の人たちばかりで、親の七光りなしでは経営が難しいことを理解している。そのため、日代子と祐樹の結婚に固執している。

陽乃崎 杙奈 (ひのさき くいな)

愛知県名古屋市にある私立八又(やつまた)高校で教師を務める若い女性。陽乃崎日代子の姉で、陽乃崎四姉妹の次女。胸の高さまで伸ばした焦げ茶色の髪を巻き髪ロングヘアにしている。セクシーで、自分の容姿とキャリアに絶対の自信を持つ傲慢な性格をしている。自分で責任を取ることを嫌がり、その場の雰囲気を読んで行動する日和見主義者。そのため、いつもかわいらしく愛想よく振る舞ってはいるものの、本質的には自分のことしか考えていない。実家の「ブランドショップ ヒノサキ」の経営が悪化していることを知り、これを解消するためにも神代グループとのつながりを持つことが重要だと理解している。しかし、陽乃崎杙奈自身が神代グループの御曹司の神代祐樹と結婚する考えはなく、日代子が代わりに結婚すればいいと考えている。そこである日、姉の陽乃崎伊須香と妹の陽乃崎嗣実と共に東京へ向かい、日代子を無理やり連れ戻して祐樹とお見合いをさせようとする。私立八又高校は名門校だが、この高校で自らがほどよい立場を維持できているのは、実家が寄付金を出しているからだと理解しているため、日代子と祐樹の結婚に固執している。男性全般を見下しており、自分が色目を使えばどんな男性でも手玉に取れると思っている。人見柊に対してもこの態度で接するが、冷たくあしらわれてしまう。

陽乃崎 嗣実 (ひのさき つぐみ)

愛知県名古屋市で建築デザイナーとして働く若い女性。陽乃崎日代子の姉で、陽乃崎四姉妹の三女。両目が隠れるほどに前髪を伸ばし、セミロングヘアを一本の三つ編みにしてまとめている。クールビューティながら、やや不愛想なところがある。無口でぶっきらぼうな性格ながら、姉妹の中では比較的日代子に歩み寄ろうとしている。実家である「ブランドショップ ヒノサキ」の経営が悪化していることを知り、これを解消するためには神代グループとのつながりを持つことが重要だと理解している。しかし、陽乃崎嗣実自身は既婚者であるため、神代グループの御曹司の神代祐樹とは結婚することはできず、祐樹の結婚相手には日代子が適任だと考えている。そこである日、姉の陽乃崎伊須香と陽乃崎杙奈と共に東京へ向かい、日代子を無理やり連れ戻して祐樹とお見合いをさせようとする。だが、その過程で日代子の気持ちを知り、日代子の最後のステージとなるかもしれない杉並区民祭を見届けようとした。夫婦で建築デザイナーを営んでおり、得意先は「ブランドショップ ヒノサキ」関連の人たちばかりで、親の七光りなしでは経営が難しいことを理解している。しかしこの現状に疑問を感じており、杉並区民祭終了後は契約を解消して、ヒノサキ関連の客に頼らない経営を決意し、会社も愛知県から東京都に移した。

神代 祐樹 (かみしろ ゆうき)

愛知県名古屋市にある企業、神代グループの御曹司でもある若い男性。刈り上げた短髪で、小柄なぽっちゃりとした体型をしている。顔立ちもかわいらしいため、実年齢よりも若く見える。生まじめで穏やかな性格で、育ちがよく懐も深い。ある日、陽乃崎日代子と見合いをすることになる。日代子のバーメイドとしての仕事にも関心を持ち、結果的に陽乃崎家とバー「STREAM」の問題に巻き込まれても、人見柊の提案どおりに杉並区民祭が終わるまで日代子を見守った。お見合いが破談になっても、なお日代子を思い続けている。趣味はスカイスポーツ。

生方 麟 (うぶかた りん)

洋菓子店「パティスリー ライブラ」を経営しているパティシエールの若い女性。生方操の妹でもある。亜麻色の髪をウルフショートヘアにしており、眼鏡を掛けている。明るく人懐っこい性格ながら、どこか底知れぬ雰囲気を漂わせている。三重県志摩地方の出身で、三重の方言で話す。ワールド・スイーツ・コンペティション日本大会で優勝したこともある有名パティシエール。興味のあることはとことん追求する研究者気質で、並はずれた味覚を生かして、つねによりおいしいお菓子を作ろうと研鑽を積んでいる。しかし、常人離れしたセンスと集中力を持つがゆえに、周囲に無意識のうちにプレッシャーを与えたり、劣等感を抱かせたりしている。そのため、生方麟自身にはまったくそのつもりはないが、かかわった人間を次々業界から引退させるため、危険人物として知られている。「パティスリー ライブラ」で学生時代からアルバイトを始め、少しずつ認められていった結果、東京都に店を構えるのを機に操の共同経営者となった。しかし、ワールド・スイーツ・コンペティション優勝後に突如操が引退し、その理由がわからずに悩んでいる。現在は店を畳んでキッチンカーで日本中を放浪しながら、操にもう一度やる気を出させるお菓子を作るためのパートナーを探していた。そんなある日、杉並区民祭に参加して月川雪に関心を持ち、操に会いに行ってほしいと頼み込む。操のことを慕っているが、ワールド・スイーツ・コンペティション日本大会優勝後に操が突然姿を消したため、世界大会は棄権せざるを得なくなってしまう。そのため操に、おいしいお菓子を食べさせてやる気を取り戻させ、復職してもらうことを「復讐」と呼んでいる。

生方 操 (うぶかた みさお)

三重県志摩地方で海女をしている若い女性で、生方麟の姉。元パティシエールで、かつては洋菓子店「パティスリー ライブラ」を麟と共同経営していた。腰まで伸ばしたワンレングスのストレートロングヘアで、たれ目で太眉の落ち着いた人物。昔からお菓子作りが得意で、20代前半で「パティスリー ライブラ」を立ち上げる。その後は当時アルバイトだった麟と協力しながら店を大きくし、東京都に出店する際に麟を共同経営者として迎えた。その後、麟と共にワールド・スイーツ・コンペティション日本大会で優勝するが、世界大会が控えている中で突如引退し、麟には地元に戻るとしか言わずに姿を消してしまう。しかしこれは、麟の並はずれた才能を間近で見ているうちに自らに限界を感じ、麟の足を引っ張ったり、お菓子そのものを嫌いになったりする前に引退を決意したことが理由だった。現在は三重県で海女として暮らしているが、そこへ麟が月川雪を伴って現れ、二人の作ったお菓子とお酒を振る舞われることになる。「パティスリー ライブラ」のお菓子では、フロマージュが最も好き。

砕明寺 (さいみょうじ)

東京都の銀座にあるバー「メテオ」でオーナー兼バーテンダーを務める若い男性。刈り上げの短髪をオールバックにして、後ろ髪は少し立てている。ギラギラした目つきで野心にあふれていて、現在の日本のバーの在り方に疑問を持っており、もっと若い人にとってバーを身近な存在に変えていくべきだと考えている。バーテンダーとしての技術やカクテルの工夫はもちろん、SNSを駆使して店を宣伝し、銀座の新たなバーの聖地にして、砕明寺自身はその王に君臨しようとたくらんでいる。そのためには他人を利用することもいとわず、偶然知り合った月川雪の開発中のカクテルレシピを盗んだり、テレビ番組でわざと余呉に恥をかかせて一人だけ目立とうとしたりした。このようなやり口が周囲の怒りを買い、バーテンダー対決番組「BARMAN PLATINUM」で「エリシオン」の面々と対決することになる。スローロリスを飼っている。

剣堂 寅雄 (けんどう とらお)

会社員の中年男性。役職は課長で、東京都にあるホテル「アヴァロン東京」に入るテナントの仲介を担当している。オールバックの撫で付け髪で、瘦せた体型をしている。頰はこけて目の下はくぼんでいるが、仕事へのエネルギーに満ちあふれている。仕事熱心で生まじめな性格で、お酒全般に造詣が深い。しかしその一方で、バーは大人の男性のたしなみだという古い考えを持っている。そんなある日、偶然月川雪の店を発見し、雪の技量を試すつもりで難題を吹っかけたが、これを雪が華麗にクリアしたことで、彼女に強い関心を持つようになる。そこで、上層部から「蛇」の日本招聘を命じられた際は、雪に協力を依頼した。妻帯者で娘が一人いる。

青柳 辰哉 (あおやぎ たつや)

バイオリニストの男性。ふだんはフランスで暮らしており、年齢は30歳。刈り上げショートヘアで、やや不遜な印象を与える。かつては天才少年として注目されていたが、最近はコンサートチケットの売り上げも芳しくなく、青柳辰哉自身もスランプに陥っていた。そのため自暴自棄となり、月川雪と出会った時は、ぼさぼさの髪に無精ひげを生やした、みすぼらしい姿になっていた。本質的には努力家で実直な性格ながら、恥ずかしがってこれを隠してしまう天邪鬼なところがある。ある日、凱旋公演のために来日するが、酔っぱらって道に倒れていたところを雪に発見され、そのまま雪の屋台バーで飲むことになる。しかし体調を案じた雪から強いお酒は止められ、代わりに「トム&ジェリー」というホットカクテルを勧められる。このカクテルの中に、苦手な卵が入っていたがおいしく飲めたこと、トム&ジェリーの考案者であるジェリー・トーマスも一見エリートのように見えて実は悩みの多い人生だったことを知り、考えを改める。これをきっかけに、バイオリニストとしても調子を取り戻していく。

木下 優 (きのした ゆう)

とある弁当工場で働く若い女性。山形県出身で、言葉になまりがあることを気にしている。素朴でかわいらしく、セミロングヘアを二本の三つ編みにしてまとめている。明るく人懐っこい性格だが、少々見えっ張りでがんばりすぎてしまうところがある。そのため、木下優自身の名前の優は「優秀」の「優」だと自分を鼓舞しながら日々努力を重ねているが、本当は「優しい」の「優」が名前の由来である。母子家庭で育ち、母親とは非常に仲がよかったが、母親が病死したことを機に上京した。現在の勤め先である弁当工場で働くようになるが思うように仕事がうまくいかず、さらにある日、男性職員から強姦されそうになる。これに深く傷つき、月川雪に母親が生前好んで飲んでいた「なみだのウイスキー」と呼ばれるお酒を飲ませてほしいと頼む。

バンブー

月川雪と伊吹騎帆の家で飼っている豚。ある日雪の屋台バーに突然現れ、そのまま家までついて来てしまったため、飼うことになった。「バンブー」というカクテルに強い関心を示したことから、「バンブー」と名づけられた。お風呂が大好きで、誰かが入浴しているとよく浴室に入ってくる。泳ぎを得意としている。

書誌情報

まどろみバーメイド 14巻 芳文社〈芳文社コミックス〉

第11巻

(2022-06-16発行、 978-4832239203)

第12巻

(2022-12-15発行、 978-4832239609)

第13巻

(2023-06-15発行、 978-4832203020)

第14巻

(2023-12-14発行、 978-4832203518)

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