めんへら侍

めんへら侍

時は元禄13年。戦国時代も過去の出来事となり、時代は「武断」から「文治」へと移り変わる中、豊かな市民は娯楽を求め、芝居や屋台、銭湯、音曲といったさまざまな大衆文化が花開いていた。そんな時代に、名門旗本の家に生まれて父親の厳しい叱責を受けて育ち、自己否定の塊と化した若い侍・左門の姿を描く時代劇ラブコメディ。「ヤングアニマル」2021年22号から掲載の作品。

正式名称
めんへら侍
ふりがな
めんへらざむらい
原作者
あかほり さとる
漫画
ジャンル
時代劇
レーベル
ヤングアニマルコミックス(白泉社)
巻数
既刊2巻
関連商品
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あらすじ

貧乏長屋のキレ者サムライ

長屋の自室でマイナス思考にとらわれ、一睡もできないまま左門は朝を迎えた。切腹したい衝動を抑えながら、左門は行きつけの茶屋・梅香屋の看板娘であるお蜜との触れ手(握手会)だけを希望に梅香屋へ向かう。今日初めに言葉を交わす相手が、お蜜であれば楽しく過ごせるというゲン担ぎを自らに課した左門は、打ち水に濡れながらも無言を貫いていた。やっとのことで梅香屋に着いた左門は、お蜜と触れ手をするためには美人画を購入しなければならないことを知る。左門は必死の形相で声を出さずに、店の親父に美人画の購入と触れ手を申し込む。そしてお蜜との触れ手を想像し、左門は鼻血を吹き出してしまう。店の親父だけでなく、来店していた客たちからも明らかな不審者に見える左門だったが、実物のお蜜を前にして感動の涙と目を輝かせていた。しかし早く触れ手を終わらせたい店の親父から、リミット5秒間のカウントが早々に始まる。自らの手汗を気にした左門は着物で手を拭うものの、来る途中にかかった水や埃で余計に手が汚れてしまう。せめて一言言葉を交わそうとするものの、完全に左門を不審者として認識している店の親父がカウントを早め、触れ手の時間が終わってしまう。なにもできずに握手会を終え、生きる意味を失った左門は梅香屋の近くの地べたに倒れて茫然自失となる。握手会も終わり、梅香屋が通常営業に戻った頃、無宿人たち(ヤクザ者)が因縁をつけてショバ代の要求にやって来る。無宿人は店の親父から金を奪うついでにお蜜も連れ去ろうとする。お蜜は握手会から店のそばに打ち捨てられていた左門を見つけ、「たまたま居た侍」として助けを求める。さっき会ったばかりなのに、お蜜からは存在すら覚えてもらえていない事実に左門はさらに絶望して心を閉ざす。女の助けを無視したことで無宿人たちから散々バカにされる左門だったが、無宿人が放った「ヘッポコ侍」という言葉を聞き、父親の鷹松聖山から受けた剣の訓練のトラウマが蘇り、目付きを鋭くさせ、目にも止まらない速さでお蜜を奪還する。さらにすれ違う瞬間に無宿人の頭の髷を切り落とし、圧倒的な力を見せつけて撃退する。しかし、それでも怒りが収まらない左門は、たまたま自分をバカにしただけの無宿人たちを殺害することを心に決め、鬼の形相となっていた。そこで、お蜜が恩人である左門の手を取り名前を訊ねる。すると左門は冷静になり、当初の「お蜜と触れ手で言葉を交わす」という目標を達成できるチャンスに心を躍らせる。

凧祭り

大のお祭り好きの徳川綱吉は「江戸中の祭りに全部参加する」というむちゃな目標を立て、直近で開催される凧祭りへの参加を企てた。凧祭り当日、御城を抜け出す工作を甲斐に手伝ってもらい、綱吉は先々代から使用されている抜道を使って城下へと出る。そして昨晩も不眠に苦しみ、ようやく眠れそうになった左門のもとへ綱吉が訪れる。まったく寝ていない左門を綱吉は無理やりにお供として凧祭りへ同行させる。不満を隠そうとせずに帰りたがる左門に対して、綱吉はお供の対価として南蛮製の「びいどろの湯呑み」を提示する。この湯呑みをお蜜にプレゼントすれば好感度が上がること間違いなし、と綱吉に吹き込まれた左門は、任務に対して前向きになる。祭りの会場ではさまざまな凧が揚がっており、その壮観さに目を奪われる二人だったが、悪党の気配を感じた綱吉は左門にできるだけ高そうな凧を購入するように命じる。凧揚げの経験のない左門は綱吉からやり方を教わり、渋々凧を揚げる。そんな二人に「ツネ吉」と名乗る細目の男が声をかける。初めて凧を揚げたと左門がツネ吉に打ち明けると、ツネ吉は左門の凧の揚げっぷりをベタ褒めする。ツネ吉の提案で左門は「喧嘩凧」の勝負をすることになり、結果、ツネ吉の仲間に勝利した左門は掛け金を受け取り、ツネ吉から「天才」と評されて持ち上げられる。すっかり気をよくした左門は、ツネ吉からのレートアップに応じ、喧嘩凧に興じる。そうして気がつけば身ぐるみを剥がされた左門は、自己嫌悪に陥っていた。いっしょにいた綱吉からツネ吉のイカサマの種明かしをされ、知っていながら悪党を見極めるために囮に使われた事実を知り、左門はさらにやさぐれる。そして綱吉は、町民を守るために小悪党を成敗することを決め、左門が買った凧に細工を施す。

登場人物・キャラクター

主人公

旗本筆頭である鷹松家の当主を務める青年。物語開始時の年齢は22歳。幼名は「長松」で、本名は「鷹松左衛門尉伊綱」。養子に出された甲斐の実兄。武士であるにもかかわらず頭を剃らず総髪で、一見して現代のオタク... 関連ページ:左門

徳川 綱吉 (とくがわ つなよし)

江戸幕府五代目征夷大将軍を務める男性。戦国時代から徳川家が築き上げた現在の平和な世の中を保つことに尽力している。最も寵愛している側室はお伝の方。大のお祭り好きで、よく御城を抜け出してお忍びで江戸の町に繰り出している。御城を抜け出す際の裏工作は、甲斐に手伝わせている。過去にお忍びで城下へ出掛けた時、悪漢に襲われそうになるものの、たまたま通りがかった左門に助けられ、さらに左門から自らの正体を見破られたことで、江戸の町へ繰り出す際のお供は左門となった。気さくな性格で、御城では「上様」とみんなから呼ばれているが、お忍びで町へ繰り出した際には「綱さん」と呼ばせている。武芸よりも遊びに精通しており、いざ勝負となれば、相手のイカサマや仕掛けを見抜き、さらにその上をいくほど達者である。「生類憐みの令」を発令したのは徳川綱吉だとされているが、実は左門が発案者である。

甲斐 (かい)

左門の実弟で、父親は鷹松聖山。物語開始時の年齢は18歳。幼名は「千代松」で、本名は「松平甲斐守紀綱」。5歳の時に松平甲斐守家へ養子に出され、最年少で老中にまで出世した実力者。端正な顔立ちと柔和な表情で、一見礼儀正しい好青年だが、極度のブラコン。左門をイジっていいのは自分だけだと考えている。鷹松家に生まれるものの武芸の才能はなく、幼少期はずっと家族と過ごしていた左門を羨んでいたが、左門からは剣の稽古を免除されていることを逆に羨ましがられていた。松平甲斐守家の家督を継いだことで、松平甲斐守家が従えている忍者集団も先代から引き継ぎ、江戸幕府の諜報活動を一手に引き受けている。また自らの趣味として、左門に不忍を見張らせ、兄の動向を報告させている。

お蜜 (おみつ)

左門が通う茶屋「梅香屋」で看板娘を務める少女。純真な性格とかわいらしい顔立ちのため、男性客からの人気が非常に高い。その人気は単独で触れ手の会(握手会)を開催できるほどで、左門が今一番推している茶屋娘。無宿人(ヤクザ者)に連れ去られそうな際に左門に助けられ、彼のことが気になっている。しかし思いを寄せる男性がおり、左門のことは江戸で二番目に好き。純粋な性格からウソがつけず、お蜜自身のファンに対しても空気が読めない発言をすることがある。

胡蝶 (こちょう)

吉原の大見世「赤堀」で太夫を務める女性。もともとは水茶屋で看板娘を務めており、かつて左門が推していた看板娘だった。吉原に身を堕としたと左門が聞きつけ、胡蝶を捜し出したことをきっかけに左門へ思いを寄せるようになる。家庭の事情や借金などで吉原へ身を堕とす娘が多い時代に、男女の秘め事に興味がありすぎて茶屋の看板娘から自ら遊女へ転身した特殊な経歴を持つ。清純な女子が好きな左門からは避けられているが、側室の座を狙っているため、吉原の男衆を使って左門をよく拉致している。春画の収集が趣味。

龍姫 (たつひめ)

加賀100万石大名である前田家の姫。美しい容姿と武士としての気概を兼ね備え、一見すれば「武家の嫁」としては申し分ないが、気の強さから相手に対する圧が非常に強い。かつて32万石大名「松平家」に嫁いでいたが、些細なことから元夫である越後少将と左門が諍いを起こし、左門が誤って送ってしまった「決闘状」に臆した松平家に見切りをつけ、龍姫から離縁を言い渡した。武士として強い男性を好み、物事の筋を通す実直な性格の持ち主。その性格から左門との決闘に元夫の代わりに自ら出陣し、手紙を誤って送ったことを謝罪にきた左門に一方的に戦いを挑む。しかし返り討ちにされ、左門の圧倒的な強さに惚れ込み、離縁直後に婚姻を申し込む。以降、左門の正妻の座を狙っている。左門の父親である鷹松聖山とは脳筋同士気が合い、鷹松家の嫁として歓迎されている。

鷹松 聖山 (たかまつ せいざん)

左門と甲斐の父親。筆頭旗本鷹松家の前当主を務めたのち、左門に当主を譲り渡して隠居の身にある。ギョロリとした目と立派な髭が特徴。染という妻がいたが、現在は亡くなったため、独り身である。作中最強クラスの剣の腕前を持つ。太平の世でありながら、戦が生業と公言していたことから、たとえ大名といえどむげには扱えない存在となっている。鷹松聖山自身が住まう屋敷には道場があり、そこで左門を幼少期からしごき鍛えていた。しかし、幼子にとってあまりにも厳しすぎる訓練と叱責により、左門がメンヘラ化した一番の原因である。自らの性癖と性格から、出戻り(バツイチ)である龍姫こそ左門の嫁にふさわしいと考えており、左門の意見を無視して縁談を勧めようとしている。聖山自身が戦う理由をつけるため、左門が申し込まれた決闘でもわざと負ける(殺される)ように指示するほどの戦闘狂。ひそかにまた戦乱の世になってほしいと物騒なことを望んでいる。

堀部 安兵衛 (ほりべ やすべえ)

播州赤穂浅野家中を務める男性。元禄7年に起きた「高田馬場の決闘」で活躍して武勇を馳せた。当時は「山中安兵衛」と名乗っており、18人も斬ったとされているが、実際は三~四人だという説もある。筋骨隆々の大男で、声が大きく髷が矢印のような形になっている。吉原で客と揉めていた胡蝶を、左門が助けた場面を見て、左門の強さに興味を持ち、決闘を申し込んだ。鷹松聖山と同様に戦闘狂で、強い者との戦いを熱望している。相手が寝ていても決闘を申し込んだり、左門を倒したら聖山と戦う段取りを勝手に約束したりと、相手の都合を考えない自分勝手な性格をしている。剣の腕前もかなりのものだが、左門からは「そこそこ」と評されている。

不忍 (しのばず)

忍者集団に所属する甲斐と同世代の少女。松平甲斐守家に仕えており、忍のリーダー格である不知火を父親に持つ。本名は「沙月」だが、幼少期に松平甲斐守家に養子に迎えられた甲斐に仕えるようになってから「不忍」と名乗るようになった。屋敷から抜け出した甲斐と左門を尾行していた際に、左門に気取られたことから、忍者として不名誉な「不忍」という名前を付けられた経緯がある。もう10年以上甲斐に仕えており、彼からの信頼も厚い。現在は左門の動向を逐一甲斐に報告する任務に就いている。任務としては監視だけだが、左門にそれとなく危機を知らせるなど、命じられたこと以外の任務もこなしている。

クレジット

書誌情報

めんへら侍 2巻 白泉社〈ヤングアニマルコミックス〉

第2巻

(2022-08-29発行、 978-4592164074)

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