アトモスフィア

アトモスフィア

現代と思しき日本が舞台のSF作品。一人称小説のように、主人公であるわたしのモノローグによって物語が進行する部分と、わたしではなく警部によって進行する部分で構成されている。「分身現象」と呼ばれる、自分の分身が本人と入れ替わる事件をきっかけに、わたしは分身によって生活を追われ、やがて世界が崩壊していくさまを見届けることになる。なお、登場人物に固有名はなく人称代名詞で記述され、分身は本体と区別するために人称代名詞に傍点を付けて記す文体が特徴。

正式名称
アトモスフィア
ふりがな
あともすふぃあ
作者
ジャンル
その他SF・ファンタジー
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概要・あらすじ

現代と思われる日本が舞台。「分身現象」と呼ばれる原因不明の事件が突如として発生し、武蔵野市に住む主人公のわたしは、自分の分身によって彼氏とも別れ、日常の生活を失ってしまう。同時にわたし以外の人間にも次々と分身は出現し、分身を排除するために組織された守る会わたしも所属することになる。

警察も事件捜査に乗り出すが、現象の原因は一切掴むことができない。分身現象がますます加速していく中、守る会の活動に巻き込まれたわたしは、やがて世界の秩序が崩壊していくさまを見届けることになる。

登場人物・キャラクター

わたし

縁付き眼鏡をかけた、ストレートの黒髪の若い女性。本人の認識では「青春」に該当する年代だが、しばらくバイトもしていない。「赦す」「あらかじめすべてを赦してやってる」が心の中の口癖で、何が起こっても「ふざけるな」と口に出さないと決めている。その理由は、自分が一番ふざけていると思っているため。 武蔵野市の集合住宅の一室で独り暮らししており、キミと呼ぶ彼氏はいるが、彼のことは実は好きでも嫌いでもない。警部から見て好みのタイプであり、本人からも直接「美人」だと伝えられている。

キミ

わたしの彼氏。わたしの自宅に転がり込んでセックスする関係にある。バイトをしているが、学生なのかフリーターなのかは不明。「分身現象」の発生によって、わたしの分身と付き合い、その後はわたしにとっての元カレとなる。わたしからはバカだと思われている。

警部 (けいぶ)

分身現象について捜査している刑事。若い女性の部下がいる。健康に害があるほどの紙巻き煙草の喫煙者。世の中に解明できないものはないと思っていたが、「分身現象」によって考えを変えるようになる。わたしの分身の遺体を見て、好みのタイプだと評していた。ぼさぼさの黒髪で、スーツを着ている。

警部の部下

警部と一緒に「分身現象」の捜査をしている、若い女性。キャラクター名はなく、作中で他の登場人物から呼びかけられることもない。そばかす顔が特徴。髪は明るく、頭の後ろで髪をふたつに結んでいる。服装はスカート。

「守る会」の支部長 (まもるかいのしぶちょう)

守る会武蔵野支部の支部長。彼自身が分身現象の被害者であり、他の被害者たちと連絡を取り合い、小さなグループを作ったのち、同じようなグループと統合されて生まれた守る会の支部長となった。髪は明るく、いつも澄ました表情をしており、分身被害者A子によるとイケメン。わたしが加入する以前の武蔵野支部は、少子化で閉鎖された私立の保育園を買い取り、12人の「分身被害者」で共同生活をしていた。

分身被害者A子 (ぶんしんひがいしゃえーこ)

わたしと同世代らしき、分身被害者の女子高校生。守る会武蔵野支部のメンバーで、A子と同世代の女性はわたしが加入するまでいなかったという。高校に通っていたが、分身に生活を乗っ取られてしまう。楽観的で深く考えない性格であり、わたしからはバカだと思われている。 支部長に好意を持っている。なお、A子の分身の遺体を検めた警察は、外見から「13~18歳」と推測していた。髪は明るく、学校に通っていなくても紐ネクタイの学生服をふだんから着ている。

N崎

眼鏡をかけた年配の男性。わたしがサポートに参加した守る会実行班のリーダー。副リーダーはY田、部下にH岡がいる。興奮しやすい性格で、分身を金属バットで殴り殺す際、大声を出したことでY田とH岡に制止させられていた。

Y田

眼鏡をかけた年配の男性。わたしがサポートに参加した守る会実行班の副リーダー。三人で構成された実行犯メンバーの中では一番の長身。髪型は七三分けの黒髪。

H岡

わたしがサポートに参加した守る会実行班でN崎とY田の支持に従う。三人で構成された実行犯メンバーの中では若い外見の黒髪の男性で、身長は最も低い。

集団・組織

守る会 (まもるかい)

『アトモスフィア』に登場する組織。東京都心に本部があり、武蔵野市、ドイツ、中国などに支部がある。公的に認められた組織ではなく、初期においてその活動の力そのものは小さかった。「分身現象」の被害者が集まって分身を排除(殺害)する活動をしており、その実行グループは実行班と呼ばれている。また、ドイツは分身現象の先進国とされ、ドイツ支部の研究チームが分身発見器の開発に成功する。 この装置を使って「分身」を発見するグループを分身捜査班と呼ぶ。

その他キーワード

分身発見器 (ぶんしんはっけんき)

対象となる人間が、本人であれば陰性、分身であれば陽性に区別することができる。守る会のドイツ支部が開発したのち軽量化を行い、中国支部が量産した。最初に開発された装置は被験者の側頭部や手首にケーブルを接触させるタイプであり、健康器具を装って通りがかりの人を測定していたが、軽量化された量産型は被験者に触れることなくボタンひとつで陽性と陰性を区別できるとされている。

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