アル・カラルの遺産

アル・カラルの遺産

異星人との遭遇、ファーストコンタクトを描くSF作品。作中あとがきによると、これはシリーズの第一章にあたる作品で、物語は第二章となる『アルカライラ』に続く。「リュウ」vol.33(1985年1月号)からvol.37(1985年9月号)にかけて連載された作品。

正式名称
アル・カラルの遺産
ふりがな
ある からるのいさん
作者
ジャンル
その他SF・ファンタジー
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概要・あらすじ

弱小映像制作会社の求人広告を見てやって来た、年若い女性のシャナ・Tは、約180年前に発見された、金目人のものとされる異星文明の遺跡群の調査に強い興味を抱いていた。だが、遺跡は最初に発見した「ハルツ・ブーゲン」の名を冠した財団が調査をほとんど独占し、そこから生じる利権は財団に帰属しているため、一般に公開される情報は限られている。

そんな状況において、調査の済んだ遺跡内を紹介する、冒険心を煽るような遺跡案内映像作成が、シャナの随行する撮影クルーの主な仕事内容だった。その撮影スタッフを乗せる船のパイロットは、ハーマーと名乗る黒髪の若い男性。彼は小さな遺跡でブーゲン財団の調査隊が取りこぼしたお宝を転売して稼いでいるのだ、とシャナに語る。

撮影の合間に1人で遺跡を見に行ったシャナの後を追ったハーマーは、何もないはずの遺跡の壁から、ディスクプレートを取り出している彼女の姿を目撃する。そしてハーマーに対しシャナは、自身の行動の目的が、金目人の言葉を正確にしゃべれるようになるためのものだと語るのだった。

登場人物・キャラクター

シャナ・T (しゃなてぃー)

金髪に青い目の若い女性。金目人のものとされている遺跡群に強い関心を示している。ブーゲン財団が調査した遺跡において、その取りこぼしの装置やら金属やらを拾って稼いでいると語るハーマーに対し、「某所の遺跡にはまだお宝が残っている」と、一般に知られていないような情報を披露。また、自身は異星人だと語る不思議な印象の女性。 体が弱く無理ができないと語っているが、無重力アイランドでは、大の男を数人蹴り飛ばす大立ち回りを演じるなど、何かと謎が多い。

ハーマー

黒髪の若い男性。シャナ・Tたち撮影スタッフを乗せた船のパイロット。腕っぷしには自信があるが、女子供には弱いと自称している。見せびらかすように左腕に付けていた癒着ペットについて、シャナに何の役に立つのかと問われ、「かわいいだけじゃだめなのか」と拗ねて見せるような感情豊かな人物。若さに似合わず立派な船を所有しており、「リディア」と名付けている。

R・ハナギ博士

ひげを蓄えた、初老の貫禄ある紳士。遺跡研究の権威で、特に遺跡文字の解読に力を入れている。シャナ・Tが遺跡で見つけたディスクプレートと引き換えに、発見された異星人・金目人の言葉に関する情報を提供した。ブーゲン財団に研究のため捕らえられた金目人の子供のトリューンに同情し、本心では解放すべきだと考えている。 だが、ブーゲン財団に逆らうと研究が続けられなくなるため、不本意ながらトリューンを介して異星人の言語の研究を進めている。

ヴィ

黒髪を肩のあたりで切りそろえた若い女性。ハーマーとシャナ・Tとは以前から面識があるが、シャナについては、何らかの形でブーゲン財団と関わりがあるのだ、という程度しか知らない。医療の知識を持ち併せ、かつては医者の真似事をしていたこともある。現在はシャナの体調管理に関わっている。

トリューン

濃い肌の色と縦長の瞳孔が特徴的な金目人の子供。研究のためブーゲン財団に捕えられた。実験体として扱われることに抵抗し、非人道的な扱いをしてきた研究者を、言葉だけで操って自死に追い込むなど、特殊な力を持つ。テンゲ宇宙港から財団施設への輸送中に逃げ出し、シャナ・Tに出会う。自身と同じく「トリューン」という名を持つ、トカゲのような寄生生物「ダフ」が右肩に癒着している。

ゼク・イセドウ (ぜくいせどう)

顔半分を覆うようなサングラスをかけた長髪の青年。金目人の研究を行うブーゲン財団の調査団を任されている。ゼク・イセドウの乗る船はGo-7498-2星の衛星軌道上にあり、他にも複数の研究者がそこに在籍している。金目人との速やかなファーストコンタクトのための言語研究を目的に、R・ハナギ博士を招いた。 金目人の言葉に触れることが、時として危険を招くことが判明した際には、博士の身を案じて駆けつけるなど、個人的にハナギ博士を気にかけている。

集団・組織

ブーゲン財団 (ぶーげんざいだん)

「ハルツ・ブーゲン」という人物が、異星文明遺跡を発見したのを起源とする財団。脱走したトリューンを追跡し、捕えようとしたブーゲン財団の人間が、トリューンを匿っていると密告のあったハーマーに対して発砲するなど、強引な一面があり、そのやり口から、世間では「異星人の遺跡で金儲けをしてきた連中」と評されている。

場所

Go-7498-2星

ブーゲン財団がヒト型の異星知的生命体の金目人を見つけた星。平均気圧990ミリバール、平均重力0.92G。人工的な電波は捕えられていないが、遺跡のような建造物が星の各所に見受けられる。金目人たちが遺跡文明の末裔だとすれば、最盛期に比べて現在は文明がずいぶん退行していると考えられている。

無重力アイランド (むじゅうりょくあいらんど)

宇宙都市テンゲをはじめとした、人々が生活する宇宙都市は「シティ」と呼ばれるが、そのシティに住むのに必要となる市民権を持たない人々たちが暮らしている、宇宙都市テンゲの近くの宙域にある場所。ヴィが構えている店もここにある。禁制品を扱いおおっぴらに呼び込みをしているような環境であり、まっとうな市民が来るところではないとされている。

その他キーワード

金目人 (きんめじん)

Go-7498-2星に住むヒト型の異星知的生命体。発見したブーゲン財団により、金目人と呼称されるようになった。会話を聞いただけで、翻訳機もなしに人類の言葉を理解できるほどの高い知性を持っている。だが、当初は金目人を数えるのに「~匹」と呼ぶなど、下等な動物並みの扱いをしていたため、R・ハナギ博士が対話を試みようとするまでは、その知性に気付く者はいなかった。

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