ウル

ウル

戦場で敵を殺す兵器として育てられた軍用犬ウルは、ベトナム戦争で数々の功績を残し英雄となる。任務が終わり、日本の飼い主のもとに帰るウルだが、ふとしたことから家を飛び出し、人間を傷つけ殺してしまう。ウルは、自身を兵器として創り上げた人間の手によって追われる身となる。戦場で「生きた兵器」として讃えられた犬が、環境が変わったために殺人犬として追われる悲劇と、逃亡先で出会う様々な人間とウルの交流を描いた作品。

正式名称
ウル
ふりがな
うる
作者
ジャンル
 
戦争
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概要・あらすじ

生きた殺人兵器として訓練され育てられた軍用犬ウル。ベトナム戦争で多くの敵を殺し、アメリカ軍の英雄と讃えられたウルは、1972年、その任務を終え、東京立川の飼い主のもとに戻された。歓迎を受けるウルだったが、戦場での生活とあまりにかけ離れた平和な環境に馴染めないでいた。ひょんなことから飼い主の激しい叱責を受け、その指を鳴らす音に反射的に反応、飼い主の手を噛んでしまう。

その後、家を飛び出して立川米軍基地に向かったウルは、基地のパトロールにライフルを向けられ、ついに殺人を犯す。英雄犬ウルは殺人犬として追われる身となり、全国に指名手配されるのだった。

登場人物・キャラクター

ウル

シェパード型の軍用犬。毛色は青みがかった灰色。黒い首輪に星型の鋲と「WOLL」の文字がある。1968年12月、北海道奥知床の犬飼博士の研究所で、知力や体力などあらゆる点で普通の犬に勝る「超犬」として生まれた。その後、東京都立川市チャールズ・ターナー宅を経て、ベトナム戦争下では過酷な訓練を受け、殺人兵器として活躍。 1972年、ベトナムから帰還してチャールズ宅に戻るが、戦争の後遺症から飼い主にけがを負わせてしまい脱走。その後も正当防衛ながら、人間を殺してしまい、1000万円の賞金が懸った殺人犬として全国に指名手配される。

チャールズ・ターナー

ウルの飼い主。妻のキミコの反対を押し切ってベトナム戦争から帰還したウルを引き取る。餌をめぐって他の飼い犬シーザーを傷つけてしまったウルを激しく責めた際、ウルに噛みつかれ、米軍基地にウルを返す決意をする。

クリス、ジョー、ベン

ベトナムで軍用犬ウルの世話をしていた3人組。除隊後アメリカに戻るが、戦争ノイローゼにかかる。東京立川米軍基地に呼ばれ、殺人犬として追われる身となったウルを呼び寄せるよう依頼される。

熊村 寅吉 (くまむら とらきち)

立川保健所の野犬係。秋田県マタギ村出身の18歳。通称トラクマ。立川でウルと対峙した時はその迫力に腰を抜かしてしまうが、富士近くであった時は、動物催眠を使いウルを捕える。しかし、ウルが病気のクロのために人里に出て医者を探していると知り、見逃してやる。

天野 麻利耶 (あまの まりや)

大財閥ビッグ・アマノ・コンツェルンの会長・天野彰二郎の養女。狂声病という奇病を患う。記憶を失っているが、北海道の奥知床の研究所で暮らしていた犬飼博士の娘。超犬として生まれたウルの世話をしていた。聴覚が異常に優れた少女で、犬にしか聞こえない高周波を出すことができた。成犬となったウルと4年ぶりに再会するが、記憶喪失のためウルの事は分らず、漠然と懐かしい気持ちを抱くのみだった。

犬飼博士 (いぬかいはかせ)

知能が高くあらゆる点で普通の犬の能力を超える「超犬」の研究に30年を費やした科学者。北海道奥知床の研究所で、ついに研究が成功し、ウルをはじめ5匹の超犬を誕生させる。娘のマリヤ、助手のユダノフと暮らしていたが、ある日ヘリコプターでやってきた正体不明の男たちに襲われ「超犬」の冷凍精子を奪われたうえ、殺されてしまう。

ユダノフ

犬飼博士の助手。博士を裏切って、謎の男たちに「超犬」とその冷凍精子を渡す。ビッグ・アマノ・コンツェルンの会長・天野彰二郎宅に出入りし、養女マリヤの主治医をつとめる。再びマリヤのもとに現れたウルの存在が邪魔になり、飼い犬のドーベルマンである・ファントムを使ってウルを殺そうとする。

クロ

『ウル』に登場する犬。小さく黒い野良犬。ウルが東京都立川にいたときにまとめた野良犬グループの一員。ウルのことを兄貴と慕い、いつも一緒について歩く。小さいながら勇敢で、ウルの窮地をたびたび救う。

ファントム

『ウル』に登場するドーベルマン。ユダノフの愛犬。毒針を塗った首輪を付け、ウルを襲う。ウルと同等の戦闘力を持ち、毒針でウルを窮地に立たせる。

犬神博士 (いぬがみはかせ)

50年の間に、警察犬や暗殺犬、スパイ犬などあらゆる犬を創り出し、調教した科学者。ウルの抹殺を依頼され、魔犬ダマーや巨犬ビッグ・ダンを差し向ける。

ダマー

『ウル』に登場する犬。犬種はワイマラナー。犬神博士によって生み出された暗殺専門の犬で魔犬と呼ばれる。声帯を切り取られているため、声を立てずに敵に忍び寄り、一撃でのどを噛み切るよう仕込まれている。

ビッグ・ダン

『ウル』に登場する犬。犬種はウルフ・ハウンドで体高1.2m、体重80kgの巨犬。犬神博士によって生み出されたサイボーグ犬で目がテレビカメラになっていてビッグ・ダンが見たものを映像として送ることができる。魔犬ダマーによって傷ついたウルを捕えることに成功する。

その他キーワード

狂声病 (きょうせいびょう)

『ウル』に登場する奇病。何かの拍子に驚いたりすると、甲高い声を出し続け、やがて人間の耳には聞こえない高周波に達する奇病。超音を出し続けると、息が止まって死に至る。天野麻利耶が患う。

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