サラディナーサ

サラディナーサ

大航海時代のヨーロッパを舞台に、無敵の傭兵艦隊を率いる宿命を背負った姫提督、サラディナーサ・デ・フロンテーラの成長と戦いを綴った歴史ロマン漫画。実際の歴史や実在の人物と、架空の人物・設定を巧みに織り交ぜ、サラディナーサの激動の半生をドラマティックに描いた河惣益巳の代表作品。

正式名称
サラディナーサ
ふりがな
さらでぃなーさ
作者
ジャンル
西洋史
 
その他歴史・時代
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概要・あらすじ

時は16世紀、後に大航海時代と呼ばれる時代、太陽の沈まない国と称され、大いに栄えたスペイン王国。その繁栄は、フロンテーラ一族と呼ばれる屈強な傭兵艦隊によって支えられていた。一族の当主であるレオン・エウゼビオ・デ・フロンテーラの一人娘として生を受けたサラディナーサ・デ・フロンテーラは、やがて母のマリア・ルイーサ・アンナ・シャルロッテから受け継いだ類稀なる美貌と金髪を有する美姫へと成長。

しかし、そのことがマリア・ルイーサ・アンナ・シャルロッテに横恋慕していたスペイン国王のフェリペ2世の情念を刺激してしまう。ほどなくしてフェリペ2世は、母の面影を色濃く残すサラディナーサを手元に置きたい一心から、彼女の父のレオンを殺害。

だが、サラディナーサの身体には数多の海賊たちに恐れられた父の血が流れており、国王の命に唯々諾々と従うか弱い乙女ではなかった。父の死報を受け取ったサラディナーサは、フェリペ2世の思惑とは裏腹に、一族を率いて即座にスペイン王国を離脱。そして、スペイン国籍の船舶や港を襲撃しつつ、フェリペ2世への生涯をかけた復讐戦に身を投じるのだった。

登場人物・キャラクター

サラディナーサ・デ・フロンテーラ (さらでぃなーさでふろんてーら)

レオン・エウゼビオ・デ・フロンテーラとマリア・ルイーサ・アンナ・シャルロッテのただ1人の子供で、将来、フロンテーラ一族の惣領となることを宿命づけられた女性。母親譲りの見事な金髪と美貌から黄金のサーラと称されるが、幼少の頃より船上で多くを過ごし、一族の荒くれ者たちに囲まれて育ったせいか、繊細で清楚可憐な母とは対照的に、快活で誇り高く、大胆で覇気に富んだ女傑へと成長していく。 大海賊だった父親をも唸らせる海戦術の天才であり、砲撃戦を主体とした戦い方をいち早く確立。スペインの大提督サンタ・クルズ侯の艦隊を完膚なきまでに叩きのめすなど、目覚ましい戦果を挙げ続け、姫提督(レディ・アドミラル)の異名を得た。 レオン・エウゼビオ・デ・フロンテーラが、スペイン国王のフェリペ2世に殺されると、第64代フロンテーラ家当主に就任。それまで協力関係にあったスペイン王国に敵対し、スペイン国籍の船舶や港に徹敵的な海賊行為を繰り返す。だが、強大なスペイン王国に痛烈な打撃を与えるには、国家の後ろ盾が不可欠と考え、イングランドへと身を寄せるように。 そして、表立ってスペインと対立したがらないエリザベス1世を強引に巻き込みながら、スペインとの闘争を続けていった。

レオン・エウゼビオ・デ・フロンテーラ (れおんえうぜびおでふろんてーら)

サラディナーサ・デ・フロンテーラの実父で、フロンテーラ一族を率いる第63代フロンテーラ家当主。独眼の黒獅子、アンダルシアの黒獅子の異名をとる大海賊で、長い黒髪と隻眼が特徴の美男子である。彼が率いるフロンテーラ一族は、長年スペイン王国と契約関係にあり、スペイン海軍の片翼として活躍し、その見返りとしてフロンテーラ公爵位と領土を安堵されていた。 加えて、レオンが13歳のとき、フロンテーラ一族とスペイン王国の絆を強めたいフェリペ2世の仲介により、フェリペ2世の親戚であるハプスブルク家の姫、マリア・ルイーサ・アンナ・シャルロッテと結婚し、王家の姻戚となる。 これは政略的な結婚だったが、2人はやがて愛し合うようになり、やがてサラディナーサ・デ・フロンテーラが誕生した。だが、マリアが身籠ったのと同時期に、かねてより彼女を慕っていたフェリペ2世が彼女を凌辱する事件が勃発(そのためフェリペ2世はサーラを自分の落胤だと信じて、度々拐かそうとするようになる)。 妻がフェリペ2世に辱められるのを目撃したレオンは、その場でフェリペ2世を殺害しようとする。これは未遂に終わるが、以後、両者の間に修復不可能な憎悪が生まれた。

マリア・ルイーサ・アンナ・シャルロッテ (まりあるいーさあんなしゃるろって)

フェリペ2世と神聖ローマ皇帝の従妹に当たるハプスブルク家の姫。触れるだけで壊れてしまいそうな繊細な美貌と、滴り落ちる黄金のごとき髪を有する美姫だが、過保護に育てられたせいか精神・肉体ともにか弱く、誰かに依存しなければ生きていけないタイプの女性である。元々は、フェリペ2世の愛人だったが、フロンテーラ一族とスペイン王国の結びつきを強めるため、フェリペ2世の命令で3歳年下のレオン・エウゼビオ・デ・フロンテーラに嫁ぐ。 当初、マリアはフェリペ2世のもとを離れて別の男性のもとへ行くことを嫌がったが(ドン・ファン・デ・アウストリアは、このときの彼女を見かけたことで、彼女に恋をするようになる)、レオンの無垢な愛を受けるにつれ、やがて彼を真に愛するようになった。 だが、彼女を手放したことを惜しんだフェリペ2世によって凌辱されて以後、王の手から逃れるため夫の船に同乗するようになる。もともと体の弱かった彼女にとって、海での生活は大きな負担となり、サラディナーサ・デ・フロンテーラの出産と共に死去した。

フェリペ2世 (ふぇりぺにせい)

スペイン王国の黄金時代を築いた実在の人物をモデルにしているが、作中の行動はほとんどがフィクションである。本作では、冷徹で計算高く、内務に長けた君主だが、マリア・ルイーサ・アンナ・シャルロッテとその子サラディナーサ・デ・フロンテーラに関することになると、どうにも抑えが効かず判断を誤ってしまう人物として描写される。 契約でスペイン王国の傭兵となっているフロンテーラ一族を王家に取り込むため、自分の従妹で愛人だったマリア・ルイーサ・アンナ・シャルロッテをレオン・エウゼビオ・デ・フロンテーラと結婚させる。だが、結局彼女を忘れられず、人妻となった彼女を無理やり犯してフロンテーラ一族との間に決定的な亀裂を生じさせてしまった。 また彼女を犯した時期と、彼女がサラディナーサ・デ・フロンテーラを身籠った時期が近かったことから、サーラを自分の子供だと思い込み、そちらにも執着するように。その後、サーラの誘拐未遂、レオンの投獄と殺害に至り、フロンテーラ一族と完全に決裂。フェリペ2世は、父の仇としてサーラに生涯狙われるようになる。

ドン・ファン・デ・アウストリア (どんふぁんであうすとりあ)

フェリペ2世の父、カルロス1世の庶子で、フェリペ2世の異母弟。フェリペ2世同様、実在の人物だが、作中の人物像には多分にフィクションが盛り込まれている。作中のドン・ファン・デ・アウストリアは、絵に描いたような貴公子で人望厚く、物腰は上品で穏やか、それでいて剣も巧みな人物。 そんな彼は、若き日に見かけたマリア・ルイーサ・アンナ・シャルロッテに淡い初恋をしており、母の面影を色濃く残すサラディナーサ・デ・フロンテーラ(当時10歳)に出会ったとき、即座に求婚した。レオン・エウゼビオ・デ・フロンテーラは、仇敵の弟で、自分と同じ歳の男の求婚に驚くが、彼が本気だと悟り、婚約を承認。 その後、2人の男は終生の親友となる。結局、サーラとの婚約は果たされなかったが、彼は自分のすべてを注いで彼女に尽くした。また、彼自身は兄フェリペ2世に高い忠誠心を抱いていたが、刺客を送られたため、死を装ってネーデルランド(オランダ)に亡命。レーヴェ・フォン・ブロンベルグという偽名で反乱軍に加担する。

マシュー・リカルド・ドレイク (ましゅーりかるどどれいく)

イングランドの大海賊、フランシス・ドレイクとメキシコ人女性の間に生まれた混血児。国籍はイングランドだが、海軍士官リカルド・ラ・セレナという偽名でスペイン海軍にスパイとして潜入しており、フェリペ2世からサラディナーサ・デ・フロンテーラの従者役を仰せつかる。 少年時代に偶然出会ったサーラに一目惚れしており、フロンテーラ一族がスペイン王国と決別して以降は、彼女に相応しい男になることを目標に、カリブ海を中心に各地を転戦していた。フロンテーラ一族がイングランドに身を寄せた後は、イングランドとフロンテーラ一族の橋渡し役として奔走。 しかし、母親の国であるメキシコを蔑み、省みないイングランドに嫌気がさし、国を捨ててフロンテーラ一族に加わった。その後は、友人であるドン・ファン・デ・アウストリア(レーヴェ)と共にサーラのために尽くす。剣の腕だけでなく火薬や薬学にも造詣があり、多方面で活躍した。

マウリッツ

スペイン王国に反抗する、ネーデルランド(オランダ)反乱軍の最高司令官、オレンジ公ウィリアム(オラニエ公ウィレムの英語読み)の実子で、父子ともに実在の人物である。作中ではマウリッツとしか表記されないが、正式にはマウリッツ・ファン・ナッサウと言い、父の跡を継いでオランダ独立戦争において多大に貢献した(ただし、作中では少年時代ということもあって、そうした活躍が描かれる場面はない)。 ネーデルランドに亡命したドン・ファン・デ・アウストリアとその友人であるマシュー・リカルド・ドレイクに非常に懐いており、たいていは彼らにくっついて各地を訪れている。また、行動力と好奇心が極めて旺盛で、サラディナーサ・デ・フロンテーラの乗艦にこっそり忍び込んだり、マシュー・リカルド・ドレイクを追ってマドリードへ単身出かけたりしたことも。

エリザベス1世 (えりざべすいっせい)

同時代の実在の人物、エリザベス女王がモデルで、イングランドのためなら卑怯な手を使うことも厭わない現実主義的な君主として描かれている。この当時のイングランドは弱小の新興国に過ぎず、大国スペインと正面から渡り合う力はなかった。それゆえに、エリザベス1世はフロンテーラ一族を欲したが、その力を得てもなお、慎重かつ矢面に立たないよう腐心。 最終的にはサラディナーサ・デ・フロンテーラをフェリペ2世に引き渡すことまでしている。

ソラヤ

レオン・エウゼビオ・デ・フロンテーラの実姉で、鋭い眼光に気高さを宿す黒髪の美熟女。かつてはフロンテーラの黒姫と呼ばれ、艦を率い荒くれ者相手に渡り合う女傑だった。出生と同時に母親を亡くしたサラディナーサ・デ・フロンテーラにとって母親代わりと言える存在であり、フロンテーラ一族の惣領という重責を担う彼女を、常に優しく見守っている。

ドメニコス・テオトコプロス (どめにこすておとこぷろす)

別名エル・グレコという著名なギリシア人画家で、実在する人物である。作中では、サラディナーサ・デ・フロンテーラの肖像画を描いたことで重用され、エル・エスコリアル修道院の装飾画を任された。サーラに対して極めて好意的で、彼女がフェリペ2世に囚われた際には様々な情報を流したり、脱出に手を貸したりなどしている。

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