キメラ

キメラ

破壊と殺戮のためだけに生き、人々に恐れられ、「悪魔の種族」と呼ばれ滅ぼされた種族キマイラ。平穏に暮らす少女リンは、ある事件で自分がキマイラの末裔だと気付く。平和を求める少女の戦いを描く戦慄のネオファンタジー作品。

正式名称
キメラ
ふりがな
きめら
作者
ジャンル
バトル
 
ファンタジー
関連商品
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世界観

街並みや登場する武器などの技術は中世ヨーロッパを思わせるものが多いが、遥か古代の技術として臓器や筋肉などの移植や、一から人間を錬成するテクノロジーなども登場する、オリジナリティ溢れるファンタジー世界である。また、遺伝子のことをこの世界では「血の刻印」と呼んでおり、生物はすべて血の刻印の奴隷に過ぎないのか、抗うことはできるのか、というテーマのエピソードが数多く盛り込まれている。

作品構成

人を傷つけることを恐れて自分の殻に閉じこもってしまった少女リンが、青年タキとの出会いやその後待ち受ける冒険の中で、大切なものを守るため戦い抜く肉体的、精神的な強さを得る成長ストーリーである。メインストーリーとして描かれるリンたちの冒険と並行して大司教マチルダの行動が交互に描かれる形を取っており、2人の出会いに向けてストーリーが進行していく。

あらすじ

プロローグ(1~4巻)

辺境の村ファーブルで父と共に平穏に暮らす1人の少女リンは村民との関係も良好で、何不自由ない幸せな生活を送っていた。ある日ゲイヴォルグ軍に攻め入られ、ファーブルの村人は瞬く間に皆殺しにされてしまう。奇跡的に生き残ったリンは、鎧を着た兵士たちを見て逃げようとするが、父の遺体を目にして、彼女の中で眠っていた悪魔の種族キマイラの力が目を覚まし、正気に戻った時には兵士たちは自らの手で皆殺しにしていた。自分の力を恐れたリンは、更なる辺境で暮らすことを選ぶ。リンが人との関わりを断ち、2年の月日が流れた時、腹を空かせたクレイモア軍の青年タキとの出会いから、リンはクレイモアの孤児院を手伝いながら町で暮らすことを決意する。孤児院での暮らしにも慣れた頃、クレイモアの街がゲイヴォルグ軍の攻撃に遭う。キマイラの力で軍を退けたリンであったが、その正体をクレイモアの人々に知られてしまう。しかし予想とは裏腹に、リンの正体を知った人々の反応は温かいものであった。

こまどり隊編(4巻~)

ゲイヴォルグの首都サラスに向けて出発したリンタキカイルの3名は、ゲイヴォルグの少年部隊「こまどり隊」や、元円卓の騎士団最強の男であるガラハットとの出会いと、シャムシールでの壮絶な死闘を経験する中で心身共に成長していく。一方、ゲイヴォルグの首都、サラスの地にて、キマイラでありながら新たに大司教となった少女マチルダは大司教の身分を隠し、謎の不治の病の患者が隔離される施設「茨の館」で奉仕の日々を送っていた。最高の剣を求めて水都ファルシオンを目指すリンたちに、アルスター街道で謎のキマイラたちが襲い掛かる。人間を滅ぼすためのキマイラによる最後の聖戦が近づいていることを知り、先を急ぐ一行。水都ファルシオンにて、彼らは聖戦が行われるのはまさしくこの地であると知る。キマイラ6人の戦士を迎え撃つため、大風車を守る6人が集い、人類の未来を賭けた戦いが始まった。

メディアミックス

連光寺正による小説版『キメラ 左利きの聖女』『キメラ 燃える瞳の遊女』が集英社から発売されている。この2作品では、原作である『キメラ』と同時間軸における外伝的なエピソードが語られている。

登場人物・キャラクター

リン

伝説の戦闘種族キマイラの末裔の少女。辺境の村で義理の父と共に幸せな暮らしを送っていたが、村を滅ぼされ父を殺められた怒りからキマイラの血に目覚める。自らの力を恐れ人と関わらず暮らしていたが、青年タキとの出会いから徐々に人と関わること、運命を切り開くために戦うことを恐れないようになっていく。滅多に生まれることのない人間とキマイラのハーフ「奇跡の種」であり、キマイラの本能の力と人間の成長する力を持ち合わせる。 心優しく子供の世話や料理、歌などが得意。

タキ

腹を空かせて倒れたところをリンに助けられたことで彼女に恋をし、クレイモアの孤児院にリンを連れて帰った青年。顔に十字の傷を持つキマイラに両親を殺害されており、キマイラ自体を憎んでいたがリンとの出会いにより考えを改める。キマイラであるリンを守れる男になると誓っており、そのためにはいかなる努力も惜しまない。サラスへ向かう旅の途中、疾風のガラハットのもとで修行し、遥か東より伝わる驚異的な脚力を生み出す奥義「烈風脚」を会得して、以降「烈風のタキ」の二つ名を名乗るようになる。 真っすぐで努力家の熱血漢。

ヘレン

クレイモアのソレイユ孤児院を運営する女性。リンが来る以前は、1人で大きな孤児院を切り盛りしていた程の、力強い肝っ玉母さん。孤児院を運営する理由は単なる慈善活動のみではなく、実はカーライア王家の正統継承者である実の息子カイルをゲイヴォルグ軍から守るためである。

カイル

ソレイユ孤児院で暮らす少年。子供たちの中では一番の悪ガキで、よくリンにいたずらをしてからかっているが、その正体は旧カーライア帝国の唯一の正統王位継承者カーライア7世。侵略戦争を続け人々を不幸にするゲイヴォルグに対抗するため、彼を首都サラスまで送り届けることが物語の主軸となる。

アイン

クレイモアを攻めたゲイヴォルグ軍「蒼の騎士団」の1人で、「仕掛けボウガンのアイン」の二つ名を持つ。もともとは敵であったが、実際は争いを好まず、笑顔を愛する優男。戦のことよりもさまざまな仕掛けを考えることに夢中で、彼の発明は超有用なものからガラクタまで多岐に渡る。首都サラスでキマイラであることを隠す大司教マチルダと恋をし、後に主人公たちを繋ぐ重要な役割を担う。

グエン

「蒼の騎士団」団長で通称「仕掛け鎧のグエン」。クレイモアに攻め入った際、リンに行く手を阻まれ一騎打ちに臨み、彼女を追い詰めるがキマイラの力の前に敗れる。元円卓の騎士団でも団長を務めリーダーシップを大いに発揮しており、男気の強さも人一倍である。

グレタ

クレイモアでカイルを襲った改造種の女性。故郷の子供たちのため、実験体となりカイル抹殺の任を受ける。だがカイルに息子の面影を重ねたことで剣が鈍り、リンとタキに敗れ、無理な改造に体が耐え切れず死亡する。

ルドルフ

ゲイヴォルグ軍の技術者で、古き時代の技術が記された文書に唯一アクセスできる謎の人物。古い技術を使いさまざまな人体改造実験を繰り返し、実験体をリンたちに差し向ける。表向きには技術者のトップだが、実質的にゲイヴォルグのすべてを支配している。

マチルダ

先代大司教の直々の指名により大司教の大役を任される事になったキマイラの少女。さまざまな仕打ちやプレッシャーに耐えながらも、常に笑顔を絶やさず大司教マチルダとして人々に奉仕し続ける。リンと同様自分がキマイラであるということを恐れており、滅多なことでは能力を使わない。アインのことを「様」付けで呼び、好意を持っている。

オスカ

ゲイヴォルグ軍の少年部隊「こまどり隊」の隊長。少年とは思えない格闘術と統率力で、大人の兵士相手にも全く引けを取らない戦法を実現する優秀なリーダー。臆病者の証といわれる背中の傷を多く持つが、これは常に仲間全員が見える位置にいるため自らの背後を守らせないためである。戦いが終われば安全な孤児院に移れるという軍の約束が嘘である事を知り、反乱を起こして命を落とす。

ルカ

ゲイヴォルグ軍の「こまどり隊」隊員の少女。リンたち一行を襲撃した際、リンたちが逃げる馬車の中に1人紛れ込んでしまったため、一晩を共にする。これがきっかけで、「こまどり隊」とリンたちの運命が結ばれる。本人も自覚していないが、実はキマイラの末裔であり、オスカの死によってその能力が覚醒する。怒りのままに暴走し、敵を惨殺してしまった自分へのショックにより、一切の記憶を失ってしまう。

ザイン

改造種の馬「グリンガレット」を駆る元円卓の騎士団団員で通称「人馬一体のザイン」。真に強い者に殺されることを求めてゲイヴォルグ軍に加担しているが、リンと戦い説得を受け、以降は自らの信念のために戦うこととなる。後に、ルカや他のこまどり隊員を連れてクレイモアへと向かう。

ガラハット

元円卓の騎士団最強の男で通称「疾風のガラハット」。片足を失い義足であるにも関わらず、遥か東で会得した奥義「超速剣疾風斬」を武器に圧倒的な強さを誇る剣士。人間の限界に常に挑戦しており、その実力はキマイラ相手にも引けを取らないほどである。シャムシールの街でリンたちに出会い、以降彼女たちのことを気に掛けている。高いカリスマ性を持っていて、リンたちの夕飯時によく現れてはただ飯を食らっていくが、その堂々とした雰囲気からか何もとがめられることはなかった。 物語終盤までリンに伝わることはないが、リンの実の父親である。

ナインハルト

「雷光のナインハルト」の異名を持つ改造種。身体から電撃を発することが可能で、その能力と長い鉄製の鎖を組み合わせて戦いリンを苦しめたが、新たな力を得て加勢したタキとリンの共闘により敗れ去る。改造種のエリートを集めた「白の鉄槌五連隊」の1人。

トリガ

改造種のエリートを集めた「白の鉄槌五連隊」の1人で、銃の扱いに特化した改造種。「遠撃ちのトリガ」の異名を持ち、銃を撃つためだけに改造を施された肉体は、右目と右腕だけが肥大し、脳が露出しているなど不気味極まりない。相手の手の届く場所では戦わないという卑怯な戦法でリンを狙うが、助けに来たガラハットの人間の限界を超えた力によって敗れる。

ブルメ

改造種のエリートを集めた「白の鉄槌五連隊」の1人で、「飛燕自在刀のブルメ」と呼ばれる改造種。三方向に分かれた巨大なブーメランの様な武器を使用し、変幻自在な戦いを見せるが、タキとの戦いに勝機が見えなくなり、逃走した。

ビエル

改造種のエリートを集めた「白の鉄槌五連隊」の1人で「超肥大巨躯のビエル」と呼ばれる。二つ名の通りの超巨漢で、人間はもとより改造種の中でもその大きさは群を抜いている。巨大なハンマーで戦うパワータイプ。南部の香辛料で味付けされたカレーのような料理が大好物。

シャーリー

改造種のエリートを集めた「白の鉄槌五連隊」最後の1人。シャムシールでは一言もしゃべらず、両腕がないにも関わらず圧倒的な強さを見せつけたが、リンを殺すことなくその場を去った。その正体はルドルフが完全にゼロから作り出した錬成人間で、キマイラ100人分の死体が使われており、リンが万全な状態であったとしても遠く及ばない程の実力を持つ。

カレン

水の都ファルシオン自衛軍部隊長の女戦士で、タキの幼馴染。相手の意表を突く戦闘術に非常に長けており、人間としては身体能力もトップクラス。「キマイラ6人の戦士」との決戦ではガゼルとの戦いに臨むが、キマイラガゼルの底力に全く対抗出来ず敗れる。初恋の相手タキの事を「たっくん」と呼び、未だに想いは冷めていないようで、リンとは恋のライバルでもある。

エヴァンス

マチルダが茨の館にいる間の護衛として登場した修道騎士。実はキマイラで人間を憎んでいたが、どんなことがあっても笑顔を絶やさないマチルダの優しさに触れ、彼女に恋をして徐々に心を開いていく。だが、館を襲った事件をきっかけに再度人間に絶望し、「キマイラ6人の戦士」の1人となる。ファルシオンではアインと戦い、アインのセットした数々のトラップとの心理戦の末、マチルダが愛した男であるアインだけは信用すると誓う。

ドリス

「キマイラ6人の戦士」の1人。人間に凌辱され続けた暗い過去から人間を心から憎み、自分を絶望の底から救い出したサイファーに心酔している。「奇跡の種」であるリンを妬み激しく嫌悪しており、キマイラ殺しの魔剣クセルスーを使いリンを殺そうとするが、戦いの中で成長する人間の能力も持ち合わせたリンの前に敗れ去る。

ガゼル

「キマイラ6人の戦士」の1人。ロジアの村で4人の子を人間として育てようとしていたところ、子供たちをタキの両親によって毒殺され、怒りのままに彼らを殺した顔に十字の傷を持つ男。子供たちを襲ったような運命を断ち切るためには人間の滅びが必要であると考え、外法によって4人の魂を宿した左腕から炎を出し、それを纏って戦う。ファルシオンの戦いでカレンを相手に圧倒的な強さを見せるが、限界を大きく超えたタキの斬撃により左腕を失い、説得されて戦う意味を失い立ち去った。

アガサ

「キマイラ6人の戦士」の1人で、念力を操る妖術使い(ウィッチクラフト)。最初は鉄のスプーンを曲げたり、軽い予知夢を見たりする程度であった能力を、人間たちによる多くのキマイラを犠牲にした実験により無理やり引き上げられた。この能力は使うごとに体温を奪われてしまう。ファルシオンではマチルダと戦い、途中力を使いすぎ凍傷になったところ、マチルダの温もりに触れ、戦意を喪失する。 それ以降は能力を使い戦いの行く末を見守り、キマイラの生きる理由についての答えを探す。

サイファー

「キマイラ6人の戦士」のリーダーだが、自身はキマイラではない。元は円卓の騎士団の団員で、ガラハットが唯一師と仰いだ男であったが、人間の世に絶望しキマイラ千人の体を移植することで人間を滅ぼす力を得た最強の改造種。聖戦においてガラハットと戦い、ガラハットの無数の剣により一度は敗れたかと思われたが千のキマイラの意志を背負った白き騎士として復活。 リンと対峙した際も迷いが残る彼女を圧倒したが、迷いを断ち切り再度挑んできたリンに敗れる。未来を託せる者を見つけたことで絶望から解放され、ルドルフが最後に仕掛けたすべてを滅ぼす古代兵器を命を賭して破壊した。

シス

「キマイラ6人の戦士」の1人。その生い立ちから参戦の目的、種族まですべてが謎に包まれている。ファルシオンでタキと戦い、他に類を見ない程の圧倒的な戦闘力を見せつけたが、聖戦には最初から興味がないと言い捨てて決着をつけず去っていった。

集団・組織

円卓の騎士団 (えんたくのきしだん)

旧カーライア帝国時代、王に仕えた伝説の騎士団で、「疾風のガラハット」や「人馬一体のザイン」らが所属していた。現在は解散し各所に散ってしまっているが、所属していた者は皆全土に名が知れ渡っている。

その他キーワード

聖戦 (じはーど)

サイファー率いる「キマイラ6人の戦士」が人間を滅亡させキマイラの世を作るために起こした戦い。これに参加したキマイラ6人の戦士はいずれも人間に対する憎しみや暗い過去を持っており、強い信念を持って臨んでいる。ただし、正体が謎に包まれているシスだけは別である。

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