ギルドレ

ギルドレ

朝霧カフカの小説『ギルドレ』のコミカライズ作品。人類を滅亡から救った少年は「世界最弱の救世主(ミニマム・ワン)」と呼ばれたが、人々に希望を与えた直後に姿を消した。それから3年後、人々が救世主の再臨を願う中、記憶を失った少年・神代カイルが現れる。謎の生態兵器「敵(エネミーズ)」と人類の戦いを描いたSFアクション。「ヤングマガジンサード」2019年第6号から2021年第1号にかけて掲載された作品。

正式名称
ギルドレ
ふりがな
ぎるどれ
原作者
朝霧 カフカ
漫画
ジャンル
バトル
関連商品
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あらすじ

世界最弱の救世主(ミニマム・ワン)

3年前、によって、人類軍は絶望的な戦局を迎えていた。ここを抑え切らないと月が地球に落下して人類が滅亡してしまう。だが部隊は全滅し、唯一生き残った来栖龍希は敵に特攻して死ぬつもりだったが、そこに拳銃一丁のみの軽装備の少年が現れる。彼は敵をあっという間に撃破し、来栖のピンチを救うだけでなく、そのまま敵施設を破壊し、月の落下を防ぐことに成功。人類を滅亡から救った少年を、人々は「世界最弱の救世主(ミニマム・ワン)」と呼び、希望を見いだすのだった。ところが、その直後に少年・神代カイルは姿を消してしまう。3年後、南雲かなでの車で目を覚ましたカイルは記憶を失っていた。カイルはヒッチハイクで南雲に拾われたらしいが、車に乗った瞬間に眠ってしまい、記憶喪失になっていたようだった。皆川ニィナと合流し、車を走らせていると、突然街中に敵の襲来を知らせる警報が鳴り響く。三人は猛スピードで車を走らせ、C級の装蟲種(ワバグ)を振り切るが、A+級の巨獣種(ジガン)・天狗鼠バルバネスに遭遇してしまう。トンネルに逃げ込むものの、天狗鼠は出口で待ち構えており、車ごと嚙み砕かれたと思った瞬間、トンネルの中にいる状態に時間が巻き戻っていた。それを認識しているのはカイルだけのようで、慌てて運転中の南雲の腕を取りハンドルを切らせる。間一髪で天狗鼠の一撃を回避した三人は、辛うじて命の危機を脱する。違和感を覚えた南雲はカイルに、なぜ天狗鼠が待ち伏せていることがわかったのか詰め寄るものの、カイル自身も無意識に発動させた能力であったため、戸惑っていた。3年前に救世主が姿を消したのは記憶を失ったからという噂もあり、南雲はカイルが救世主ではないかと考える。

怪物園(ダンジョン)

アラヤシキ史上最悪の「思考する地獄」が収容されている「怪物園」と呼ばれる施設の第10階層で実験をしていた、研究者が突然亡くなった。死の直前に、前日は「思考する地獄」と対話したと語っていた彼は、「見えざるものが来る」「私は外へ出る」という二つの言葉を聞いたと同僚に伝えた。しかし、突然死した研究者のバイタルログによると、心拍が停止したのは前日の朝9時と記録されていた。その時間は怪物園の第10階層で実験をしていた時間であり、謎の多い死であった。一方、能力の解析のため、1回目の黛ロヴの実験を受けた神代カイルは、南雲かなでに緊急召集される。皆川ニィナと共に話を聞くと、居住区で民間人12人が殺害されたが、「何」がみんなを殺したかがわからないらしく、現場のカメラやセンサーをチェックするものの、何も情報は得られなかった。しかしカイルは先日、隕石が落ちてきた場所の定点カメラを見て、そこから出てきた巨大なカマキリ型の装蟲種(ワバグ)が一匹減っていることに気づく。隕石という大仰な攻撃をしてきた割に数時間で制圧された敵に違和感を抱いていたカイルは、大仰な攻撃こそが、この「透明なカマキリ」を送り込むための囮(おとり)だったと推測する。黛から「センサーをかいくぐるほどの透明化技術は前例がない」と告げられ、南雲はアラヤシキの存亡にかかわるレベル4の非常事態だと認識を改める。全部隊に召集がかかるものの、カマキリの襲撃は続き、犠牲者は32人にも上っていた。襲撃をに遭ったと伝達を受けたギルドレは、怪物園の前に急行する。研究員が襲われ、セキュリティゲートの奥に退避したものの生死は不明とのことだった。ギルドレはもちろん現場に集まった者たちにもゲートを開ける権限がなく立ち往生していると、夜見原セロが到着する。夜見原はゲートを開け、集まった者たちを引き連れて怪物園の中に入る。夜見原はカイルたちに怪物園の危険性を説明し、目的は研究員の救出であると念を押す。一行は中を進むと既に死んでいる研究員を発見するが、第2のゲートへ向かって引きずったような血痕が続いており、カマキリに襲撃されたケガ人が第2のゲートの中へ逃げ込んだようだった。救出のためにゲートを開けようとする夜見原を制し、カイルは死体の斬傷の不自然さを伝えるものの、出血の多さから一刻を争う事態だと判断した夜見原は、聞く耳を持たず第2のゲートを開けてしまう。開いたゲートの中には血痕は続いていなかった。血痕は偽装で、カマキリがここにいるとカイルが叫ぶと同時に襲撃され、救出に集まった者たちは次々と斬りつけられていく。混乱の中、カマキリを見失った一行はさらに奥へと進むが、カイルは血痕を偽装したことからカマキリの目的は怪物園の奥に部隊をおびき寄せることだと判断する。カイルはこれを自身の能力の有用性を示すチャンスだと考えるが、夜見原から人命第一の軍事作戦であると再び諭される。そんな中、空調を操作して霧を発生させ、透明化したカマキリの位置を把握して討伐する作戦が決行される。違和感だけでケガ人を見捨てる判断を下すカイルが信用できず、夜見原はギルドレに待機命令を出し、ほかの部隊を連れて討伐に向かう。そしてカマキリを発見し、網をかけてから一斉に攻撃して撃破に成功する。作戦の成功を確認した瞬間、拘束されて収容されているはずの敵が襲いかかる。各々ドローンで応戦しようとするが、なぜか接続が切られて身を守る手段を断たれた部隊は、なす術なく殺害されていく。

関連作品

小説

本作『ギルドレ』は、朝霧カフカの小説『ギルドレ』を原作としている。講談社から刊行され、イラストはカラスマタスクが担当している。

登場人物・キャラクター

神代 カイル (かみしろ かいる)

3年前に敵の月落下作戦から、たった一人で地球を守った少年。人類を救ったことと、軽装で華奢な体型から人々には「世界最弱の救世主(ミニマム・ワン)」と呼ばれ、希望の象徴として語られている。現在は記憶喪失になっており、失踪していた3年間の行動は不明。「無数の起こりうる未来の中から世界を選ぶ」能力を持ち、黛ロヴからはその能力を「波動関数収束」と定義されている。神代カイル自身が世界そのものであり、今後どんな敵が現れようとも危機に陥ることはないとされている。南雲かなでに拾われ、移動の道中で敵に襲撃を受けた際に能力を無意識に使い、認識する。そして敵を殲滅(せんめつ)するためにアラヤシキにとどまる決意をする。来栖龍希に能力の有用性を証明し、能力の調査に全面協力することを条件にギルドレに配属された。また、戦闘時はみんなが神代の能力に依存しないように、救世主であることを口外しない約束もさせられている。もし、これらの条件を違えた場合、来栖によって首に埋め込まれた毒が起動して死ぬことになる。観察力に優れ、未来を選択できることから、つねに冷静に下す判断に間違いはないが、夜見原セロからは「冷酷」と評されている。

南雲 かなで (なぐも かなで)

人類統合機関「M.U(ムウ)」で特務保護官を務めている女性。ロングヘアで眼鏡をかけた巨乳の持ち主。階級は准尉。のんびりした性格で、ふだんは緊張感がまったくない。動物を拾う癖があり、家中捨て犬だらけになっている。ヒッチハイクしていた神代カイルも拾ってきた。皆川ニィナの親代わりとなり、ニィナの義肢のメンテナンスのため、週に1回病院への送迎をしている。「しっかりした大人」を自称しているが、自分が好きなことを始めるとやるべきことをすぐ忘れる子供のような一面を持つ。車が好きで運転技術が非常に高い。ニィナを我が子のようにかわいがっており、敵に襲撃を受けた時も自ら囮(おとり)になって逃がそうとするほど愛情が深い。ぼんやりしているように見えて、実は洞察力が鋭く、カイルが能力を使った時も違和感に気づき、彼こそが3年前に姿を消した「世界最弱の救世主(ミニマム・ワン)」ではないかと疑念を持つ。

皆川 ニィナ (みながわ にぃな)

両腕および両脚が義肢の少女。ギルドレに所属している。黒髪でかわいらしい見た目ながら、口が悪く素直になれないところがある。義肢のメンテナンスのため、週1回の通院が義務付けられており、その際は南雲かなでの車で送り迎えをしてもらっている。母親と共に研究者だった父親を敵に殺された過去があり、当時いっしょにいた皆川ニィナ自身も手足を嚙まれて毒に冒され、助かるためには四肢を切り落とすしかなかった。父親は死ぬ寸前までニィナを助けるため、四肢の切断と義肢の移植手術を施して息絶えた。最後の時間を自分のために使ってくれたことに感謝し、父親の遺言に従い、残してくれた義肢で敵を倒すことを決意した。この高性能義肢から父親の意思を感じ、気に入っている。信用していない人間の前で親の話をされることを嫌い、出会ってすぐの神代カイルにもきつく当たっていた。現在は南雲が親代わりを務めているが、溺愛されている南雲に対してもきつく当たっている。しかし心の中では信頼を寄せ、敵に襲撃された際に囮(おとり)となった南雲を救出し、感謝の気持ちを打ち明けた。義肢には「緊急自衛モード」が搭載されており、生命の危機に陥った際には自動反撃システムが起動する。それはニィナ自身にも制御できず、「暴走状態」となる。しかも体にかかる負荷が大きく暴走後はしばらく動けなくなるうえに、他部隊からは暴走時に限り射殺の許可が下りている。そのため、夜見原セロからは危険人物として認識されている。

来栖 龍希 (くるす りゅうき)

人類統合機関「M.U(ムウ)」の将校で、特殊装甲歩兵部で隊長を務めている男性。階級は大佐。部下への厳しい態度から「鬼来栖」と称されているが、心の底から部下のことを大切に思っている。3年前、敵の「月落下作戦」で最前線で戦った部隊を率いていた。部下が全滅し、絶体絶命の危機を神代カイルに助けられる。「世界最弱の救世主(ミニマム・ワン)」と対峙した唯一の人物である。救世主はアラヤシキで防衛に就く者たちへの毒だと考えており、救世主にすべてを任せることで都市の防衛力が崩壊する事態を恐れている。記憶喪失となったカイルと再会し、初めは姿を似せた偽物だと考えていたが、カイルの能力を目の当たりにして救世主であると認めた。カイルに対し、自分が救世主であることを口外しないこと、能力の解析に全面協力することを条件にギルドレに配属させた。カイルの首に埋め込まれた毒は来栖龍希が打ち込んだもので、カイルが条件を違えた場合は容赦なく殺すつもりである。

黛 ロヴ (まゆずみ ろゔ)

人類統合機関「M.U(ムウ)」の生残戦略研究所に勤める男性研究者。神代カイルの能力の解析を担当している。カイルを実験動物扱いし、大事に酷使すると宣言した。研究に対しても真摯に取り組む姿勢を南雲かなでから引かれている。物置のような研究室で日頃過ごしており、ダーツでよく遊んでいる。しかし、ほとんどが壁や床、来栖龍希に当たるほどで、腕前は壊滅的。小学生の工作のようなスーパーダーツ自動投げマシン「ぶっ飛び達人ダーツの達人くん」を作り、20回試してみたものの的にかすりもしなかったが、カイルの能力の実験には役立った。科学者として、既にある現象から一定のルールを拾い上げるというスタンスで研究に臨んでおり、どんな超常現象も物理法則の一つとして証明することに命を懸けている。皆川ニィナの義肢を8本に増やそうと画策し、スキあらば口説きにやって来るため、ニィナからは「変人」と評されている。

夜見原 セロ (よみはら せろ)

人類統合機関「M.U(ムウ)」の紫紺分隊に所属する、エースパイロットを務める少年。「スウォーム」という集団型の小型のウォードローンをあやつって戦う。夜見原セロが率いる紫紺分隊は、分隊ランキングにおいて2位と優秀。ギルドレを危険視し、特に皆川ニィナの暴走に意識を向けて厳しく接し、事あるごとに殺そうとしている。階級が自分より低いほかの部隊の者を見下す態度を取ることが多い。軍人として人命を最優先に考えており、「怪物園」で研究員救出作戦の際に、違和感だけでケガ人を見殺しにしようとした神代カイルを信頼できず嫌っている。非常時に限り、極秘施設である怪物園のゲートを開ける権限を与えられている。

集団・組織

ギルドレ

人類統合機関「M.U(ムウ)」に属する部隊の一つ。もともとは「443分隊」という懲罰部隊だったが、現在では危険人物の収容所と化している。問題ある要監視者で構成された分隊であり、ギルドレの隊員が危険行動を取った場合、ほかの部隊には射殺の許可が下りている。皆川ニィナは義肢の暴走のためにギルドレに所属し、神代カイルも要監視者として配属された。ほかにもメンバーはいたが、厳重監禁や都市追放されている。戦場では無能な味方が最も危険なため、いつの間にか「有罪の子供(ギルティチルドレン)」と呼ばれ、部隊名として定着した。パイロット分隊のランキングでも最下位の常連である。

場所

アラヤシキ

人類統合機関「M.U(ムウ)」があやつる戦闘要塞都市。街全体が敵に対抗する人類最後の防衛拠点である。人口は約155万人で、その中の3割の人間が都市防衛の仕事に従事している。都市が円形で構成され、中心部に向かうほど重要機密が保管された施設が立ち並んでいる。居住区は外壁に近い部分に設けられ、警察が存在せず、皆川ニィナのように交番の存在すら知らない者も多い。「電磁加速砲列車(リニアレールカノン)」という電車が走っており、砲台を装備した装甲列車となっている。中心部には生残戦略附属学園という育成機関があり、一人いれば戦況をひっくり返すことができるといわれる「ウォードローンパイロット」を育成している。感覚的にウォードローンをあやつるために、16歳未満の子供に手術を施して訓練している。パイロット分隊は任務実績や模擬戦でランキングが決められ、夜見原セロ率いる紫紺分隊は2位に位置している。今までに捕らえた敵を87体も拘束収容している「怪物園」と呼ばれる施設があるが、その存在は秘匿され、セキュリティゲートは権限を持つ限られた者しか開けることができない。

その他キーワード

(えねみーず)

人類を滅ぼすためだけに行動している正体不明の生体兵器群。さまざまな種類が存在し、蜘蛛やカマキリのような虫型の装蟲種(ワバグ)と、ハリネズミや怪獣のような動物型の巨獣種(ジガン)などに分類される。また、強さによってC級からS級までランクが分かれており、「天狗鼠バルバネス」のように名前入り(ネームド)の個体も存在する。アラヤシキ史上、最大の被害を与えた敵は「思考する地獄」と呼ばれ、敵収容施設「怪物園」の第10階層に拘束されている。ただやみくもに暴れているわけではなく、知能が高い個体も存在し、粒子加速施設を乗っ取ってワームホールを生成し、月と地球の重力圏を接触させて衝突させようともくろむ者もいる。組織を編成して人類を迎え撃つ種もいれば、作戦行動として追っ手を罠に嵌め、自らの目的遂行のために利用する種もいる。

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