シャバの「普通」は難しい

シャバの「普通」は難しい

中村颯希の小説『シャバの「普通」は難しい』のコミカライズ作品。監獄育ちの少女エルマは、恩赦によって出獄し、王宮付き侍女となった。しかし、常識はずれの能力を持った彼女の行動は、王宮のみならず俗世をゆるがすほどの衝撃を与える。「普通」を知らない訳アリ少女が、普通を目指す姿を描く、うっかりシャバ無双物語。「コンプエース」2016年11月号から掲載の作品。コミックス第1巻には原作者の中村颯希による書き下ろし小説『「普通」の包丁砥ぎ』も収録されている。

正式名称
シャバの「普通」は難しい
ふりがな
しゃばのふつうはむずかしい
原作者
中村 颯希
漫画
ジャンル
執事・メイド
 
美少女・萌え
レーベル
角川コミックス・エース(KADOKAWA)
巻数
既刊8巻
関連商品
Amazon 楽天

あらすじ

第1巻

今日が王宮付きの侍女として初出仕となる少女エルマは、初仕事に向けて粛々と身支度を整えていた。そこに姿を現したのは、先輩侍女のイレーネだった。イレーネは、支度が出来上がったエルマの冴えない姿を見て、「みすぼらしい黒ネズミ」と侮蔑の言葉を放ち、ありえない量の仕事をメモした紙を渡して読み上げ、新人いびりをしようとする。一方で、これがあるべき「普通」の侍女の姿なのだと説明されたエルマは、ひょうひょうとした様子で、一度しか読み上げられていない大量の仕事をすべて暗記して動じることなく、承知しましたと仕事へ向かおうとする。実はエルマは監獄で生まれ育ったという超ワケ有りの少女だった。彼女を監獄から救い出し、王宮付きの侍女に採用したルーデン王国第二王子のルーカス・フォン・ルーデンドルフと、侍女長のゲルダは、彼女の初仕事の中に気難しく、厳しいさまから苛烈妃との異名を持つ前王妃のユリアーナへお茶を振る舞う仕事が含まれていることを知り、万一のことがあってはならないと、エルマを捜すために王宮内を急ぎ歩く。(第一章「「普通」のお茶汲み」。ほか、2エピソード収録)

第2巻

エルマの類を見ない身体能力と高い技術、幅広く奥深い知識を目の当たりにしたルーカス・フォン・ルーデンドルフは、エルマをなんとかして騎士団に迎え入れようと、彼女に詰め寄っていた。しかし、あくまでも「普通」の女性としての生き方に固執するエルマはこれを断固として拒否。近々行われる即位式に向け、忙しい最中にもかかわらず、ルーカスはあきらめることなく、拒絶を続けるエルマにしつこくつきまとっていた。そんなルーカスのもとに緊急の知らせが届く。ルーカスの乗るはずだった馬が、演習中に突然暴れ出し、ルーカスの代役を務めていたテオが脚の骨を砕かれる重傷を負ったというのだ。知らせに来たマルクは、その場にエルマがいることに気づくと、現場に新人の聖医導師しかいないことを理由に、ケガの手当てをしてほしいと懇願する。一方で、現場に駆り出された新人聖医導師のデニス・フォン・ケストナーは、自分の出自が高貴なもので、新人としての下積みを嫌がっていたため、嫌々ケガ人のもとへと向かった。すると、そこには呪具によってズタズタになった足の痛みに、もがき苦しむテオの姿があった。デニスは、あまりの惨状に動揺しつつも、癒術をかけてみるが、呪具の破片が傷口に残っているせいで、効果がないどころか逆に悪化させることになってしまう。デニスの能力に見切りをつけた仲間のディルクがテオの足を切り落とそうと決断したその時、清潔な布で全身を覆った姿のエルマが姿を現し、高度な外科手術を始める。(第四章~第六章「「普通」の手当て1~3」。ほか、2エピソード収録)

関連作品

本作『シャバの「普通」は難しい』は、中村颯希の小説『シャバの「普通」は難しい』を原作としている。この原作は、もともと小説投稿サイト「小説家になろう」に投稿されたもので、2018年4月には挿絵を村カルキが担当し、KADOKAWAより同タイトルで書籍化された。

登場人物・キャラクター

エルマ

ルーデン王国王宮付きの侍女を務めることになった少女で、年齢は15歳。実はヴァルツァー監獄に収監されていたハイデマリーから生まれ、そのまま監獄内で育てられた。しかし、先王ヴェルナーの急逝に伴い、恩赦が発令されたことで、その境遇を知ったルーカス・フォン・ルーデンドルフと侍女長のゲルダによって出獄することになり、異例ではあったが、王宮付きの侍女として採用されることとなった。ふだんは、ぱっとしない印象を与えるくすんだ肌に丸い眼鏡を掛け、陰気な表情を浮かべているが、実はそのどれもが美しさを隠すための偽りの姿。眼鏡をはずし、化粧を落とせば透き通るような白い肌に形の美しい唇を持つ美少女となる。また語学に堪能で、言葉選びはセンスにあふれ、プロ並みのスイーツを作る腕を持ち、人の微表情を読み取ることから外科手術の実践に至るまで、さまざまなことに精通している。そのすべては、監獄内の母親とその仲間であるギルベルト、モーガン、イザーク、ホルスト・エングラー、嫉妬たちによって、幼少期から身につけるように訓練を受けてきたもので、エルマ自身は常識の範疇だと思っている。出獄の際、ハイデマリーから出された課題として、「普通の女の子」がどういうものか、世界を見てくるように、それがわかるまでは帰ってきてはいけないと言われたため、「普通」に固執して普通がいったいなんなのかを知るべく、学んでいる。

イレーネ

ノイマン男爵家の娘で、ルーデン王国王宮付きの侍女を務めている。侍女寮東棟四階の階長で、初仕事の日を迎えたエルマに対し、その愛想のなさと冴えない姿を見て、「みすぼらしい黒ネズミ」と揶揄した。また、一人ではとうてい終わらないようなありえない量の仕事をメモした紙をエルマに渡して読み上げ、新人いびりをしようとした。しかし、何事にもそう簡単に動じないエルマの前にはまったく効果がなく、予想を上回るスピードで仕事をこなされてあえなく撃沈。そのうえ、気難しい前王妃のユリアーナにお茶を振る舞うという大仕事ですら成功させてしまったエルマの、人並はずれた能力に惚れ込み、結果として一方的になかよくするようになった。のちに、エルマの美しさを知った時には、地上に天使がいると大騒ぎして彼女の美しさに魅了され、それ以降は何かと彼女を着飾らせようとする。性格的には少々キツめなところもあるが、ミーハーでわかりやすく、友達思いなやさしさも持ち合わせている。第二王子のルーカス・フォン・ルーデンドルフにあこがれている。

ユリアーナ

ルーデン王国の前王妃。亡くなった先王ヴェルナーの妻だが正妃ではなかった。祖国ラトランドの文化を愛しており、お茶を楽しむ習慣は決して侵されてはならない至高のものと考えている。侍女には清潔と品を求め、会話には知性を求め、食事には味以上に物語を求めるような気高さを持つ。以前、紅茶を冷ましすぎた侍女を真冬のテラスに追い出したり、カップに羽虫が入っていたからと侍女の体に虫を這わせたりしたと噂された結果、「苛烈妃」とのあだ名を付けられてしまった。しかし、実際は正妃からの差し金でやって来た侍女により、紅茶に毒が仕込まれていたり、息子のルーカス・フォン・ルーデンドルフの部屋に毒虫がばらまかれていたことが理由だった。第一王子であるフェリクスの即位を案じてのことだったようだが、それをきっかけにルーカスの身の安全を考え、自分のもとに出入りする侍女が限られるようにと、なるべく侍女には厳しくあたることで配慮するようになった。しかしヴェルナー王の崩御により、第一王子の即位が確実となり、正妃も矛先をおさめたのではと考え、これでメイドにも優しく接することができると安堵する。ちょうどその頃、新たに姿を現した侍女エルマの姿に、初めこそがっかりすることもあったが、紅茶への精通ぶりや手作りスイーツのおいしさ、センスや語学が堪能なことから彼女にすっかり傾倒し、その魅力に惚れ込んでしまう。

ルーカス・フォン・ルーデンドルフ

ルーデン王国の第二王子で、年齢は20歳。王子という身分でありながら、騎士団に所属して中隊長を務めている。年齢の割に高い地位を与えられているが、これは第二王子という生まれによるものではなく、優れた剣技と、時間をかけて築き上げた人望によって得たもの。時に下町まで繰り出して庶民と友情を結ぶため、周囲には「型破り」「常識はずれ」などと評されているが、その多くが好意によるもの。多少色を好むところがあるが、騎士団への忠誠は厚く、心からその発展を望んでいる。ヴェルナー王の崩御によって恩赦が発令され、ヴァルツァー監獄から出獄させた少女エルマが、さまざまな能力に長けた並みはずれた人材であることを知り、彼女を騎士団に入れたいと考えるようになる。自分には、母親である前王妃ユリアーナとは別の、ヴェルナー王と正妃のあいだに生まれた異母兄にあたるフェリクスが、第一王子として存在するため、王位を継承するのは自分ではないことを理解している。しかし、一見してダメな印象を与えるフェリクスが、裏で「凡愚王子」と呼ばれていることを知り、表の印象がすべてではないと、フェリクスに対して何か計り知れないものを感じている。

ゲルダ

ルーデン王国王宮付きの侍女で、侍女長を務める女性。人を疑うことを知らないお人よしな性格をしている。ヴァルツァー監獄で育てられていたエルマの後見を名乗り出て、彼女を王宮付きの侍女にすることを決めた。エルマが眼鏡をはずしたときの美しさを知っているが、男性にも異性にもその姿は見せない方がいいと伝え、眼鏡をなるべくはずさないように指導した。しかし、のちに舞踏会に出ることになったエルマのためにドレスを用意し、彼女を美しくさせようと奮闘する。

ギルベルト

ヴァルツァー監獄に収監されている囚人の男性。監獄内の劣悪な環境に耐え兼ね、ハイデマリー、モーガン、イザーク、ホルスト・エングラー、嫉妬を合わせた五人の仲間たちと共に立ち上がり、看守たちを掌握。監獄という名の城を自分たちのものにした。

ハイデマリー

ヴァルツァー監獄に収監されている囚人で、エルマの母親。「三国一値の張る女」といわれた娼婦で、監獄内の劣悪な環境に耐え兼ね、ギルベルト、モーガン、イザーク、ホルスト・エングラー、嫉妬を合わせた五人の仲間たちと共に立ち上がり、看守たちを掌握。監獄という名の城を自分たちのものにした。その後、獄中でエルマを出産して仲間たちと共に育て上げたが、無辜(むこ)の娘を解放せよとの勅命に逆らえず、エルマを監獄からシャバへと巣立たせた。その際、「普通の女の子」がどういうものか、世界を見てくるようにと言い渡し、それがわかるまでは帰ってきてはいけないとエルマに課題を課した。

モーガン

ヴァルツァー監獄に収監されている囚人の男性。ラトランド公国が生んだ希代の詐欺師で、かつて貧しさのために家族全員を失ったその時から、生きることへの執着を失い、ただ淡々と無為に贅をため込んでいる貴族たちを口車に乗せ、金を巻き上げることでヒマつぶしをしてきた。しかし、その際も決して自らの手は汚さず、働きかけて傍観するだけ。高みの見物を決め込みながら、人の微表情を読み取り、口先だけで人を動かすところから、「怠惰」の異名を持つ。監獄内では、その劣悪な環境に耐え兼ね、ハイデマリー、ギルベルト、イザーク、ホルスト・エングラー、嫉妬を合わせた五人の仲間たちと共に立ち上がり、看守たちを掌握。監獄という名の城を自分たちのものにした。のちに生まれるエルマを実の娘のようにかわいがり、「怠惰の父」として仲間たちと共に育てた。彼女が自分の後継者になれるようにと徹底した教育を施し、微表情を読み取る能力をエルマの身につけさせた。

イザーク

ヴァルツァー監獄に収監されている囚人の男性。左の額から、右の頰にかけて大きな傷跡がある。空腹感が強く、食への欲望をなだめるのは並大抵のことではない。その食欲と好奇心をこじらせた結果、禁域で見境なく聖獣を狩り、戦士の名をはく奪されて監獄へと収監されることとなった。そのため、「暴食」の異名を持つ。監獄内の劣悪な環境に耐え兼ね、ハイデマリー、ギルベルト、モーガン、ホルスト・エングラー、嫉妬を合わせた五人の仲間たちと共に立ち上がり、看守たちを掌握。監獄という名の城を自分たちのものにした。エルマが生まれてからは、時に自分も知らないような食材を狩り、空腹になる前に料理を作ってくれる彼女が、かけがえのない存在となっていった。エルマがシャバへと出て行ってしまって以降、その虚無感に苦しんでいる。

ホルスト・エングラー

ヴァルツァー監獄に収監されている囚人の男性。商家の妾腹に生まれ、その財力と頭脳を利用して、人体実験を繰り返した精神異常者「狂気の少年博士」として有名だった。しかし、元をたどるとその動機は、暴漢に襲われて昏睡状態になった妹の存在にあったが、それを知る人は少ない。その後、妹を襲った犯人を見つけ出し、高貴な身分であった犯人の脳を蹂躙したことで、彼の実験すべてに犯罪の烙印を押され、収監されることとなった。神の領分をも犯して知識を、生を欲したために「貪欲」の異名を持つ。のちに、監獄内の劣悪な環境に耐え兼ね、ハイデマリー、ギルベルト、モーガン、イザーク、嫉妬を合わせた五人の仲間たちと共に立ち上がり、看守たちを掌握。監獄という名の城を自分たちのものにした。エルマが生まれてからは、「貪欲の兄」として彼女をかわいがり、エルマに悪い虫がつくことを必要以上に心配し、出獄前に彼女の眼鏡の屈折率に細工をして、エルマが不美人に見えるように手を加えた。

嫉妬 (しっと)

ヴァルツァー監獄に収監されている囚人の男性だが、心は女性。「監獄一のイイ女」を自称しており、何かとハイデマリーに対して女性として挑発しようとする。監獄内の劣悪な環境に耐え兼ね、ハイデマリー、ギルベルト、モーガン、イザーク、ホルスト・エングラーを合わせた五人の仲間たちと共に立ち上がり、看守たちを掌握。監獄という名の城を自分たちのものにした。エルマが生まれてからは、彼女を暑苦しいほどかわいがったが、「どちらがよりエルマを女性として魅力的に育てられるか」という観点に次第に変化していき、それすらもハイデマリーとの勝負のタネになった。

看守 (かんしゅ)

ヴァルツァー監獄の看守を務める男性。水晶を持つ聖職者でありながら、日常的に監獄内の囚人を虐待し、当時身重だったハイデマリーを犯そうとした。その現場に踏み込んできたギルベルトと、モーガン、イザーク、ホルスト・エングラー、嫉妬らによって掌握され、監獄自体を乗っ取られることとなった。

ゲオルク・ラマディエ

宮廷料理長を務める男性。もともとは、美食の国モンテーニュから第一王子のフェリクスによって引き抜かれ、ルーデン王国にやって来た。しかし、王宮内で働く者たちからの味の評判は悪く、誰も自分の味を理解しようとしないため、不満がたまっている。また自分の聖域である厨房に、無断で足を踏み入れてくる侍女のエルマの存在がうっとうしいと感じていて、資格も持たずに女の身でありながら、料理長の領分を侵したエルマに謝罪を要求。さらにどちらがおいしいものを作れるか、勝負することを提案する。もともとはモンテーニュ読みで「ジョルジュ・ラマディエ」と名乗っていたが、同じ表記でルーデン読みすると「ゲオルク・ラマディエ」となる。仕事仲間が「ゲオルク」と呼びたがることが不快だったが、料理対決後、エルマをはじめとするルーデン王国の者たちと理解を深め合った結果、自らゲオルクと名乗ることを決めた。

フェリクス

ルーデン王国の第一王子。いつもニコニコと笑みを浮かべて愚かな様子から、使用人たちのあいだでは凡愚王子と揶揄され、評判になっている。しかし、その実体は愚かなさまを演じているにすぎない。ヴェルナー王とその正妃のあいだに生まれたが、ユリアーナとのあいだに生まれた第二王子、ルーカス・フォン・ルーデンドルフが異母弟として存在する。先日、ヴェルナー王が急逝したため、自分の即位はほぼ確実な状況となっている。馬好きと噂されており、蹄鉄のコレクションを持っている。

テオ

騎士団に所属する青年。ルーカス・フォン・ルーデンドルフの代わりに、代役として王子の馬に乗っていてケガを負った。馬が突然暴れ出し、落馬したことが原因だが、馬の蹄には蹄鉄型の呪具が装着されており、呪具ごと足を踏みつぶされたことにより、彼の足の中で呪具が散らばり、呪いをまき散らす最悪の状況となった。そのため、聖医導師による治療がまったくきかず、より苦しむ結果となった。その後、エルマによる外科手術が功を奏し、デニス・フォン・ケストナーの癒術も効果を発揮したことで、完治する運びとなった。

マルク

騎士団に所属する青年。ルーカス・フォン・ルーデンドルフが不在のあいだに起きたトラブルを伝えに来た。ルーカスの代わりを務めていた代役のテオが乗っていた馬が突然暴れ出したために落馬し、足の骨を折る重傷を負ったとのことで、ルーカスに伝えに来たものの、その場所にエルマがいることに気づく。そこで最近何かと噂でもちきりの彼女に、手当てしてほしいと懇願する。

デニス・フォン・ケストナー

新人聖医導師の少年。聖医導師輩出の名家として有名なケストナー家の男爵令息。司教兼宰相のクレメンス・フォン・ロットナーと共に第一王子、フェリクスの側近として生活を共にしてきたが、騎士団でのトラブルによる緊急事態に遭遇し、聖医導師として駆り出されることとなった。自分の出自が高貴なものであり、新人としての下積みを嫌がっていたため、嫌々ケガ人のもとへと向かったものの、呪具によってズタズタになった足の痛みにもがき苦しむテオには効果がなく、すっかりおじけづいてしまう。しかし、エルマによる外科手術が功を奏し、呪具が取り除かれたことでデニスの癒術が効果を発揮。これにより、テオのケガが完治する運びとなった。気が小さく、高飛車で短気な性格をしている。自分の出自をかさに着て、何かと不満が多い。むせるほどの香水を身にまとい、親指をかじる癖があるためにいつも親指の爪が不潔な状態だったが、エルマに叱責されたことで改心することになり、聖医導師としての誇りを取り戻す。その後、この一件によって奮起することになり、進んで平民たちの治療をこなして人体への理解を深め、やがて希代の聖医導師として成功をおさめることになる。

ディルク

騎士団に所属する男性。ルーカス・フォン・ルーデンドルフが不在のあいだに起きたトラブルにより、代役だったテオが足に重傷を負うことになったが、連れてきた聖医導師ではまったく役に立たず、悪化の一途を辿る状況を見て、テオの足を切断することを決意。テオの命を救うために、自らの剣で足を切り落とそうとする。しかし、エルマが姿を現し、外科手術を申し出たことで切断は回避された。その後、外科手術を成功させたエルマを労おうと、酒が入ったジョッキを水だと言ってエルマに渡して飲ませた。

クレメンス・フォン・ロットナー

司教兼宰相を務める男性で、第一王子のフェリクスの側近。急逝したヴェルナー王の側近も務めていたが、前王は彼のカウンセリングによる洗脳を受けたことで意思が弱く、責任能力がなくなっていたため、彼がささやくだけで、自らの手を汚すことなく望みを叶えることに成功していた。前王の時代より、その懐に寄生して甘い汁をたっぷりと吸ってきたロットナー侯爵家の血筋の一人として、第二王子のルーカス・フォン・ルーデンドルフを煙たく思っている。一方でフェリクスに対しても扱いにくさを感じており、ヴェルナー王の時のように自由にならないことへの苛立ちを感じている。そのため、さまざまな方法で裏から手を回し、フェリクスとルーカスを互いに殺し合わせようと画策し、王位継承争いの盤上から引きずり下ろそうとしたが、うまくいかずにいる。それらがすべて、エルマが侍女になってからであるということは気づいていない。

ヨーラン・スヴァルド

芸術の都ヤーデルードから来たヴァイオリニストの男性。神に愛された天才ヴァイオリニストとして有名だが、孤高との噂があり、本来宮廷の舞踏会でダンスのためのワルツを奏でることには不向きなタイプだった。しかし、第一王子であるフェリクスのたっての願いで、司教兼宰相のクレメンス・フォン・ロットナーを通して依頼され、引き受けることになった。だが、実際に舞踏会に参加してみるとやはりイライラが募り、楽しくは感じずにいた。最も注目が集まるタイミングで「至高のトリル」を披露させてもらえる約束となっており、クレメンスからの合図を待っていたが、美しいエルマのダンスに心奪われ、すっかり我を忘れてしまう。

カロリーネ・フォン・ファイネン

貴族のお嬢様。宮廷の舞踏会で、第二王子のルーカス・フォン・ルーデンドルフを狙っていたため、最近何かと噂の侍女エルマのドレスにわざとワインをこぼし、侍女なら侍女らしく洗濯をしに持ち場に帰れと罵倒した。しかし、それがエルマの魂に火をつけることとなってしまう。格下の女性を相手にするときと、意中の王子に対する態度は180度変化する。

ヴェルナー

ルーデン王国の王を務めていた男性。正妃とのあいだには第一王子であるフェリクスをもうけ、前王妃ユリアーナとのあいだには第二王子となるルーカス・フォン・ルーデンドルフをもうけた。気弱で、責任感も責任能力もなかったため、側近だったクレメンス・フォン・ロットナーの言いなりであったとされている。それはクレメンスのカウンセリングによる洗脳が一つの要因だったが、その事実を知る者はいない。

場所

ヴァルツァー監獄 (ゔぁるつぁーかんごく)

この世の地獄といわれている監獄のこと。大陸一の覇権をにぎるルーデン王国のはずれに位置し、険しい山と切り立った崖に囲まれている。終身刑を言い渡された大陸中の大罪人ばかりが多く収容されており、ひとたび鎖でつながれようものなら、その無慈悲な虐待や暗澹たる境遇に、殺人鬼すら涙を浮かべて死罪を請うとも噂されている。その広大な敷地は、200の守衛と50にも及ぶ聖獣によって守られている。

その他キーワード

聖医導師 (せいいどうし)

聖なる力で医療を行う者のこと。この大陸では、多くの人間がアウレールを主神とするアウル教を信奉し、そのごく一部が聖力と呼ばれる神の恩寵を授かる。聖力はそれこそ奇跡のように平民にもある日突然発現することもあるが、基本的には血統によって受け継がれる。その代表格ともいわれるのが、ケストナー男爵家であり、これまで数多くの高位導師や聖女を輩出してきた名家で、司教を兼任するロットナー侯爵家とも懇意な由緒正しい家系といわれている。

クレジット

原作

中村 颯希

キャラクター原案

村 カルキ

書誌情報

シャバの「普通」は難しい 8巻 KADOKAWA〈角川コミックス・エース〉

第1巻

(2019-01-25発行、 978-4041080061)

第3巻

(2020-04-25発行、 978-4041093344)

第4巻

(2020-12-26発行、 978-4041093351)

第6巻

(2022-09-26発行、 978-4041129432)

第7巻

(2023-03-25発行、 978-4041129449)

第8巻

(2023-10-26発行、 978-4041142363)

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