シルクのブラウス

シルクのブラウス

仕事と恋愛に生きる、等身大の大人の女性を描いたオムニバス作品集。「ユウウツな恋人」「恋のフーガ」「ロスト・ラブ・夕暮れに」「シルクのブラウス」「おだやかな休止符」「赤い関係」の6編が収録されている。

正式名称
シルクのブラウス
ふりがな
しるくのぶらうす
作者
ジャンル
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あらすじ

ユウウツな恋人

社長秘書の西村逸美は、変わり映えのしない秘書の仕事に憂鬱を募らせていた。恋人の富岡保成は優しく不満はない。仕事もこれといった問題はないが、退屈な日々を過ごしていた。そんなある日、町中で偶然再会した先輩に、「夢だったスチュワーデスになったのか」と尋ねられた逸美は、「第二希望の職業秘書になった」と答える。仕事も恋も二番手に甘んじていた現状に気付いた逸美は、自ら職を離れ、恋人との関係も清算しようと決意する。

恋のフーガ

結婚を3か月後に控えた社長秘書の青木園子は、結婚相手の椎名邦彦と食事をしてもどこか上の空でいた。その原因は、彼女が近所でよくすれ違う高校生男子の加納に、恋心を抱いてしまったからだった。想いを募らせた園子は、切なさから会社を休んでしまう。そして心配して見舞いに訪れた邦彦に、自分の胸の内を素直に伝えてしまう。

ロスト・ラブ・夕暮れに

三輪沙織は同性からも好かれる有能な社長秘書だが、最近目の前に白くモヤがかかったような味気ない日々を過ごしていた。そのモヤを払拭したいと、恋人の美紀男に自分から別れを切り出す。そしてその帰り道、声をかけてきた青年・望月と少しの好奇心からともにポルノ映画館に入り、そのまま沙織は一夜をともにしてしまう。

シルクのブラウス

高校からの付き合いで交際10年目になる安香了子一宏は、暗黙のうちに結婚も了承しあう仲で同棲もしていた。ところが了子は最近夜の行為が上手くいっていないことに悩んでおり、相談を受けた秘書課の同僚は、交際に飽きたのではないかと答える。いつの間にか慣れた仕事と同じく、余裕があることと飽きることは違うと理解しつつも、了子は一宏との結婚についても戸惑いを感じるようになる。

おだやかな休止符

柿本美幸は社長秘書を5年務めた有能な女性だが、上司の紹介で知り合った結婚相手と僅か3か月で離婚してしまった。同窓会の会場で、その話をネタにして笑う彼女の声を聞き、隣の間で新年会をしていた三和商事の清水政臣は複雑な感情を抱いていた。だが、閉会後に政臣が夜景を見ようと立ち寄った人気のないロビーで、先ほどまで賑やかに話していた美幸が静かに涙を流している姿を見て、政臣は彼女に興味を抱く。

赤い関係

髪を飾り気なく束ねて化粧もしていない吉田理恵は、仕事に一途過ぎて、女性からは付き合い難い、男性からは出世でも狙っているのかと煙たがられていた。自分の立ち位置に疑問を抱きながら働く彼女は、ある夜帰宅途中に強姦されてしまう。理恵は警察から、犯人を法で裁くためには被害届を出さなければならないが、女性は暴行の事実が公になることを気にして、被害届を出さないケースが多いと説明を受ける。だが、理恵は自分には失うものはないと被害届けを出すことに同意する。その後辞職し、郷里に戻って結婚した理恵は、穏やかな男性・神崎とその連れ子である洋子との生活に幸せを見出していたが、そんなある日、彼女にかつて自分を強姦した相手が逮捕されたとの報せが届く。

登場人物・キャラクター

西村 逸美 (にしむら いつみ)

エピソード「ユウウツな恋人」に登場する。社長秘書勤務4年目の落ち着いた物腰の若い女性。そつなく仕事をこなす有能な秘書で周りの信頼も厚い。だが、一番就きたかった仕事はスチュワーデスで、恋人の富岡保成も最愛の相手ではない。すべてが二番手な現状に虚しさを募らせ、保成に自分から別れを切り出し、職場も辞めようかと悩んでいる。

青木 園子 (あおき そのこ)

エピソード「恋のフーガ」に登場する。3か月後に結婚退職を控えた社長秘書で、年齢は26歳。結婚相手の椎名邦彦には不満もないが、胸が高鳴るようなこともなくなっている。代わりに近所でよく見かける男子高校生の加納に対し、少女のような切ない恋心を抱いている。そんな自分の気持ちを邦彦に対し申し訳ないと自覚しつつ、結婚まで最後の恋心を素直に抱いていたいと邦彦に打ち明ける。

三輪 沙織 (みわ さおり)

エピソード「ロスト・ラブ・夕暮れに」に登場する。四ツ谷産業秘書室に勤める秘書の女性。日常が色あせて見える倦怠感から抜け出したいと感じ、24歳の頃から3年交際した恋人の美紀男に、自分から急に別れを告げた。

安香 了子 (やすか りょうこ)

エピソード「シルクのブラウス」に登場する。社長秘書として、仕事をそつなくこなすベテラン女性。プライベートでは交際10年目となる一宏と同棲して1年経つが、夜の行為が上手く行っていないことを気にしている。

柿本 美幸 (かきもと みゆき)

エピソード「おだやかな休止符」に登場する。優秀な社長秘書として5年務めていたが、結婚のため退職した女性。その後わずか3か月で離婚してしまう。女子大の同窓会に参加した際、隣の会場で新年会を行っていた清水政臣と意気投合し、そのまま一晩をともに過ごす。

吉田 理恵 (よしだ りえ)

エピソード「赤い関係」に登場する。会社勤めの女性。髪を三つ編みに束ねて化粧もせず、真面目で仕事一筋だったため、同僚には「可愛げがない」、「出世欲を出したところで女が長く勤められるわけはない」と煙たがられていた。帰宅途中に暴行されたことで、一途だった6年間の仕事への意義を見失い、自棄になって勧められるまま妻を病気で早くに亡くした神崎と結婚した。

富岡 保成 (とみおか やすなり)

エピソード「ユウウツな恋人」に登場する。西村逸美の恋人。逸美と同年代の青年で、彼女から切り出された別れ話をすんなり受け入れた。もともと富岡保成から言い寄って始まった関係だったが、最初からあまり逸美に愛されていないと感じており、逸美からも一度も好きだとの言葉をもらったことはなかった。

椎名 邦彦 (しいな くにひこ)

エピソード「恋のフーガ」に登場する。青木園子の婚約者の男性で、園子のことを良く理解している。穏やかな性格で、結婚を前に心理的に不安定になった園子が、名前も知らない近所の高校生へ恋心を抱いていることを打ち明けても、あるがままにすればいいと受け入れている。

加納 (かのう)

エピソード「恋のフーガ」に登場する。青木園子の住まいの近所に良く姿を見せる男子高校生。園子から淡い恋心を寄せられているが、加納本人はまったく気付いていない。

美紀男 (みきお)

エピソード「ロスト・ラブ・夕暮れに」に登場する。三輪沙織の同世代の恋人。沙織に今年のスキーの計画を提案するなど交際は順調と信じて疑っておらず、急に沙織から別れを切り出されて返す言葉もなく、立ち去る沙織を茫然と見送る。

望月

エピソード「ロスト・ラブ・夕暮れに」に登場する。町中で三輪沙織をナンパした、短髪の男子学生。沙織に誘われて、彼女が見たいというポルノ映画館に一緒に入り、その後一夜をともにする。沙織と映画を見ながら、彼女が恋人と別れたばかりだとの打ち明け話の聞き役になる。

一宏 (かずひろ)

エピソード「シルクのブラウス」に登場する。28歳の会社勤めの男性。安香了子と高校時代から交際しており、今年で交際10年目を迎え、同棲から1年が経過している。一緒のベッドで眠り、スキンシップも良好な関係で、結婚も暗黙の了解でお互い同意済み。だからといっておざなりな訳でなく、了子のわずかな変化に気付いて穏やかに会話を交わす機会を作ったりする気遣いもできる。

清水 政臣 (まさおみ)

エピソード「おだやかな休止符」に登場する。大企業である三和商事に勤務する29歳の男性。会社の新年会に参加した際、隣の会場で女子大の同窓会に参加していた柿本美幸と一夜かぎりの恋に落ちる。

神崎 (かんざき)

エピソード「赤い関係」に登場する。吉田理恵と再婚した、眼鏡をかけた会社勤めの穏やかな男性。最初の妻との間に娘の洋子を授かったが、その妻は病気で亡くしている。新しい家族が上手く行くように、理恵と洋子の両方の気持ちに寄り添う優しくおだやかな人物。

洋子 (ようこ)

エピソード「赤い関係」に登場する。髪を2つにリボンで束ねた少女。最初は父親の再婚相手の吉田理恵に馴染めず、食事を残すなど落ち着かない様子を見せたが、黙々と家事をこなし、穏やかに相手をしてくれる理恵に次第に心を許し、自発的に「おかあさん」と呼ぶようになる。

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