悪一番隊

悪一番隊

第二次世界大戦の少年院に収容された番長太やジョー松田ら日系二世の少年達が、アメリカ軍上層部の思惑により、気付かない内に囮作戦のための特殊部隊として育てられていくさまを描く戦争アクション漫画。実在した442部隊とは異なる二世部隊を描いたフィクション。キャラクター達の活躍と並行して、当時の戦況および兵器の種類や仕組みが図解入りで解説される。『GIジョー 悪一番隊』として連載、単行本化された後に、『悪一番隊』『新最前線・悪一番隊』とタイトルを変えて刊行され、『二世部隊物語』として文庫にまとめられた。二世部隊をモチーフとした作品は、他に舞台やキャラクターを変えた『最前線』『愛と青春の百大隊』といった作品があり、望月三起也の得意ジャンル。

正式名称
悪一番隊
ふりがな
あくいちばんたい
作者
ジャンル
アクション
 
第二次世界大戦
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概要・あらすじ

ハワイ準州立少年院では、番長太を中心とする日系人グループがドイツ移民によるスミレ・グループと対立していた。やがて日本軍の真珠湾攻撃により日増しに日系人に対する風当たりが強くなっていく中で、新たに日系二世の少年が院内に送られてきた。新入りのジョー松田は父と暮らしながらハワイカメハメハ高校に通う優秀な生徒だったが、学校では教師やクラスメイトから迫害される日々を過ごし、さらに店に火を付けた男を取り押さえたところ暴行罪で逮捕されるという理不尽な目に遭っていた。

少年院に入ってもその状況は変わらず、看守達から地獄のカマと呼ばれる厳しい罰を受ける事になる。そんな中、兵士不足で悩むアメリカ軍では、少年院にいる日系人達を特殊部隊の兵士として育て上げ、囮として全滅覚悟でノルウェーの最前線に送り込もうとする計画が進行していた。

そして番長太ジョー松田達の前に発案者で教官のビーマン大尉が現れ、怪我人が続出し死者まで出る過酷な訓練が始められた。

登場人物・キャラクター

番 長太 (ばん ちょうた)

ハワイ準州立少年院の日系人グループを束ねる部屋長。筋の通らない事が嫌いで、仲間達を従える優れた統率力とずば抜けた行動力を持つ。開戦の日はスミレ・グループのボス・ハンスを追いかけて脱走していたが、看守を使って仲間を痛めつけた敵を討つ事が目的だったので、決闘中にあっさり警官に取り押さえられる。 さらにハンスが同じ日系人で、脱走の理由が病気で長くない母を見舞うためと知ると、警官を襲って逃亡の手助けをする。その後、度重なるスミレ・グループの嫌がらせに痺れを切らし、長ドスを持って一味を襲った際、ビーマン大尉が現れ制止されるが、軍隊式のやり方と日系人を猿扱いする態度が気に入らず、断固として命令に従わず銃剣術相手に勝負を挑んだ。 軍事訓練ではビーマン大尉に気に入られたジョー松田が分隊長となり、仲間の信頼を失いかけたが、死者が出るほど度が過ぎる訓練に反抗し、仲間を率いて戦車を奪い暴動を起こす。

ジョー松田 (じょーまつだ)

番長太が脱走騒ぎを起こしてる間にハワイ準州立少年院に入所してきた新入り。父の手伝いで観光客相手のガイドをしながらハワイカメハメハ高校に通い、ハーバード大学を出て弁護士になる事を目標にしていた秀才。開戦により周囲の態度が一変し、学校では教師に試験を失格にされ、部員達には野球の道具をボロボロにされてしまう。 店に火を付けた男を取り押さえたが、警官に逆に暴行罪として逮捕され少年院送りとなった。父の収容所行きが決まると脱走して会いに行くが、息子を心配した父に追い返されてしまう。脱走の罰として灼熱の太陽の下で水も与えずに放置される地獄のカマと呼ばれる刑を受け、危うく命を落としかけるが、番長太の指示で看守の目を盗んでジャンボとクマの手で救出される。 ビーマン大尉には番長太に比べて秩序と軍律を守るタイプと見込まれ、軍事訓練では日系人グループ第一小隊の小隊長に任命される。ノルウェー攻撃作戦では、計算の速さを活かし着陸地点の目標を割り出す役目をする。

ビーマン

ハワイ準州立少年院の院生半分を訓練中に死亡させても、残り半分を一人前の兵士として育て上げ、人手不足の前線に盾代わりの特殊部隊として送り込むため、ワシントンからやって来た将校。階級は大尉。少年院生は社会のクズ、日系二世は東洋の黄色い猿と人間扱いしない非情な性格が、番長太に敵意を抱かせる。 陸軍士官学校出身で、本部に勤務する事務方だったため出世が遅れ、アフリカで活躍し英雄として帰国した同期のサム・スペード少佐への対抗心と、兄をゼロ戦で撃墜された恨みから、少年院の日系二世で編成した特殊部隊のアイデアを将軍に提案する。そこでテストケースとして自ら訓練を行い、もし一人前の兵士を二中隊分作る事ができれば、少佐への昇進と二世部隊800人の指揮官の座が約束された。 成果を上げるため訓練は激しいものとなり、実弾を使い怪我人が続出、1週間後には死者も出る程となった。

ジョーの父 (じょーのちち)

日本人で、アメリカ人の妻を亡くしている。十数年前に出稼ぎでハワイに移り住み、日本人観光客相手に布哇観光を営む。息子のジョー松田をガイドとし、バスの運転手をしている。真珠湾攻撃を見ながら、これで多くの移民たちが築き上げてきた信用が失われてしまったと嘆いた。帰国して日本軍の兵士として戦うつもりだったが、アメリカ人として今の暮らしを続けたいと望むジョー松田のため、出発を延期する。 その間に情勢は日系人達にとって厳しい物になっていき、店に火を付けた男を捕らえたジョー松田は警察に逮捕され少年院に送られてしまう。やがて強制的に家を退去させられ、ロッキー山脈の中にある過酷な環境の収容所に送られる事が決まると、ジョー松田が父の身を案じて少年院から脱走してくるが、心配をかけまいと追い返してしまう。

ジャンボ

ハワイ準州立少年院の日系人グループで番長太を慕う院生。ジョー松田の素性を知っており、仲間達に説明した。同部屋のクマとコンビで、看守の目をスミレ・グループに殴り込んだ番長太から逸らすために騒ぎを起こしたり、混乱に乗じて地獄のカマからジョー松田を救出した。危険な状態だったジョー松田のために医務室に薬を盗みに入るが、鬼看守に捕まり、ビーマン大尉の耳にも入る事となる。 ノルウェー攻撃作戦で下手な着陸を試みた結果、失敗し敵機に衝突して大破させる。

クマ

ハワイ準州立少年院の日系人グループで番長太をボスと慕う院生。初めは生意気でろくに名乗りもしないジョー松田に反感を持っていたが、地獄のカマで苦しむ姿を見ている内に味方へと変わっていく。度重なるスミレ・グループの嫌がらせに怒りを露わにし、番長太に殴り込みを決意させる口火を切った。 同部屋のジャンボとコンビで、看守の目をスミレ・グループに殴り込んだ番長太から逸らすため騒ぎを起こしたり、混乱に乗じて地獄のカマからジョー松田を救出した。ノルウェー攻撃作戦では、消火するつもりでガソリンをかけてしまい敵基地に大きな損害を与えた上に、消防署に電話しようと入った通信室の兵士が驚いて逃げ出し、結果的に占拠してしまう。

ぼうや

ハワイ準州立少年院の日系人グループで、ジョー松田が指揮する第一小隊に所属する院生。訓練中に足にできたマメが痛み靴が履けずにいたところ、ビーマン大尉の部下に無理やり履かされて絶叫する。見かねたジョー松田が抗議し裸足を許された事で、ジョー松田は仲間達からの信頼を高める。しかし、戦車に追われた時に砂利が足に食い込んで思うように走る事ができず、危うく轢き殺されそうになってしまう。 番長太がタコツボに引きずり込んで助け、同時にシャベルを踏みつけさせた事がきっかけとなり、戦車を奪い暴動を起こす。

ベン・朝場 (べん・あさば)

ハワイ準州立少年院のAブロックのボスで、スミレ・グループに所属する院生。番長太とはライバル関係で、教官に手を回し仲間の坂田と本田を地獄のカマ送りにした。開戦前夜、陸の孤島と呼ばれるほど警戒厳重な少年院から初めて脱走を果たしたが、敵を討とうとした番長太も一緒に付いてきてしまい浜辺で決闘となる。 すぐに2人とも後を追ってきた警官に取り押さえられるが、脱獄の理由が病気で先があまり長くないと言われている母に会うためだと知った番長太に、同じ日系人として警官を襲い逃亡の手助けをしてもらう。

スミレグループボス

ハワイ準州立少年院で番長太達日系人グループと敵対する、ドイツ系移民によるスミレ・グループのボス。クマの缶詰に砂を掛け、地獄のカマで苦しむジョー松田に水を与えるのを妨害するなど、度重なるいやがらせに、ついに番長太が長ドスを持って殴り込みに来る。手製の拳銃を忍ばせて持ち歩き、あわや対決となったところにビーマン大尉が現れ制止、これに従わず拳銃を離さなかったため、部下の戦車兵に撃たれる。 さらに誰の助けも受けられずに這って医務室まで行かされ、その様子をビーマン大尉は楽しむように眺めていた。ノルウェー攻撃作戦に参加し、番長太達と対抗しながらも戦果を上げる。

鬼看守 (おにかんしゅ)

ハワイ準州立少年院で、院生たちに厳しい処罰を与える看守。これまでにリンチで3人殺してきた。脱走したジョー松田を、炎天下の地面に埋めたドラム缶の中に入れトタン板で蓋をして、水も与えずに何日も放置する地獄のカマという拷問を行う。さらに目の前でわざと水をこぼして蒸発させたり、屋根を蹴って大きな音を立てるといった精神的な苦痛も味あわせた。 医務室から薬を盗んだジャンボを捕らえた。ビーマン大尉が現れてからは、これまでの少年院の方針を無視して軍隊の規律に従い、院生は兵士扱いとなったため、指揮を外される。

サム・スペード (さむすぺーど)

アメリカ陸軍将校。アフリカでM3軽戦車に乗り、ドイツ戦車隊を壊滅させた英雄。その時の戦闘で右腕を失ったが、本国に呼び戻され勲章を授かった。階級は少佐。ビーマン大尉とは陸軍士官学校時代の同級生で、階級が変わらないビーマンを嘲笑い、手柄を焦らせる。ハワイ準州立少年院に訓練の様子を見学に来た時、番長太達による暴動が起こると、単身で乗り込んでいく。 院生達の事は敵司令部の乗っ取り作戦の練習という事にして不問にし、ビーマンには行き過ぎが原因で騒ぎになれば責任を問われる事になると説得してその場を治めた。訓練の成果を発揮するために、直ちに院生たちをノルウェーの最前線に送るよう命じた。

陸軍省部長 (りくぐんしょうぶちょう)

アメリカ陸軍で将軍を相手にノルウェー攻撃作戦の全容を説明した。部屋に仕掛けた小型の爆弾を爆発させた隙にスリ取った財布を例に、400人の兵隊に暴動をさせてドイツ軍の隙を突く作戦だと説明した。なり手のいない、救援の見込みのない土地で犠牲になる兵士として、訓練と思い込ませた少年院の二世達で編成した特殊部隊を使用する事を提案する。

ビー玉 (びーだま)

同作者の作品『最前線』の中で442部隊に所属していたキャラクター。やはり『最前線』のキャラクターであるバッキー平方とともにカメオ出演する。ジョーの父達が強制的に家を立ち退かされ収容所に向かうトラックに乗せられる場面で登場。幼い娘が大切にしていた荷物の人形を、規則違反だと警棒で叩きつけて母子を苦しめる横暴な警官に反抗しようとして、バッキー平方に止められる。 怒りを露わにする様子を見た市民達からは、日本人は反乱を起こすと言われて手が出せなくなり、黙って収容所行のトラックに乗る。

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