樹魔・伝説

樹魔・伝説

巨大流星群が降り注ぎ、大被害を被った西暦2505年の地球に、突如出現した謎の植物群ジュマの正体を、優秀な生態学者イオ・フレミングが解明する『樹魔』の1ヶ月後の世界を描いた続編。生物の遺伝子に干渉して超進化を促す純粋なエネルギー体ジュマにより再生した生態学者、ジロウ・サヤマが、自分と同じくジュマの恩恵を受けたディエンヌと共に、存亡の危機に瀕した人類を救う答えに辿り着く姿を通して、人類が種として進化を遂げた未来の姿を描き出している。第12回星雲賞コミック部門受賞作。

正式名称
樹魔・伝説
ふりがな
じゅま でんせつ
作者
ジャンル
その他SF・ファンタジー
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概要・あらすじ

巨大流星群、イルゼが降り注ぎ、大被害を被った西暦2505年の地球。事故で脳以外の肉体を失い、バイオーグ・イオ・フレミングとして、南極に出現した進化・増殖する謎の植物群ジュマの調査に赴いたジロウ・サヤマは、生物の遺伝子に干渉して超進化を促す純粋なエネルギー体ジュマのエネルギーにより、生前の姿と記憶までもが完全に再生され、人間として甦った。

ジュマと5年間共生し、ジロウに救出されたディエンヌは、研究都市の寄宿学校へ通い、普通の生活を取り戻していた。しかし人々は、物心ともに行き届いた充足を感じている一方で、己の存在感や価値感を見失いつつあった。そのため地球から脱出し、宇宙への進出を強く望む声が異様なまでに高まってしまう。

一般人の多くは、未だ宇宙進出が成就しない理由を研究都市が技術公開しないせいだと考えていたが、その真の理由は、宇宙船が地上45万kmの宙点に達すると、乗員全員が短時間のうちに例外なく廃人化してしまうことにあった。その事実を知ったジロウは、人類が種の限界を突破するためには、より高次元の存在へと進化する必要があるという推論を思いつく。

その鍵を握っているのが、自分と同じくジュマの恩恵を受けたディエンヌだったのだ。

登場人物・キャラクター

ジロウ・サヤマ

一流の科学者が集う研究都市で働いていた生態学の専門家であり、瞑想のスペシャリスト。半年前の事故で脳以外の肉体を失ったが、脳を人工体・バイオーグに移植されイオ・フレミングと名乗っていた。イオの姿で、生物の遺伝子に干渉して超進化を促す純粋なエネルギー体ジュマの調査のため南極に赴いた際、その殲滅作戦の中で消滅するジュマと融合。 生前の姿と記憶までもが完全に再生され、ジロウ・サヤマ本人として甦った。思慮深く、また冷静沈着で物静かな性格をしている。南極でジュマから救出したディエンヌとは、相思相愛の仲。

ディエンヌ

ジロウ・サヤマの恋人で、17歳。西暦2500年に起きたイルゼ流星群来襲で乗っていた飛行機が墜落した際、謎の植物群ジュマを発見し、ジュマに守られるようにして5年間生存していた経験を持っている。ジュマから救出された後、一流の科学者が集う研究都市へと移り住み、寄宿学校に通っている。 聡明で、困っている人を見ると放っておけないタイプ。

アヌ・シャガール

『伝説-未来形-』の登場人物で、30歳をすぎた長身の男性。一流の科学者が集う研究都市の若き青年市長であり、ジロウ・サヤマの友人でもある。ジロウが実践している、膨大な情報群が泳ぐ無意識界を意識的に作り出し、直観やひらめきを得る瞑想理論をうちたてた張本人。知識も豊富で思慮深く、また己の意見に固執せず他者の意見にもしっかりと耳を傾ける柔軟さを持ち合わせているため、ジロウから絶大な信頼を寄せられている。 アヌ・シャガール本人もジロウの非凡な才能を認めており、何かと力を貸す。

ツァラ・ラダ

22世紀初頭に登場した、オールマイティな才能を持つ大科学者で、宗教やオカルト、神秘学を排除した新しい科学思想体系ラダ科学を提唱し、全てが満ち足りた平和で完全な社会を作り上げた。しかし西暦2505年に至るまで出身国すらわからず、その正体は謎に包まれている。統一国家・地球連邦政府から干渉を受けない唯一の独立都市・研究都市を創立し、人類の存亡に関わる事態が起こった時に目覚めると言い残し、研究都市地下の冷凍保存槽で眠りについていた。

ラヤーナ・ミゼーラ

ツァラ・ラダが提唱した新しい科学思想体系・ラダ科学を信奉するラダ派と対立する反ラダ派のひとりで、ラダ科学が否定した超心理学や心霊学、神秘思想、カバラのほか、あらゆる宗教の秘儀を研究し、「思念エネルギー理論」という論文を書いた70歳の老人。西暦2475年にネパールのヒマラヤへ入山し、消息不明になっていたが、ジロウ・サヤマとディエンヌにより、ラマ教の僧院・タンボチュ僧院跡で、ラダ科学によって改竄される以前の科学に関する蔵書と共に発見された。 ラダが完全否定した精神の存在を実証するため荒行を重ねていたが、狂気の中でしか思念エネルギーを操ることができず、発見当初は自我自失状態に陥っていた。

ジュマ

『伝説-未来形-』で名称のみが登場する、生物の遺伝子に干渉して超進化を促す純粋なエネルギー体の名称。西暦2505年に植物群の状態で南極で発見された際、航空機事故で遭難していた少女ディエンヌと共生状態にあった。植物には、細胞内に人間の感情に似た電気的変化があることがわかっており、調査にあたった生態学者イオ・フレミングは、ジュマが植物の感情変化能力を進化させ、ディエンヌの意識とコミュニケーションを取っていたという推論を立てた。 しかし植物としての進化・増殖活動が地球に大規模な被害をもたらすとされ、イオが理論設計を行ったジュマ破滅化学爆弾・対ジュマルイン弾によって壊滅状態に追い込まれる。その後、イオを助けてと願ったディエンヌの意志を受け、わずかに残ったエネルギーすべてを使い、対ジュマルイン弾を受ける直前に取り込んだ脳細胞から、ジロウ・サヤマを人間として再生させた後、完全に消滅した。

場所

研究都市 (けんきゅうとし)

22世紀初頭に登場し、宗教やオカルト、神秘学などを排除した新しい科学思想体系ラダ科学を提唱した謎の大科学者・ツァラ・ラダが創立した、独立都市。統一国家・地球連邦政府から干渉を受けない唯一の独立都市であり、その存在意義は科学力による人類の発展の先鋒となることである。 そのため世界中から一流の科学者が集められており、ジロウ・サヤマや市長アヌ・シャガールもその一員。地下の冷凍保存槽では、創立者であるツァラ・ラダが眠っているが、アヌと管理局長以外には、その事実が明かされていなかった。

その他キーワード

瞑想 (めいそう)

『伝説-未来形-』のジロウ・サヤマが実践する思考技術。一流の科学者が集う研究都市の若き青年市長アヌ・シャガールが提唱した理論で、膨大な情報群が泳ぐ無意識界を意識的に作り出し、直観やひらめきを得ることができるというもの。ジロウが瞑想で得る解の正答率は、90%以上になる。ただし実践には、才能と訓練が必要とされており、万人が使用できる技術ではない。 非科学的なもののように捉えられがちだが、瞑想状態における脳細胞の電気パルス変運動は、現在の科学大系の基礎となっているラダ科学でも証明されている。

ラダの科学論 (らだのかがくろん)

『伝説-未来形-』の舞台である西暦2505年の地球において、すべての科学の基礎となっている科学思想体系のこと。22世紀初頭に登場した大科学者ツァラ・ラダは、超心理学や心霊学、神秘思想、カバラ、あらゆる宗教を否定。心霊やEPSといった不可思議な現象や体験を、心理学や大脳生理学、電子工学などを組み合わせて説き、短期間で世界文明の道を切り開いて、統一国家・地球連邦政府の誕生を促進させた。 ラダの科学論が人類に浸透すると同時に、不可思議なものは姿を消し、人類は一つの統一した意思体へと進化したとされる。

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