マージナル

マージナル

30世紀の未来、24世紀に起きた環境汚染が原因の遺伝子異常によって、地球は男性しかいない世界になっていた。月に逃れた人類のカンパニーによって宗教的な管理社会として統制され、辛くも存続していた地球は、今そのカンパニーの思惑により滅びを迎えようとしていた。人々の思いが交錯する中、遺伝子操作によって作られた少年キラは、不毛の大地に新たな生命を再生させる。

正式名称
マージナル
ふりがな
まーじなる
作者
ジャンル
その他SF・ファンタジー
レーベル
コミック文庫(女性)(小学館)
巻数
既刊3巻
関連商品
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概要・あらすじ

砂漠の村に住むグリンジャの一族は、世界の中心都市モノドールホウリ・マザ暗殺を決行した。男性しかいないこの世界でただ一人の女性であり、全ての人間の母であるマザの死は、世界に大きな動揺をもたらす。足がつく前にとモノドールから逃れたグリンジャは、謎の少年キラと、外れ者の青年アシジンに出会う。

奇妙に気が合い、共同生活を営む三人だったが、新たなマザが選出されることとなり、再び波乱が起きる。

登場人物・キャラクター

キラ

16歳の少年。イワン・アレクサンドルが隠れ住んでいたユーフラテス地区の森で、メイヤードから採取したエゼキェラ因子と、妻アーリン・アレクサンドルの卵子から実験的に作り出した子供。マージナルの地球人が退化させてしまった犬歯が生えている。元は4人おり、4人でひとつの人格を共有していた。 そのうちの1人が森が焼かれた後、ほぼ記憶を失ったまま砂漠を彷徨い、倒れていたところをグリンジャに保護される。エゼキェラ因子由来の感応力をもつ。グリンジャに感応し、体を女性に変化させた。

グリンジャ

砂漠にある医師の村の青年。薬師の知識がある。21歳。眦に青い刺青を入れている。子供がもらえなくなり、滅びに向かう村が作った暗殺団の一人としてホウリ・マザ暗殺計画に加わり、モノドールに潜入。目的を果たし、その帰りに岩陰に倒れていたキラを拾う。足が付くのを恐れ、市場でアシジンにキラを売って旅に出ようとするが、その夜毒蜘蛛に噛まれたキラを治療してほしいとアシジンの岩屋に招かれる。 キラと懇意になった後、グリンジャが暗殺者であることを見抜いたアシジンの異母兄弟フェロペによって目を潰され、砂漠に放逐されそうになるが、フェロぺを殺害して脱出する。

アシジン

砂漠の岩屋に独りで暮らす青年。19歳。額に三日月形の傷があり、「死にぞこないのアシジン」と呼ばれている。市場で砂牛と引き換えにグリンジャからキラを買うが、キラが毒蜘蛛に噛まれてしまったため、毒消しを探しに出たところでグリンジャに再会、岩屋に招く。7~8歳の頃、崖から落ちて額が割れるほどの怪我を負ったところ、通りかかったマシーナによってメディカルセンターに収容され、半年間の治療を受け、親元に返された。 この経緯が村人から恐れられ、変わりものの叔父が住んでいた岩屋に隔離される形で暮らすこととなった。村長の息子であったが、現在の実権は養子のフェロペが持っている。

ホウリ・マザ

地球で唯一の女性。満月の夜に月から従者と共にモノドールへ降りてきて、世界に子供を分け与えたという伝説を持ち、老いては転生し再びマザとなるという永遠の魂の持ち主とされている。センターを通して村々に子供を送っているため、世界で唯一の母として、人々から絶大な支持と敬愛を受けている。 しかしそれは不妊ウイルスに侵された地球を舞台にミツバチ型母系社会マージナルを作るというカンパニーの壮大な実験による虚構で、実際はセンターが攫ってきた少年を性転換させ、投薬によって意識を奪った上で延命させて作っている、管理社会の象徴的な存在でしかない。今までに6代のマザが存在していた。

メイヤード

ユーフラテス地区にあるモノドールのメディカルセンターの長官(マルグレーブ)。カンパニーのマージナルプロジェクト終了の依頼を受け、12年前に赴任した。常にサングラス状のめがねをかけている。三千万人に一人の確率で発生する、感応力を持つエゼキェラ因子の持ち主。火星のクリュセ大学在学中に心臓手術を受け、その際イワン・アレクサンドルに採取した血液を持ち去られた。 遺伝子上はキラの父親にあたる。進行性の病気をいくつも抱えており、弱視。治療のため、体にはいくつもの機械が埋め込まれた状態で、女性ホルモンの投与を受けているため、体が半女性化している。

市長 (しちょう)

モノドールの市長。32歳。図書の家に熱心に通っており、メディカルセンターの行っている管理にもある程度知識がある。ホウリ・マザ暗殺後、新しいマザの選出前に高血圧で倒れ、病床に就く。

ミカル

モノドールの市長の一人息子で、後継者。倒れた市長に図書の家に行くよう命じられ、エメラダからかつて男女比率が半々だったころの世界の話を聞かされ、衝撃を受ける。

イワン・アレクサンドル

アーリン・アレクサンドルの夫で生物学者。火星のクリュセ大学の学生時代は、アーリン、スズキ・ゴーと共に生物学の天才として名をはせていた。母親が前夫に強姦され、恐怖のあまり退行現象を起こして自殺したという過去をもち、無限の共感性を持つ「夢の子供」を作りたいと考えるようになる。 クローニングなど違法な研究を繰り返し、アーリン共々大学を追放になる。18年前、アーリンと共に地球のユーフラテス地区にある森に密入国し、遺伝子実験を繰り返していた。メイヤードから取ったエゼキェラ因子とアーリンの卵子を使い、4人のキラを作った。キラはイワンの母親の名前でもある。

アーリン・アレクサンドル

イワン・アレクサンドルの妻で生物学者。火星のクリュセ大学の学生時代は、イワン、スズキ・ゴーと共に生物学の天才として名をはせていた。18年前、イワンと共に地球のユーフラテス地区にある森に密入国し、遺伝子実験を繰り返していた。キラの母親。夫と共に作り出した4人のキラに次第に恐怖を抱くようになり、ゴーに助けを求める。

スズキ・ゴー

火星から地球に密入国してきた生物学者の男性。イワン・アレクサンドル、アーリン・アレクサンドル夫妻のクリュセ大学学生時代の友人。アーリンから救助を請う連絡を受け、地球への入国を申し込んだが果たされず、やむなく小型貨物船の船長を買収してユーフラテス地区に密入国したところを、カンパニーによって保護、メイヤードのところへ連行される。

エメラダ

モノドールにある図書の家の管理者。XXYの遺伝子を持ち、18歳で成人してもなお女性的な美しさを保っている。長い銀髪。遺伝子のためか、虚弱体質で、心臓が弱い。厭世的な性格。メイヤードによって最後のホウリ・マザに選出され、図書の家から攫われてしまう。

エドモス

モノドールにある図書の家で働いている男性。赤毛で大柄な外見。過去の歴史の知識を持っている。4年前に色子の売春宿である色子宿からエメラダを引き取り、双子のように仲良く暮らしていたが、半年前にエメラダの寿命は長くないというメディカルセンターの診断を知らされ、それをエメラダに伝えることもできず苦悩する。

ネズ

民族学者として30年前に地球に来た男性。表向きは聖堂の教師。市長の秘書的な仕事も行っている。メディカルセンターと外界を行き来し、センターが動かす世界の実態を知っているため、神経が参ってしまっている。

センザイ・マスター

ゴビの超能力者。6-7級の高い能力を持つ。メディカルセンターから逃げたキラを探し出すため、メイヤードに雇われた。非常に太っており、仕事の前に食べるもののメニューを持参してきた。統合型の能力者で、一生涯に使える能力の量を自己認識している。

ナースタース・オクターブ

カンパニーの株主の一人である女性。オクターブ家の継承権と財産権を持つ。メイヤードとは幼馴染で、一見仲が悪いように見える関係。

マルコ

モノドールのメディカルセンターで働いている。

チト

モノドールの色子宿で売春をしている色子。15歳。10歳で起こるはずの色抜けが途中で止まって安定してしまったモザイクで、手と顔に色が残っている。そのことでメディカルセンターに呼ばれ、何度か行き来をしていたことから、聖堂内部の構造に詳しい。客としてきたグリンジャに、その時のことを聞かれ話した。 7代目のホウリ・マザ候補となるが、グリンジャがマザ暗殺団の一味と気付いてしまったため、グリンジャに殺害される。

フェロペ

アシジンの異父兄弟。アシジンが岩屋で隔離生活を送ることになった後、父親である村長が養子とした。村での中心的な人物。村長が夢で受けた啓示に従い、モノドールの長であるホウリ・マザ、市長、メディカルセンターの長官であるメイヤードの暗殺計画を立てている。

場所

モノドール

地球にいくつか残っているドーム型の都市のひとつで、ユーフラテス地区にある。直径2キロメートルで、人口は17万人。ホウリ・マザのいる聖堂と地下20階からなるメディカルセンターある、地球の中心都市。地下通路が張り巡らされており、さらにその下には地下ダムがある。朝はガスが流れる。

マージナル

30世紀の地球。人間は男性のみで、ただ一人の女性であるホウリ・マザから子供をもらうミツバチ型の社会を形成している。文明は退行しており、農業と牧畜が生活の中心。人々は雄雌の番で子供を成すのは動物だけで、人間はマザから子供をもらうのが通常であると思い込まされている。色子と呼ばれる少年期は年長の者が念者となり、カップルとなって親密に付き合い、色子を庇護する「色子制」と、成人するとモノドールに行き、血液と精子をメディカルセンターに提供することでマザからの子供を受け取る「親子制」という慣わしで社会が構成されている。 実際のところは、地球の環境汚染から引き起こされる不妊因子による受胎能力低下から逃れるため、人類の多くはすでに月へと非難しており、その月の市民から提供された汚染されていない卵子をモノドールにあるメディカルセンターの無菌室で受精させることで子供作っている。 メディカルセンターから村々に渡される子供の平均寿命は35歳。31歳をすぎると急速に老いる。子供は10歳までは黒や茶色の肌をしているが、1年ほどかけて色抜けが起こり、最終的に白い肌で安定する。 まれに色抜けが途中で止まって安定してしまうモザイクと呼ばれる例もある。また、犬歯がない。メディカルセンターの飛行機やヘリコプターは、マシーナと呼ばれ、畏怖の対象になっている。マージナルという名前は、これらの管理社会を実験的に動かしている組織カンパニーのプロジェクト名。

図書の家 (としょのいえ)

モノドールにある古文書保管研究施設。伝統的にメディカルセンターと対立した組織でもある。元々は聖堂の中にあり、男女が共存していた過去の歴史に誰でも触れることができるようにしていたが、メディカルセンターの力が強くなるにつれて、三百年前に現在の場所に移った。図書の家を訪れた人々に歴史の説明をすることは許されているが、外に広めることは禁止されている。 鳥を飼い育てて市場に売るという仕事もしている。サキ老とエドモス、エメラダが主な管理を行っており、客人にはエメラダが古文書の説明を行う。

書誌情報

マージナル 3巻 小学館〈コミック文庫(女性)〉

第1巻

(1999-07-16発行、 978-4091912541)

第2巻

(1999-08-07発行、 978-4091912558)

第3巻

(1999-08-07発行、 978-4091912565)

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