ダンダラ新選組

ダンダラ新選組

幕末に実在した新選組の近藤勇土方歳三達と、架空の隊士神鳴千兵衛が、日々の厳しい任務や稽古の中で見せる生き様を通して、報われる事のない不器用な男の家族への想いや、言葉では表せない友情の深さを描いた時代アクション群像漫画。第一回少年ジャンプ愛読者賞に読切作品として発表し、愛読者賞を受賞した。その後、新選組隊士達の若き日を描いた第二部「炎の出発」が発表され、単行本には二部構成で収録されている。また同じく新選組をモチーフにした連載作品として『俺の新選組』がある。

正式名称
ダンダラ新選組
ふりがな
だんだらしんせんぐみ
作者
ジャンル
アクション
 
幕末
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概要・あらすじ

(第一部)幕末の京都で市中警護を行い過激派浪士達から恐れられていた新選組は、脱走といった士道に背く行為は全て切腹となり、その規律の厳しさ故に隊内も恐怖で固められていた。そんな新選組に、見た目の冴えないどこかとぼけた所がある神鳴千兵衛という男が応募してくる。たまたまその実力を目にしていた副長の土方歳三は何かを感じていたが、希望してきたのは隊士ではなく、まかない方だった。

実は、神鳴千兵衛には三年前に生き別れとなった家族がいて、京都にいるという噂を聞きつけ消息を探りに、情報の集まる新選組に入隊したのだった。(第二部)鬼と恐れられた新選組が結成される以前、若かりし土方歳三は、多摩で薬の行商をしながら親友の近藤勇が営む試衛館道場で弟子達に稽古をつけて暮らしていた。

その頃、京都で浪士隊を募集するという話が持ち上がり、三多摩地区に属する道場間の勢力争いに巻き込まれた土方歳三は、野心に燃える青雲館師範代丹下の策にはまり、あらぬ疑いで周りから孤立してしまう。

登場人物・キャラクター

神鳴 千兵衛 (かみなり せんべえ)

五人に一人しか入隊出来ない、難関である新選組に応募してきた男。貧しい身なりで物乞いに間違われるが、土方歳三は水に浮いた紙を揺らさずにその下の魚だけを突く所を目撃していたため、秘めた実力を感じて不意打ちで技量を試す。試験には不合格となるが、応募はまかない方としてだったので、そのまま屯所に居座る事になる。 槍を物干しの竿上げ棒代わりに使うなどとぼけた所があり、厳しい稽古の調子を狂わせると土方歳三には怒鳴られている。実は、三年前に生き別れた女房と息子二人がいて、京都で見かけたという噂を聞きつけ、情報を得るために新選組に入隊し、同じ目的で隊士となっていた息子新太郎と再会する。探索方の山崎から、女房の志乃と息子の利夫の居所を聞くと、喜び勇んで新太郎と二人で訪ねて行くが、志乃には既に新しい家庭があり、幼い利夫に素性も明かさずその場を立ち去っている。 志乃の再婚相手戸倉が長州藩の間者として黒羽組に命を狙われていると知ると、貧しい暮らししかさせられなかった女房子供がやっと掴んだ幸せを壊したくないという思いから、35人を相手に立った一人で立ち向かっていく決意をする。 武芸の達人として、無法者集団相手に見事な矢や槍さばきを見せた上に、思いも寄らないケンカ殺法で次々と相手を倒していく。

土方 歳三 (ひじかた としぞう)

モデルは土方歳三。新選組副長として志が高く、武士道とは自らを犠牲にして他人に尽くす精神だと信じ、自分にも他人にも厳しく振舞う。多摩の百姓のせがれだったため武士に対する憧れが人一倍強く、武士道に外れた者には非常に厳しい。隊規に則り、脱走者や背中を斬り付けられるような者は容赦なく切腹を命じている。 応募してきた神鳴千兵衛の腕を見抜くが、採用試験前に腕試しで不意打ちをした所かわせなかったため、買い被りだったと思うようになる。とぼけた神鳴千兵衛には調子を狂わせれて迷惑しているが、命を顧みず無断で斬りこみに行った姿に真の武士の魂を感じ、隊規に反して助太刀に行く。下手な俳句を読む。 第二部では、多摩で石田散薬の行商をしながら近藤勇が師範を務める試衛館に身を置く。商売には向いていないと言いながら、稽古の最中でも思わず弟子達を相手にセールスをしてしまう。熱くなりやすい性格で、何者かに道場の看板を斬り落とされると、相手も分からず飛び出して行こうとした。無源流師範司義一郎殺しの疑いが掛かると、弟子や村人たちからも冷たい目で見られるようになり、怒りに我を忘れそうになった所を、かろうじて姉になだめられている。

神鳴 新太郎 (かみなり しんたろう)

神鳴千兵衛とは三年前に生き別れとなっていた息子で利夫の兄。新選組隊士となり、市中の見回りをしながら家族の消息を探っていた。長州藩の間者を捕らえに向かった際に、敵に背後から斬り付けられた事が新選組では士道に背いて逃げ出したと見なされ切腹を命じられてしまうが、そこで神鳴千兵衛と再会を果たす。 さらに熱くなった神鳴千兵衛がその場を滅茶苦茶にしたため、切腹は持ち越しとなる。探索方の山崎に母志乃と幼い弟の利夫の居所を聞きつけると神鳴千兵衛と二人で訪ねていくが、そこには既に再婚して新しい家庭を持った母の姿があり、思わず「ひどい女だ」と口にしたために神鳴千兵衛から叱咤される。 父親思いで神鳴千兵衛が単身黒羽組に乗り込んでいくと知ると、父を死なせたくないという思いから必死で引き止めようとし、無理だと分かると力づくで代わりに斬り込みに行ってしまう。

近藤 勇昌宣 (こんどう いさみまさよし)

モデルは近藤勇新選組局長。武州三多摩出身で、剣を取っては鬼と呼ばれる。神鳴千兵衛や沖田総司からは、目が小さい事を話題にされている。笑い上戸で、一度笑い出すと三日は止まらない。第二部では新選組結成前となり、江戸の試衛館へ養子に行き多摩の宮川道場で師範をしている。 江戸では食えずに甲州街道沿いによく出稽古をしていた。道場の看板が何者かに斬り落とされると、以前から対抗していた無源流が勢力を伸ばしてきている事を思い出し、油断できないと危機感を持っていた。土方歳三に殺しの疑いが掛かると、道場の近くをうろついていたすっとびの節を見つけ、口を割らせて事実を突き止めた。

原田 左之助 (はらだ さのすけ)

新選組幹部。モデルは原田左之助。かつて宝蔵院で腕を磨いた槍の達人。入隊を希望してきた神鳴千兵衛の身なりを見て物乞いと勘違いした。土方歳三の言いつけで、神鳴千兵衛の腕を見極めるために井上源三郎を使って不意打ちを喰わせた。面倒見がよく入隊後の神鳴千兵衛の話し相手になったり、隊の事情などを説明している。 沖田総司とは馬が合い、一緒に新太郎の切腹中断の理由を面白おかしく近藤勇に伝える事で裁きをウヤムヤにさせたり、土方歳三に黙って神鳴千兵衛親子を救いに黒羽組へ向かっている。

沖田 総司 (おきた そうじ)

モデルは沖田総司。新選組幹部。20歳。新選組の中では近藤勇以上の剣の使い手と言われる。機転が利き、新太郎の切腹をウヤムヤにするために原田左之助と組み、笑い上戸の近藤勇に報告を面白おかしく伝えて裁きを下せないように仕向けた。第二部では飄々とした性格で冗談を飛ばしながら、土方歳三の身を案じて勝手に出稽古に着いてきては、物乞いに見せかけた刺客を見破り加勢をする。

井上 源三郎 (いのうえ げんざぶろう)

モデルは井上源三郎。新選組幹部。土方歳三の指示で、神鳴千兵衛の腕試しに井戸の中から不意打ちを喰わせる。第二部では、土方歳三が無源流師範の司義一郎を不意打ちで殺したという村人たちの噂を耳にして近藤勇に知らせに来る。

芹沢 鴨 (せりざわ かも)

モデルは芹沢鴨。新選組局長。扇子片手に土方歳三の稽古の様子を覗きにくる形で登場する。一目で神鳴千兵衛のとぼけた雰囲気の裏に隠された実力を見抜き、槍を持たせたら別人となり土方歳三よりも強いと試合を勧めるが、一蹴されてしまう。黒羽組頭首の黒羽十兵衛とは同郷で、数々の悪事にも目をつぶり、いずれ新選組を配下に置く約束をしている。

山崎 蒸 (やまざき すすむ)

モデルは山崎蒸。新選組探索方。大阪出身。針医者のせがれ。商人に扮して街中から情報を得ている。長州藩の間者を探索する中で、神鳴千兵衛が生き別れた女房と子供の所在を耳にする。さらに後日、嫁ぎ先の学者戸倉こそが間者である事を突き止める。

志乃 (しの)

神鳴千兵衛の妻。3年前に貧しい暮らしの中で、息子新太郎と利夫と4人で旅の途中の紀州沖で船が沈没し、そのまま神鳴千兵衛と新太郎の2人と生き別れになる。神鳴千兵衛は死んだと思い、まだ幼い利夫を抱えていたため、学者の戸倉の所に嫁ぎ、現在は親子3人裕福な暮らしをしていたが、志乃の消息を聞きつけた神鳴千兵衛と新太郎が訪ねてきてしまう。

利夫 (としお)

神鳴千兵衛の次男。3年前に生き別れとなった時にはまだ5歳と幼く、訪ねてきた神鳴千兵衛と新太郎の事は覚えていなかった。母が再婚してからは、学者の戸倉の事を本当の父親のように慕っている。

戸倉 (とくら)

京都で暮らす学者。神鳴千兵衛の生き別れた女房志乃の再婚相手で、利夫と3人で大きな屋敷に住み裕福な暮らしをしている。幕府の御用を務める黒羽組の軍師であるとともに、長州藩の間者である事が分かり、黒羽組から命を狙われる。

黒羽 十兵衛 (くろば じゅうべえ)

会津藩公認の新選組とは異なり、ヤクザの用心棒など無法者達を集めて私設で市中見回りを行っている黒羽組の頭首。水戸の出身で、同郷の芹沢鴨とは親しいため近藤勇も手が出せず、我が物顔で給金代わりに庄屋を商家を守るという名目で市中の大商人達から金を巻き上げている。新選組200名に対して黒羽組は35名ながら、芹沢鴨との密約でいずれ新選組を自分たちの支配下に置こうと目論んでいた。 軍師として迎えた学者の戸倉が長州藩の間者である事が分かると、五条の橋で待ち伏せ殺害しようとした。

司 義一郎 (つかさ ぎいちろう)

無源流師範として多摩で青雲館道場を営んでいる。一日も早く無源流を世に広め、立派な道場にして息子信一郎が継ぐ頃には江戸に進出したいと考えている。そのため道場を離れるわけにはいかないと、すっとびの節が持ってきた浪士隊募集の話を断っている。信一郎の前では穏やかな父で、おはぎをつまみ食いしては喉に詰まらせて注意されている。 門人を集めに師範代の丹下の元へ行った際に、何者かに斬り殺されてしまう。

司 信一郎 (つかさ しんいちろう)

無源流師範司義一郎の息子。母を亡くし、父と勝王丸という名の犬と一緒に暮らしている。師範代の丹下から、不意打ちにより父を殺した相手が土方歳三だと聞かされ、敵を討つために身分を隠して試衛館に入門する。剣術の腕前はまだまだだが筋は良く、復讐心から稽古でも土方歳三には目の敵のように向かっていく。

すっとびの節 (すっとびのせつ)

飛脚。以前、街道で雲助に因縁を付けられていた所を司義一郎に助けられた事がある。噂好きの性格で、浪士隊募集の話を青雲館に持ちかけるが、司義一郎からは多摩の地で無源流を広めるために道場を離れるわけにはいかないと断られてしまう。その様子を横から見ていた丹下にそそのかされ、土方歳三を陥れるために利用されてしまう。 司義一郎殺しの噂が広まり土方歳三に疑いが掛かった後、試衛館の近くで様子を探っていた所を近藤勇に捕えられ、責められた挙句に口を割ってしまう。用が済んだ所で丹下は邪魔者として消そうとしていた。

丹下 (たんげ)

無源流師範代。野心に燃え、いずれ自らの手で日本を動かす夢を持ち、その為には手段を選ばない卑劣な男。剣の腕は立ち、試衛館の看板を見事に斬り落とし、また同様の切り口で顔に掛かった蕎麦だけを、一切顔を傷つける事なく斬っている。すっとびの節から浪士隊募集の話を聞きだし、同じ三多摩地区として声の掛かる試衛館を目障りに思うようになる。 青雲館乗っ取りを兼ねて不意を突き師匠の司義一郎を斬り殺すと、その罪を土方歳三に被せてすっとびの節を通じて人々に噂を広めた。自分が利用した信一郎やすっとびの節さえも、用が済んだ所で消そうと企てていた。追い込まれた土方歳三を待ち伏せし、大勢の浪人を引き連れて殺害しようとした。

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