概要・あらすじ
2045年。社会では人間に様々な能力を与える才能ラベルが普及していたが、それを悪用する犯罪も多発していた。才能ラベルが適合しない体質を持つ高校生・十五条平太はこの社会で落ちこぼれ、非合法の運び屋に手を染めていた。ある日警視庁六攻特課の貫寺晃作と出会う。偶然、特殊な才能ラベルであるHi-Fiラベルに適合した平太は、貫寺に誘われて六攻特課に加入。
才能ラベルによる犯罪に立ち向かううち、やはりHi-Fiラベルの適合者による犯罪、そしてラベルを作成した黒幕と対峙することになる。
登場人物・キャラクター
貫寺 晃作 (かんでら こうさく)
警視庁六攻特課の課長を務める青年警察官。佐々木小次郎のHi-Fiラベルを用い、超人的な反射神経と動体視力を持つ。精密かつ高速の斬撃を用いて才能ラベルによる犯罪に立ち向かう。黒スーツ姿で、右手は義手。目の下には常に隈が浮いており、その風貌で十五条平太は初対面時にヤクザと誤解したが、性格は気さくで「何はなくとも愛と勇気は標準装備」をモットーとしている。 かつては警察の特殊部隊で史上最年少の小隊長を務めた優秀な人物だったが、部下にして友人であった能登総一郎の裏切りに会い、部隊が全滅。自らも右腕を失った。本来は才能ラベルに適合しない体質であり、Hi-Fiラベルは義手に貼っている上、無理な身体改造によって起動させている。
十五条 平太 (じゅうごじょう へいた)
高校一年生の少年。才能ラベルが適合しない体質のため周囲から無能扱いされた経歴があり、自らの能力を発揮することや自分の居場所を求めている。そのため学校には不登校気味で、アルバイトの傍ら中学時代の先輩に誘われて違法ラベルの運び屋に手を染めていた。偶然ソクラテスのHi-Fiラベルに適合し、目にした人物の身体情報や使用ラベルを瞬時に見抜く能力を得る。 貫寺晃作に出会い、六攻特課に誘われたことで、高校に通いながら同課の情報解析役となる。学校で同級生の明日川翌人と顔見知りになるが、彼が景観モグラであることには気づいていない。
久世 菜乃 (くぜ なの)
十五条平太と同じ高校に通う、年上で幼なじみの女性。高校生になってから悪い仲間とつるむようになった平太を心配している。貫寺晃作に「(平太を)彼氏」と言われると否定するが、しばしば平太を異性として意識する素振りを見せる。
惨山 ミリ (さんやま みり)
警視庁六攻特課の課長補佐を務める女性警察官。Hi-Fiラベルの適合者ではないが、課内の情報の管理や伝達などを担当しており、事実上課の仕切り役となっている。六攻特課の他のメンバーが、捜査でしばしば大きな被害を出してしまうため、警察上層部などに頭を下げてまわる役割になっている。それで、よく愚痴をこぼす。
絵草 計 (えくさ けい)
警視庁六攻特課のメンバー。ひっつめ髪と大きなサングラスが特徴で、ラフな服装をした青年。ニュートンのHi-Fiラベル適合者であり、引力の演算と制御を操る能力を持つ。六攻特課で支給されたモーター内臓ローラースケートを使用し、その特殊能力と相まって機動戦で活躍する。貫寺晃作に敗れた過去があり、再戦のため六攻特課にいると言っているが、内心では貫寺を気に入っていることを十五条平太に見抜かれている。 口が悪く粗暴な反面、時間には几帳面。
岡田 ヘクト (おかだ へくと)
警視庁六攻特課のメンバーの少年。聖徳太子のHi-Fiラベル適合者であり、複数の情報を同時並列処理できる。その能力をもって情報収集と潜入工作を担当するほか、遠隔操作ユニットを用いて多人数の敵を制圧する任務を受け持つ。しかし常人の十倍の情報処理は脳への負担が大きく、普段は寝ており、目が覚めている間も無気力でいることが多い。 天涯孤独な身の上であり、貫寺晃作にスカウトされ六攻特課という居場所を与えられたことで、貫寺に強い恩義を感じている。年齢は不詳だが、十五条平太とは歳が近いらしく、対等な話し方を認めている。
明日川 翌人 (あすかわ よくと)
才能ラベルを発明し、世に放った男。社会の表舞台には立たず、「LANDSCAPE MOLE」というハンドルネームのみが世に知られているため「景観モグラ」という通称のみが広まっている。羽根つきの帽子をかぶった十代半ばの少年の姿をしている。製作者だけにHi-Fiラベルを多数所持しており、多彩な能力で六攻特課の面々とも互角以上に渡り合う。 十年以上前に不公平な社会を是正しようと才能ラベルを作り出したが、ただの便利な道具として社会に組み込まれてしまったことに憤り、原型であるHi-Fiラベルを使って革命を起こそうとしている。まれに眼鏡をかけた気弱そうな少年として高校に通うが、正式に生徒として在籍しているかは不明。実は双生児の兄であり、弟と協力して才能ラベルを作り出したが、政府がラベルの独占を目論んで弟を捕えたため、その解放を求めて国会議事堂を襲撃した。
能登 総一郎 (のと そういちろう)
宮本武蔵のHi-Fiラベル適合者の男性。明日川翌人(景観モグラ)に協力している。かつては警察の特殊部隊に属し、貫寺晃作の部下にして友人だったが、渋谷への出動中に突然仲間たちに斬りかかり、貫寺以外を殺害。貫寺の右腕を切断した。秘かに募っていた貫寺への嫉妬が、Hi-Fiラベルへの適合をきっかけに強まった結果と思われるが、詳細は不明。 渋谷と国会議事堂で貫寺と戦うが、戦いの最中に命を救われ、戦意を失って逮捕された。
奥田 文七 (おくだ ぶんしち)
呂布のHi-Fiラベル適合者の男性。渋谷に出現し、大型バスを片手で持ち上げるほどの力をもって単身で暴動を起こした。Hi-Fiラベルは明日川翌人(景観モグラ)から受け取ったが、暴動は個人で勝手に行ったものであり、出動した貫寺晃作に敗れた後、能登総一郎に粛清された。
恩上 紗音 (おんがみ しゃのん)
明日川翌人(景観モグラ)に協力する、タクシー運転手の青年。国会議事堂を襲撃する景観モグラのもとへ千値キロを送り届ける役割を負った。ベートーベンのHi-Fiラベル適合者で、音を介して空間を把握する能力を運転に活かし、武装した改造タクシーで六攻特課の追撃と渡り合った。景観モグラとは一回の仕事ごとに契約するビジネスライクな関係であり、才能を活かして楽しく仕事ができればそれでいいと考えていた。 そのため景観モグラに契約を打ち切られた後は六攻特課と交渉して、釈放を条件に協力した。その後も六攻特課に出入りしているが、気分が乗らない仕事には手を貸さず、協力する場合も運賃を要求という特殊な立場のままでいる様子。
千値 キロ (せんち きろ)
明日川翌人(景観モグラ)に見出され、国会議事堂襲撃に利用された幼い少女。ノーベルのHi-Fiラベル適合者であり、泣くと周囲の火薬類を起爆させる能力を持つ。彼女自身には景観モグラに協力する意志はないが、恩上紗音のタクシーで運ばれる際に六攻特課の追撃を受けたこと、国会議事堂で景観モグラに不安を煽られたことなどで、心ならずもその能力を発動させてしまった。 国会議事堂襲撃事件が片付いた後、保護される。
集団・組織
六攻特課 (ろっこーとっか)
才能ラベルでの犯罪に特化した、警視庁の特殊部隊。正式名称は「警視庁捜査六課対才能犯罪攻性特務課」。貫寺晃作のいた特殊部隊が能登総一郎の裏切りで壊滅した後、口封じのため閑職に送られた貫寺が、自らHi-Fiラベル適合者をスカウトして独自に発足させた。オフィスは「八十六商店」という駄菓子屋の地下。
その他キーワード
才能ラベル (あびりてぃらべる)
人間の才能をデータ化した、名刺サイズのラベル。人体に貼ってバーコードを指でなぞることによって起動し、貼られた人間にデータ化された才能を与える。例えばピザの配達をするには配達人が「運転」のラベルを貼ることを義務付けられているなど、生活に密着したものとなっている。世に現れたのはおよそ10年前。「LANDSCAPE MOLE」と名乗る人物がデータバンクに公開したデータを各企業が解析、および調整したものが、「才能ラベル」という名で流通している。 原型であるHi-Fiラベルとは異なり、データバンクからダウンロードすることにより、ほとんどの人間が使用できる。その反面、ラベル1枚につき1種類の才能しか持ち得ず、得られる能力もその分野のプロならば身につけられるレベル。 ただし軍事用など、一般社会にとっては危険なものも含まれており、年齢や資格で使用が制限されるものも含まれている。
Hi-Fiラベル (はいふぁいらべる)
明日川翌人(景観モグラ)と彼の弟が発明した、歴史上の偉人の才能をデータ化して適合者(ローダ)に与える効果を持つラベル。才能ラベルと異なり、適合する者は極めて希だが、いざ適合した場合に与えられる能力は絶大。物理法則さえ無視したかのような能力さえ存在する。才能をデータ化された偉人の名は、例えば「佐々木小次郎：SSK=KZR」のようにイニシャルでファイリングされている。 才能ラベルが、生来の才能による格差社会の解消にならなかったことに憤った景観モグラは、原型であるこのHi-Fiラベルを秘かに流布させ、強い意志と力を持つ一部の者が凡人たちを引っ張る、という強力な社会を目指していた。適合の条件は先天的な体質と思われていたが、景観モグラによれば、人の持つ強い意志や願望に、Hi-Fiラベルが反応して適合するという。
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