マリーベル

マリーベル

18世紀後半のフランスを舞台に、フランス人の少女・マリーベルがフランス革命という激動の時代の波に翻弄されながら、生き別れの兄アントワーヌを探し舞台女優として生きてゆく姿を描いた演劇・歴史漫画である。『ロリィの青春』『炎のロマンス』に続く上原きみ子の代表作。

正式名称
マリーベル
ふりがな
まりーべる
作者
ジャンル
西洋史
 
演劇
 
俳優・女優
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概要・あらすじ

18世紀後半、イギリスでランバート公爵家に拾われた少女マリーベルは、後継ぎのロベールと親しくなり、愛を育む。だが、身分違いのため恋を諦め、生き別れの兄アントワーヌを探すためもあってフランスに渡る。旅芝居の一座で演劇に触れ、女優への道を志すようになるマリーベル。だが、フランス革命は、舞台の世界にも大きな変化をもたらしていく。

登場人物・キャラクター

主人公

金髪碧眼、吸い込まれそうな大きな瞳の美少女。フランスに生まれるが、1778年、5歳のときに家を追われ、兄とともに貨物船で対岸のイギリスに捨てられた。ドーバーにあるランバート公爵の別荘にたどり着いた後、... 関連ページ:マリーベル

ルイ・アントワーヌ・レオン・フロレル・ド・サン・ジュスト (るいあんとわーぬれおんふろれるどさんじゅすと)

真ん中で分けた肩に届くくらいの金髪。マリーベルの生き別れの兄。マリーベルをランバート公爵家に残してフランスに戻り、荒れた生活をしていたが、マリーベルの活躍を目にして奮起。執筆活動などを始めた。この執筆活動から生み出された『オルガン』は、発禁処分を受け、これにより指名手配を受けている。 女優のジャンヌに強引にキスをしたために、彼女の信奉者であるフィリップからも追われ、マリーベルが演説をするというエサに引っかかって捕縛された。フランス革命が勃発したため、バスティーユ監獄行きを免れ、恩赦によって自由の身となった。その後、国民公会最年少の気鋭の政治家として政治の舞台に出る。 貴族の味方をする青いバラを追うが、マリーベルを救うために、その青いバラの扮装をしたこともあった。ロベスピエールと反ロベスピエール派の融和を目指すが失敗し、逮捕、処刑される。フランス革命まではマリーベルにふさわしい男になるまで正体を明かさないと、兄であることを隠していた。 そのせいもあって、マリーベルと恋仲だという噂が出ていた。モデルは実在の歴史上の人物、ルイ・アントワーヌ・レオン・フロレル・ド・サン・ジュスト。

ロベール・ランバート (ろべーるらんばーと)

マリーベルの運命の恋人。マリーベルが身を寄せたランバート公爵の後継ぎだが、病弱であったためドーバーの別荘で暮らしていた。9歳のとき、ランバート公爵が養子をとって後継ぎにしようとしたため、ロンドンに乗り込んでいる。身分違いを理由にマリーベルとの結婚が叶わず、マーガレット王女と婚約するが、自堕落な生活を続けたため、婚約は破棄された。 この頃、プレイボーイとして浮名を流している。フランス革命で無実の貴族までもが命を奪われることを憂えて、貴族を救出するために青いバラとなった。その活動中にマリーベルと再会。お互いに独り者だと知って婚約し、イギリスに戻っている。 だが、マリーベルがサン・ジュストの恋人だという噂を聞き、距離を置いてしまったため、マリーベルから婚約解消を言い渡される。黒いバラからマリーベルを警護する任につくが、この際、青いバラの正体がロベールだとバレてしまう。マリー・アントワネット救出のためにフランスへ渡るも計画は失敗している。 フランスに滞在するさなか、マリーベルから逮捕されていたサン・ジュストの救出を懇願され、彼を助け出している。その後、ふたりが兄妹だと知って、マリーベルと和解した。だが、その喜びを噛み締める暇も無く、公会軍の急襲を受けて逃亡を余儀なくされる。逃亡のさなか、マリーベルに恋心を抱き、また、彼女のロベールへ対する気持ちを知っていたジュリアンと出会う。 彼が身代わりとなってくれたことで、ロベールは無事に逃亡を果たし、ドーバーの町はずれにある白い花の咲く丘で、マリーベルとの再会を果たした。

ジュリアン・タル・タラン (じゅりあんたるたらん)

役者嫌いのタル・タラン家の次男。士官学校の生徒でロベール・ランバートに似ている。マリーベルがレアンドルの死の責任を追及するために裁判所への告発を試みたが叶わず、セーヌ河に身を投げた際、彼女を助けた。デュガゾン演劇学校の学友と付き合っていたが、彼女が役者であることを理由に振ったため、これをマリーベルから非難される。 その後、タル・タラン公爵邸にマリーベルを置くようになり、マリーベルの旅に同行。この旅でマリーベルの出生の秘密が明らかになった。マリーベルがタル・タラン公爵邸を出た際には、彼女についていった。マリーベルに好意を抱くようになり、彼女とシモーヌの共同生活を助けるが、マリーベルのロベールへの気持ちが揺るがないことから傷心のまま渡英。 その後、フランスに戻ってマルロー一座に参加した。役人に追われて逃げ込んできたロベールをかばい、彼の身代わりとして青いバラの扮装で飛び出したところを銃殺される。

ジャンヌ・ド・モロー (じゃんぬどもろー)

マリーベルの女優としてのライバル。サン・ジュスト家の後妻に入ったリリアナの娘。16歳でコメディ・フランセーズの舞台、『アクロポリスの市民』のヘレナ役でデビュー。それ以来の看板女優で、ダジル侯爵の前夫人の娘。実の父は誰とも知れない。前夫人を追い出した現夫人の息子を跪かせたいためにレアンドルとの婚約を進めた。 男性不信が激しく、演劇だけに人生を捧げている。アントワーヌにキスをされたことを怒り、マリーベルの演説があるとでっち上げてワナを張り、アントワーヌを捕縛。バスティーユ監獄に送らせようとするが、革命が勃発して断念。だが、これらの経緯を経て、アントワーヌと恋に落ちている。 1793年、青いバラと協力してマリー・アントワネットの救出を企んだが、捕らえられ処刑される。実はマリーベルの姉であり、アントワーヌの妹であったが、このことは知らないままだった。

レアンドル

マリーベルが身を寄せたマルロー一座の座長。ダジル侯爵家の跡取り。役者だった実の父クロード・マルローの一座を継ぎ、役者一筋を自認する。母はダジル侯爵夫人で、侯爵からも後継ぎになることを求められている。自作の『椿館のテレーズ』の台本を母のダジル公爵夫人が奪ってジャンヌ・ド・モローに演じさせ、彼女を婚約者として発表。 それを取り消させようとしたマリーベルともども、密通罪の濡れ衣で逮捕された。マリーベルを釈放させるために婚約を承諾し、保釈された3ヶ月の間に国外逃亡を計画。一座の舞台の途中で逃げる計画が官憲に見つかったため頓挫し、銃弾を受けたまま舞台に上がり『ロミオとジュリエット』を最後まで演じて絶命。

フランソワ・タル・タラン (ふらんそわたるたらん)

演劇嫌いのタル・タラン家の三男。病弱で巻き毛の長髪をしている。マリーベルがコメディ・フランセーズへの入学のための紹介状に行き擦りのタル・タラン公爵からサインだけをもらったが、それを誤解して咎めた。マリーベルが紹介状なしでコメディ・フランセーズまでたどり着いたことで認識を改め、味方をするようになる。 フランス革命でタル・タラン公爵邸が襲われたところを青いバラに救出され、イギリスに渡る。黒いバラの手にかかって死亡。

フランソワ・ジョゼフ・タルマ (ふらんそわじょぜふたるま)

マリーベルの女優としての師。短髪ながら前髪などがくるくるとしている。マリーベルがロンドンで初めて見た芝居に出演。パリのコンデ劇場でジャンヌ・ド・モローの演技に感動したマリーベルに、終幕後の舞台に立つことを許したこともある。デュガゾン演劇学校に入学したマリーベルの個人教授に志願し、彼女を教えている。 マリーベルに見学させるために連れて行ったコメディ・フランセーズの舞台では、衣装をめぐってジャンヌ・ド・モローと衝突しマリーベルを出演させることになる。その舞台が評判になってコメディ・フランセーズの次の公演にマリーベルが呼ばれると、主演男優を務めるようにデュガゾンから指示された。 その後もマリーベルを相手とする主演を努めて、革命派の舞台をリードした。モデルは実在の俳優、フランソワ=ジョゼフ・タルマ。

マーガレット

イギリス・ハノーバー朝の王女。小さい頃からロベールに憧れていた。ロベールが恥をかかされそうになったため、マリーベルが婚約者がいると言い出したとき、自分がそうだと口裏を合わせた。王家の者の発言とあって嘘だと言うこともできず、そのまま婚約をすることとなる。その後ロベールが自堕落な生活を続けたためクラレンス公と結婚。 次第にクラレンス公へと気持ちが向いていった。

シモーヌ

マリーベルの友人。マリーベルが身を落ち着けたアパートの隣人ドリーヌの妹。姉の遺児ピエールを育てている。結婚をしないと宣言していたが、ジュリアンに惹かれてしまう。それでもマリーベルに協力した、平民の理解者。

クラレンス公

イギリス・ハノーバー朝の王子で、兄のジョージ四世の死後、即位してウィリアム四世となる。ロベールのことが気に入って、側に置こうとする。いとこにあたるマーガレット王女が好きであったため、マリーベルと別れてから自堕落な生活を送っているロベールとの結婚を認めなかった。 形式の上でだけマーガレット王女と結婚したが、真剣なプロポーズはそれから4年後であった。モデルは、歴史上の実在の人物で、イギリスおよびハノーバー王国の国王、ウィリアム四世。

フィリップ

ジャンヌ・ド・モロー一筋の青年貴族。ジャンヌに強引にキスをして怒りを買ったアントワーヌを追う。マリーベルにも敵対的だったが、その演技にジャンヌと共通するものを見いだす。ロベスピエールから「青いバラの正体を明らかにすればジャンヌを助ける」と持ちかけられ、黒いバラを名乗ってイギリスにいる亡命貴族を殺害した。 マリーベルを攫って青いバラを誘い、反撃されて死亡。遺言で、手下に青いバラの正体が、ロベール・ランバートであることを伝えた。

ウイリアム・ランバート (ういりあむらんばーと)

恰幅のいい公爵。マリーベルが拾われたドーバーの別荘の持ち主。妻メアリーとの間に息子ロベールと娘エリザベートがいた。エリザベートが生まれつき盲目なのを悩んだメアリーのためにドーバーの別荘で静養させていたが、無理心中を図ってエリザベートとメアリーは死去。 ロベールも錯乱してこもりがちになる。マリーベルと過ごすうちに、ロベールが立ち直り、元気になったという報告を受けたが、これを信じきれず、後継ぎの養子をとろうとした。ロベールとマリーベルとの恋は、ふたりの身分が違うことを理由に反対している。だが、後に、ロベールがフランスでマリーベルと婚約して帰ってきたときはこれを認めるようになった。

集団・組織

コメディ・フランセーズ (こめでぃふらんせーず)

『マリーベル』に登場する組織。当時、唯一の国家運営劇団。演目に関係なく、当時の貴族の服装で演技をしていたが、マリーベルが1787年に『アクロポリスの市民』で史実に忠実な衣装で演じて話題となる。宮廷の命を受けて『貴族万歳』を上演していたが、この舞台でマリーベルが「フランス万歳」と叫んだため、市民4名の死者と150名の負傷者、貴族788名の死傷者を出す大騒動が巻き起こった。 このためマリーベルは、2年間の出演禁止処分を受けている。その後、革命劇を求められるが、王党派の役者は出演せず、革命派のみで上演された。双方の対立が激しくなって分裂したこともあって、独占権が剥奪されている。王党派がコメディ・フランセーズを継続し、タルマを筆頭にした自由と平等の劇場と競うようになる。 モデルは実在の劇団、コメディ・フランセーズ。

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