ヒストリエ

ヒストリエ

スキタイ人ながらギリシアの有力者の養子として育ち、数奇な運命から一度は奴隷の身分に落とされるも、やがてアレクサンドロス大王に仕えた書記官エウメネス。紀元前4世紀の古代オリエント世界を舞台に、彼の視点から、その生涯と同時代の歴史を追う。第14回文化庁メディア芸術祭マンガ部門大賞受賞(2010年)、第16回手塚治虫文化賞マンガ大賞受賞(2012年)。

正式名称
ヒストリエ
ふりがな
ひすとりえ
作者
ジャンル
古代史
レーベル
アフタヌーンKC(講談社)
巻数
既刊11巻
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概要・あらすじ

紀元前343年、ギリシア北東トラキアの都市カルディアマケドニア軍に包囲されていた。数年ぶりにこの故郷に戻ってきたエウメネスは、同じくカルディア市内に入ろうとする、隻眼の商人アンティゴノスと出会う。この出会いが、スキタイ人の出自を持ちながらカルディアの有力者の養子として育ち、一度は奴隷の身分に落とされるも、自らの能力で運命を切り開いてきたエウメネスの人生の舞台を大きく変えることとなる。

登場人物・キャラクター

エウメネス

カルディアの有力者ヒエロニュモス(先代)の次男として何不自由のない環境で育つ。古今の書物を読み漁り、神話や冒険譚から実録まで豊かな教養と知識を身につけた。トラクスが起こした事件によってヒエロニュモス(先代)が亡くなった時に初めて、養子であり、その出自はスキタイ人であることを知らされる。 以降奴隷の身に落とされるも、ボアの村での争いを経て再びカルディアに帰還。そこで出会ったマケドニア王フィリッポスに気に入られ、彼に仕える書記官となる。幼い頃より利発で弁が立つと同時に、スキタイの血ゆえか身体能力も高い。同時代の実在人物エウメネスがモデルとなっている。

バルシネ

ペルシア帝国トロイアス州総督の妻。ギリシア人の夫に合わせてギリシア風の服装をしている。ペルシア帝国にスパイ容疑で追われている哲学者アリストテレスの捜索途中にエウメネスに出会う。同時代の実在人物バルシネがモデルとなっている。

メムノン

ペルシア帝国トロイアス州総督の弟。バルシネの義弟。同時代の実在人物メムノンがモデルとなっている。

アリストテレス

ギリシアの哲学者。ペルシア帝国からスパイ容疑で追われていたときにエウメネスに出会う。マケドニア王フィリッポスとは旧知の仲で、後にミエザで学園を開き、アレクサンドロスや幹部候補の青年たちを指導する。同時代の実在人物アリストテレスがモデルとなっている。

フィリッポス

マケドニア王。商人アンティゴノスを名乗りカルディアに潜入していた時に出会ったエウメネスを気に入り、自分の下で働くように誘う。隻眼。同時代の実在人物フィリッポス2世がモデルとなっている。偽名として使っていたアンティゴノスも同時代の実在人物だが、こちらは作中未登場である。

メナンドロス

商人アンティゴノスに随伴する剣の腕が立つ従者。その正体はマケドニアの貴族である。エウメネスがマケドニアに仕官した際には、フィリッポスの勅命でエウメネスに馬術を教えた。同時代の実在人物メナンドロスがモデルとなっている。

パルメニオン

マケドニアの将軍。カルディアの包囲を指揮していた時にエウメネスと会う。フィリッポスの信頼も厚く、ギリシア随一の名将と呼ばれているマケドニア軍の重鎮。同時代の実在人物パルメニオンがモデルとなっている。

ヒエロニュモス(先代)

エウメネスの養父。カルディアの有力者。奴隷貿易が盛んなこの地方の有力者の例に漏れず、彼もまたスキタイなどの異邦人(バルバロイ)を捕えて売り飛ばす奴隷狩りを生業としていた時期があった。エウメネスを拾ったのもその時で、母親の死体を見ても表情を変えなかったエウメネスを英雄の血を持つ者と思い、養子に迎えた。 トラクスの起こした事件のさなか、命を落とす。

ヒエロニュモス

エウメネスの義兄。ヒエロニュモス(先代)の実子。出来のいい弟と比較されることを苦痛に思っていたが、後に和解。エウメネスの幼少期のことを後世に書き残した人物でもある。同時代の実在人物ヒエロニュモスがモデルとなっている。

テレシラ

エウメネスの養母。ヒエロニュモス(先代)の前では泣かなかったエウメネスが自分の前では涙を流したことから、才気に溢れ大人びているエウメネスも普通の子供と同じ感性があることを知っている。エウメネスをわが子同様に育て、家を出て行った後もずっと彼の身を案じていた。

ヘカタイオス

ヒエロニュモス(先代)の側近。トラクスの起こした事件に乗じてヒエロニュモス(先代)を殺害、家とカルディアの実権を握る。エウメネスの出自を暴露して奴隷に身分を落とさせ、その後奴隷商人に売り飛ばした。同時代の実在人物ヘカタイオスがモデルとなっている。

カロン

ヒエロニュモス(先代)に仕える奴隷。少年期のエウメネスの従者だった。奴隷狩りに参加していたため、エウメネスの出自は初めから知っていた。エウメネスが奴隷に身分を落とした後も、扱いはやや粗雑になったものの、変わらぬ気持ちで接してくれた。

トラクス

カルディアの高利貸しに買われたスキタイ人の奴隷。両足にまともに歩けないような短い鎖をつけられ、街の人びとが心を痛めるほどの虐待を主人から受けていた。鎖を外された日、主人の一家を斬殺し脱走する。エウメネスとは同族の匂いを感じてか、無言の信頼に似た関係があった。

サテュラ

ボアの村の前村長の娘。難破して村に居ついたエウメネスを最初は訝しげに見ていたが、次第に惹かれるようになる。ダイマコスと婚約をしているが、顔を合わせたことはない。

バト

ボアの村の青年。村一番の剣の使い手で、エウメネスに剣技を教える。村の若者のリーダー的存在。

ダイマコス

ボアの村の近くにあり、主要な取引先でもあるティレス市の有力者フィレタイロス家の長男。先代が臥せったのを良いことに、ボアの村を併合しようと兵を差し向けてきたが、エウメネスに策略を授けられた村人たちによって返り討ちに遭う。

テレマコス

ボアの村の近くにあり、主要な取引先でもあるティレス市の有力者フィレタイロス家の次男。兄ダイマコスの横暴に胸を痛めている。

アレクサンドロス

マケドニア王フィリッポスの第4王妃オリュンピアスの子。文武の才を兼ね備えた、家臣思いの優しい王子。周囲の期待を受けが、父王にはまだ及ばないと思い、ミエザの学園で同年代の少年たちと共に研鑽を積もうとしている。両瞳の色が異なるオッドアイで、蛇のような痣が顔にある。 二重人格者で、ヘファイスティオンというもうひとつの人格がある。同時代の実在人物アレクサンドロス3世がモデルとなっている。

オリュンピアス

マケドニア王フィリッポスの第4王妃。アレクサンドロスの母親。夫のほかに何人も愛人を作っている。そのうちの一人との情事をアレクサンドロスに目撃された際には、躊躇無く男を殺害。衝撃を受けたアレクサンドロスの心を守るため、彼にヘファイスティオンというもうひとつの人格を与えた。 同時代の実在人物オリュンピアスがモデルとなっている。

アッタロス

マケドニア貴族の一人。妻はパルメニオンの娘。先妻との間に生まれた子を戦で失って以来、やや自棄になっているところがある。フィリッポス王の書記官となったエウメネスを居候させている。同時代の実在人物アッタロスがモデルとなっている。

エウリュディケ

アッタロスの姪。アッタロスに似たおおらかな性格。エウメネスの考案した将棋で才を見せる。同時代の実在人物エウリュディケがモデルとなっている。

ディアデス

ポリュエイドスの工房の技術者の男性。外国人だがマケドニアの兵器製造の中心人物。アッタロスの庭にある池の仕掛けも彼の手によるものである。同時代の実在人物ディアデスがモデルとなっている。

アンティパトロス

マケドニアの元老。パルメニオンと並び王家の両輪と称され、王国宰相の役割を果たす。外国人の登用を積極的に行っているため、雇用外国人からの支持を集めている。同時代の実在人物アンティパトロスがモデルとなっている。

ペウケスタス

ミエザの学校の近くに住む農民の青年。川に落ちたアレクサンドロスの学友ハルパロスを偶然助けたことから、アレクサンドロスに感謝され、共に学校に通えるよう取り計らってもらえることとなる。同時代の実在人物ペウケスタスがモデルとなっている。

カレス

アテネの将軍。ギリシア統一を目指すマケドニアの攻撃目標となったビザンティオン防衛の任に就く。かつてペルシア帝国軍を破った功績があり、「英雄」と呼ばれているが、それを疑問視する者も多い。同時代の実在人物カレスがモデルとなっている。

フォーキオン

アテネの弁論家で将軍。穏健派の政治家でもあり、平和主義者ゆえに自ら立候補などしないものの、その誠実な人格と能力の高さから、毎年のように将軍職(ストラテゴス)に選出されている。ペリントス攻略に向かったマケドニア艦隊を打ち破った後、ビザンティオンの援軍に赴く。同時代の実在人物フォーキオンがモデルとなっている。

デモステネス

アテネの弁論家で政治家。実質的なアテネの指導者であり、対マケドニア主戦派。同時代の実在人物デモステネスがモデルとなっている。

場所

ボアの村

小アジア北西部パフラゴニアにある小さな村。船が難破し遭難したエウメネスを助け、村に置いた。

カルディア

トラキア地方の突端に位置するアテネの植民市。

マケドニア

紀元前7世紀頃、ギリシア人によって建国された国家。古代ギリシアの都市国家群と異なり、王制を敷いていた。

書誌情報

ヒストリエ 11巻 講談社〈アフタヌーンKC〉

第1巻

(2004-10-21発行、 978-4063143584)

第2巻

(2004-10-21発行、 978-4063143591)

第3巻

(2005-11-20発行、 978-4063143959)

第4巻

(2007-07-23発行、 978-4063144604)

第5巻

(2009-02-23発行、 978-4063145496)

第6巻

(2010-05-21発行、 978-4063106626)

第7巻

(2011-11-22発行、 978-4063107876)

第8巻

(2013-08-23発行、 978-4063878967)

第9巻

(2015-05-22発行、 978-4063879131)

第10巻

(2017-03-23発行、 978-4063882100)

第11巻

(2019-07-23発行、 978-4065156483)

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