ポケットの中の唄

ポケットの中の唄

嬉しいときや寂しいときなどにふと口ずさむような唄をテーマにしたオムニバス作品。いろいろなシチュエーションで、さまざまな登場人物の心理描写を交えながら、唄を思い出す場面をノスタルジックに描いている。「雲遊天下」第40号から第44号にかけて、「アックス」Vol.111からVol.131にかけて掲載された作品。

正式名称
ポケットの中の唄
ふりがな
ぽけっとのなかのうた
作者
ジャンル
日常
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あらすじ

ある日の夕方、ウイスキーを買った男は何十年も歌っていない唄をふと思い出した。そして彼は、その唄と同時に、ある一人の女性と飲んだウイスキーの味も思い出しながら帰途に就く。(エピソード「ウイスキー」)

登場人物・キャラクター

ウイスキーを買った男

エピソード「ウイスキー」に登場する。ウイスキーを買って帰宅する男性。帰宅途中に急に何十年も歌っていない唄を思い出し、その当時に一人の女性といっしょに飲んだウイスキーの味も思い出す。

雪の町を歩く女

エピソード「雪の町」に登場する。雪が降る中で歩いている女性。起床した時に雪が降っているのを見て、雪の中を歩くために遠くまで出掛ける。地面に触れるとすぐに消える雪を見ながら、一番好きな雪の唄を考えながら歩いていく。

銭湯帰りの女

エピソード「煙草の月」に登場する。銭湯に入って帰宅している女性。帰宅途中に吸った煙草の煙が、月に重なるのを見て心の中で本音をこぼしてしまう。その後、心が軽くなった女性は好きな月の唄を歌いながら帰宅する。

唄を聞き続けた女

エピソード「ノック」に登場する。若い頃に好きだった人からもらった唄を聞き続けている女性。理解するのが難しい唄だったが、何度も聞き続けたことで自分もその唄が大好きになる。唄をくれた人とはもう長いあいだ会っていないが、大好きになったこの唄は自分の心を躍らせてくれる存在となっている。

お金を借りた男

エピソード「富豪」に登場する。遠くの町までお金を借りに行った男性。帰り道にふとさまざまな感情がよみがえり、何曲も唄を口ずさむ。歌っているうちに幸福感が高まって声を出して笑い出す。

猫好きな少女

エピソード「猫の唄」に登場する。猫のことが大好きな少女。家では猫が飼えないため、友達からもらった猫の写真を眺めている。小学校からの帰り道に猫の唄を歌おうとしたがあまり覚えていなかったため、自分で猫の唄を作り始める。

庭で歌う男

エピソード「しっぽ」に登場する。庭で一人歌う男性。自分の唄を聞いたペットの犬のコロが、楽しそうにしっぽを振ってくれるのを見て嬉しくなる。

唄いながら帰宅する少年

エピソード「唄の道」に登場する。小学校から帰るときに唄を歌う少年。唄が好きで毎日いろいろな唄を歌っている。ある日、習ったばかりの新しい唄を歌いながら帰っていたところ、歌い終わる前に家に着いてしまう。

桃を買った女

エピソード「桃の夏」に登場する。帰宅途中に桃を買った女性。桃を見ながら、子供の頃の夏の思い出やその時に歌った唄に思いを馳せる。

学校帰りの少年

エピソード「放課後の思索」に登場する。学校から帰る途中の少年。放課後に流れる音楽を聞くと毎回寂しい気持ちになる。ほかの人も寂しくなるのか、寂しくなる色や形があるのかなどを考えていたら頭が混乱してきたため、寂しくならない唄を歌い始める。

入院中の女

エピソード「ラジオ」に登場する。入院している女性。入院中にラジオを聞く楽しみを覚え、消灯後は静かにラジオを聞いている。ある夜、小学生の時に好きだった唄を久々にラジオで聞いて得した気分になる。

気分のいい女

エピソード「スズメの唄」に登場する。気持ちよく目を覚ました女性。部屋の外にいるスズメの声が唄のように聞こえて気分がよくなり、日曜日の朝だったこともあってもう少し寝ることにした。

一人で作業する女

エピソード「声」に登場する。誰とも話さずに一人で作業する女性。作業中はCDをかけながら唄を歌っている。自分の声を聞きながら、唄について自問自答する。

好きな唄を歌う男

エピソード「うろおぼえ」に登場する。好きな唄を歌っている男性。好きな唄の歌詞がうろ覚えなため、勉強してしっかり歌えるようになろうとしている。しかし、ちゃんと覚えると歌えなくなってしまい、別のうろおぼえな唄を歌うようになる。

アイスクリームを買った女

エピソード「アイスクリーム」に登場する。帰宅途中にアイスクリームを買った女性。久しぶりに食べたアイスクリームの味で子供の頃のことを思い出し、当時歌っていたアイスクリームの唄を歌い始める。

いじめられている少女

エピソード「小さな声」に登場する。小学校でいじめを受けている少女。下校時にみんなが自分をいじめる理由を考えて気持ちが落ち込んでいる。気分を変えるために楽しいことを考えようとして図書室で借りた本の存在を思い出し、早く読みたい気持ちから自然と唄を歌い始める。

合唱部に所属している少女

エピソード「お父さんの唄」に登場する。中学校の合唱部に所属している少女。父親がお風呂で古い昭和の歌謡曲を歌うことを嫌っている。

父親がいない少女

エピソード「雨の中で」に登場する。合唱部に所属している少女の友達で、同じ中学校に通う少女。生まれた時には父親がいなくて、ずっと母親と二人で暮らしている。友達から父親の唄への愚痴を聞かされ、自分の家では母親の唄を聞いたことがないと気づく。

タマ拾いをする少年

エピソード「グラウンド」に登場する。ノック練習のときにタマ拾いをしている少年。ポジションはライトの後ろだが、ライトを守る大橋がうまいためにボールがあまり飛んでこないので練習中はヒマなことが多い。そんなときは小さい頃に見たテレビの唄を歌っている。

家事を手伝う少年

エピソード「午後の唄」に登場する。買い物や洗濯などをして母親を手伝っている少年。手伝いが終わって休憩している時に、母親が聞いている唄を別の部屋で聞きながら寝てしまう。

塾帰りの少女

エピソード「秋の唄」と「冬の唄」に登場する。塾から帰宅途中の少女。夜空の星を見ながら、唄を歌って憂鬱な気分を吹き飛ばそうとしている。

新聞を読む女

エピソード「帰路」に登場する。新聞を読んでいる女性。訃報欄に若い頃に好きだった歌手の名前を見つけ、その歌手のレコードを遠くの町まで買いに行ったことや、早く聞きたくて急いで帰ったことなどを思い出す。

星が好きな少年

エピソード「ひとつ星」に登場する。秋のひとつ星が好きな少年。小学5年の時に友達の佐藤からひとつ星のことを教えてもらう。佐藤が中学の時に引っ越したために交流は途絶えたが、今でもひとつ星を見つけると口笛を吹いてしまう。

となりの席の女子が気になる少年

エピソード「ハスキー」に登場する。となりの席に座っているクラスメートの女子が気になっている少年。その女子はカゼが治ったものの本調子でないため、かすれ声となった女子と会話した際、初対面のような不思議な感覚となって女子のことを好きになる。帰宅後、少女のようなかすれた声の唄を聞きたいと思う。

クリスマスに思いを馳せる男

エピソード「クリスマス」に登場する。クリスマスの唄を聞いて子供の頃を思い出した男性。クリスマスプレゼントでもらったおもちゃを大事にしつつもいつの間にかなくしてしまい、なくしたことも忘れてしまったことを思い出して切なくなる。

勉強中の少女

エピソード「午後」に登場する。土曜日の午後に数学の宿題をしている少女。冬のある日、父親からもらった古いラジカセから流れるラジオを聞きながら勉強しつつ、春が来るのを待ち望んでいる。

子供と歩く男

エピソード「夢の子供」に登場する。夢の中で自分の子供と手をつないで歩いている男性。自分が小さい頃に放送された子供向け番組の唄を、子供が歌っているのを見ながら幸せをかみしめる。しかし現実には子供がいないため、目が覚めると夢でつないだ手のことを考えてしまう。

春を満喫する女

エピソード「春」に登場する。穏やかな春の日曜日に出掛けている女性。春の唄を歌いながら春のお菓子を買い、春らしさを感じながら一日を過ごす。

音楽が苦手な少女

エピソード「唄」に登場する。音楽が苦手で唄も詳しくない少女。兄から自作の唄を時折聞かされているが、いいか悪いか判断できず、長い唄という感想しか出てこない。地球にはすでに数え切れないほどの唄があって、いい唄もたくさんあるのにそれでも新しい唄を作る人の気持ちを不思議に思っている。

昔のことを思い出す男

エピソード「夜」に登場する。眠れない夜に昔のことを思い出してしまう男性。嫌なことや恥ずかしいことなど思い出したくない出来事ばかり思い出すため、知り合いの女性に愚痴をこぼすと、その女性からは「ロック」の一言で済まされてしまう。

図書館から帰る少年

エピソード「鐘」に登場する。図書館で本を借りた少年。帰りに気まぐれで山の道を歩き、途中で休憩して海を眺めながら唄を口ずさんでいる。遠くから夕方の鐘が聞こえて寂しい気持ちとなってしまう。

思い出せないことがある女

エピソード「謎」に登場する。記憶の中にある唄を断片的にしか思い出せない女性。唄といっしょに高校の時にクラスメートだった少年のことも断片的に思い出す。ちゃんと思い出せないことにもやもやするものの、なぜか嬉しい気持ちになる。断片的に思い出せる記憶を手がかりにパソコンで調べることもできるが、あえてやらずに自分の記憶だけで思い出そうとがんばっている。

ジンを飲む男

エピソード「ジン」に登場する。夏の夜にジンを飲む男性。ジンを飲んで、風が吹く草原や古いイギリスの唄を思い出し、放浪のあこがれや一人でいることの畏れなどを感じている。

いつも歌っている少女

エピソード「その子の唄」に登場する。自作の唄をいつも歌っている少女。食べ物や動物、散歩など誰もが好きそうなものから注射など嫌いなものまで、さまざまなものを題材にして唄を作っている。

月の思いを馳せる男

エピソード「月」に登場する。月が見えることに気持ちよさを感じている男性。月の唄を思い出しながら、時折月に向かって好きと言いたくなるほどに月への思いが強い。

風邪を引いている少女

エピソード「時計」に登場する。カゼで療養中の少女。静かな部屋で寝たり起きたりを繰り返すうちに、時計の音が気になって耳を傾ける。その後、時計の音も音楽の一種だと思うようになる。

オルゴールが好きな少年

エピソード「オルゴール」に登場する。オルゴールが好きな少年。音だけでなく機械部品を見るのも好きだが、自分のオルゴールを持っていないために姉のオルゴールを内緒で使っている。

オンチな女

エピソード「下手」に登場する。子供の頃からオンチな女性。唄自体は好きで、いろいろな唄を聞いている。特に好きなのは古いアメリカの女性の唄で、聞くとなぜか涙が出てくる。

散歩中の男

エピソード「窓」に登場する。初めての道を散歩している男性。通りすがりの家から聞こえた音楽が、10年以上前に自分も聞いていたラジオ番組のテーマソングだったため、男性は当時のことを思い出す。

唄で心を落ち着かせる女

エピソード「風」に登場する。心が荒んだときに唄を歌う女性。子供の頃の唄を歌いながら帰ると気持ちが落ち着くため、繰り返し歌っている。

昔を思い出した男

エピソード「中学日記」に登場する。小学生の唄を聞いて、自らの中学時代を思い出した男性。当時の思い出がよみがえり、懐かしさを感じながらその時の友達と歌っていた唄を口ずさむ。

雨音を聞く女

エピソード「雨音」に登場する。雨の日の休日に一人で雨音を聞いている女性。町にいるのは自分だけだという気分になり、雨の中で雨の唄を歌いたいと思うようになる。

失恋した男

エピソード「歌謡曲」に登場する。失恋して落ち込む男性。大好きな音楽を聞いたり、本を読んだりしても気分が晴れないために当てもなく歩き続けている。疲れるまで歩いたあと、たまたま見かけた居酒屋に入る。

海へ行った少女

エピソード「深呼吸」に登場する。夏休みが終わりそうな時期に海へ行った少女。海を見ているとなぜか嬉しい気分となり、唄を何曲も気持ちよく歌う。

のんきな男

エピソード「のんき」に登場する。のんきな顔をしてのんきな唄を歌う男性。しかし、心の中は悲しいことや苦しいことがいっぱいで、唄が途切れると思わずため息をついてしまう。

音楽を聞かなくなった女

エピソード「ポケット」に登場する。いつの間にか音楽を聞かなくなってしまった女性。学生の頃は音楽が好きだったが、今では流行の唄も人気の歌手もまったく知らない。散歩中に知らずに唄を口ずさんでいることに気づき、自分は唄が好きであると再認識する。

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