マリエル・クララックの婚約

マリエル・クララックの婚約

桃春花の小説『マリエル・クララックの婚約』のコミカライズ作品。マリエル・クララックはある日突然、国でも屈指の貴公子であるシメオン・フロベールに求婚された。マリエルは国中の令嬢にやっかみを受ける立場になるが、ロマンス小説家の彼女は、嫌みもいびりも小説のネタにしてしまう。地味な少女と貴公子の婚約から始まる、どこかズレた純愛ラブストーリー。コミックスには桃春花の書き下ろし小説「マリエル・クララックの憧憬」も収録されている。「コミックZERO-SUM」2018年11月号から連載の作品。

正式名称
マリエル・クララックの婚約
ふりがな
まりえるくららっくのこんやく
原作者
桃 春花
漫画
ジャンル
ファンタジー
 
恋愛
レーベル
ZERO-SUMコミックス(一迅社)
巻数
既刊8巻
関連商品
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あらすじ

第1巻

自他共に認める地味な貴族令嬢であるマリエル・クララックは、ある日突然、容姿端麗で王国屈指の出世頭であるシメオン・フロベールに求婚される。不釣り合いな婚約を不思議に思うものの、マリエルは父親より一つ言いつけをされるのだった。実はマリエルは裏で人気のロマンス小説家「アニエス・ヴィヴィエ」として活動しているが、その行動は令嬢に相応しくないと父親に見咎められていたのだ。婚約者にも小説家であることを秘密で活動するように言われるものの、シメオンに気づかれているかもしれないと思ったマリエルは大混乱する。一方、シメオンは周囲からの結婚への圧から逃げるため、都合のいい存在としてマリエルを婚約相手に選んでいた。しかし、風変わりなマリエルを見ているうち、自分でも気づかないうちに彼女へ執着を見せるようになる。そのことをゼウラン・ユーグ・ド・ラグランジュから指摘されたシメオンは、彼なりの方法で距離を縮めようとする。だがシメオンが、マリエルの小説の話を出したことで、二人の気持ちはすれ違っていく。そんな二人だったが、ゼウランが気をきかせて本音で語り合う場をつくってくれたことで思いを通じ合わせ、婚約者としての一歩を踏み出すのだった。

第2巻

マリエル・クララックシメオン・フロベールは、二人でサーカスの見物に向かう。そこで二人はポートリエ家の家督相続問題に巻き込まれたセドリックに出会い、彼から相談を受けるかたちでポートリエ邸に赴く。セドリックは平民でありながら貴族の遺産を受け継ぐ資格を得てしまい、何者かに脅迫を受けていたのだ。マリエルはセドリックの予想以上に深刻な状況に驚き、真剣に犯人捜しに打ち込むことを誓う。情報を集めるため、地味な外見を生かしてポートリエ邸のメイドにまぎれ込んだマリエルは、仕事の合間に貴族の噂話を収集し、パトリスが怪しいとにらむ。マリエルとシメオン、お互いに別の方向から事件の調査を行うが、その最中、二人はお互いに気持ちをすれ違わせてケンカしてしまう。マリエルはシメオンが女性となかよく話す姿を見て、自分の気持ちが嫉妬であることに気づく。シメオンへの気持ちを自覚したマリエルは、いつもの地味な姿を捨て去り、着飾った姿でセドリックのお披露目を目的とした夜会に参加する。ポートリエ邸の面々も夜会に参加しているが、その中でマリエルはセドリックが実は偽物だったことを知る。貴族の家で盗みを行う怪盗のリュタンこそが偽物の正体で、彼は伯爵家に盗みに入っていたのだ。リュタンは正体がシメオンにバレているのを知り、観念して捕まるものの、後日あっさり脱走。人を食った態度で、シメオンとマリエルの前から去っていく。

関連作品

小説

本作『マリエル・クララックの婚約』は、桃春花の小説『マリエル・クララックの婚約』を原作としている。小説版の内容は本作と同じく、地味系妄想少女のマリエル・クララックと、27歳にして未だ思春期のシメオン・フロベールの恋愛劇を描いている。

登場人物・キャラクター

マリエル・クララック

クララック子爵家の令嬢。ライトブラウンの髪をロングヘアにした少女で、眼鏡を掛けている。年齢は18歳。貴族令嬢だが、自他共に認めるほど性格も容姿も「地味」。子爵家も貴族の中では平均的な家で、取り立てて見るところのないふつうの女性と思われているが、実は「アニエス・ヴィヴィエ」というペンネームで活動しているロマンス小説家。アニエスの小説は女性を中心に人気を集めており、貴族婦人にもファンが多い。小説を書くために「萌え」を至上とする妄想少女で、あらゆる体験を小説のネタとし、変わった体験であれば陰湿な貴族からのいびりやいじめすら喜ぶズレた性格をしている。貴族の夜会にも小説のネタ探しに参加しており、地味な見た目を生かした情報収集はシメオン・フロベールから諜報のようと評されている。一方、恋愛小説を書くのは好きだが、恋愛経験自体は少ない。そのために情緒面が幼く、自分の本当の感情について無自覚な面が多い。シメオン・フロベールに婚約者として指名され、地味な自分が選ばれたことに動揺する。当初は実感がなく、自分の萌えを優先していたが、少しずつ心を通い合わせて淡い思いを抱くようになる。

シメオン・フロベール

名門であるフロベール伯爵家の嫡男で、年齢は27歳。近衛騎士団の副団長と、ゼウラン・ユーグ・ド・ラグランジュの護衛役も務めている。ゼウランとは幼なじみで気心の知れた仲。頭脳明晰で冷静沈着な性格の、怜悧(れいり)な雰囲気を漂わせた貴公子。異性からしょっちゅうアプローチされており、幼い頃から異性に言い寄られてきたため、女性のあしらい方もうまく、角の立たないやり方で切り抜けてきた。しかし、同時に女性の裏の顔を幼い頃から見てきたことで女性に幻滅しており、恋愛事の煩わしさから逃げ出すため、貴族社会でも変わり者のマリエル・クララックを婚約者として指名する。実は婚約の3年前、偶然マリエルが貴族の令嬢にいじめられている現場に出くわす。彼女を助けようとするが、小説のネタができたと喜ぶマリエルを見て絶句。それ以降は彼女に注目しており、「アニエス・ヴィヴィエ」がマリエルであることにも気づいている。女性にモテるが、上手にあしらってきたために実際は恋愛経験がほとんどなく、情緒面が幼い。マリエルのことは婚約相手として都合がいいと頭では考えているが、シメオン・フロベール自身も気づかぬうちにマリエルに執着を見せており、ゼウランからはその様を「27歳の思春期男」と指摘されている。

ゼウラン・ユーグ・ド・ラグランジュ

ラグランジュ王国の王太子。年齢は27歳。黒髪黒目の精悍な顔立ちをした青年で、明るく人当たりのいい性格をしている。護衛のシメオン・フロベールとは幼なじみで気心の知れた仲。そのため、プライベートではお互いに遠慮せず本音で語り合う。シメオンとは仲がいいが、シメオンの周囲に女っ気がないことから同性愛の気があり、シメオンと恋仲ではないかとひそかに噂されている。その事実を知った際には不本意なウワサを払拭するため、シメオンに一刻も早く結婚するように命令している。その経緯からマリエル・クララックとシメオンの婚約も気にかけており、二人の恋愛に関してのズレっぷりによくツッコんでいる。

ジュリエンヌ・ソレル

読書が趣味の貴族令嬢。マリエル・クララックとは同好の士で、親友の間柄。ただマリエルとは微妙に趣味の方向性が違うため、茶会では盛り上がりつつも話が微妙にかみ合っていないことがある。マリエルが小説を書いていることも知っており、その相談もたびたび受けている。マリエルがシメオン・フロベールと婚約した時も二人を祝福しつつ、マリエルの小説趣味についてはバレないように忠告した。

リュタン

貴族専門に盗みを行う大怪盗。変装の名人で男か女かもわかっておらず、謎の大怪盗として貴族からは恐れられ、庶民からは人気を集めている。名前の由来は「いたずら妖精」で、盗みの現場に妖精の落書きとサインの入ったメモを残すのが犯行の特徴。近隣諸国に名を轟かせているが、現在はラグランジュ王国を中心に犯行を重ねている。実はセドリックに化けてポートリエ邸に潜入し、ポートリエ伯爵家の家長の証である指輪を狙っていた。夜会で指輪を盗んだあと、正体を現す。リュタン自身は黒髪の青年で、いたずら好きで人を食ったような性格をしており、貴族をからかって慌てふためく姿を見ることを好む。貴族なのに貴族らしからぬマリエル・クララックのことを気に入っており、正体を現したあとに彼女を怪盗の道に誘っている。ラグランジュ王国にはサーカスの一団に変装してまぎれ込んでおり、サーカスの一団も彼の仲間。本来は怪盗というよりも怪盗団というべき存在で、仲間たちと連携して盗みを働いている。正体を怪しんでいたシメオン・フロベールに捕まるが、その後、あっさり脱走。マリエルの前に再び姿を現して盗んだ指輪を返し、再会の言葉を残して去っていった。

エミール・クララック

クララック子爵家の現当主で、マリエル・クララックの父親。恰幅のいい中年男性で、人当たりのよい性格をしている。貴族令嬢が行うには外聞が悪いため、マリエルの小説趣味をよく思っていない。シメオン・フロベールの婚約が決まって以降は、その思いに拍車が掛かっており、マリエルの趣味がいつバレるのかとストレスで胃を痛める日々を過ごしている。また、マリエルとシメオンの婚約が決まったのを心の底から不思議に思っており、相手の方が家の格が圧倒的に上なため、両家の集まりでは神経をすり減らしている。食べるのが唯一の楽しみだが、最近は医者から食事制限を課せられているのが悩み。

ナタリー

クララック子爵家に仕える女性メイドで、働き者。動きやすいように黒い髪を一つにまとめてお団子状にしている。マリエル・クララックの父親に仕え、家事とマリエルの世話も担当している。マリエルの小説趣味には苦言を呈することもあるが、なんだかんだ言ってマリエルには甘く、小説を書いている際の彼女の身の回りの世話も行っている。またマリエルの小説に毒されており、ナタリー本人も気づかぬうちに想像力がたくましくなっている。

ポワソン

近衛騎士団で団長を務める中年男性。たくましい体格でヒゲを生やしており、ひょうきんな性格の持ち主。シメオン・フロベールの上司で、シメオンが新人の時から面倒を見ているほど付き合いは長い。仕事に対しては不まじめなところが多く、ふだんから制服を着崩しておちゃらけた態度で過ごしている。堅物のシメオンとは相性が悪く、彼からよく苦言を呈されるため、その仕返しにしばしばシメオンをからかって遊んでいる。一方で団長らしく寛容で面倒見がよい部分もあり、シメオンや部下のことを気にかけている。

オルガ

トゥラントゥールの最高位の職業婦人の一人。栗毛色の髪をした女性で、理知的で落ち着いた性格をしている。アニエス・ヴィヴィエのファンで、マリエル・クララックがアニエスだと知り、マリエルとなかよくなる。同じファンであるイザベル、クロエを交えてマリエルと接することが多い。

イザベル

トゥラントゥールの最高位の職業婦人の一人。赤毛の髪をした女性で、明るく華やかな雰囲気を漂わせている。アニエス・ヴィヴィエのファンで、マリエル・クララックがアニエスだと知り、マリエルとなかよくなる。同じファンであるオルガ、クロエを交えてマリエルと接することが多い。

クロエ

トゥラントゥールの最高位の職業婦人の一人。金髪の女性で、しぐさに愛嬌のある小悪魔チックな人物。アニエス・ヴィヴィエのファンで、マリエル・クララックがアニエスだと知り、マリエルとなかよくなる。同じファンであるイザベル、オルガを交えてマリエルと接することが多い。

パトリス

ポートリエ伯爵家の親戚筋の男性。上品な衣装に身を包んでいるが、ギャンブルと女遊びにハマり、借金づけの生活を送っている。実家は伯爵と懇意の貴族だが、次男で兄が健在であるため、跡を継ぐ目はないとされる。また借金は母親に肩代わりしてもらっているが、父親にバレたら勘当もあり得るため、かなり崖っぷちな状態となっている。セドリックがいなくなれば兄がポートリエ伯爵家に養子に入り、自分が実家を継げる目が出るため、セドリックの存在を目障りだと思っている。

セドリック

庶民の青年。優しげな風貌で、誠実な性格をしている。父親はポートリエ伯爵家の現当主の次男坊で、貴族の位を捨てて庶民の娘と駆け落ちした。国外で両親と共に暮らしていたが、2年前、流行り病で両親と死別する。ポートリエ伯爵家の長男が死亡し、ほかに相続できる者がいなくなったため、庶民でありながら一躍伯爵家の正当相続人となる。このため、「不幸な伯爵家の幸運な相続人」としてラグランジュ王国の貴族たちのあいだで噂となっている。脅迫を受けており、偶然出会ったマリエル・クララックとシメオン・フロベールに相談。彼らの力を借りて事件の解決に動く。実はマリエルたちの前に姿を現していたセドリックは、リュタンが変装した偽物である。シメオンが調べたところ、本物のセドリックは今も国外にいることが判明する。リュタンの騒動のあと、本物のセドリックは手紙でポートリエ伯爵家を継ぐ気はなく、亡くなった両親の眠る故郷の地で暮らす旨を伯爵に伝えている。

モニーク

ポートリエ伯爵家長男の妻。黒いドレスを身にまとった妙齢の女性で、流れるような黒い髪を夜会巻きにしている。物静かな性格で、あまりしゃべることはない。夫に先立たれ、子供もできなかったため、ポートリエ伯爵家では立場がかなり低くなっている。夫の持っていたポートリエ伯爵家の家長の証である指輪をつねに身につけている。セドリックに関しては無関心な立場を貫く。実は指輪を亡き夫との唯一のつながりと思っており、それをセドリックに渡すために伯爵に返還した際には、人知れず涙を流していた。マリエル・クララックとリュタンはそれに薄々勘づいており、指輪はリュタンが盗んだあと、マリエルを通して返還されている。

ファン・レール

渋い雰囲気を漂わせた中年の男性。隣国フィッセルの新しい大使で、ゼウラン・ユーグ・ド・ラグランジュとたびたび会合を行っている。ゼウランとはトゥラントゥールで隠れて会合を行っているため、「娼館通い」や「同性愛がある」と妙な噂を立てられている。妻にもそれを知られて詰め寄られるが、ひょうひょうとした態度でそれを乗り切る肝の座ったところがある。

オレリア・カヴェニャック

「社交界の金の薔薇」の異名を持つ貴族令嬢。輝くような美貌を持ち、男女問わず目を引く自信に満ちあふれた女性。シメオン・フロベールに熱を上げており、彼に執着している。そのため、彼の婚約を知った際には、マリエル・クララックに強い敵愾心を抱く。シメオンとの婚約の腹いせにマリエルをいびるものの、オレリア・カヴェニャックの気に入らない人物を徹底的にこき下ろすさまはまさに理想の「意地悪令嬢」で、マリエルはいびられている当人にもかかわらず、彼女の嫌みを幸せそうに聞いていた。最終的にマリエルのズレっぷりに空回りし、去っていった。

場所

トゥラントゥール

ラグランジュ王国で、最高と名高い娼館。王族も隠れて通うと噂されている格式高いお店で、その顧客は高位の貴族ばかり。働く娼婦たちも一流の教養と技芸を身につけた「職業婦人」といわれる者たちで、品格を重んじる店となっている。店では食事も楽しめ、その味も一級品と評判。実は王族の秘密の会合に使われており、ゼウラン・ユーグ・ド・ラグランジュもお忍びでたびたび訪れている。マリエル・クララックは情愛うずまくネタの宝庫と認識しており、取材したいと思っていた。マリエルはゼウランの紹介で来て以降は、最高位の職業婦人、オルガ、イザベル、クロエとなかよくなり、たびたび恋愛相談を兼ねて遊びに訪れている。

クレジット

原作

桃 春花

キャラクター原案

まろ

書誌情報

マリエル・クララックの婚約 8巻 一迅社〈ZERO-SUMコミックス〉

第8巻

(2023-10-31発行、 978-4758039468)

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