さくらの唄

さくらの唄

富士桜ヶ丘高校の美術部に所属しているが、何事にも無気力な市ノ瀬利彦。淡い恋慕を抱いていた美術部顧問教師の薦めでかよい始めた画塾には、学年のアイドル仲村真理がいた。真理を主演に映画を撮影し、文化祭で上映しようと奮闘する利彦。希望に満ちた青春劇はしかし、汚れた欲望によって蹂躙されてしまう。『お天気お姉さん』『ホワイトアルバム』『バカ姉弟』で知られる安達哲の初期代表作のひとつ。

正式名称
さくらの唄
ふりがな
さくらのうた
作者
ジャンル
青春
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概要・あらすじ

市ノ瀬利彦は、富士桜ヶ丘高校の美術部に所属する無気力な少年。離婚して戻ってきた姉の市ノ瀬詠子と2人暮らしをしていた利彦だったが、その家に悪どい不動産業を営む叔父金春久吉とその妻がおしかけてくる。叔父夫婦の下劣さに拒絶感を覚えながらも、利彦は学校では同学年の美少女仲村真理を主演に映画を撮影するためにクラスをまとめあげていく。

映画が上映される文化祭当日が近付いていくなか、利彦の住む街は叔父の金と暴力によって支配されつつあった。文化祭当日、叔父の策略によって利彦の人望は地に落とされ、事情を知った姉は叔父たちによって強姦されてしまう。

登場人物・キャラクター

市ノ瀬 利彦 (いちのせ としひこ)

富士桜ヶ丘高校の美術部に所属する無気力な少年。両親不在の家で、離婚して戻ってきた姉市ノ瀬詠子と暮らしていたが、突然おしかけてきた叔父の金春久吉とその妻に居座られることになる。作品冒頭で妊娠を明かして退職する美術部顧問、三ツ輪裕子によって才能を見出され、画塾に通って美大を目指すことを薦められる。 画塾が縁で、学年のアイドルだった仲村真理と親密になる。文化祭に向けてノヒラらと映画の製作を始めるが、久吉の策略により裕子との情事を暴かれ、友人たちから唾棄される存在になってしまう。

市ノ瀬 詠子 (いちのせ えいこ)

『さくらの唄』の主人公である市ノ瀬利彦の姉。かつて利彦と同じ富士桜ヶ丘高校に通っていた。恋愛結婚で家を出ていたが、夫のDVのため離婚し戻ってきている。突然におしかけてきた叔父金春久吉とその妻のことを嫌悪している。弟との仲は良好だが、元ヤンキーで当たりはキツい。久吉の策略で利彦が学校での居場所をなくした際、事情を知って久吉を刺そうとするが、かえって久吉らに強姦されてしまう。

金春 久吉 (こんぱる ひさきち)

『さくらの唄』の主人公である市ノ瀬利彦の叔父。以前は母親と実家で同居していたが、母親の死にともない相続税を支払わないために利彦の家に妻とともにおしかけてくる。利彦の姉である市ノ瀬詠子を狙っていた。やがて物語の舞台となる街、富士桜ヶ丘を金と暴力で支配するようになる。利彦をみずからの後継者として一方的に溺愛し、利彦のかつての担任教師である三ツ輪裕子を罠にかけて利彦にあてがい初体験をさせる。 その様子をおさめた映像を、利彦が撮影していた映画にさしかえて文化祭当日に上映させ、利彦の学校での居場所を奪おうとした。作品が連載されていた時期に話題になっていたバブル時代の不動産の高騰や地上げなどに関わる存在として描かれている。

三ツ輪 裕子 (みつわ ゆうこ)

『さくらの唄』の主人公である市ノ瀬利彦が所属している美術部の顧問教師だった女性。作品の冒頭で妊娠していることを明かし退職。物語の後半で、利彦の叔父である金春久吉による罠に陥り、利彦の初体験の相手にさせられる。

仲村 真理 (なかむら まり)

『さくらの唄』の主人公である市ノ瀬利彦と同じ画塾に通う、利彦と同学年の女子。裕福な家庭に育ち、周囲に画力も認められている美少女で学校のアイドル的存在だが、父親との関係にはひそかな悩みを抱えてもいる。利彦の映画に主演として関わることになる。文化祭当日に上映された利彦と三ツ輪裕子の情事をまのあたりにし、ほかの友人たちと同様、利彦を唾棄するようになる。

ノヒラ

『さくらの唄』の主人公である市ノ瀬利彦の級友。本名は不明。映画監督志望で、利彦の映画に機材提供や撮影などで深くかかわるようになる。利彦と同様の周囲に対する違和感を抱いているが、利彦以上にネガティブな側面があり、利彦から励まされたりもする。利彦と三ツ輪裕子の情事を撮影してしまい、利彦が学校で居場所を奪われる事件に関与するが、のちに利彦とともに金春久吉殺害計画を企てる。

マルセル・クリスプ

アメリカ美術界の権威。『さくらの唄』の主人公である市ノ瀬利彦が受験した美大で利彦の絵を見て、アメリカへと利彦を誘った。

集団・組織

私立富士桜ヶ丘高等学校 (しりつふじさくらがおかこうとうがっこう)

『さくらの唄』の主人公である市ノ瀬利彦が通う高校。共学。歓楽街が学校の近辺にある。二科展の審査委員長もつとめるG美大の学長から「ゴミゴミした汚らしい街の高校」と言われる。

場所

坂下町 (さかしたちょう)

『さくらの唄』の主人公である市ノ瀬利彦たちが住む町。裕福な仲村真理の家の庭師は、俊彦らが坂下町から来たことを聞いて「お嬢様は住む世界が違う」と言う。

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