大江山花伝 夢の碑 番外編

大江山花伝 夢の碑 番外編

平安時代中期、大江山に棲み京の都を騒がせた妖鬼、酒呑童子の一味の1人・茨木童子と人との哀しい物語を中心とした、『大江山花伝』、『鬼の泉』の二つの短編。夢の碑シリーズに先駆けて発表され、後に番外編としてまとめられた作品。

正式名称
大江山花伝 夢の碑 番外編
ふりがな
おおえやまかでん ゆめのいしぶみ ばんがいへん
作者
ジャンル
ファンタジー
 
悲恋
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概要・あらすじ

都を騒がせる妖鬼・酒呑童子。帝から「鬼退治」を命じられた都一の武将・源頼光は、配下の渡辺綱に命じ妖鬼の棲まう大江山の鬼の岩屋を探らせる。流石に1人では鬼どもには敵わず捕らわれの身となった渡辺綱。彼は、かつて鬼たちの隠れ里を人が襲い、茨木童子は母に抱かれて難を逃れ、人として育った事を知る。

人として共に育ち、人への思いを断ち切れずにいた少女ふじここそ、渡辺綱の家の下働きの少女・藤の葉だった。

登場人物・キャラクター

茨木童子 (いばらきどうじ)

大江山に棲まう妖鬼・酒呑童子一味の1人。渡辺綱と橋の袂で出会い左腕を斬られるが、乳母に化けてその腕を取り返した。乳飲み子の頃に隠れ里が人に襲われ、母に抱かれて逃れたが、母は鬼と分からぬよう赤子の角を切り落し力尽きる。人として暮らしていたが、15の年に酒呑童子に見つかり連れ戻される。 毒気を注がれ鬼の力が目覚めたが、ふじこ(藤子)の事が忘れられず影ながら見守っていた。大江山の鬼退治に登場する茨木童子がモデル。

渡辺 綱 (わたなべ の つな)

『大江山花伝』の主人公の1人。源頼光の配下の武将。四天王と呼ばれる武将の1人。橋の袂で美女に化けた茨木童子と出会い、左腕を切り落とすが、乳母に化けた茨木童子に取り返される。源頼光の命で鬼達の棲まう大江山の鬼の岩屋を探るが、鬼に捕らわれる。鬼達や茨木童子の悲運を知り、同情する。 毅然としていて心優しい藤の葉を妻にと望む。歴史上の実在人物、渡辺綱がモデル。

藤の葉 (ふじのは)

渡辺綱の家の下働きの女。顔の片側に火傷の跡がある。茨木童子が幼い頃共に育った、紀の国守(きのくにのかみ)の紫都の館(しづのやかた)の娘・藤子。大江山へ探りに行くという渡辺綱の後を追い、共に鬼に捕らわれる。茨木童子を助けようと、源頼光率いる追っ手の前に立ちはだかり、茨木童子とともに滝壺へと消える。

酒呑童子 (しゅてんどうじ)

大江山の鬼の岩屋に棲まう妖鬼の頭目。茨木童子の父。宮中からさらってきた武家の娘に茨木童子を産ませたが、隠れ里が襲われ赤子の茨木童子を抱いて逃れた母は、鬼と分からぬように赤子の角を切り落とし人家の前で力尽きた。人として育てられていた茨木童子を見つけ出し、15歳の時に連れ戻して毒気を注ぎ妖力を取り戻させた。 隠れ里を襲った人々への恨みから、都や近隣諸国で人々を襲い悪行三昧で人々を苦しめる。大江山の鬼退治に登場する酒呑童子がモデル。

鬼丸 (おにまる)

酒呑童子の一味の鬼の1人。鬼の岩屋の様子を探りに来た、渡辺綱と藤の葉を捕らえて尋問する。藤の葉を庇って酒呑童子に折檻をうけた茨木童子を、献身的に介抱する。

坂田 金時 (さかた の きんとき)

源頼光の配下の武将。四天王の1人で、鎖すら素手で断ち切る怪力の持ち主。大江山へ探りに行ったまま戻らぬ渡辺綱を追い、源頼光とともに鬼の岩屋へ駆けつける。実在したとも言われる坂田金時(俗に言う「金太郎」)がモデル。

碓井 貞光 (うすい の さだみつ)

源頼光の配下の武将。四天王の1人。大江山へ探りに行ったまま戻らぬ渡辺綱を追い、源頼光とともに鬼の岩屋へ駆けつける。歴史上の実在の人物、碓井貞光がモデル。

占部 季武 (うらべ の すえたけ)

源頼光の配下の武将。四天王の1人。大江山へ探りに行ったまま戻らぬ渡辺綱を追い、源頼光とともに鬼の岩屋へ駆けつける。歴史上の実在の人物、占部季武がモデル。

藤原 保昌 (ふじわら の やすまさ)

渡辺綱たち四天王と交流があり、大江山へ探りに行ったまま戻らぬ渡辺綱を追い、源頼光とともに鬼の岩屋へ駆けつける。女流歌人・和泉式部の夫で、実在の武人の藤原保昌がモデル。

源 頼光 (みなもと の らいこう)

都一の武将。帝から鬼退治を命じられ、配下の四天王の一人・渡辺綱に大江山の鬼の岩屋へと偵察に向かわせる。探りに行ったまま戻らぬ渡辺綱を追い、四天王と山になれた強者の兵を率い、酒呑童子討伐に駆けつける。歴史上の実在の人物、源頼光がモデル。

ムサシの小朝丸 (むさしのこぞまる)

白銀大夫の荘園の奴卑。まだ子供なため、半人前だからと厩舎で寝起きさせられている。鬼の岩屋の前に倒れていた茨木童子を心配し、鬼が出るからと大切な鎌を置いていく。そのために晩飯を抜かれる。弥代の怒りを買い、客人から奴卑扱いとなった忘れ草(茨木童子)を温かく迎える。

萱乃 (かやの)

白銀大夫に囲われている少女。遊女にするため母屋に部屋を与えられ、舞や笛を習わされている。小朝丸と同じ頃に売られてきたため、小朝丸を弟のように助ける。母の病を治す費用を工面するため自らを人買いに売ったが、いつか許嫁の六太郎に会うために生き延びている。弥代の怒りを買い、客人から奴卑扱いとなった忘れ草(茨木童子)を温かく迎える。 盗賊として捕らわれた六太郎を逃がそうとするが失敗した。

白銀大夫 (しろがねのたいふ)

泉の森の長者。酷薄で強欲な性格で、荘園の人々を苦しめていた。都にのし上がるため、藤原氏の力添えを得ようと企む野心家。鬼の岩屋を出た茨木童子を、脱走者なら見せしめに木に吊して鳥に食わせろと言うが、弟の弥代の取りなしで止めた。

弥代 (やしろ)

泉の森の長者兄弟の弟。ずる賢く、美人好き。鬼の岩屋から逃れてきた茨木童子を「忘れ草」と名付ける風流人気取り。眉目秀麗な公達姿の「忘れ草」を手込めにしようとするが逆らわれ、客人から奴卑扱いにし、小朝丸と同じく厩舎へと追いやる。

六太郎 (ろくたろう)

萱乃の許嫁。萱乃が自ら身を売ったことに絶望し、盗賊の群れに身を投じた。盗賊討伐で捕らわれ、白銀大夫の館の牢へ入れられる。萱乃を逃そうとするが失敗。萱乃と小朝丸を助けようとした忘れ草(茨木童子)によって、萱乃とともに逃げるが、追っ手に討たれる。

藤原 文麿 (ふじわら の ふみまろ)

藤原一族の長、関白太政大臣のお気に入り。白銀大夫の屋敷を尋ねては美女を物色。萱乃を気に入り引き取りに来た。その道中に一行が襲われ、同行していた検非違使が捕らえた盗賊の中に、萱乃の許嫁だった六太郎がいた。

場所

鬼の岩屋 (おにのいわや)

『大江山花伝』及び『鬼の泉』に登場する、妖鬼たちの棲まう岩屋の呼称。京の都の北西に位置する大江山の、泉の森の「凍らぬ泉」にある。近づいた者で生きて帰った者は居ないと言われる。京の都や周辺諸国で悪行を働く酒呑童子一味と茨木童子たちの隠れ家。

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