メタモルフォーゼの縁側

メタモルフォーゼの縁側

夫を亡くして2年。退屈な毎日を送る75歳の老婦人、市野井雪は、偶然立ち寄った書店で、そうとは知らずにBL本を購入。これをきっかけに17歳の女子高校生、佐山うららと出会い、交流を深めていく。58歳という年齢差を超えて友情を育んでいく二人の、穏やかで新鮮な日常を描いたハートフルストーリー。KADOKAWA「コミックNewtype」で、2017年11月17日から配信の作品。「ブロスコミックアワード2018」大賞、「このマンガがすごい!2019」オンナ編第1位、第22回「文化庁メディア芸術祭」マンガ部門新人賞、「THE BEST MANGA 2019 このマンガを読め!」第1位。2022年6月17日実写映画化。

正式名称
メタモルフォーゼの縁側
ふりがな
めたもるふぉーぜのえんがわ
作者
ジャンル
その他恋愛・ラブコメ
レーベル
KADOKAWA
巻数
全5巻完結
関連商品
Amazon 楽天

あらすじ

出会い

真夏の暑い日、市野井雪は目当ての喫茶店が閉店していたため、近くの書店に足を運んだ。1年以上ぶりに書店に来た雪は、久しぶりにレシピ本のコーナーに向かうが、そこには思いがけずたくさんの漫画が並べられていた。その中にあった1冊の本の表紙絵の美しさに目を奪われた雪は、その漫画を購入して帰路に着く。その日の夜、ふと購入した漫画のことを思い出した雪は、布団に入って眠りにつくまでの束の間を楽しもうと、本のページをめくる。するとそこには、思ってもみなかった男子同士の恋愛模様が描かれていた。驚きつつも、雪はあっという間に1巻を読破。続きが気になって仕方がない雪は、翌日早速、2巻を購入してからいつもの病院へと足を運ぶ。そして病院からの帰りには、3巻を求めて再び書店へと向かうのだった。一方で、アルバイト書店員の佐山うららは、昨日BL本を購入していった老婦人のことが気になっていた。翌日になって、続きの漫画を購入しに来た老婦人の対応をすることになったうららは、これをきっかけに雪と親しくなり、個人的に連絡を取り合うようになる。

初めての同人誌即売会

市野井雪佐山うららに誘われ、大好きなBL作品「君のことだけ見ていたい」の作者、コメダ優が参加する同人誌即売会に足を運ぶことになった。開催場所の池袋は、実は亡き夫との思い出の場所であり、雪は行く先々で夫のことを思い出す。一方で即売会イベントは、雪にとって今まで経験したことのない、新たな驚きに満ちた世界だった。雪の体力不足やうららの携帯電話の充電切れなど、さまざまなアクシデントが起こる中、広い会場内で二人は離れ離れになってしまうが、心配するうららをよそに、雪は一人で同人誌を買いあさり、自分なりにイベントを満喫していた。その後、無事に合流した二人は、お目当ての作家、コメダの同人誌を手に入れることに成功。コメダ本人にも会えたことで、当初の目的を果たした雪とうららは、達成感と充実感を分かち合うのだった。

進路

クリスマスシーズンを迎えた頃、周囲は進路決定に向けて慌ただしく動き始めていた。佐山うららは、自分が進むべき道を決めかねており、頭を悩ませていた。市野井雪を誘っていっしょに行く予定だった冬コミも、受験を理由に取りやめにしたものの、それでも勉強に身を入れることはできなかった。お父さんからは通塾を勧められる中、お母さんとの三者面談に向けて進路希望調査票の提出もせまっていたが、うららはあることに向けて動き出していた。それは、以前から興味を持っていた漫画を描くこと。それからは自宅でこっそりと描き、学校では授業に耳を傾けることなく、漫画のネームをノートに描き続けて目標の10ページを描き上げる。そんな中、うららはテスト勉強で忙しいことを理由に、連絡を取っていなかった雪のもとを訪れる。そして、来年5月に開催される同人誌即売会に参加しないかと雪を誘う。うららは言葉を選びながらも、今回は同人誌を買いに行くのではなく、売る側で参加したい旨を説明。たどたどしい様子で販売予定の漫画は自分が用意することを、自信なく雪に打ち明けるが、雪は二つ返事で参加することを快諾する。

コミティア

新学期を迎えて高校3年生になった佐山うららは、偶然にも橋本英莉と同じクラスになった。同じ予備校に通っていることもあり、英莉とのかかわりが増えていく中、うららは美人でいつも身ぎれいにしており、すでに将来を見据えて海外への留学を予定している英莉と自分を比べて落ち込み、描こうと決めたはずの漫画にすら手がつかなくなってしまう。一方、市野井雪は、うららが自分で漫画を描くと知り、すっかり舞い上がっていた。そして、印刷屋を営む友人に連絡を取り、ある程度話を付けたうえでうららを連れて行き、漫画の印刷を頼んではどうかとやんわり打診。うららはもともとコピー機を使って自分で綴じて製本する方法で同人誌を作ろうと思っていたため、突然のことに困惑するが、同人即売会、コミティアにも詳しい印刷屋のおじさんからは、オフセット印刷を勧められ、とんとん拍子で話が決まってしまう。うららは、少々戸惑いながらも締め切りまであと10日となった状況に圧され、自分の漫画にもう一度向き合うことを決め、再びペンを取る。そんな中、雪は自分にもできることをしようと、当日テーブルに敷く布を用意したり、思い付きでお弁当を用意したりと彼女なりの張り切りを見せる。そして二人はとうとうコミティアの本番当日を迎えることになる。

サイン会

6月、娘の花江から海外でいっしょに暮らさないかと誘われていた市野井雪は、9月に10日間のお試し同居をしてみることになり、渡航に向けて、パスポートの取得や荷物の準備などに忙しい日々を送っていた。そして、佐山うららの受験シーズンもいよいよ本番を迎えようとする中、コメダ優の漫画「君のことだけ見ていたい」がとうとう最終回を迎える。雪とうららは読後の感想を語るため、掲載誌を持って夜のファミリーレストランで待ち合わせ、作品への愛を語り合う。そして、コメダのサイン会が開催されることを知った二人は、応募すると運よく二人とも当選を果たすことになる。サイン会当日、雪は張り切りすぎて会場近くに早く着いてしまい、時間を持て余していた。うららも会場に向かおうと家を出ようとしていると、そこにはいつもと違う様子のの姿があった。紡は、別れた彼女の橋本英莉が今日海外に行ってしまうことを知り、空港に見送りに行くべきか悩んでおり、うららに相談を持ちかけた結果、いっしょに空港に行くことを決める。うららは空港まで付き添ったのち、空港とは真逆のサイン会場へと急いで向かう。一方の雪は、一足先にサイン会に参加していたコメダと対面。そこで、思いがけずコメダから、先だってのコミティアに参加していたことについて声をかけられる。その時、売っていた同人誌を購入したコメダが、雪が描いた漫画だとカンちがいしていたため、雪はこれを否定する。さらに雪は、コメダの作品のおかげでうららと友達になれたと、コメダに感謝の気持ちを伝える。

メディアミックス

実写映画

2022年6月17日、本作『メタモルフォーゼの縁側』の実写映画版『メタモルフォーゼの縁側』公開。脚本は岡田恵和、監督は狩山俊輔が務めている。キャストは、市野井雪を宮本信子、佐山うららを芦田愛菜が演じる。

登場人物・キャラクター

市野井 雪 (いちのい ゆき)

75歳の未亡人。2年前に夫を亡くして以来、穏やかながらも退屈な毎日を過ごしている。現在は一人暮らし中だが、自宅では書道教室を営んでおり、日中は子供達の賑やかな声が聞こえる生活を送っている。離れて暮らす娘の花江がおり、時々様子を見に実家に戻って来ているが、もはや気楽な一人暮らしだと、娘の世話も疲れを感じる対象となっている。 ある日、偶然購入した漫画がボーイズラブだった事に端を発し、アルバイト書店員の女子高校生、佐山うららと意気投合。BL友達となり、漫画を語れる唯一の存在となる。それ以降、うららを自宅に呼んでいっしょに食事をしたり、いっしょに出掛けてお茶を楽しんだりと、彼女の日常生活は色付き始める。夫を失った事による寂しさ、年齢による自身の衰えを受け入れながらも、日常を明るく生きようとしている様子が垣間見える。 うららとは、祖母と孫ほどの年齢差があるが、保護者面する事なく、時には自分から情報を提供したり、時にはうららに頼ってみたりと対等な友人関係を築いている。

佐山 うらら (さやま うらら)

駅前の書店「ブックス ナカ」でアルバイトをしている女子高校生。年齢は17歳。あまり自分の外見に気を遣う事もなく、いつもボサボサ頭をまとめただけの状態で、女子力は皆無。現在は母親と二人暮らし中。定期的に、離れて暮らす父親との面会を行っているが、義務感だけの打算的なものとなっている。BLが大好きな、いわゆる腐女子だが、漫画はすべて段ボールに詰め込んでいつも書棚の奥に隠している。 身近にBLを語れる友達もなく、心の奥底に押し込めている状態だった。しかしある日、市野井雪が、自分が勤務する書店でBL本を購入していった事をきっかけに、彼女と個人的な付き合いを開始。漫画を語れる唯一のBL友達となって以降、雪の自宅に招かれては、食事を御馳走になったり、いっしょに出掛けてお茶を楽しんだりと、潤いのある日常を送るようになる。 雪に対しては、年齢的にわからなそうな事をフォローしたり、年上の人に対する気遣いは忘れないようにする一方で、対等な友人関係を築こうと努力している。幼なじみの紡とは同じ高校に通っており、今でも昔からの呼び名「うらっち」と呼ばれ、時々当たり障りのない漫画を貸したり、言葉を交わす程度に仲がいい。 紡の彼女、橋本英莉の女子力の高さや、紡との関係が気にかかっている。漫画に関してはもともと読むだけだったが、雪の言葉に感化され、描く事に興味を持ち始める。

(つむぐ)

佐山うららと同じ高校に通う男子。うららの家の近所に住む幼なじみで、うららからは、昔から「つむっち」と呼ばれ、時々漫画を借りたり、言葉を交わす程度にその関係は現在も続いている。明るく軽い性格で、見た目もチャラい。付き合っている彼女、橋本英莉とはラブラブのつもりでいるが、彼女がクールな事から、自分達の関係を心配しているところがある。 うららの部屋に遊びに行った際、BL本の入った箱が部屋に出しっぱなしになっているのを発見し、うららがBL好きである事を知る。

橋本 英莉 (はしもと えり)

佐山うららと同じ高校に通う女子。紡の彼女。ショートヘアでクールな印象を漂わせているが、いつも朝からヘアスタイルや身なりをしっかりと整えており、女子力が非常に高い。学校には指定の靴や靴下があるが、基本的にオシャレ重視で指定のものを着用することなく、美人なことも相まって目立つ存在。紡とは真逆なタイプで、漫画にはあまり興味がなく、やるべき時には勉強にもまじめに取り組んでいる。そのため、テスト前になってもやる気をまったく見せない紡の様子を気にかけている。また、紡と幼なじみのうららとの関係が気になり、うららに嫉妬心を抱いている。うららとは、一定の距離感を維持しているところがあるが、高校3年生になってクラスがいっしょになった。さらに同じ予備校に通うことになり、何かとかかわりが増えていく。近々、外国への留学を予定しているため、現在は準備に忙しい。その後、渡航時期が決定すると、遠距離恋愛はできないからと紡に別れを告げた。

花江 (はなえ)

市野井雪の娘。外国人の夫との結婚で日本を離れ、飛行機で10時間以上かかる外国で暮らしている。雪とは、基本的にパソコンを使ってテレビ電話でやりとりを行っている。今回は久しぶりに実家に帰って羽を伸ばしていたが、その際に年老いた母親の姿だけでなく、長年住み続けた実家も老朽化したことに気づく。また実家のテレビ横に、ボーイズラブの漫画が置かれていることを知り、何ともいえない感情を抱く。雪を日本に一人にしていることに関して、不安視しているところがあり、自分の住む国に来ないかと何度も誘ってはいるが、なかなか実現に至っていない。

コメダ 優 (こめだ ゆう)

BL本「君のことだけ見ていたい」を執筆した女性。商業誌にも執筆しているプロの漫画家。自身の商業作品のスピンオフストーリーを同人誌として制作し、池袋での即売会イベントに参加したが、販売予定の作品が誤配送によりイベント開始時間に間に合わないアクシデントに見舞われてしまう。高校時代、テニスの漫画にハマった事がきっかけで、漫画家になったという経緯がある。

遠藤 (えんどう)

漫画家のコメダ優のアシスタントを務める女性。ふんわりしたボブヘアにしている。自分自身でも漫画の執筆活動は行っているが、同人誌の制作のみに留めている。学生の頃、「タイバニ」という作品にハマった事がきっかけで、漫画を執筆するようになった。コメダを尊敬して慕っており、コメダからは「ちま」と呼ばれている。

相馬 (そうま)

漫画家のコメダ優の担当編集者を務める女性。ウエーブヘアの女子力高い系の人物で、コメダのもとに打ち合わせに訪れた際、今話題の激ウマ洋菓子「フレデリック・カッセルのミルフィーユ・ヴァニーユ」を手土産に持って来た。会社からコメダのもとへは、新幹線を利用して通っている。

お父さん (おとうさん)

佐山うららの父親。うららとは離れて暮らしているため、定期的に時間を決めて彼女と会っている。出かける先は、映画鑑賞やショッピング、食事がほとんど。理屈っぽいところがあり、一言われると百返すタイプで、何かにつけて否定的な意見を言いがち。これから受験を迎えるうららのために、さまざまな助言をしようとするものの、うららにはあまり役に立っていない様子。最低限の英会話ができるだけの英語力を持っているが、外国人から道を聞かれた際は、相手に交番の場所を教えることで解決を図ろうとした。無駄を嫌い、効率化を好んでいる。

お母さん (おかあさん)

佐山うららの母親。うららと二人で暮らしているが、パート仕事が忙しく、何かとうららに頼る生活を送っている。うららとのコミュニケーションが滞らないように気を遣っている。身なりをまったく気にしないうららの、ボサボサのヘアスタイルを指摘したり、スカートを買いに行こうと誘ったりするものの、うららが基本的に乗ってくることはない。何かとおおざっぱな性格で、お母さん自身もだらしないところがある。子育てに対しても、芯が通っていればちょっとくらいいいかげんでもいいというスタンスなため、理屈っぽいお父さんとは気が合わない。

増山 結花 (ますやま ゆか)

東高に通う女子高校生。受験のために予備校に通っていた際、同じ予備校に入って来た佐山うららと知り合った。シャープペンの芯がなくなり、貸してもらおうと声をかけたことがきっかけで、少し話しをするようになり、その後メッセージアプリで連絡先を交換した。うららが履いていた学校指定の靴下を見て、うららと橋本英莉が同じ高校に通っていることに気づく。同じ予備校に通う英莉に対しては、あまりいいイメージを持っていないが、興味本位で英莉のことを知りたがっており、何かとうららから英莉の情報を聞き出そうとする。

埴生 (はにゅう)

市野井雪の家の近所に住む中年女性。自分が子供の頃、雪から書道を教えてもらっていたため、いまだに雪のことを「先生」と呼んで慕っている。雪からはおすそ分けをもらったり、立ち話に花を咲かせたりと、なかよくしている。春になると自分の家の桜の木から花が散るため、自宅前だけでなく、市野井家の前に至るまで掃き掃除をしている気遣いの人。大学生の息子、隆史が、長期休みのために実家に帰って来ているが、嬉しい反面、食事の世話などが大変で面倒くささを感じている。その後、隆史の家に女性が住みついていることが発覚し、その心配をしている。最近、ホームベーカリーを買ったが、パンのあまりのおいしさに、夫と二人で毎日食べていたところ激太りした。それでもパンはやめられず、体重増加に悩みながらおいしい焼き立てパンに翻弄される日々を送っている。

太田 由美 (おおた ゆみ)

佐山うららのお母さんと同じ職場に勤める女性。年齢は45歳。かなりの厚化粧で、大酒飲み。佐山家にはよく遊びに行っているが、酒を飲むとほとんど泥酔して長居することになるため、佐山家をあとにするのはいつも夜の11時過ぎになる。

その他キーワード

君のことだけ見ていたい (きみのことだけみていたい)

漫画家のコメダ優により執筆されたBL漫画。「佑馬」と「咲良」という二人の男子が織りなす恋模様を描いたラブストーリー。当初は季刊誌に掲載されていたため、コミックスは1年半に1冊のペースで刊行されていたが、その後、掲載誌が月刊誌となったため、月1回連載になった。市野井雪が表紙絵の美しさに惹かれ、購入した初めてのBL本であり、その後も佐山うららと共にコアなファンとなり、継続的に読み続けていく事になる。

書誌情報

メタモルフォーゼの縁側 全5巻 KADOKAWA

第1巻

(2018-05-08発行、 978-4041068304)

第2巻

(2018-11-08発行、 978-4041073506)

第3巻

(2019-06-08発行、 978-4041082249)

第4巻

(2020-03-10発行、 978-4041088418)

第5巻

(2021-01-09発行、 978-4041108130)

SHARE
EC
Amazon
logo