トラウマイスタ

トラウマイスタ

トラウマを克服した者から生まれ出る存在「アートマン」を使役して戦うものたちを描く、サイコアクション作品。キャラクターのトラウマ描写のシーンでは、シュルレアリスムの技法を用いた独特の絵柄になることが特徴。巻末には「オマケマイスタ」が収録され、登場人物の日常や、作者近況が描かれている。

正式名称
トラウマイスタ
ふりがな
とらうまいすた
作者
ジャンル
アクション
関連商品
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概要・あらすじ

鬼にトラウマを持つ少年比何ソウマの元に、スジャータという女性が現れる。彼女は、トラウマを持っており、それに打ち克つ勇気を持っており人間をスカウトしていた。スジャータは反魂香を用いて、ソウマからトラウマの具現化・「アートマン」であるゲルニカを出現させる。ソウマは最初恐れおののくが、自己のトラウマに立ち向かうことでゲルニカを使役、トラウマイスタの一人になる。

スジャータはアートマンによる世界征服を目指す組織チャンドラカンパニーに対抗し、自分の主人である漆原シエナを助け出すため、羽生瑠々花茶風倫太郎センゴらをスカウトしており、一同は彼女の元に集結。チャンドラカンパニーのカミーユが一般人の少女を集め、人工アートマンの量産を行っている現場に潜り込むが、負ける寸前にまで追い込まれてしまう。ところがそこにチャンドラカンパニーの用心棒ダヴィンチが現れ、カミーユのアートマンを食ってしまう。ダヴィンチは強力な力を持つ自分に、弱いのに歯向かおうとするソウマに激しい興味を持ち、スジャータに爆弾を仕込んで煽り、彼が強くなって帰ってきた後に再戦するようけしかける。

チャンドラカンパニーの社長は、ダヴィンチの勝手な行動をよしとせず解雇にしたが、ダヴィンチはソウマに強い執着を抱き続け、ある行動に出る。

登場人物・キャラクター

比何 ソウマ (ひか そうま)

寺の息子。髪の分け目が雷型になっている。高校生の少年。162cm、53kg。4月13日生まれのA型。粗チン。幼稚園の時好きだった少女ランコが、小学校6年生まで鬼ごっこを彼に押し付けてきたのを好意だと思っていたが、実はバカにしているのだと知って以来トラウマが芽生えてしまい、鬼を見ると恐怖を覚えるようになった。漆原シエナを救出するためにトラウマイスタになる人物を集めていたスジャータにスカウトされ、自分の中にあるトラウマと対峙。 アートマンゲルニカに打ち克って、シモベとして使役するようになった。最初は「勇気の剣」としてフォークを与えられてしまうが、真の勇気を抱いた時に巨大な三叉の剣に変形、後に訓練を積んで自己暗示力を高め、ダヴィンチとの戦いの際武器として使用する。 「トラウマをはじめて笑わなかった人」としてスジャータに強い恋心を抱いている。共闘する中で羽生瑠々花には「ピカソ先輩」と呼ばれて好かれるようになるが、本人は気づいていない。

ゲルニカ

比何ソウマのトラウマからうまれたアートマン。鬼の角を持ち、いかつい顔をした存在。アートマンの中でもサイズはとりわけ大きい。性格は極めて素朴で、甘えん坊な上に臆病。子供のように無邪気にはしゃぐ行動も多い。ソウマのことが大好きで、「主殿」と呼んでなついている。巨大な羽を持ち、ソウマを乗せて飛行することが可能で、通学時に利用されることもある。 能力として、食べることで胃の中に物質を取り込み、原子配列を組み替えて撃ち出す「嘔吐カノン」を使う。茶風倫太郎のアートマンであるライムライトの吹雪攻撃を飲み込んで、「アイシクル嘔吐カノン」を撃ちだすことが可能。他のアートマンは実体化しないと物体に触れることはできないが、ゲルニカだけは主であるソウマが触ったものに触れることが可能。 「ヴォオオ」と鳴く。

スジャータ

ショートカットで胸の大きい女性。対象のトラウマを形にして呼び出す「反魂香」の開発者・漆原シエナのアートマン。あらゆるものを見通す「審議眼」の能力を持っており、相手のトラウマや勇気の強さを計測したり、持っている物体から残留思念を読み取ったりすることができるが、本当の力は別にある。背中には無数の傷が残されている。 チャンドラカンパニーに幽閉されたシエナを救い出すために、またチャンドラカンパニーの野望を砕くために、トラウマイスタたちを集めている。比何ソウマが電車に乗っているのを発見し、トラウマを持った人間だと把握して彼をスカウト。アートマンであるゲルニカを呼び出して、克服させてシモベとして使役するよう励まし、勇気を与えた。 自分勝手な性格で、目的のためなら手段を選ばず、人に媚びるところがたまにある。ソウマがダヴィンチとの戦いに向けてどんどん成長していくのを見て、好意を抱いた。彼女がスカウトした羽生瑠々花には強く慕われており、つきまとわれていたが拒絶はしていない。

漆原 シエナ (うるしはら しえな)

20代前半の女性。トラウマであるアートマンを実体化させる反魂香の開発者。アートマンを用いて世界統一を目論むチャンドラカンパニーに幽閉されており、彼らの目的を打ち砕くためにアートマンであるスジャータを使役して、トラウマイスタを集めている。

茶風 倫太郎 (さふ りんたろう)

髪の毛を逆立て、タンクトップ一枚で自転車を乗り回す屈強な男子。身体がとても大きく、素手で相手のアートマンを殴り飛ばせる。トラウマイスタの一人で、漆原シエナを救い出そうとしているスジャータにスカウトされた。元は浮浪児。スジャータのことが好きで、結婚したいと思っている。アートマンは、吹雪で攻撃するライムライト。 比何ソウマのことを嫌っており、協力することを一切拒んでいたが、戦いの中で次第に信頼関係を築くうちにライムライトとゲルニカの合体技「アイシクル嘔吐カノン」を生み出した。後にソウマが強くなることを望むようになり、「オレ様がブチ殺す」と煽り続けている。

ライムライト

小さな子どものような姿をしている茶風倫太郎のアートマン。ファンシーな外見に反して性格は凶暴。吹雪攻撃「サブリザード」を撃ちだして攻撃する。一瞬で何もかも凍らせることができるが、本人が笑うと溶けてしまう。倫太郎がいつも敵のアートマンを素手で殴り飛ばしてしまうため呼び出されないことに苛立っている。「~ライ」が口癖。

羽生 瑠々花 (はぶ るるか)

昆虫好きの女子高生。頭に蝶のような飾りを付けている。トラウマイスタの一人。スジャータを強く慕っており、「スジャ姉様」と呼んでいる。スジャータと一緒にいる時は興奮のあまりよだれをとめることができない。最初は頼りがいのない比何ソウマを心底嫌っていたが、彼が自分の身を顧みず人を助けようと行動するのを見て、強い好意を抱くようになる。 食べることが大好きで、山盛りの牛丼や巨大ハンバーガーなどをもりもり食べる。イモムシの形をしたアートマンの「昆注器(こんちゅうき)」は、物質の原子情報を吸い上げて10個までストックし、一度だけ好きなときに擬態できる能力「チューチュードレイン」を使用。装着することで、瑠々花本人も擬態可能。また、ダメージを負った場合は切り離して再生できる。

センゴ

カリスマアイドル。芸名は「SENGO」。トラウマイスタの一人。後ろ髪が長く、多数に縛ってわけている。アートマンは「村正」。元は孤高の人物で、スジャータにスカウトされても皆と仲良くしようとはしなかったが、ダヴィンチに勝つため必死な比何ソウマに付け回されているうちに、彼を友達だと感じるようになる。 刑事の父親が斬り殺されたことがトラウマになっており、それを理解してくれたソウマを好きになってしまい、布団に忍びこんだり、ライブステージにあげようとしたりと、度を過ぎたアプローチを繰り返すようになった。ソウマに「勇気の剣」を使うヒントを教えた。

安曇 ちひろ (あずみ ちひろ)

羽生瑠々花の友人。メガネをかけ、髪を一本のおさげにした、気弱な少女。容姿に激しい劣等感を抱き続けていた。チャンドラカンパニーのカミーユが売り出しているアロマ「シャシー」を使うことで、別人なほどの美人に変身する。その後カミーユに洗脳された彼女は、瑠々花をつかまえて洗脳しようとした。

ダヴィンチ

チャンドラカンパニーの社長に雇われた用心棒であり、契約社員。上半身裸で、耳のついたフードのコートを羽織っている男性。胸と首には菱型の文様が描かれており、両目の上下に縦線を入れている。口癖は「~びん」。トラウマイスタの一人で、モナ・リザの他7体のアートマンを使役する。手にした筆を使用し、ゲルニカの放った「嘔吐キャノン」を打ち返したことがある。 彼が持つカセットテープ型のアートマン「受胎告知」は、吹きこまれた予言が的中しなかった場合埋め込んだ対象の中で爆発するというもので、スジャータの腹の中に埋め込んで比何ソウマに戦うよう煽り立てた。また他人のアートマンの死体をあさっては、アートマン「最後の晩餐」に食べさせ続けている。 ソウマが恐怖に怯えず自分に立ち向かってくることに興味を感じ、激しく執着した。アートマンの中でもモナ・リザを特に溺愛しており、普段から舌でなめまわしたり、彼女の股間部分に隠れたりしている。

モナ・リザ (もなりざ)

ダヴィンチが使役するアートマン。真ん中分けの髪の毛で、クローバー型のまゆげをしている小さな子供。高速移動し、剛力で相手を殴り飛ばすことが可能。両手の指で円を作ることでブラックホールを生み出し、アートマンを吸い込んで小さな球体にすることができる。言葉は一切しゃべることができない。ダヴィンチには溺愛されており、股間から彼を出し入れしている。

カミーユ

チャンドラカンパニーの幹部。アロマオイル「シャシー」を販売していた女性。チャイナドレス風の衣装に身を包んでおり、口元にはほくろがある。劣等感を抱えた安曇ちひろらを始めとした少女たちにつけこんで、「シャシー」を使った洗脳を実施。それによって集めた血液を使って「人工アートマン」の量産を企んでいた。アートマンの「分別盛り」はマリア像と小さな天使の形をした液体金属で、相手の体内に入り込んで凝結する能力「メタリキッド・ラマン」を駆使できる。 また、手のひらからは5200℃の温度が発せられており、鉄類を溶かすことができる。バラバラにされた場合も、飛び散った数だけ分裂できる。

社長 (しゃちょう)

チャンドラカンパニーの社長。長い髪をした男性。頭に輪を巻き、額に飾りを垂らしている。全てが統一された永久平和国家シャングリラを目指しており、そのためにアートマンの力を利用しようと企んでいる。フランクな性格で、口が軽い。トラウマであるアートマンを具現化させる反魂香を開発した漆原シエナを幽閉している。用心棒として、7つのアートマンを操るトラウマイスタのダヴィンチを雇ったが、仲は悪く、アートマン「ツァラトゥストラ」を用いて派遣切りしている。 姿は作者の後の作品『ねじまきカギュー』の登場人物・二千恵理人とほぼ同じで、作者のTwitterで関係が有ることがほのめかされている。

ウィグリー

チャンドラカンパニーの刺客。ひげを生やした外国人男性で、日本語は片言。花の形状をしたアートマン「ホワイトウォールズ」を使役し、蔦で相手を自在に切り裂く。彼の持つ携帯電話は、幽閉されている漆原シエナに直結しており、電気ショックを与えることができる。

ルイ

チャンドラカンパニーの幹部。大きくふくらんだ髪に弁髪、サングラスをかけてひげを生やしている。アートマンは「ボワ・ド・ジャスティス」。あらゆるものを切りつけ、刀痕から全方位に自由落下するギロチンを創り出す能力「刀痕エクスキューション」を使用。

集団・組織

チャンドラカンパニー

「反魂香」とアートマンを用いて、世界を統一して永久平和国家「シャングリラ」を作ろうと企んでいる秘密結社。物品を開発する会社として擬装し、町中に巨大なビルを建てている。アートマンを使役できるトラウマイスタを集めて、人間たちから搾取したり、他のトラウマイスタたちと戦ったりしている。幹部であるカミーユは、一般人少女たちを利用して人工アートマンを量産しようとしたことがある。

その他キーワード

シャングリラ

チャンドラカンパニーが目指している永久平和国家のこと。文化や倫理観など全ての価値観を統一した理想郷で、社長がアートマンを集めることで達成しようとしている。

トラウマイスタ

自己のトラウマに打ち克ったことで、そのトラウマ従えて戦うことができるようになった人間。特殊な線香「反魂香」を使用して、トラウマの具現化「アートマン」を実体化できる。

アートマン

当て字は「真実の自己」。人間が心の中に潜んでいるトラウマに打ち克った時、形になったもの。トラウマを乗り越えた人間はトラウマイスタとなり、アートマンを使役できる。その際反魂香を用いてアートマンを実体化することで、他の人に見えるようになり、物理攻撃をすることが可能になる。動物や化物の姿をしたものから、人間型のものまで形状は様々。 女性の姿をしたスジャータは、反魂香開発者の漆原シエナのアートマンで、反魂香をこっそり焚き続けることで実在し続けている。アートマンはアートマンでしか倒せないため、スジャータは秘密結社チャンドラカンパニーと対抗するために、アートマンを駆使できるトラウマイスタを集めていた。

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