木造迷宮

木造迷宮

元教師で今は三文小説家のシバタニコーイチと、彼の家で住み込みで働く女中のヤイとの使用人以上恋愛未満な生活を、ほのぼのとした雰囲気で描く。元は同人誌作品だが、登場人物は異なる。登場人物がほぼ同じのプロトタイプ作品『ネコとコロッケ』もあり、そちらのヤイは背中に虫の刺青があった。

正式名称
木造迷宮
ふりがな
もくぞうめいきゅう
作者
ジャンル
ラブコメ
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概要・あらすじ

三文小説家として細々と暮らすシバタニコーイチには、よくできた女中がいる。彼女の名はヤイ。不摂生な生活を心配したいとこのサエコが連れてきた、若くて美しく、家事も得意な女性である。不慣れな生活にやや戸惑うヤイと、若い女性に戸惑うコーイチ。そんな二人だが、しだいに心が打ち解け、やがてそれぞれにとってかけがえのない間柄になっていく。

登場人物・キャラクター

ヤイ

名字は不明。シバタニ家で女中として住み込みで働く女性。主人のシバタニコーイチのことは「ダンナさん」と呼んでいる。髪型はセミショートで、顔立ちは子供のように幼い可愛らしい女性。着物と割烹着が普段着。性格は優しくて礼儀正しいが、考えすぎるところがある。親に捨てられた過去があり、引き取られた大旦那の家で女中として働いていた。 ここで家事全般を身につけた。その後、シバタニサエコに引き取られて、シバタニコーイチの家で住み込みのお手伝いさんになった。学校に行ったことはなかったが、マミコ先生と出会ってからは彼女に勉強を教わっていた。やがてダンナさんとマミコ先生がかつて恋人同士だったと知ると、自分の中にあった想いに気づく。 しかし、あえて自分は身を引いて家を出てしまった。そこへダンナさんが追ってきて、「一人の女性として一緒に暮らしたい」と告白される。以降は、お手伝いさんではなく一人の女性としてコーイチと共に生きることになった。捨て子で誕生日は不明だったが、シバタニ家にやってきた9月19日を誕生日にすることにした。 好物は柿。

百目 (ひゃくめ)

ただし、『木造迷宮』のパイロット版とでもいうべき同人誌版の方である。長身でメガネをかけたキツい雰囲気の美女。クラタカロボット工学研究所に務めるダンナさんのもとで女中をしている。家事は有能だが、先代が和食党だったため、実はカレーライスの作り方を知らなかった。また、北国出身で耐性がないため、ゴキブリだけは大の苦手としている。 ヤイが百目の家におじゃまする特別編が連載中に掲載された。

シバタニ コーイチ

世間の片隅で三文小説を書いている小説家。名前は漢字だと「柴谷広一」となる。お手伝いさんのヤイからは「ダンナさん」と、いとこのサエコからは「兄さん」と呼ばれている。大柄な体格で、度の強い丸くて小さなメガネを愛用。服装は無頓着で、冬場はドテラを愛用。髪の毛はヤイに散髪してもらうが基本ボサボサで、ネットのような帽子に詰め込んでいる。 小説家としてはあまり売れていないが、何冊も単行本が出ており、インタビューを受けたこともある。気が弱いが、安心できる雰囲気があり、意外と女性に好かれている。小説家になる前は小学校の教員をしていた。かつて、ヤイに勉強を教えているマミコと恋仲だったが、彼女の親が決めた結婚を引き止められずに別れている。 その後、ヤイを通じて再会したが、彼の心はすでにヤイが占めていた。ヤイが身を引くように家を出ると彼女の後を追い、彼女が花見をしたいと言ってた桜の木の下で発見。なおも去ろうとするヤイに自分の想いを打ち明けた。ちなみに犬と椎茸が苦手だが、犬はワンコを飼ってから克服してきている。

シバタニ サエコ

シバタニコーイチのいとこ。柴谷不動産で不動産の仕事をしている、ショートカットで眼鏡をかけた美人。プロポーションも抜群。性格は気が強く、普段は仕事一筋。コーイチのことは「コーイチ兄さん」または「兄さん」と呼んでいる。今はいとこのコーイチに対してキツく当たりがちだが、幼児の頃から懐いており、思春期には異性として強く意識していた。 そして、コーイチと交際していたマミコに対して嫉妬もしていた。子供の頃から小説家になりたいというコーイチの夢を応援しており、今もコーイチの著作が出ると本屋をかけずり回って必ず2冊購入している。ヤイを育てていた大旦那が亡くなったあと、彼女を一時、自分のもとで引き取っていた。 その後、生活リズムがボロボロのコーイチのもとへ、ヤイをお手伝いさんとして引き合わせた。大旦那のもとにいたときはひっつめ気味だったヤイの髪型を今のようにしたのはサエコで、そのイメージはかつてコーイチとつきあっていた頃のマミコの髪型だった。

ワンコ

『木造迷宮』に登場する犬。マルカとチョメ坊が拾った捨て犬で、ヤイと3人で神社の境内の隅で育てていた。ダンナさんことシバタニコーイチは犬が大の苦手だったが、ヤイたちにほだされてシバタニ家で飼うことになった。その後、マルカとチョメ坊はワンコと名づけられた犬に会いに、ちょくちょくシバタニ家を訪れている。 コーイチもワンコを飼ってから少しは犬の耐性はできているようだが、基本的に散歩はヤイの仕事である。

キタムラ ケイゾウ

柴谷不動産の従業員で、シバタニサエコ直属の部下。温厚な青年で、サエコの仕事にはいつもお供している。サエコがいとこのコーイチからもらったイヤリングを紛失したときは、有給休暇を使って探し回るほど、彼女に献身的。男としてサエコに好意を抱いているのを隠そうともしないが、今のところサエコにそのつもりはなし。 だが、キタムラが一人前になったに考えてもいいという雰囲気はある。ヤイがシバタニ家を出て行ったときは周囲がアタフタする中、冷静に考え、彼女をみんなで探そうとその場を仕切った。彼曰く、故郷から出てきて右も左も分からない中、サエコたちと出会えたキタムラにとってヤエも同じような気持ちだろうなということだった。 故郷は海のある街で、親類は民宿をやっている。

マルカとチョメ坊 (まるかとちょめぼう)

ヤイと一緒にワンコを拾った近所の子供。サイドに髪の毛をまとめている女の子がマルカで、ザンギリ頭の男の子がチョメ坊。ワンコを拾った後も、ヤイと一緒にツクシを摘んだり、駄菓子屋で遊んだりと、ヤイのいい友達になっている。またマミコとは公園の滑り台で出会っており、彼女のことを「滑り台のねーちゃん」と呼んでいる。

ミカネ

シバタニコーイチが小学校の先生だった頃の教え子。ボーイッシュな女の子で、今は学校を辞めて自転車で全国各地を放浪している。お屋敷でメイドとして働いていたこともあり、コーイチの家に1泊したときはメイド姿を披露している。しかし、家事はヤイにてんでかなわなかった。小学生時代はイタズラばかりでコーイチのことを困らせてばかり。 彼にとっても一番印象深い生徒だった。実は小学生のとき、木から落ちたときにコーイチ先生が自転車でミカネを隣町の病院まで連れて行ったことがあり、それ以来こっそり彼のことを慕っていた。1泊した翌日、メイド服を置き土産に台風のように去って行った。

リュウゾウ

学校にろくに行かず、ケンカばかりしている不良少年だが、出会い頭にぶつかったヤイに一目惚れしてしまう。ダンナさんことシバタニコーイチのことを勝手にヤイをいじめる悪い奴と思い込み、彼女の役に立とうと色々と手伝いをする。だが、いかにも人畜無害なコーイチ本人と出会い、ヤイが彼に対して嬉しそうに尽くすのを見て自分の片想いが散ったのを悟った。 同級生の女の子で、いつもリュウゾウに対して口うるさいツグミとは、いい雰囲気になっている。その後、ヤイが家の庭先で行水をしていたときは、覗きをしようとしてそれを阻止しようとするコーイチと一進一退の攻防を繰り広げた。

セッコ

シバタニコーイチが常連客として来ている喫茶「木もれ陽」の看板娘。ツインテールに丸メガネが特徴的な少女。図書委員もしており、周囲にはあまり理解されていないが柴谷広一の小説の大ファンである。だが作家柴谷広一が、むさ苦しくてヘビースモーカーな常連客のシバタニコーイチだとは当初気がつかず、すらりとしてダンディな、スーツの似合うメガネ男子を想像していた。 実は本人の知らないところで、コーイチの小説のモデルにもなっている。ヤイとも友達になり、喫茶「木もれ陽」で彼女から料理を学んだり、放課後一緒にマミコ先生の勉強会に参加したりしている。サエコの勧めで自分でも小説を書いてはみたが、周囲の評価はイマイチだった。 しかし、常連客のシバタニコーイチは彼女の小説を評価してくれた。やがてあこがれの柴谷広一がその常連客だと知ると、ショックを受けるかと思われたが、そんなことはなく感激していた。そしてマミコも柴谷広一ファンだと知ると、彼女とコーイチの過去を知らずにうっかり引き合わせてしまう。

ゲンタロウ

ヤイが大旦那のもとで暮らしていた頃、近所に住んでいた少年。お使いの途中だったヤイに、けん玉やベーゴマといった遊びを教えていた。ヤイがお使いを忘れて遊んでいたため、罰として夕飯抜きになったときは、仲間とおにぎりを作ってこっそり届けに来た。当時からヤイのことをヤイ坊と呼んでおり、ヤイはゲンちゃんと呼んでいた。 成人してからは村の役場に勤め、大旦那の死後に遺された屋敷を管理していたが、上京した際に写真館でヤイの写真を見つける。そしてその写真を手がかりに聞き込みを重ねて彼女と再会。シバタニ家に1泊したあと、ヤイとデートのように街を回る。村に帰る前、ヤイがダンナさんへの想いを交えて今は元気にやっているとゲンタロウに伝えると、彼も安心したかのように村へ帰っていった。

大旦那 (おおだんな)

捨て子だったヤイを拾って育てた人物。寡黙かつ厳格な雰囲気の大男でカイゼルひげが特徴的。7歳になったものの、学校に通っていないヤイのために本を与えて、読み書きそろばんといった初等的な教育を授けた。ヤイ以外の女中は、最年長で家を任されているオババ、色気のあるタエ、男勝りなカヨがいた。 好物はサンマだが、すでに年老いて食が細くなっていた。しかし、ヤイが焼いたサンマだと知ると喜んで食べるなど、使用人というより娘のように接していたところもある。大旦那の死後、屋敷は閉鎖されて女中たちも離ればなれになった。当時、一緒に働いていた女中の先輩のうち、タエは温泉旅館の女将に、カヨは地元の魚屋に嫁いで3人の子持ち(さらにもう一人生まれる予定)になっていた。

スギサキ トモヨ

ヤイたちが暮らす街にある杉崎写真館の女主人。三白眼だが長身でロングヘアな20代前半の美女。祖父から受け継いだ写真館のオープン前に、店で飾る写真を何にするか悩んでいたとき、通りがかりのヤイを見つけて彼女をモデルにした。最初はヤイがカチコチになっていたため、望んだ写真が撮れなかったが、彼女がダンナさんのことを考えてニコっとしたときの表情をバッチリカメラに撮ることに成功した。 喫茶「木もれ陽」の雰囲気も好きで、その雰囲気を写真に撮りたいと公言してもいる。またサエコとははじめて出会ったときにそのプローションの良さにも魅せられてしまい、ヌード写真を撮りたいと迫っていた。休日の日は写真館も休業とし、街をあちこち周って人や建物、木々など気に入ったものを写真に収めている。

マミコ

シバタニコーイチとは同じ大学の同じ学科で、ともに教職を目指していた仲。本来は小説家希望だが親の意向で教員を目指していたコーイチが、教員になる意思を固めたのは彼女の存在があったからである。コーイチとはやがて恋人同士になるが、マミコの親が決めた結婚話に逆らえず、離ればなれになってしまう。 その後、独り身になってセッコたちの学校で国語教師となった。そこでヤイと出会い、彼女に勉強を教えるようになる。過去の事情を知らないセッコの導きでコーイチと喫茶「木もれ陽」で再会。お互いの気持ちを確認したあと、小説家になる夢を叶えたコーイチを見習って、本来の夢である小学校教師を目指すと告げた。 すでに山村の分校に教員の空きがあり、コーイチと雰囲気の似た「知人」がそれを紹介してくれたとも口にした。その表情から、「知人」に対して想いを寄せているようだった。

場所

シバタニ家 (しばたにけ)

ヤイの住み込み先。昭和の雰囲気を残した木造2階建ての民家で、庭には柿の木が生えている。教師を辞めて小説家の道に進んだシバタニコーイチのため、いとこで不動産業のサエコが用意した。

喫茶「木もれ陽」 (きっさこもれび)

セッコの祖父が経営する喫茶店。シバタニコーイチは昔からの常連客。かつて、この街に住んでいた頃のマミコも、この喫茶店を愛用していた。モーニングセットは「目覚ましプレンド(濃い目)」、「ベーコンエッグ&ウインナー」、それに「厚切りトースト(ジャム・マーガリン)」か「フレンチトースト」か「マフィン」のいずれかがつく。 他にランチメニューは「Aランチ(スペシャルサンドイッチとコーヒーか紅茶)」「Bランチ(スパゲティナポリタン(サラダ、コンソメスープ付き))」がある。ヤイが手伝いに来たとき、まかないで食べた「Bランチ」と「ダージリンティー」に舌鼓を打っていた。

その他キーワード

遅咲きの桜 (おそざきのさくら)

ヤイがダンナさんことシバタニコーイチと街のあちこちを散歩しているときに偶然見つけた、遅咲きの桜の木。ヤイはまた桜が咲いたら、ダンナさんやお友達と一緒にお花見がしたいと言っていた。コーイチと彼のかつての恋人でヤイの先生でもあったマミコが再会したときは、二人が復縁するものと思い込み、シバタニ家を出て雨の中、この「遅咲きの桜」のもとにいた。 そして、ヤイを見つけたコーイチは桜の木の下で自分の本当の気持ちを打ち明けた。その後、二人が男女の仲になってから、お花見は行われたようである。

柴谷広一の著作 (しばたにこーいちのちょさく)

『木造迷宮』の登場人物ダンナさんことシバタニコーイチが書いた小説。これまで「夕ぐれに…」「花の君」「雨音」「月明かり」「夢の夜」「潮騒」「枯れ葉の詩」などが刊行されている。いずれも著者名は漢字の「柴谷広一」となっている。本屋にはあまり置かれておらず、たとえ置いてあっても本屋のオヤジに「売れてない」「よっぽどつまらないんだろうねー」となど言われてしまう。 それ以外にも「ロマンチックすぎる」「時代遅れ」という声も多い。しかし、喫茶「木もれ陽」の看板娘であるセッコのように熱心なファンもいる。「枯れ葉の詩」では親の決めた婚約によって別れる恋人が描かれていた。

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