プラネテス

プラネテス

宇宙には「スペースデブリ」と呼ばれるゴミが無数に漂っている。ゴミ回収船の船外作業員である星野八郎太は、大小様々なスペースデブリを拾い続ける毎日で、いつか自分の宇宙船を買うという目標のためだけに仕事をしていた。ある時、木星往復を目指す新型宇宙船「フォン・ブラウン号」への搭乗員募集が開始される事を知った八郎太は、仕事を続けるべきか、夢を摑み取るために辞めるのかを迷い始める。ストーリーは八郎太のこの後の決断から、宇宙開発に反発するテロ組織との戦いや、宇宙で遭遇した事故が原因のノイローゼに悩まされながら自分と向き合い戦っていく姿を描いていく。2002年度の星雲賞コミック部門を受賞した作品。

正式名称
プラネテス
ふりがな
ぷらねてす
作者
ジャンル
その他SF・ファンタジー
レーベル
モーニング KC(講談社)
巻数
既刊4巻
関連商品
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あらすじ

第1巻

秒速8キロメートル近い速度で宇宙空間を飛翔している「スペースデブリ」(通称デブリ)、それを回収するのが星野八郎太(通称ハチマキ)の仕事で、大小様々なデブリを日々回収していた。ハチマキは将来自分の宇宙船を買うという夢のため、賃金の高いこの仕事をしている。同じ職場で働くユーリ・ミハイロコフは、以前乗っていた宇宙船が大量のデブリ群に衝突するという大事故を経験していた。そんな彼もまた、大切な物を探すために日々デブリを回収しているのであった。

宇宙空間は地球と違って重力がない。そのため地球で生活するようにできている肉体は衰えやすく、ハチマキは足首を骨折する大怪我を負ってしまった。怪我の治療のために入院する事になったハチマキは、月面アルキメデス・クレーター市の病院で一人の女性と出会う。12年もの間この病院にいるという彼女の話を聞いて、ハチマキは長きにわたり宇宙にいる事について考え始める。

その後、宇宙防衛戦線と名乗る組織の爆破テロが発生した。喫煙所に爆弾を仕掛ける手口だったため、喫煙所は警戒されて次々と閉鎖されていく。喫煙者のフィー・カーマイケルは苛立ちを覚えた。ところがフィーも爆破テロに巻き込まれてしまう。しかし間一髪のところで無傷だった。怒りのあまり正気を失ったフィーは、宇宙防衛戦線が仕掛けた、衛星を宇宙ステーションにぶつけるという作戦を、デブリ回収船を体当たりさせて阻止する。そしてそのまま地球へと落下していくのであった。

月面2075年、ハチマキは作業中の事故によって一時的に行方不明となる。奇跡的に発見されるが、事故が原因の病気「空間喪失症」となってしまう。宇宙飛行士としては致命的な病気となってしまったハチマキは、空間喪失症を克服するために努力したが、改善の兆しが見えない。しかしある時、建造中の宇宙船に搭載する新型エンジン「タンデム・ミラー式エンジン」と出会い、もう一度宇宙へ行く事を決める。

第2巻

ニューアラマゴルド実験場で行われていた木星往還船「フォン・ブラウン号」のタンデム・ミラーエンジン臨界試験中に事故が発生し、月面上空には数え切れないほどのデブリが撒き散らされる事になる。責任者のウェルナー・ロックスミスは事故の責任をどう取るかという問いに対して、次は失敗しませんという言葉を残し、記者会見場を去っていった。その姿を見ていたハチマキとその父、星野五郎はロック・スミスその人に興味が湧き、フォン・ブラウン号に乗る事を決める。父は優秀な船長として迎え入れられたが、ハチマキは選考試験に合格しなければ乗る事はできないため、ひたすら努力していた。

ハチマキが選抜試験を受けるため今の職場を離れる事になり、後輩として田名部愛(通称タナベ)が配属される。訓練校を出たての新人である彼女は、最初の船外訓練では宇宙酔いになって熱を出してしまった。

タナベはデブリ回収作業中に棺桶を発見した。宇宙葬によって宇宙へ送られたが、重力を振り切れずに戻ってきてしまったものだった。家族からは、もう一度外宇宙へ向けて射出して欲しいと言われるが、タナベは家族に返すと言い始める。本当の愛とは、と問うタナベの言葉に家族は引き取りを申し出る。

一方、ハチマキは木星往還船登場船外活動員第二次選抜考査会場にて試験を受けていた。そこで同じく試験を受けているハキムと知り合う。ここでも宇宙防衛戦線のテロ活動が行われており、ハチマキもその標的となっているのだった。同じく星野五郎も標的となっており、武装グループに襲われていた。なんとか逃げ切れたものの、そこに現れたのはかつての友人だった。


第3巻

木星往還船フォン・ブラウン号の搭乗員試験も終わり、ハチマキは夢を実現する。しかしハチマキの心にはまだ迷いがあった。同じ搭乗員のサリー・シルバーストーンはそんなハチマキを見て恐ろしさを感じていた。生気がなくなったハチマキを心配して五郎や同じ搭乗員達は励まそうとする。しかし何をしても回復する兆しがないハチマキ、とうとうしびれを切らしたサリーは、自身の体で抱きしめるのだった。夢をみたハチマキはそこでタナベと出会う。そして古い友人に会うという置き手紙を残して、ハチマキは出て行った。以前働いていた職場へと顔を出すと誰もおらず、かつて自身が使っていた部屋へと向かう。そこは後輩として配属されたタナベの部屋だった。回収船に戻ってきたフィーがタナベは地球に戻ったと告げると、ハチマキはその足でタナベに会いに行く事を決める。

第4巻

宇宙には様々なデブリが飛翔しているが、回収してはいけないデブリが存在している。それは秘密裏に運用されている軍の持ち物だった。デブリ回収を仕事にしている田名部 愛はそれが納得できず、フィー・カーマイケルと大喧嘩をしてしまう。フィーもその事には納得はしていなかった。しかし管轄外だからという理由で無理やり納得していたのだ。そして、その回収してはいけないデブリが使用されてしまう事態が起こった。

宇宙で使用されたのは軌道機雷だった。その破片は別の飛翔体とぶつかり、さらに破片を撒き散らして地球全体を覆ってしまう可能性があった。この現象は「ケスラーシンドローム」と呼ばれている。これ以上デブリを増やされるのも、拾ってはいけないデブリが目の前に存在するのも納得できない。彼は国際航空法違反で逮捕状を出されながらもデブリ回収を続けていた。アメリカ宇宙軍情報局大佐サンダースが補給支援を申し出てくる。たが、利用される事を嫌ったフィーは申し出を拒否、職場を退いて家庭へと戻る事を決断する。

一方、木星往還船フォン・ブラウン号は順調に航海を続けており、木星まであと少しのところまで到達していた。長期間の旅でクルーは家族同然になっていたものの、いざこざは絶えない。そのような中、ハチマキは人類初の木星到達第一声を任される事となる。

登場人物・キャラクター

星野 八郎太 (ほしの はちろうた)

黒髪の短髪と鉢巻がトレードマークの主人公の男性。デブリ回収業者で働く宇宙船員としてDS-12号に搭乗。楽天家だが激しやすい性格。デブリ回収業は給料が良いからと、自分の宇宙船を手に入れるために日々働いている。船外活動中の事故で宇宙船員としては致命的な空間喪失症になりかけるが克服する。デブリ回収員として宇宙の荒波に揉まれ、船外活動に関しては試験官をも唸らせる動きを見せた。この宇宙に俺に関係ない人間なんか一人もいないと本気で思っている。

田名部 愛 (たなべ あい)

ブラウンでくせの強いショートカットの女性。テクノーラ社に入社した新人宇宙船員。退職する星野八郎太の代替要員としてDS-12号クルーに加わるが、訓練校を出たばかりで宇宙遊泳もままならず、最初の船外活動を行った際には宇宙酔いでダウンしてしまう。そっけない態度をとったり、自分中心の考えを持つ人に対しては「愛がない」と否定し、自らが代わりに愛のある行動をしてしまう真っ直ぐな心の持ち主。愛を至上の価値とする直情径行な性格で、星野八郎太とは衝突しがちだったが、互いに惹かれあってゆく。

フィー・カーマイケル

フロリダ出身で褐色の肌の女性宇宙船員。デブリ回収船DS−12号の船長。明るい性格で姉御肌、星野八郎太からは「ねえさん」と呼ばれている。重度のヘビースモーカーで、長期間喫煙ができないと非常に機嫌が悪くなり、キレると周りの言葉が届かずに突っ走ってしまう事もある。フロリダにはアルという息子がおり、フィーが宇宙で仕事をしているため父親が代わりに息子を育てている。息子のために料理をするが大失敗、料理は全くと言っていいほどできない。地球ではバイクに乗っている。

ユーリ・ミハイロコフ

星野八郎太の同僚で、DS-12号クルーのひとりであるロシア人の男性。無口で、ただ宇宙を眺めている事が多く、有休も取らずに淡々と働いている宇宙船員。6年前に夫婦で乗っていた宇宙機にデブリが衝突した事故で日本人の妻を失い、形見のコンパスを探している。DS−12号では常に冷静沈着、周囲によく気がつく優秀な宇宙船員でもある。八郎太の実家へと一緒に行くなど仲が良く、八郎太の弟でもある九太郎のロケットに対する熱意に感銘を受け、開発の手助けをしている。空間喪失症で苦しむ八郎太に、開発中のタンデム・ミラーエンジンを見せた。

ノノ

黒髪ショートボブの少女。星野八郎太がアルキメデス・クレーター市の病院で出会った。月生まれ月育ちで、世界に4人しかいない月面人(ルナリアン)。12歳という年齢に見合わず、星野八郎太よりも頭ひとつ分ほど背が高い。生まれつき重力障害を持っているため地球の重力に耐えられない体となっており、宇宙生活病の研究対象となっている。地球の海を見る事を夢見ているが、自身の障害のせいでその夢は叶わず、月の海に出て地球を見上げている。

星野 九太郎 (ほしの きゅうたろう)

星野八郎太の弟。宇宙船エンジニアを目指しており、自作のロケットを打ち上げているが失敗している。14歳だが、身長が伸びないのを気にしており、毎日特製ドリンクを飲んでカルシウムを摂取している。高校生になると、兄よりも身長が高くなった。ロケット打ち上げの場面をユーリに目撃され、その問題点を指摘されてロケットを改良し、ロケット打ち上げに成功する。必要な部品は廃材置き場から盗んで調達している。自分の作ったエンジンで火星日帰り旅行をするのが夢。

星野 五郎 (ほしの ごろう)

星野八郎太の父親。優秀な航宙士で、火星―地球間を5度往復した経歴を持つ。一度は航宙士引退を考えていたが、ウェルナー・ロックスミスの利己的な人間性を見て、逆に木星往還船フォン・ブラウン号搭乗を決意する。その後、地球防衛戦線からの妨害を受けて命を狙われる事になった。楽観的な言動とは異なり、仕事になると堅実な働きを見せる。フォン・ブラウン号の船長とは昔からの知り合いで付き合いが長い。火星史上初のホームランを打った人物。

星野 ハルコ (ほしの はるこ)

星野八郎太の母親。地球で暮らし、時折帰ってくる夫の星野五郎や八郎太を笑顔で迎える優しい女性。しかし、怒ると誰よりも強く恐ろしい。八郎太と一緒に家に訪れたユーリに対しては英語で喋るなど語学力もある。宇宙船員のよしあしは女房が決める、と持論を展開し、夫を信じて待ち続けている。普段は離れて生活しているが夫婦の仲は良く、木星へ旅立つ直前には五郎の髪を切ってあげていた。「私のとんかつの絶妙な美味しさを忘れないでいろ」と、良い女房になろうと張り切っていいる。

ウェルナー・ロックスミス

エンジン工学の第一人者で、地球外開発共同体の木星計画担当官の男性。木星往還船「フォン・ブラウン号」の設計者でもあり、宇宙船開発のためなら何でもするエンジン工学の権威。宇宙船の機関士として星野五郎を推挙している。エンジンテスト中に起こった爆破事故で多くの技術者が亡くなった際にも、良いデータが得られたと言い、その悪魔的な発言で周囲から反感を買う。クルーを「部品」と呼び、「宇宙船以外何一つ愛せない逸材」と自身の事を説明している。

ハキム

木星往還船搭乗員試験を受けていた褐色肌の男性。一次試験を2万人中トップの成績で通過するほどの才能を持つ。貧困が続く中東のごく小さな国の出身で、富裕な先進国に対して怒りを感じていた。星野八郎太の友人でもあるが、実はあまり親しみは持っていない。八郎太の事は、簡単な会話をするだけのライバルとして認識している。試験中に試験官の通信を傍受するなど、余裕綽綽で試験を受けていた。優しい笑顔で八郎太に話しかけているが、試験を受けている本当の目的は木星へ行くためではなかった。

サリー・シルバーストーン

木星往還船フォン・ブラウン号の船外活動員。短髪。気が強いが優しい性格の持ち主の男性。休日にはテムズ川で一日中川を眺めてピクニックをする、可愛らしい趣味の持ち主。調子が悪い星野八郎太に対しても、休日にピクニックに行ってみてはどうかと提案して、月面へと送り出す。八郎太が精神的に不安定となった時には、ロック・スミスに彼を宇宙船から降ろすよう提言するが却下される。他のクルーが「はしか」みたいなものだと笑う中、献身的に支えて八郎太の立ち直りをサポートした。

集団・組織

テクノーラ社

星野八郎太らが所属する企業で、スペースデブリの回収業者。宇宙空間にあるさまざまな「デブリ」を回収している。デブリ回収には厳しいノルマを設けている。アルキメデス宇宙港テクノーラ社専用ドックで行われたDS-12号の機体点検を、通常4日かかるところを3日で仕上げた事もあった。デブリ回収員の他、機体整備のエンジニア、オペレーター、事務局など様々な職種の人々が働いている。DS-29号に乗っている社員にはレティクル星からきた異星人がいるという噂もある。クルーが足りずに定員割れしたデブリ回収船は解散する事もある。

場所

アルキメデス・クレーター市

月の「雨の海」に造られた月面都市(セレノポリス)。宇宙生理学研究所付属病院があり、宇宙で活動する人々の拠点となっている。月面にあるため市内の重力は地球の6分の1になっており、星野八郎太は車椅子よりも速いからと、軽くジャンプして移動していた。八郎太の病室には、人類で初めて小惑星帯を有人探査した一人、ハリー・ローランドが入院している他、様々な患者で賑わっている。月面車が走行できる道が整備されており、喫煙所も完備されている。

オリエンタレ・ベイスン市

月面の地下に造られた規模の大きな坑道都市。隣の坑道都市に通じる駅や道が作られており、様々な言語が飛び交う賑やかな場所でもある。過激派組織宇宙防衛戦線の標的となって爆弾テロが行われた。市で発生したテロ事件は5件、テロ活動の標的となる可能性が高い喫煙所をすべて撤去する事になる。トイレで煙草を吸おうとしたフィーが付けた火に対して反応し、大量の水で消化するなど設備も充実している。自動販売機や書籍販売機など、人々が生活するうえで必要なものも揃っている。

その他キーワード

DS-12号

星野八郎太らが搭乗するデブリ回収船。愛称は「TOY BOX」。船齢30年になる老朽船。船全体に極小デブリが衝突したあとがあり、見た目はボロボロ。テロ組織宇宙防衛戦線の国際軌道宇宙港破壊を止めるため、通信衛星に体当たりしてインド洋に墜落。本来、大気圏突入機構はなく、宇宙専用の船。新造船「TOY BOX2」に代替わりした。船内には大学での実験のためにナマコやクモを乗せていた事もあった。シャワー室やクルーの部屋が完備されており、長期間の活動も可能となっている。

アニメ

プラネテス

西暦2075年。人類は宇宙に進出し、地球、宇宙ステーション、月面の間を宇宙船が飛び交うようになった。しかし、そのために、宇宙を漂うスペースデブリが問題となっていた。テクノーラ社はデブリ課を設立してスペ... 関連ページ:プラネテス

書誌情報

プラネテス 4巻 講談社〈モーニング KC〉

第1巻

(2001-01-22発行、 978-4063287356)

第2巻

(2001-10-20発行、 978-4063287783)

第3巻

(2003-01-23発行、 978-4063288636)

第4巻

(2004-02-21発行、 978-4063289374)

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