旧約Marchen

旧約Marchen

幻想楽団Sound Horizonの7thStoryCD『Märchen』の楽曲を、ソガシイナの解釈に沿ってコミカライズしたオムニバス作品。すべての作品が童話をモチーフとしており、記憶をなくしたメルが、後悔や恨みを抱いて死んだヒロイン達の復讐を七つの大罪になぞらえて手伝いながら、悲劇を物語として読み解き、白紙の本に綴っていく姿を描く。

正式名称
旧約Marchen
ふりがな
きゅうやくめるひぇん
漫画
ジャンル
復讐
関連商品
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世界観

本作『旧約Marchen』は、Sound Horizonの7thStoryCD『Märchen』のコミカライズ作品である。しかしSound Horizonの楽曲は、聞く者それぞれの持つ解釈を大切にしており、かつ制作者であるRevoは楽曲の背景を明確にしない作風であるために、本作で描かれる物語や世界観、キャラクターの関係性などはソガシイナ独自の解釈によるものとなっている。またSound Horizonの楽曲の特徴として、アルバムやシングルの枠を超えたすべての楽曲が、なんらかのつながりを持っている事から、あえて本作中で説明されない不明瞭な部分もある。なお、各作品の背景にはドイツの宗教改革や農民戦争をモチーフとした世情が描かれている。

作品が描かれた背景

ソガシイナのデビュー作『NECROMANCER』の最終刊に、かねてよりソガシイナがファンであったRevoが帯コメントを書いた。これにより両者が面識を持った事が、本作『旧約Marchen』が描かれるそもそものスタートラインであった。その後、Sound Horizonがライブツアーで九州を訪れた際、楽屋へ挨拶に赴いたソガシイナ自身が7thStoryCD『Märchen』のコミカライズを提案し、Sound Horizonの了承を得た事で本作の執筆が実現した。

あらすじ

第1巻

森の中に母親と住んでいた白い髪の幼い少年は、仲のいい少女に別れと再会の約束を告げたその帰りに、ペストマスクを着用した男達と出会い、井戸へ投げ落とされてしまう。その底で、少年はイドと出会うが、目覚めた時には記憶をなくして青年となっていた。そばにいた人形の少女、エリーゼから「メル(メルヒェン)」という名前と、「復讐する事が存在意義」だと教えられた彼は、手にしていた本「Das Märchen des Lichts & Dunkels」に復讐劇を書き綴っていく事を決める。(エピソード「宵闇の唄」)

森の中で、貧しいながらも愛する母親と共に暮らしていた少女のギフトは、生活に困窮した母親によって町で置き去りにされてしまう。修道院に拾われ、シスターとなったギフトだったが、宗教改革に遭い、暮らしていた修道院を破壊されてしまったのをきっかけに、母親と暮らした生家を探す旅を始める。しかし辿り着いた生家で待っていたのは、別人のように変わり果てた母親、森の老婆だった。エピソードモチーフは童話『ヘンゼルとグレーテル』。(エピソード「火刑の魔女」)

戦争で働き手を失った村の少女、ランダは、遠くの町で売りに出された。そこで出会った年齢や性別が不明の謎の人物、女将黒狐亭の女中として買われたランダは、退屈ながらもゆったりとした日常を過ごしていた。しかし、来客時に看板料理である肝臓料理の食材をきらしていた女将が、慌てて店を飛び出したあと、血の滴る肝臓を持って帰って来た事によって平穏な生活が崩れ始める。エピソードモチーフは童話『絞首台から来た男』。(エピソード「黒き女将の宿」)

第2巻

雪白姫は美しい容姿を持っていながらも、自身の美しさにしか興味がない継母の王妃様に愛されなかった。そのうえ雪白姫の美しさが王妃様の美しさを超えてからは、命を狙われるようになる。7人の小人の住む小さな可愛いお家に匿われた雪白姫だったが、老婆に扮した王妃様から「林檎を半分にして分け合おう」と誘われ、毒と知りつつ、本当の親子のような仕草に憧れて林檎を口にしてしまう。エピソードモチーフは童話『白雪姫』。(エピソード「硝子の棺で眠る姫君」)

継母義妹から虐待を受ける少女のセイレーネは、辛い生活を続けながらも笑顔で乗り切っていた。しかし、糸巻きを井戸に落としてしまった事を二人に責められ、井戸の中へと飛び込んでしまう。そんな井戸に浮かぶセイレーネの姿と、死の経緯を知ったメルに、異変が訪れる。髪が金色に変わり、セイレーネを「大切な一人娘」と呼び、メルの中で眠っていたイドが目を覚ます。エピソードモチーフは童話『ホレのおばさん』。(エピソード「生と死を別つ境界の古井戸」)

野ばら姫は何不自由ない王家に生まれたが、生誕の祝宴に唯一招かれなかった事を恨んだ賢女のアンテローゼによって、15歳で死亡する呪いをかけられてしまう。アプリコーゼによって、その呪いは100年の眠りという魔法にすり替えられたものの、薔薇の塔で眠りについた野ばら姫は、目覚めの口づけを待ちわびていた。そんな折、メルに誘導された野ばら姫の王子が薔薇の塔へとやって来る。エピソードモチーフは童話『いばら姫』。(エピソード「薔薇の塔で眠る姫君」)

ヒロイン像

本作『旧約Marchen』のヒロインは毎話変更されるが、全員が不幸な経緯によって死亡しており、自分を殺害した相手に対し、強い後悔や恨みを抱いているという共通点がある。ただし相手への復讐を果たす際には、生き返るか、または死んだままかは個人差がある。

単行本の装丁

縦スリップ型のブックケースに入っており、ジャケットイラストもケースにのみ描かれている。本誌は紺色の角背上製本となっており、表紙には金の箔押しで「Das Märchen des Lichts & Dunkels」と書かれている。これは本作『旧約Marchen』のコミカライズ元である7thStoryCD『Märchen』の歌詞カードと同じ装丁であり、作中でメルが物語を書き綴っている本と同題となっている。また質感と色味の違う遊び紙が巻頭と巻末に2枚ずつ入っているほか、セリフの中で「七」や「7」、もしくはそう読み取れる部分(例として、「世」の一画目と五画目の部分など)がすべて赤で印刷されているなどのカラー演出が施されているため、全文フルカラーとなっている。さらに各巻の巻末にはキャラクターのデザイン画や、各エピソードのもととなった童話や、作中に用いられている時代の解説などが納められている。

関連作品

本作『旧約Marchen』と同じく、Sound Horizonの7thStoryCD『Märchen』を、そのプロローグとなっているマキシシングルCD「イドへ至る森へ至るイド」を含めてコミカライズした作品『新約Marchen』が、マガジンエッジKCから発行されている。またエピソード「薔薇の塔で眠る姫君」に登場するラフレンツェの登場する4thStoryCD『Elysion 楽園幻想物語組曲』をコミカライズした作品『Elysion 二つの楽園を廻る物語』があすかコミックスDXから発行されている。

関連商品

CD

本作『旧約Marchen』は、Sound Horizonの7thStoryCD『Märchen』が原作となっている。同作品はSound Horizonの5作目のメジャーアルバムで、物語性のある歌詞とオーケストラを起用した壮大な音楽、そして声優や歌手による演技と効果音を用いて、さながらミュージカルかオペラのような作品となっている。エピソード「生と死を別つ境界の古井戸」では、『Märchen』のプロローグとなるマキシシングルCD『イドへ至る森へ至るイド』の会話が盛り込まれており、またエピソード「薔薇の塔で眠る姫君」に登場するラフレンツェは、4thStoryCD『Elysion 楽園幻想物語組曲』に収録されている「エルの絵本 魔女とラフレンツェ」に登場している。

登場人物・キャラクター

メル

古井戸の底に存在する、屍揮者(しきしゃ、ストーリーテラー)を名乗る青年。白い髪を毛先から黒く染めたようなまだらな髪色で、赤い裏地を持つ黒の燕尾服を着用し、赤と黒の翼が生えたようなデザインの指揮棒を所持している。生前の記憶がなく、メル自身が何者に復讐すべきなのかを思い出す事ができない。しかし「お友達」を名乗ったエリーゼに「復讐こそが存在意義」と導かれ、無念の死を遂げた女性達に死の経緯を唄わせ、手を加えて復讐劇に仕立て上げる事で、復讐を手伝っている。 生前は白い髪をした幼い少年で、エリーゼに似た白いドレスの人形を抱えて井戸に落とされた。その際、井戸の底にいたイドに取り憑かれた事が示唆されている。メルにはイドとしての記憶もないが、エピソード「生と死を別つ境界の古井戸」では意識を乗っ取られている。 また「メル」は通称であり、フルネームは「メルヒェン・フォン・フリートホーフ」という。

エリーゼ

古井戸の底に存在する、少女の姿をした小さな人形。金髪を後頭部で結い上げ、黒いドレスを着て、黒と赤のカチューシャを付けている。メルが目を覚ました時からとなりにいて、メルが記憶をなくしている事も理解している。メルに対しては愛らしい少女として振る舞うが、他者に対しては非常に毒舌。メルが女性達の復讐を手引きする裏で、メル自身の過去を繰り返すよう導いている様子がある。 またイドの存在も認知しているが、メルがイドの記憶に触れる事や、イドがメルの意識を乗っ取って行動する事を忌避している。

イド

エピソード「硝子の棺で眠る姫君」「生と死を別つ境界の古井戸」に登場する。メルに酷似した容姿の男性。金髪で非常に高慢な性格をしている。他者を見下した態度を取る事が多く、「低脳」が口癖。「コルテス」という人物に関連している航海士だったが、井戸に落ちて死んだとされる。エピソード硝子の棺で眠る姫君では、雪白姫の物語の途中でイドの人生を綴った物語が混入した。 またエピソード「生と死を別つ境界の古井戸」に登場するセイレーネの父親であり、セイレーネが幼少の頃、長旅で家を空ける際に、彼女が一人になる事を心配して継母と結婚した。メルがセイレーネの死の経緯を知った際、セイレーネが死ぬ直前までイドの語った「困難を乗り越え懸命に生き、笑え」という言葉を遵守していたと知って、メルの意識を乗っ取り、セイレーネを幸福に導くよう手引きした。 セイレーネからは「お父さん」と呼ばれており、フルネームは「イドルフリート・エーヘンベルク」という。

ギフト

エピソード「火刑の魔女」に登場する。森の老婆の娘。シスター服を身につけている。父親は行方不明になっており、森の奥でキリスト教の信徒である母親と共に、貧しい暮らしをしていた。ギフト本人は、母親といっしょにいられるだけで幸福を感じていたが、母親に街に置き去りにされ、彼女が信仰していた宗派の修道院で育てられた。そのため、敬虔なシスターとなっている。 しかし、宗教改革で育った修道院が破壊された事をきっかけに、母親が自分を捨てた理由を聞くため、記憶を頼りにギフトの生家を探した。生家では別人のようになった母親の姿と、改宗して逆十字の祭壇が祀られている事に戸惑ったものの、無理に改宗させられたという説明と、手作りのロザリオを見た事で、森の老婆が母親であると確信した。 しかし極限に餓えていた森の老婆が、ギフトの与えたパンに夢中になるあまり、ギフトを娘と気づかない事に激昂した結果、パンを奪われると勘違いした母親に斧で殺害された。死後、メルと出会い、小鳥達をあやつる能力を手に入れた。この能力を利用して、自分と同じように親に捨てられたヘンゼルとグレーテルを生家へと誘導し、彼らが森の老婆を殺すよう仕向けた。

森の老婆 (もりのろうば)

エピソード「火刑の魔女」に登場する。ギフトの母親。横髪が長く、つねにフードのついた黒いワンピースと毛糸のショール、ボロボロのエプロンを身につけている。若い頃は頬が痩(こ)け、やつれていながらも美しかったが、ギフトが帰郷した際には、老いて別人のように醜くなっている。夫が行方不明となっており、女手一つでギフトを育てていたが、貧しさのあまり食い扶持に困り、ギフトを街に連れ出したあと置き去りにした。 ギフトと離別後も暮らし向きは好転せず、つねに飢餓状態にあったため、ギフトと再会した際にも娘と気づく事はなく、彼女の持っていたパン欲しさに斧で殺害した。その後、ギフトの持っていたロザリオを売りに街に出た際、夫の死と遺産の存在を知り、人並みの生活を送れるようになっており、のちにヘンゼルとグレーテルが訪ねて来た際には、お菓子の家などを作って振る舞った。 子供に腹一杯食べさせるのが夢だったが、その結果、疑心暗鬼に陥ったグレーテルによって、かまどの火に蹴り入れられる事となった。死の直前、ギフトに会う事を切望した。復讐された罪は「暴食」。ギフトからは「お母さん」と呼ばれている。

ヘンゼル

エピソード「火刑の魔女」に登場する。グレーテルの兄。兄妹で森に置き去りにされ、パンくずで帰路の道しるべを作っていたが、ギフトのあやつる鳥に食べられ、途方に暮れていた。グレーテルがギフトの生家を発見した際には「怖い魔女の家かもしれない」と警戒したが、空腹で死ぬよりマシと決意し、門戸を叩いた。森の老婆が振る舞うお菓子の家などの料理を食べ続けた結果、丸々と太った。 グレーテルが森の老婆をかまどに蹴り入れたあとはグレーテルを讃え、老婆が持っていた金銭や装飾品を持って逃走した。グレーテルには「お兄ちゃん」と呼ばれている。

グレーテル

エピソード「火刑の魔女」に登場する。ヘンゼルの妹。兄妹で森に置き去りにされ、真雪のような白い鳥に惹かれて追いかけた結果、ギフトの生家を発見した。ヘンゼルから「怖い魔女の家かもしれない」と言われたが、空腹で死ぬよりマシと決意し、門戸を叩いた。森の老婆が振る舞うお菓子の家などの料理を、親切心と信じて口にしていたが、霊となったギフトにそそのかされて疑心暗鬼に陥り、森の老婆をかまどに蹴り入れた。 その後は老婆が持っていた金銭や装飾品を持って逃走した。

ランダ

エピソード「黒き女将の宿」に登場する。黒狐亭に女中として買われた少女。長い髪を2本のゆるい三つ編みに結っており、顔にはそばかすがある。口調が乱暴で、「おら」「だべ」などの田舎言葉を使う。田舎の貧しい農村出身で、どうにかやりくりして暮らしていたが、坊さんの説いた「神の前にはみな平等」の言葉によって村の男達が蜂起。 ゲーフェンバウアー将軍率いる軍として戦争に参加、死亡した事で働き手がいなくなり、遠くの町へと売られた。そこで黒狐亭の女将に買われた。女将を敬愛しており、女将が肝臓料理に、絞首刑にされた死体の肝臓を使用していると知った際には狼狽したが、女将と二人で生きていくために必要な事と割り切り、協力するようになった。しかし明らかに裕福な客が来店した際、食材を求めて訪れた絞首台に死体がない事に動転した女将によって殺害され、肝臓を抜き取られた。 死後、メルと出会って一時的に生き返った。その後、黒狐亭を訪れ、女将の肝臓を奪おうと襲い掛かっている。

女将 (おかみ)

エピソード「黒き女将の宿」に登場する。ランダを女中として買った、黒狐亭の女将。年齢、性別が不詳で、出会えば不祥と称される人物。自身を「薹(とう)が立って久しいクソババア」と称しており、化粧が濃い。愛した男性は全員死亡しており、それぞれミュンファーは気高く、フッテンは可憐で、ジッキンゲンは誰よりも激しかったと回想している。 来客時に食材(肝臓)を切らしており、その際、急場しのぎで絞首台の死体から肝臓を抜き取ってきた。その味の評判がよかった事から、それ以降は絞首台の死体を食材として使用するようになった。ランダに犯行現場を見られても動じず、「ぶら下がっていても腐るだけ」と開き直っており、ランダと二人で生きていくために必要な事と説得し、仲間に引き入れた。 しかし明らかに裕福な客が来店した際、食材を求めて訪れた絞首台に死体がない事に動転し、「死体がないなら作ればいい」と語ってランダを殺害し、肝臓を抜き取った。復讐された罪は「強欲」。多くの場合「女将」と呼ばれているが、時折「クソババア」と呼ばれている。

坊さん (ぼんさん)

エピソード「黒き女将の宿」に登場する。ラムダの故郷の農村で、「神の前にはみな平等」と説き、重税に苦しんでいる農民達を戦争へ先導した男性。小柄で、額から目元にかけて酷い火傷の痕が見られる。戦争が終結した際には、首だけが棒に突き立てられて衆目に晒されていた。

雪白姫 (ゆきじろひめ)

エピソード「硝子の棺で眠る姫君」に登場する。王妃様の継子。真雪のような白い肌、黒檀のように黒い髪、血潮のように赤い唇の少女。青と白のドレスをみにつけ、王冠を斜めにかぶっている。冬生まれで、生母(ムッティ)は春の訪れと共に亡くなっている。王妃に親子の愛を求めていたが、顧みられる事なく孤独を感じていた。成長し、鏡に「世界で一番美しい」と称されるようになった事から、王妃に命を狙われるようになった。 爺やに追い詰められた際に「もうお城(うち)に帰らない」と約束する事で見逃され、森の中に迷い込んだ先で小さな可愛いお家を見つけた。その後、7人の小人と生活する中で幾度も王妃の謀略によって死にかけたが、その都度、奇跡的に復活し続けた。 王妃が老婆に変装し、半分に切った毒林檎を手渡してきた際には、すべてを悟ったうえで、初めて本当の母娘のように分け合って物を食べるという誘惑に抗えず、飲み込んだ林檎片が喉に詰まって窒息し、硝子の棺に納められた。死後、メルと出会い、雪白姫の王子を森で迷わせる事で小さな可愛いお家に誘導した。その後、王子の家臣達が硝子の棺子と雪白姫を取り落とした事で、喉につかえていた林檎の欠片が取れ、生き返っている。 王子の国に住む国民全員を虜にし、国中を思うままにあやつる権力を手にした。王子との婚礼に王妃を招き、嫉妬の罪に問うて、焼けた靴で死ぬまで踊り続ける罰を与えた。鏡からは「雪白姫(シュネー・ヴィトヒェン)」と呼ばれている。

王妃様 (おうひさま/でぃけーにぎん)

エピソード「硝子の棺で眠る姫君」に登場する。雪白姫の継母。雪白姫の生母の後妻として王妃になった女性。生まれながらに美しさの素養を持っている雪白姫を疎んで冷たく当たり、王妃様自身の美しさを磨く事に夢中になっている。美しい者が愛されるという持論のもとで行動しており、鏡に「世界で一番美しいのは誰?」と問いかける癖があるが、その回答が自分ではなく雪白姫になった事から、世界中の愛を自身に取り戻すため、雪白姫の命を狙うようになった。 爺やに雪白姫殺害を依頼したほか、幾度も雪白姫の殺害を企てるもののすべて失敗している。最後に老婆に変装して近付き、毒林檎を半分に分けて雪白姫に差し出し、食べた雪白姫が倒れた事で毒殺したと思い込んだ。 雪白姫の王子と雪白姫の婚礼に招かれた際には、焼けた靴で死ぬまで踊り続ける罰を与えられた。復讐された罪は「嫉妬」。雪白姫からは「継母」、鏡からは「王妃様(ディ・ケーニギン)」と呼ばれている。

爺や (じいや)

エピソード「硝子の棺で眠る姫君」に登場する。雪白姫の召し使いの老齢男性。狩人で、王妃様の命令で雪白姫を殺害するため追いかけ回していた。王妃様の命令に嫌々従う立場だったため、雪白姫から「もうお城(うち)に帰らない」と約束された事で、猪を殺して身代わりにする事を提案した。

雪白姫の王子 (ゆきじろひめのおうじ)

エピソード「硝子の棺で眠る姫君」に登場する。花嫁を探して旅をしていた、特殊な性癖を持つ王子で、青い衣装を身につけている。雨にも負けず風にも負けず、東西南北を問わず奔走し、幼い少女から老婆まで生きとし生けるすべての女性を愛でても、花嫁にふさわしい女性を見つける事ができず絶望していた。そんな折、森の中で迷った結果小さな可愛いお家を発見し、眠るように死んでいる雪白姫の美しさに一目惚れし、7人の小人に死体を譲ってくれるよう持ち掛けた。 雪白姫が息を吹き返したあとに婚礼を挙げるが、その際に雪白姫が王妃様に、焼けた靴で死ぬまで踊り続ける罰を科した事で頭を抱えた。

セイレーネ

エピソード「生と死を別つ境界の古井戸」に登場する。イドの娘。うさ耳カチューシャと、金髪を2本の三つ編みにし、顔にはそばかすがある。継母と義妹から虐待を受けており、家庭内の炊事や洗濯、雑用のすべてを押しつけられているが、生前にイドが語った「困難を乗り越え懸命に生き、笑え」という言葉を遵守し、笑顔で乗り切っていた。 イドが井戸に落ちて死んだ経緯から、井戸にはあまり近付きたくないと考えていたが、滲んだ血が付着した糸巻きを洗おうとした際、手に持っていた糸巻きを井戸の中に落下させてしまい、糸巻きを取るために井戸に飛び込んで溺死した。メルには直接出会っていないが、イドによって井戸の底から異土へと移動させられ、ホレおばさんと出会った。 ホレおばさんのもとでよく働いたため、生き返る事を許されると同時に、働きの報酬として黄金をもらい受けている。継母と義妹には「愚図」、イドからは「大切な一人娘」、メルからは「健やかに悲惨な子」と呼ばれている。

継母 (はは)

エピソード「生と死を別つ境界の古井戸」に登場する。セイレーネの義理の母で、イドの後妻の女性。実子である義妹を甘やかしており、その分セイレーネに辛く当たっている。黒髪を後頭部でシニョンに結っている。イドの遺児であるセイレーネを疎ましく思っている。セイレーネが黄金を持って帰宅し、経緯を聞き出してからは、義妹にもホレおばさんに会いに行くようそそのかした。 セイレーネは黄金を持って帰宅してから、「低脳な継母」と軽蔑していた。セイレーネからは「継母(はは)」、義妹からは「お母さん(ムッティ)」と呼ばれている。

義妹 (いもうと)

エピソード「生と死を別つ境界の古井戸」に登場する。セイレーネの義理の妹であり、継母の娘。黒髪を縦ロールのツインテールにし、顔にはそばかすがある。自分に割り振られていた家事をすべてセイレーネに押しつけており、セイレーネが文句を言うと「言いつけられたいのかい」と脅迫していた。セイレーネが黄金を持って帰宅したあと、義妹自身も黄金をもらい受けるため、井戸に飛び込んで異土に赴き、ホレおばさんに会いに行っている。 しかし生来の怠け癖のため仕事をサボり、全身を瀝青まみれにされて異土から追い出された。復讐された罪は「怠惰」。継母にセイレーネからは「ちびちゃん」、継母からは「可愛い実子(ちびちゃん)」と呼ばれている。

パン

エピソード「生と死を別つ境界の古井戸」に登場する。セイレーネが異土を訪れた際、最初に出会った丸いパン。かまどの中から「もうとっくの昔に焼けているから引っ張り出して」と歌っていた。セイレーネはシャベルですべて掻き出したが、次に異土を訪れた義妹は無視した。

林檎 (りんご)

エピソード「生と死を別つ境界の古井戸」に登場する。セイレーネが異土を訪れた際、2番目に出会った、木に実った林檎。木にぶら下がったまま「もうみんな熟しきっているから揺すぶって」と歌っていた。セイレーネはすべて落として積み上げたが、次に異土を訪れた義妹は無視した。

ホレおばさん

エピソード「生と死を別つ境界の古井戸」に登場する。セイレーネが異土を訪れた際に出会った女性。雪のマークが散りばめられたローブを身にまとっている。最初は老婆の姿で現れたが、素顔は不明。しかし「おばさん」と呼ばれるのを嫌っており、「お姉さん」と呼ばれたがっている。セイレーネの働き者ぶりを労っており、「私のもとで働くならきっと幸せになれる」と保証している。 異土にいるあいだ、羽布団を振って地上に雪を降らせる仕事をセイレーネに任せており、その報酬にと、セイレーネを生き返らせ、さらに黄金を持たせた。働きに応じて報酬を渡すため、次に訪れた義妹には黒き死の病の菌を含んだ瀝青を全身に浴びせた。

野ばら姫 (のばらひめ)

エピソード「薔薇の塔で眠る姫君」に登場する。王と野ばら姫の母妃の娘で、15歳の少女。薔薇のあしらわれた冠をかぶっている。生まれた直後の祝宴で、アルテローゼから「余命十五年、紡錘(つむ)に刺されて床に倒れて死ぬ」呪いをかけられたが、アプリコーゼによって「死んだと見せかけ、100年間寝台の上で眠る」という魔法を重複してかけられた。 15歳になった頃、糸巻き器の音が聞こえる薔薇の塔を登り、アルテローゼ扮する老婆に紡錘で指先を刺されて眠りについた。直後に霧が立ちこめて棘(いばら)が塔を含んだ城周辺を包み、肉体を守られている。メルに目覚めの口づけを求め、野ばら姫の王子を誘導してもらった。目覚めたあとアンテローゼを国から追放したが、アンテローゼが最後に放った呪いを受け、王子とのあいだに産まれた赤ん坊のラフレンツェを森へと捨てる事になった。

アルテローゼ

エピソード「薔薇の塔で眠る姫君」に登場する。野ばら姫の王が治める国に住んでいる13人目の賢女。黒いドレスを着て、赤い頭巾をかぶっている。生と死を別つ冥府の番人を務めており、生きている者を冥府に連れて行ってしまうという理由で、人々から忌避されている。野ばら姫が生まれた直後の祝宴に、黄金の皿が1枚足りなかった事を言い訳として、唯一招待されなかった。 それを傲慢だと怒り、野ばら姫に「余命十五年、紡錘(つむ)に刺されて床に倒れて死ぬ」という呪いをかけた。老婆に姿を変えて15年のあいだ野ばら姫の成長を観察し続け、万人から愛される野ばら姫に憎しみを募らせていた。野ばら姫が目覚めたあと国から追放されたが、置き土産として野ばら姫の下腹部に呪いを放った。 復讐された罪は「傲慢」。追放後、野ばら姫が森へ捨てた赤ん坊を「ラフレンツェ」と名付けて育て、生と死を別つ冥府の番人の役目を継承させている。また追放後は「オルドローズ」(アルテローゼの英語読み)と名乗っている。

アプリコーゼ

エピソード「薔薇の塔で眠る姫君」に登場する。野ばら姫の王が治める国に住んでいる賢女の一人。白いドレスを着て、オレンジ色の頭巾をかぶっている。野ばら姫が生まれた直後の祝宴に招待されており、アルテローゼが野ばら姫にかけた呪いに対抗して、「死んだと見せかけ、100年間寝台の上で眠る」という魔法を重複してかけた。

野ばら姫の王子 (のばらひめのおうじ)

エピソード「薔薇の塔で眠る姫君」に登場する。赤い衣装を身につけている。花嫁にふさわしい女性を探し、雨にも負けず風にも負けず、東西南北を問わず奔走していたところ、メルによって野ばら姫の噂話を吹き込まれ、即座に運命を感じて薔薇の塔へと向かった。王子が塔へ向かうと、塔周辺に立ちこめていた霧が晴れ、棘(いばら)が王子のために道を空けている。

(おう)

エピソード「薔薇の塔で眠る姫君」に登場する。野ばら姫の父親。野ばら姫の誕生を喜び祝宴を催したが、生と死を別つ冥府の番人を務める賢女のアルテローゼを忌避しており、賢女達の料理に用いる黄金の皿が1枚足りなかった事を言い訳に、アルテローゼを招待しなかった。また野ばら姫が紡錘(つむ)に刺されて死ぬという呪いを聞き、国中の紡錘を焼き払わせた。

野ばら姫の母妃 (のばらひめのはは)

エピソード「薔薇の塔で眠る姫君」に登場する。野ばら姫の母親。水浴びしていた際に、近くにいたカエルから「1年経たずに子供に恵まれる」と予言を受けた。

ラフレンツェ

エピソード「薔薇の塔で眠る姫君」に登場する。野ばら姫と野ばら姫の王子のあいだに生まれた女児。銀色の髪に緋色の瞳、雪のように白い肌を持っている。その美しさに父親である王子が見惚れた事から、野ばら姫が「自分が愛されなくなる」と強迫観念に駆られ、森の中に捨てられた。野ばら姫によって国を追放されたアルテローゼ(この時は「オルドローズ」)に拾われ、「ラフレンツェ」と名付けられて育てられ、生と死を別つ冥府の番人の役目を継承した。

集団・組織

7人の小人 (しちにんのこびと)

エピソード「硝子の棺で眠る姫君」に登場する。長い白髭と長い白眉を持つ、同じ容姿の7人の小人。衣装も色違いではあるものの、全員が揃いの三角帽にカボチャパンツを身につけている。語尾に「ゲン」「リッヒ」「シュタイン」などを付けるおかしなしゃべり方をし、基本的にノリが軽い。小さな可愛いお家に住んでおり、雪白姫が家で寝ているのを発見した際には、王子様の代わりにと一斉にキスしようとしたが、直前に雪白姫が起床したため未遂に終わっている。 雪白姫の王子が雪白姫の死体を譲ってほしいと申し出た際にも、どう見ても王子様だしい、いだろうと、あっさり譲り渡した。王子からは「小人(ツヴェルク)達」と呼ばれた。

場所

ギフトの生家 (ぎふとのせいか)

エピソード「火刑の魔女」に登場する。ギフトの生家であり、森の老婆が住み続けているレンガ造りの古い家。小川を渡り、おばけ樅(モミ)の木を左へ曲がった先にひっそりと佇んでいる。中には大きな十字架が掲げられた祭壇があり、ギフトが帰郷した際には、改宗によって逆十字にかけ替わっている。また暖炉も兼ねた大きなかまどが備わっている。

黒狐亭 (くろぎつねてい)

エピソード「黒き女将の宿」に登場する。女将が経営し、ランダが女中を務めている宿屋。肝臓料理が看板料理で、酒場と間違われる事もある。女将が絞首刑にされた人間の肝臓を食材として用いるようになってから非常に繁盛した。

小さな可愛いお家 (ちいさなかわいいおうち)

エピソード「硝子の棺で眠る姫君」に登場する。森の中にある、7人の小人が住んでいる家。雪白姫が王妃様から逃れるために森を彷徨(さまよ)っていた際に発見し、その後は居候している。また森で迷った雪白姫の王子も辿り着き、硝子の棺に納められた雪白姫を小人から譲り受けた。

異土 (ししゃのくに)

エピソード「生と死を別つ境界の古井戸」に登場する。井戸に飛び込んだセイレーネがイドによって導かれた場所。広く爽やかな草原で、焼けすぎたパンや熟しすぎた林檎が助けを求めている。またホレおばさんが暮らしており、ホレおばさんの仕事を手伝っただけの報酬を受け取る事ができる。

薔薇の塔 (ばらのとう)

エピソード「薔薇の塔で眠る姫君」に登場する。老婆に扮したアンテローゼが糸を紡いでいた場所。15歳になった野ばら姫が、その音につられてのぼっていった塔。最上階で、紡錘(つむ)に指先を刺された野ばら姫が眠りについた。

その他キーワード

お菓子の家 (おかしのいえ)

エピソード「火刑の魔女」に登場する。亡き夫の遺産を受け取って生活に困窮しなくなった森の老婆が、ヘンゼルとグレーテルに振る舞った家を模して組み立てられたお菓子。屋根は焼き菓子(レープクーヒェン)、窓は白砂糖でできている。

肝臓料理 (ればーこっひぇん)

エピソード「黒き女将の宿」に登場する。黒狐亭の看板メニュー。来客時に食材のレバーがきれている事に焦った女将が、苦し紛れに絞首刑にされた人間の肝臓を食材として使用したところ、その新鮮さと味が評判になって、女将とランダが犯行を繰り返すようになった。

(かがみ)

エピソード「硝子の棺で眠る姫君」に登場する。王妃様が「この世で一番美しい人間」を問いかけている大きな鏡。上部に老齢男性の顔の彫刻が施されており、人語を解し、言葉と共に回答に該当する人物を映し出す事ができる。

瀝青 (ちゃん)

エピソード「生と死を別つ境界の古井戸」に登場する。天然アスファルトやタールなど、黒くて粘性のある物質の総称とされている。セイレーネの黄金を羨んだ継母にそそのかされた義妹が異土に赴いた際、怠惰な態度で仕事をサボっていた事から、異土から追い出される際にホレおばさんから全身に浴びせられた。また黒き死の病の菌が含まれている事が示唆されており、この瀝青を舐めたネズミが黒き死の病に感染している様子がある。

Das Märchen des Lichts & Dunkels

メルが所持しており、ヒロイン達の悲劇を物語として書き綴っていっている本。ドイツ語で、「光と闇の童話」を意味している。メルが幼い少年の姿で井戸に落ちて死亡した頃、井戸の底にいたイドがこの本を所有していた。

黒き死の病 (くろきしのやまい)

エピソード「生と死を別つ境界の古井戸」に登場する。エピソード冒頭でゴーストタウンとなった村を背景に、メルとエリーゼが「村が滅んだのは黒き死の病のせい」と話している。義妹が全身瀝青まみれになって帰宅した際に、瀝青を舐めたネズミが感染した病気。しかしこの村と義妹との関係性は不明。また「黒死病」はネズミを媒介にして広まるペストの事。

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