BIOMEGA

BIOMEGA

〈ドローン禍〉と呼ばれるバイオハザードが発生した未来の地球を舞台に、人造人間や改造人間、異能力者らによるハイスピードな戦いを描きつつ、不老不死を巡る企業の計画や、壮大な地球人類の変容をテーマにしたSFバトルアクション漫画。3巻以上に達する作者の長編作品としては、初連載作品『BLAME!』に続く2作目となる。

正式名称
BIOMEGA
ふりがな
ばいおめが
作者
ジャンル
その他SF・ファンタジー
 
バトル
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概要・あらすじ

かつて大規模なデータテロにより全世界のデジタル記録が消失し、文明が衰えていく中、そのデータの復旧事業を行う財団「DRF」が世界を牛耳るようになった未来の地球。西暦3005年、DRFは人類にとって7世紀ぶりとなる火星への有人飛行を成功させた。翌年、未知のウイルス「N5Sウイルス」が地球に持ち帰られ、〈ドローン禍〉という災厄が地上に蔓延する。

東亜重工のエージェント・庚造一DRFの管理下にある人工島に潜入し、そこでDRFの下部組織と戦闘するが、東亜重工も敵の攻撃に遭い、壊滅。直後、武力を背景にしたDRFは世界統一政府の発足を宣言する。そして造一と仲間たちは、DRFの進める人類総改換計画を巡って戦い続ける。

その計画とは本来、N5Sウイルスを用いて人類の不老不死化を目指すものだったが、DRFの二代目総主・ニアルディは別の可能性を考えていた。ニアルディの強行によって地球の環境は大きく変容する。造一たちは新たな世界に君臨しようとするニアルディを止めるため、長きにわたる旅を経験する。

登場人物・キャラクター

庚造一 (かのえぞういち)

東亜重工のエージェントとして、N5Sウイルスが蔓延した街の「浄化作戦」の支援のため派遣された男性。正体は東亜重工製の合成人間であり、共に育てられた女性型AI、カノエ・フユをパートナーに庚班(かのえはん)を組んでいる。名に「一」の数字が入っている通り、他に兄弟のような合成人間たちがいる中で、造一の庚班は一番最初に構成された班である。 造一は特殊なライダースーツとヘルメットで全身を鎧いながら、最大速度は時速720kmオーバーの合成人間用大型二輪車・「重二輪HDC-08B-3」を駆り、高威力の拳銃型弾体加速装置や伸縮展開式のハンドアックスなどで戦う。 なお、合成人間の寿命は普通の人間よりも遥かに長く、食事をせずとも僅かな水分補給だけで数年間生存可能な耐久性をも持つ。

丁五宇 (ひのとごう)

庚造一と同じく、東亜重工のエージェントである合成人間の男性。「ヒノト・タイラ」と呼ばれる女性型AIをパートナーに丁班(ひのとはん)を組み、造一の庚班とは別行動を執っていた。CEUの巡回査察員、ヒグイデと一騎討ちを行うことになる。

壬二銖 (みずのえにしゅ)

東亜重工安全保障部所属の特務員を名乗る。庚造一を「造一兄さん」と呼ぶ合成人間の女性で、機械の義手のような左腕を持つ。一人称は「私」。男性型AIのミズノエ・シンをパートナーとし、壬班(みずのえはん)を組んでいる。壬班の重二輪(合成人間用大型二輪車)は、左右から爪状の装備を展開できるという庚班の重二輪にはない性能を有している。 髪型は、頭に帯を巻いてまとめているが、帯を解くと背中に届く長髪となる。ちなみに、その帯は熊1頭と大人の男1人を持ち上げられるくらいに強い。

カノエ・フユ

庚造一と共に育てられた女性型AIであり、映像(ホログラフ)上の髪型はストレートロング。造一と2人で庚班を組み行動。彼女のAIの本体は小さな球状の装置であり、合成人間用大型二輪車「重二輪HDC-08B-3」に搭載されている。造一のナビゲートの他、HDC-08B-3の装備の操作、他のシステムへのクラッキングなどを行える。 一人称は「私」。

ヒノト・タイラ

東亜重工の合成人間・丁五宇のパートナーである女性型AI。AIの本体は小さな球状の装置であり、合成人間用大型二輪車(重二輪)に搭載され五宇と2人で丁班を組んでいた。五宇と別れた後、コズロフ・レーフヴィチ・グレブネフによって本体のみ回収される。映像(ホログラフ)上の髪型はショートストレートで、一人称は「私」。 人工知性であるが、コズロフの前で泣くなど感情に揺れやすい面も見せる。

ミズノエ・シン

東亜重工の合成人間・壬二銖のパートナーである男性型AI。AIの本体は小さな球状の装置であり、合成人間用大型二輪車(重二輪)に搭載され二銖と2人で壬班を組み行動する。強引な行為を執りやすい二銖のブレーキ役となる、慎重な性格をしている。

イオン・グリーン

庚造一が派遣された街で出会う、ショートカットの少女。驚異的な再生回復能力を持つ不老不死者であり、N5Sウイルスが蔓延した地域にいてもドローンに変貌することなく人間の姿を保っていた。記録では17歳で、両親はおらず祖父の家に1人で住んでいることになっているが、ある隠された出自を持つ。 無口で大人しい性格で、ほとんどセリフがない。

コズロフ・レーフヴィチ・グレブネフ

庚造一が9JOで出会う、イオン・グリーンの保護者。大きな熊の姿をした男性で、着ぐるみなどではなく本物の熊の体を持っているが、言葉を話すことや、器用に銃器を操ることもできる。熊の体のためか、N5Sウイルスによる〈ドローン禍〉からは免れていた。一人称は「俺」で、登場人物の中ではよく喋る性格をしている。 L196ライフルという銃を所有。ハチミツがあまり好きではないらしい。なお、彼が住む部屋には、子熊を抱いたレーフ・グリゴリエヴィチ・グレブネフの写真が飾られている。

レーフ・グリゴリエヴィチ・グレブネフ

ミドルネームのグリゴリエヴィチは「г(ガンマ)」で表記されることもある。世界一の巨大企業、DRFの発祥であるマイクロボルト社の創設メンバーの1人。そして「人類総改換計画」の立案者である。延命手術によって数百年生き続け、DRF二代目総主であるニアルディの野望に最初に気付いたと言われるが、現在は行方知れずとなっている。 個人でゼル研究所という施設を運営していたが、それは180年前に閉鎖されている。

ヒグイデ

世界一の巨大企業、「DRF」の下部組織、公衆衛生局の強制執行部隊「CEU」に属する巡回査察員。ワイヤーに繋がれた鉈状の片手武器と、先端に刺のある3本のワイヤーで武装している。東亜重工の合成人間・丁五宇と一騎討ちを行った。普段は全身を包むスーツで顔も隠しているが、マスクの下は人間の男性の顔をしている。

カーダル・スピンダル

世界一の巨大企業、「DRF」の下部組織、公衆衛生局の強制執行部隊「CEU」に属する巡回査察員。若い女性の姿をしているが、特殊な繊維で全身を包み込むことで戦闘形態を構える。強力なバリアを張ったり衝撃をぶつけたりする能力を持ち、針を射出して攻撃することも可能。庚造一との戦闘では彼を退ける強さを見せるが、その後、協力的な態度も示すなど行動の動機が謎めいた人物。

リルオード

700年前に発見された、特異体質の女性。24対の染色体を持ち、その時点で年齢は300歳を越えていると言われたが、とても若く見える外見をしていた。ときどき体から小さなプラスチック片(植物の花粉のような粒子が集まった塊)を出し、その粒子は逆相写像重合体で構成されている。レーフ・グリゴリエヴィチ・グレブネフからは「リル」の愛称でも呼ばれる。

ニアルディ

長い髪の女性で、DRF二代目総主。「触れた物を理解する力」を持つ異能者。生き物の思考も、古代遺跡に染み込んだ古代人の残留思念すらも読み取ることができる。「人類総改換計画」の改正案を却下され、本来の計画を進めようするナレイン・メグナードと対立する。誕生したのは500年前にもなり、「世界二位の高齢者」とウィルデンシュタイン博士から呼ばれていた。

ナレイン・メグナード

「ナレイン将軍」とも呼ばれる男性。DRFの下部組織、公衆衛生局を統率している。DRL総主であるニアルディが「人類総改換計画」に対して出した「改正案」を危険視しており、彼女と対立する。かつては強力な殺傷力を持つ念動力を持てあましていたが、当時マイクロボルト社にいたニアルディによって引き取られた過去がある。

ウィルデンシュタイン

公衆衛生局の男性研究者で、通称「ウィルデンシュタイン博士」。ナレイン・メグナード将軍にも敬語を使わず、対等に話しかける人物。(公衆衛生局の上部組織にあたる)DRF本部以外では禁じられた合成人間の研究を行っている。さらに東亜重工が開発した、特別製の脳から生み出される力で弾体を加速させる「弾体加速装置」の技術を模倣し、複脳式弾体加速装置を完成させた。

黒川 真村 (くろかわ まむら)

東亜重工の男性研究員で、通称「黒川博士」。庚造一を始めとした合成人間の開発を主任していた。なお、合成人間の造一らや、AIのカノエ・フユらの母親役を担っていたのは黒川博士の娘であった。特別製の脳から生み出される力を利用した「弾体加速装置」の技術も把握しており、造一たちの装備にその技術が活用されている。

フニペーロ

復物主と呼ばれる存在が創造した新しい世界においてニアルディが生ませた女の子であり、〈復物主の子〉とされる。子宮から誕生した直後は庚造一の手に乘る程度の小ささだったが、その時点から言葉を話して歩行する力があり、徐々に成長して大きくなる。彼女を生むために妊娠させられた母親、ヤーと縁のあった造一とカノエ・フユは、この子どもを守ろうと心に決める。

集団・組織

東亜重工 (とうあじゅうこう)

『BIOMEGA』に登場する組織。庚造一を始めとした合成人間たちをエージェントとして派遣した企業。火星へ探査船を送ったDRFの動きに対応し、社の命運を賭した大事業を行うために造一らを開発した。社名に表れている通り、漢字文化圏の企業である。なお、作者の連載デビュー作品、『BLAME!』から連続して登場する企業の名称でもあるが、同一の企業を指しているとはかぎらない。

DRF

『BIOMEGA』に登場する組織。世界一と謳われる巨大企業であり、大規模なデータテロによって消失した全世界のデジタル記録を復旧する事業をその起源とする。現総主(二代目)はニアルディという女性で、下部組織に公衆衛生局を有する。東亜重工に非協力的な組織であり、9JOで行われたドローン浄化作戦において対立。 その後も、DRFが進めようとしている「人類総改換計画」を巡って、東亜重工のエージェント・庚造一とは敵対し続けることとなる。

公衆衛生局 (こうしゅうえいせいきょく)

『BIOMEGA』に登場する組織。略称はPHS。DRFの下部組織であり、ナレイン・メグナードを将軍とする。CEU(セウ)と呼ばれる強制執行部隊を擁する。なお、公衆衛生局の職員は白い前垂れを着けていることが多い。

CEU (せう)

『BIOMEGA』に登場する組織。DRFおよび、その下部組織である公衆衛生局が擁する強制執行部隊のこと。空母機動部隊や機甲部隊を構成し、政府の軍隊をも脅かす戦闘力を保有している。なお、公衆衛生局のCEUに対し、「☆DRF」本部直属の部隊は「本部のCEU」「CEU本部」と呼び分けられている。 身体改造された強力な戦闘員として「巡回査察員」と呼ばれる者たちがおり、彼らは白い前垂れを着けていることが多い。

マイクロボルト

『BIOMEGA』に登場する組織。西暦2272年に設立された会社。「MV社」とも表記される。不老不死や延命医療を研究し、幾度も社名を変えながら慈善事業なども行いつつ、やがてDRFという世界一の企業へと成長した。MV社創設メンバーの1人としてレーフ・グリゴリエヴィチ・グレブネフがいる。社員はネクタイ、スーツ、白い前垂れの服装をしており、その姿はDRFの職員にも受け継がれている。

場所

9JO (ないんじぇいおー)

西暦2206年頃(作中の800年前)、太平洋上に建造された人工島。DRFの管理下にあり、複数のMSCF(最重要警備隔離施設)を抱えている。庚造一とカノエ・フユの庚班が、N5Sウイルス感染者の浄化作戦に対する支援および人命の救助のため、東亜重工のエージェントとして訪れる場所である。 イオン・グリーンとコズロフ・レーフヴィチ・グレブネフとの出会いの地でもある。

大陸係留索 (たいりくけいりゅうさく)

かつて遺棄されたことになっている、巨大人工衛星と地球を繋いだ巨大なケーブル施設(軌道エレベーター)。軌道上にある人工衛星は「本体」と呼ばれ、そこは7世紀前に人類が火星へと入植した船の出発地点でもあった。本体とケーブルの結点にある入口は封印されているが、大陸係留索は定期的に軌道修正を繰り返していることが確認されており、本体は機能しつづけていると推測されている。

その他キーワード

合成人間 (ごうせいにんげん)

『BIOMEGA』の用語。人工的に生み出される人造人間のこと。庚造一を始めとする東亜重工製の合成人間は、非常に強靭な肉体と怪力を備え、特別なことがなければ僅かな水分補給だけでも5年間の生存が可能な持久力を持つ。さらにN5Sウイルスにも感染しない。ただ、合成人間の肉体自体は短期間でも完成可能なのに対し、精神は人間と同じ成長過程がなければ役に立たない。 そのため、造一たちは実時間の1年を50年以上の歳月に相当させる仮想空間システム、「識臣(しきおみ)」の内部で育てられていた。その空間内で彼らの母親役となっていたのは、主任研究員だった黒川真村博士の娘でもある。

HDC-08B-3

『BIOMEGA』に登場する架空の乗り物。庚造一が愛騎とする合成人間用大型二輪車で、「重二輪HDC-08B-3」と呼ばれる(HDCは「Heavy Dual Coil」の略)。東亜重工製。車体全高にほぼ匹敵する巨大なタイヤと漆黒のボディが特徴。最大速度は時速720kmを超え、固定武装として前輪部に荷電粒子砲2門が備え付けられている。 垂直面を走行することも可能。造一のパートナーとしてカノエ・フユという女性型AIを搭載、様々なセンサー機能を有し、造一をナビゲートする。また、高威力の拳銃型弾体加速装置、伸縮展開式のハンドアックス、そして4000XLという高威力の大型ライフル型弾体加速装置などを造一の武器として内蔵する。 通常時の稼働は「重液」と呼ばれる燃料を用いるが、緊急時には車体の一部を燃料としたり、内部電力で稼働したりもできる。なお、造一たちの庚班とは別に、丁班や壬班も(細部の仕様の異なる)同種の重二輪を与えられている。

4000XL

『BIOMEGA』に登場する架空の兵器。庚造一の愛騎である、十二輪HDC-08B-3に内蔵された大型ライフル型弾体加速装置。軌道大陸間弾道ミサイルの射出後に地上から撃ち落とすほどの長射程と威力、命中精度を誇る。使用に際しては電力を要する他、「脳集波」と呼ばれる脳が放射する力も利用されている。

複脳式弾体加速装置 (ふくのうしきだんたいかそくそうち)

『BIOMEGA』に登場する架空の兵器。特別製の脳が弾体を加速する力を生み出す、という東亜重工の技術に基づいて公衆衛生局で製造された巨大砲。黒川真村博士はこの技術を公衆衛生局に漏らそうとしなかったが、ウィルデンシュタイン博士が自身で完成にまでこぎつけた。なお、弾体の加速に利用される脳の力は「脳集波」と呼ばれ、外部からその放射量を計測することで装置の威力は推察できる。

ドローン

『BIOMEGA』の用語。作中では「N5Sウイルス感染者」に「ドローン」とルビを振られており、N5Sウイルスに感染して遺伝子を書き換えられ、異形の肉体へと変貌して自我を失ってしまった人間たちを指している。N5Sウイルスへの感染が蔓延することを〈ドローン禍〉と呼び、庚造一が所属する東亜重工はそれを食い止めようとしていた。 なお、体細胞がドローン化しても異形化せず、自我を失わない人間がごく稀に現れるが、そうした者たちは「N5Sウイルス適応者」と呼ばれる。

逆相写像重合体 (ぎゃくそうしゃぞうじゅうぞうたい)

『BIOMEGA』の用語。非生物(特に幾何学的な形状をしたもの)に反応し、物質を再構築しながら吸収する性質を持つ。火星にいた小さな虫のような生物から「胚珠に似た組織」(雌性配偶体)の形で発見され、地球にいたリルオードという女性から「花粉のような粒子」(雄種配偶体)の形で発見される。DRF総主のニアルディは、この胚珠から生まれる植物を「復物主」と呼んだ。 ニアルディは逆相写像重合体を使えば地球の環境をより高次なものへと変えられると考え、新世界秩序構築のために「人類総改換計画」の「改正案」を進めようとする。

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