T・E・ロレンス

T・E・ロレンス

第一次世界大戦の時代、トルコからのアラブ独立戦争において、独立支援国のイギリスからアラブ側に軍事顧問として派遣され、後に「アラビアのロレンス」と呼ばれたトーマス・エドワード・ロレンスの生涯を描いた歴史ロマン作品。

正式名称
T・E・ロレンス
ふりがな
てぃー いー ろれんす
作者
ジャンル
第一次世界大戦
 
自伝・伝記
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概要・あらすじ

幼少期から変わり者と言われたトーマス・エドワード・ロレンスは、卒業論文のため単身でアラブの地、ユーフラテス川沿いを訪れ、九死に一生を得る。無事に卒業したロレンスは、ホーガス博士とウーリー博士の2人の考古学博士に導かれ、再びアラブの地、カルケミシュを訪れ、アラブ独立戦争に情熱を注ぐハムディと出会う。

アラブへの思いとハムディへの想い、そして恩師ホーガス博士への思いの狭間で苦しみながらも、列強三国の思惑が絡む中、アラブ独立に心血を注ぎ、「勇者(エル)・オレンス」と呼ばれアラブ人からも慕われていく。

登場人物・キャラクター

トーマス・エドワード・ロレンス

英国の准男爵家チャプマンの血を引くが、私生児であることから、卑屈な幼年時代を送った。大学の授業に殆ど出なかったため、卒業論文に全てをかけることになり、単身アラブへと旅立ち見事な論文を書き上げ卒業。恩師2人の誘いで考古学発掘隊に参加し、ユーフラテス・カルケミシュを訪れ、そこで人夫頭ハムディと出会ったことでアラブ独立戦線に加担する。 アラブ人には「ロ」の発音が難しくオレンスと呼ばれる。「アラビアのロレンス」と呼ばれた実在の人物、トーマス・エドワード・ロレンスがモデル。

ホーガス博士 (ほーがすはかせ)

トーマス・エドワード・ロレンスの恩師。オックスフォードの歴史の教師で、考古学博士。ウーリー博士とともに大英博物館の考古学発掘隊の団長として、ユーフラテス・カルケミシュにロレンスを伴う。後にアラブ独立戦線支援のアラブ局所属となり、ロレンスを呼び寄せる。 実在のイギリス人考古学博士、デヴィッド・ジョージ・ホーガスがモデル。

レナード・ウーリー

オックスフォードの教師。ホーガス博士とともに大英博物館の考古学発掘隊の団長として、ユーフラテス・カルケミシュにロレンスを伴う。第2回以降の発掘隊団長となり、軍事的調査などにもロレンスとともに参加。後にアラブ独立戦線支援のアラブ局所属となり、ロレンスを呼び寄せる。 ロレンスの恩師であり、アラブへの思いに対する一番の理解者。実在のイギリス人考古学博士、レナード・ウーリーがモデル。

クリス

オックスフォード時代からのロレンスの同級生。体が弱くいつもロレンスに守られていた。密かにロレンスを慕っていたが、そのことに自身が気づいていなかった。ロンドンへ戻るたびにロレンスを気遣い、唯一心を許した親友。

ハムディ

カルケミシュでの大英博物館の考古学発掘隊に雇われた人夫頭。アラブ独立戦線のためのシリアの秘密結社のリーダー格。周辺の国々に脅かされ続けるアラブが「いずれ反乱を起こし、予言者の末裔はいずれメッカに戻る」とロレンスのアラブ熱を煽る。戦争勃発で発掘が中断した際、ロレンスをアラブに引き留める。 フセイン王の第三王子エミール・ファイサルに信頼されている。実在の発掘隊に雇われた人夫頭ハムディがモデル。

ダフーム

カルケミシュで大英博物館の考古学発掘隊に雇われた、ロレンスの給仕係のアラブ人の少年。ひたすらロレンスを慕う。とても利発で読み書きや計算もでき、アラブ独立戦線の最中、自分にできることで貢献しようと、トルコ軍に潜入していた。チフスにかかり、なんとかトルコ軍を脱出するも命を落とす。 実在の発掘隊に雇われた給仕係の少年がモデル。色白だったが逆説的な意味でのあだ名「ダフーム(色黒)」と呼ばれていた。

シェリフ・ファイサル

シェリフ・フセインの三男。ワディ・サフラに滞在。通称エミール(王子)・ファイサル。ハムディが信頼し仕える指導者。予言者のようにアラブ軍を仕切る資質を備え、気高くカリスマ性を持つ。「ロレンス」と発音できる唯一のアラブ人。ロレンスともにアラブ軍を率い、メッカからアカバ、ダマスカスへと進軍する、アラブ独立戦線のリーダー。 実在のフサイン・イブン・アリーの三男、ファイサル・イブン・フサインがモデル。

アリ・イブン・エル・フセイン

ハリト族の若き族長。エミール・ファイサルの一番のお気に入り。ウェジ攻略でアラブ軍の指揮をとる。当初はロレンスと反目したが、徐々に信頼関係を築く。ロレンスともにアラブ軍を率いるファイサルに従い、メッカからアカバ、ダマスカスへと進軍する。 ロレンスが去った後もファイサルを支える。実在のハリト族の族長アリがモデル。

アウダ・アブ・タイ

ホウェイタット族の族長。ハリト族のアリの策略で「色白美人」のロレンス見たさにエミール・ファイサルのもとを訪れ、アカバ攻略の要となるネフド砂漠越えに協力を約束。ファイサル軍に従い、メッカからアカバ、ダマスカスへの進軍に加わる。気のイイおやじだが、基本的に報酬目当てで参戦した。 実在のホウェイタット族の族長アウダ・アブ・タイがモデル。

ニューカム大佐 (にゅーかむたいさ)

英国陸軍情報部大佐。アラブ独立戦線支援の前に、ロレンス及びウーリー博士に対し、「モーゼの足跡をたどる(死海からアラバ峡谷を越え、アカバ港に達しシナイを抜ける)極秘調査」への協力を要請。ロレンスのアラブに関する知識と類希な能力に目を付ける。 後にアラブ独立戦線支援のアラブ局所属となり、ロレンスを呼び寄せる。実在の英国陸軍所属のスチュワート・フランシス・ニューカムがモデル。

クレイトン准将 (くれいとんじゅんしょう)

アラブ独立戦線支援のため英国陸軍が新設した専門部署アラブ局の情報局長。ロレンス及びファイサル軍にメディナ守備を命じる。ロレンスが勝手にアカバを攻略した際には、叱るよりまず食糧と金の補給を指示するなど理解ある上司として描かれる。実在の英国陸軍所属のギルバート・クレイトン将軍がモデル。

ストーズ

カイロ滞在の外務省付きの高官。ロレンスとは顔見知り。シェリフ・アブドゥラと親しく、アラブ局への転属が決まったロレンスに頼まれ、フセイン王及びその子息たち(アリー、アブドゥラ、ファイサル)と会う段取りを取り付けてくれる。美少年趣味であることを隠さずロレンスにも誘いをかける。 実在のエルサレム総督ロナルド・ストーズがモデル。

シェリフ・フセイン

通称大シェリフ。マホメットの末裔でメッカの太守(知事)。アラブをまとめる人物で、トルコに反旗を翻す。アリー、アブドゥラ、ファイサル、ゼイドの4人の子があり、主にファイサルが独立軍を率い、メッカ、ダマスカスへと進軍。アリー、アブドゥラは父王に従い地盤を固めていた。 実在の名門ハシム家の当主フサイン・イブン・アリーがモデル。

シェリフ・アリー

シェリフ・フセインの長男。ストーズ及びアブドゥラの仲介で、シェリフ・フセインの許可を得たロレンスを出迎え、ファイサルのもとに向かわせてくれる。おとなしめで品のいい男。何事も父王に従い、争いを好まないため、目立った活躍はしない。実在のフサイン・イブン・アリーの長男アリー・イブン・フサインがモデル。

シェリフ・アブドゥラ

シェリフ・フセインの次男。ストーズが懇意にしている。ロレンスの要請をシェリフ・フセインに諮り、ファイサルに取り次いでくれる。温和だが少々ひがみっぽい。ハムディの能力は買っていたが、「ファイサルにだけよいものを貢ぐ」と少し臍を曲げており、望んで進軍に参加しようとはしない。 実在のフサイン・イブン・アリーの次男アブドゥッラー・イブン・フサインがモデル。

トマス・R・ロレンス

ロレンスの父。准男爵のチャプマン家の血を引く。家庭教師だったセアラと不倫関係となり駆け落ち。正式に離婚が認められないまま、チャプマンの姓を捨てロレンスを名乗る。ロレンスにとっては「チャプマンの私生児」と揶揄される原因となったが、突飛な行動を取るロレンスを受け容れる心の広い父親として描かれている。 実在するロレンスの父トマス・ロバート・タイがモデル。

セアラ

ロレンスの母。元はチャプマン家に雇われた家庭教師で、敬虔なクリスチャンであったが、ロレンスの父トマスと不倫関係となり駆け落ちする。正妻との離婚が成立しないため、男ばかりの5人の子供(ロバート、ロレンス、ウィル、フランク、アーノルド)たちはすべて私生児の扱いとなり、そのことをいつも悔いていた。 実在するロレンスの母セアラがモデル。

アレンビー司令官

第一次世界大戦中の英国側のアラブ独立軍支援部隊の司令官。英国軍がヨルダン峡谷の低地に主攻撃をかけると信じ込ませるため、ロレンスたちアラブ軍にへジャーズ鉄蔵の破壊工作などの陽動攻撃を命じる。勝手な行動を取るロレンスについては、渋い顔をしながらも結果が全てと認めている。 実在する英国軍の司令官エドモンド・アレンビーがモデル。

集団・組織

アラブ局 (あらぶきょく)

『T・E・ロレンス』の登場する、英国陸軍が設置したアラブ独立戦線支援のための専門部署。シェリフ・フセインが反旗を翻したことで英国がアラブ支援を決め、外務省直下に新設された。クレイトン准将を司令官とし、ウーリー博士、ホーガス博士、ニューカム大佐により発足。名指しでロレンスを呼び寄せ、独立軍の進軍ルートや数々の拠点の攻略を策定。 第一次世界大戦におけるアラブ独立戦争への英国軍の関与に大きく貢献する。1916年の春に、英国陸軍の文官方面の仕事として開設された アラビア局がモデル。

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