七都市物語

七都市物語

田中芳樹のSF小説『七都市物語』のコミカライズ作品で、フクダイクミのデビュー作。大転倒と呼ばれる事件によって地形が変わった未来の地球に勃興した、七つの都市のあいだで起きる戦乱を、英雄たちの群像劇として描く。講談社「ヤングマガジンサード」2017年第5号から2019年第10号まで連載。

正式名称
七都市物語
ふりがな
ななとしものがたり
原作者
田中 芳樹
漫画
ジャンル
戦争
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世界観

大転倒によって地球の地軸が90度回転し、地球人類が一度滅亡してから約100年。月面でわずかに生き残っていた人類は、地球にアクイロニア、ニュー・キャメロット、ブエノス・ゾンデ、プリンス・ハラルド、タデメッカ、クンロン、サンダラーという七つの都市を創り、今なお各都市は互いに戦乱に明け暮れている。高度500メートル以上に達するとオリンポス・システムによる無差別攻撃で破壊されるため、航空兵器は使えず、地上兵器が戦場の主力となっている。

あらすじ

北極海戦線

チャールズ・コリン・モーブリッジ・Jr.という野心家に率いられたニュー・キャメロット軍が、アクイロニアに侵攻した。アクイロニアの国家元首であるニコラス・ブルームは友人のリュウ・ウェイに助言を求め、リュウはアルマリック・アスヴァールを司令官に抜擢するように進言する。ところが、優柔不断なニコラスはアルマリックに全権を託す決断ができず、ケネス・ギルフォード率いるニュー・キャメロット軍の別動隊に敗戦するきっかけをつくってしまう。しかしその後、全権を与えられたアルマリックは、ニュー・キャメロット軍を川におびき寄せ、橋もろとも爆破するという奇策によって戦いに勝利をもたらすことに成功するのだった。

ポルタ・ニグレ掃滅戦

世界征服を企むブエノス・ゾンデの独裁者であるエゴン・ラウドルップは、その手始めとして資源豊富なプリンス・ハラルドへの侵攻を開始した。プリンス・ハラルド側は、カレル・シュミタッツユーリー・クルガンを指導者に抜擢し、まずブエノス・ゾンデ軍の補給路を限界まで延ばさせる。そのうえで、ポルタ・ニグレに補給基地があるという欺瞞情報を流し、ブエノス・ゾンデ軍をその地におびき寄せた。ブエノス・ゾンデ軍は、補給物資に見せかけた炭塵によって爆破され、大混乱に陥ったところに奇襲をかけられる。そして、虎の子のヘリコプター部隊も爆炎から逃れるために上昇したところでオリンポス・システムによって破壊されてしまう。こうして、エゴンの野望はプリンス・ハラルド軍によってくじかれることとなった。

ペルー海峡攻防戦

エゴン・ラウドルップの脅威を取り除くため、ブエノス・ゾンデを除く六つの都市は連合を結び、ブエノス・ゾンデ攻略戦を開始した。アクイロニアからはアルマリック・アスヴァール、ニュー・キャメロットからはケネス・ギルフォード、プリンス・ハラルドからはユーリー・クルガンと錚々たる顔ぶれのそろう連合軍であったが、しかし、急造で結成されたために足並みはそろわず、士気は低かった。そんな敵に対し、エゴンが抜擢したギュンター・ノルトは、みごとに防衛戦を勝利に導くことに成功。しかしギュンターは、かつて妻を乗せた救急車がエゴンのパレードに道を塞がれたことがきっかけで妻を亡くしており、彼のことを恨んでいた。そしてギュンターは、戦勝の直後にエゴンを自らの手で射殺するのだった。

ジャスモード会戦

エゴン・ラウドルップを暗殺したギュンター・ノルトは、自分が次なるブエノス・ゾンデの独裁者に祀り上げられつつある状況に嫌気が差し、アクイロニアへと亡命してしまう。ところがそこでも政治利用されそうになったため、アルマリック・アスヴァールの紹介によってリュウ・ウェイのいるタデメッカへとさらに亡命した。そのタデメッカはギュンターの亡命直後にサンダラーの侵攻を受け、タデメッカの指導者たちはギュンターに事実上の司令官の地位を託した。ジャスモードの地で激戦が展開され、ギュンターはみごとにサンダラー軍を撃退することに成功する。だが、もとより野心を持たないギュンターは、その後まもなく隠棲の暮らしに入る。

ブエノス・ゾンデ再攻略戦

独裁者であったエゴン・ラウドルップと、英雄のギュンター・ノルトを相次いで失ったブエノス・ゾンデでは、政治的混乱が続いていた。複雑な政争の果てに、蝶ネクタイ党、黒リボン党、そしていつの間にかこの国に亡命していたチャールズ・コリン・モーブリッジ・Jr.の率いる第三勢力が割拠する状況が生まれた。そんな中、アルマリック・アスヴァール率いるアクイロニア、ケネス・ギルフォード率いるニュー・キャメロット、ユーリー・クルガン率いるプリンス・ハラルドの三国による、ブエノス・ゾンデ再攻略戦が開始される。ギュンターを失ったブエノス・ゾンデ軍はもろく、ケネスは開戦からまもなく、前回のブエノス・ゾンデ攻略戦では激戦の地であったカルデナス丘陵を攻め落とすことに成功する。

登場人物・キャラクター

リュウ・ウェイ

アクイロニアの政治家の若い男性。国家元首のニコラス・ブルームとは友人同士の関係で、ニコラスの参謀を務めている。北極海戦線に際してアルマリック・アスヴァールを司令官に抜擢し、また外交使節としてクンロンと交渉、その中立を取り付けた。その後、ニコラスによる粛清を避けるためにタデメッカに移住し、隠棲した。

アルマリック・アスヴァール

アクイロニア軍の若い男性。北極海戦線に際して、リュウ・ウェイの推薦によって司令官および准将に任命され、ニュー・キャメロット軍の侵攻を撃退することに成功する。もともとイニシャルをとって「A・A」とあだ名されていたが、北極海戦線の戦勝以降、「アルマリック・アスヴァール・オブ・アクイロニア」を略した「AAA」という異名で知られるようになる。

ニコラス・ブルーム

アクイロニアの国家元首を務める若い男性。リュウ・ウェイとは友人同士の関係で、リュウに信頼を置いている。気弱で善良な人物であるが、猜疑心と嫉妬心が強く、リュウやアルマリック・アスヴァールを頼りにしつつもその才能に警戒心を抱いている。

チャールズ・コリン・モーブリッジ・Jr. (ちゃーるずこりんもーぶりっじじゅにあ)

アクイロニア出身の男性。野心家で、もともとアクイロニアの元首の息子であったが、選挙で敗れたためにその跡を継ぐことができず、また汚職が発覚したことからニュー・キャメロットに亡命した。アクイロニアの支配をもくろんで北極海戦線を引き起こしたが、敗北して失踪。のちにブエノス・ゾンデに現れ、再び政治家として頭角を現す。

ケネス・ギルフォード

ニュー・キャメロット軍の若い男性。左の頰に大きな古傷がある。軍人としては有能だが、非常に口が悪く、相手が誰であろうと平気で直言をする。北極戦線に参加したのち、ブエノス・ゾンデ攻略、さらにブエノス・ゾンデ再攻略にも参加している。

カレル・シュミタッツ

プリンス・ハラルド軍の若い男性。総司令部が集団食中毒で壊滅した際、妻の出産に立ち会っていたために難を逃れ、エゴン・ラウドルップ率いるブエノス・ゾンデ軍を迎撃するための総司令官代理に任命される。周囲の反対を押し切ってユーリー・クルガンを参謀長に任命、その功績によって戦いを勝利に導く。

ユーリー・クルガン

プリンス・ハラルド軍の若い男性。非常に陰気かつ傲慢な性格で、他人を見下した言動をするために多くの人から嫌われている。しかし、軍人としては極めて有能であり、カレル・シュミタッツの抜擢を受けて昇進、エゴン・ラウドルップ率いるブエノス・ゾンデ軍を撃退した。のちに、ブエノス・ゾンデ攻略戦、さらにブエノス・ゾンデ再攻略にも参加している。

エゴン・ラウドルップ

ブエノス・ゾンデの独裁者である若い男性。世界制覇をもくろむ野心家で、まず多くの資源を有するプリンス・ハラルドを征服しようとしたが、カレル・シュミタッツとユーリー・クルガンの率いるプリンス・ハラルド軍の前に敗れ去った。また、それがきっかけで六都市の連合によるブエノス・ゾンデ攻略を招く。その戦いに勝利したあと、ギュンター・ノルトによって暗殺された。

アンケル・ラウドルップ

エゴン・ラウドルップの従兄。もともとは学者だったが、エゴンによる親族支配のために政治家に抜擢された。しかしエゴンの独裁の危険性をたびたび大衆に訴えたため、反逆罪の名目で投獄される。エゴンがプリンス・ハラルド征服に失敗して帰還したあとに処刑された。

ギュンター・ノルト

ブエノス・ゾンデ軍の若い男性で、事故によって片足が不自由。愛妻家だったが、妻は病死している。有能な軍人で、六都市連合からブエノス・ゾンデをみごとに防衛したが、その直後にエゴン・ラウドルップを自らの手で暗殺。そしてアクイロニア、続いてタデメッカに亡命し、そこでタデメッカ軍を率いてサンダラー軍による侵略を撃退する。その後は隠棲する。

場所

ポルタ・ニグレ

プリンス・ハラルド国内の渓谷。温暖化によって人が暮らせるようになった南極大陸にある。ポルタ・ニグレ掃滅戦の主要な舞台となった場所でもある。エゴン・ラウドルップ率いるブエノス・ゾンデ軍はユーリー・クルガンの罠にはまってこの地におびき寄せられ、包囲殲滅された。

カルデナス丘陵

ブエノス・ゾンデ国内の、ペルー海峡にある小さな丘。六都市連合によるブエノス・ゾンデ攻略に際し、ギュンター・ノルトがカルデナス丘陵に本拠地を置いたため、激戦の舞台となった。ブエノス・ゾンデ再攻略戦においても戦場となったが、この際はあっさりと陥落した。

その他キーワード

大転倒 (びっぐふぉーるだうん)

西暦2088年に、地球の地軸が90度回転した事象。数多くの災厄を引き起こし、月へと移住していたわずかな人々を除く、当時の地球上のすべての人類を滅亡へと追いやった。月の人々はこの事象のあとに再び地球へと降り立ち、七つの都市を建設した。

オリンポス・システム

月面上に存在する、20万メガワットの出力を持つ巨大なレーザー砲。地球に向けられており、一定以上の速度、質量の物体が地上500メートル以上の高空に達すると、即座に破壊する。もともと月面都市の住人が地球を支配するために作ったシステムだが、月の人類が疫病によって死に絶えたあとも、無人のまま稼働し続けている。

クレジット

原作

田中 芳樹

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