不浄を拭うひと

不浄を拭うひと

霊感を持つ山田正人は、孤独死や自殺のあった現場など、さまざまな形で死を迎えた人びとの生きていた証である「生活の跡」を消す、特殊清掃の仕事を始めた。現場に遺されたものからその人の人生を知り、さまざまな死の形を体感して死と向き合う、特殊清掃作業のリアルを描く物語。「本当にあった笑える話Pinky」2019年1月号から掲載の作品。

正式名称
不浄を拭うひと
ふりがな
ふじょうをぬぐうひと
作者
ジャンル
お化け・妖怪
 
社会問題
レーベル
ぶんか社コミックス(ぶんか社)
巻数
既刊6巻
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あらすじ

第1巻

39歳の山田正人が脱サラして始めたのは、特殊清掃の仕事だった。主に亡くなった人の部屋の消毒や清掃、遺品整理などの作業を請け負っている正人は、人の死とさまざまな形で向き合うことになる。仕事の依頼はひっきりなしに入ってくるが、正人は一番最初にした特殊清掃の仕事を忘れられなかった。それは、50代の女性が孤独死した現場だった。ゴミ屋敷化したワンルームのマンションには、グランドピアノが置いてあり、その下のスペースで彼女は寝ていたようだった。死後2か月が経過した頃、近所からの通報により、病死しているところが発見された。特殊清掃の依頼を受けて正人が部屋に向かうと、そこには大量のゴミにまぎれて、カツラが落ちていた。しかしそれは、遺体から頭皮ごとはがれ、カツラ状になってしまった本物の髪の毛だった。初めての現場にとまどい、ショックを受けながらも、正人は亡くなってしまった人のことを哀れみ、作業を続ける。するとその夜、帰宅して眠っていた正人は、聞き慣れない音で目を覚ます。それは気のせいとは思えない、はっきりとした音で、妻の山田可南子にも聞こえていた。そしてその音の原因がわからないまま、一週間が経過した頃に事件が起こる。(第1話「カツラの落ちている部屋」、第2話「深夜に聞こえる音」。ほか、9エピソード収録)

登場人物・キャラクター

山田 正人 (やまだ まさと)

大卒後に一般企業に勤めていたサラリーマンの男性。脱サラして特殊清掃の仕事に就いた。年齢は39歳。遺品整理やゴミ屋敷の清掃も行っているが、主な仕事は亡くなった人の部屋を原状回復させる特殊清掃。子供の頃から霊感体質だったが、20代で一旦その感覚が消え、霊を見ることもなくなった。しかし、特殊清掃の仕事を始めてから、再び霊を見たり、感じたりすることが増えている。初めて特殊清掃の仕事をした時、亡くなった人のことを思いながら仕事を進めたため、霊に取り憑かれて自宅に連れ帰ってしまったことがある。そのことから、妻の山田可南子に非常に怖い思いをさせたことがあり、彼女が病むきっかけとなった。そのため、それからは特殊清掃の仕事を行うにあたり、極力事務的に進めるようになった。

山田 可南子 (やまだ かなこ)

山田正人の妻で、山田清塩の母親。夫が特殊清掃の仕事を初めて行った日の夜、深夜に家のキッチンからカサカサという異音が響き渡り、それを実際に耳にした。それが何日にもわたって続いたため、ねずみか何かがいると思い、夜中にトイレに起きた際にキッチンに立ち寄ってみたところで、謎の青い閃光に遭遇。電気も付けておらず、明らかにおかしな現象だったために、それ以降しばらくは精神状態が不安定になってしまう。以降は夜に電気を消せず、眠りにつくことすらできなくなったうえ、一晩中夫に抱きしめてもらわないといられなくなるなど、精神的に病んでしまった。のちに落ち着きを取り戻すが、今でも音には敏感に反応してしまう。

石橋 (いしばし)

山田正人の先輩にあたる男性。特殊清掃の仕事を正人よりも長く行っているため、遺体や死に関することに詳しい。

神谷 (かみや)

住職を務める男性。山田正人とは知人を通して知り合い、特殊清掃の現場に呼ばれるようになった。死の現場でもある部屋が、亡くなった人の霊や念によって閉ざされ、入室を妨害されることもあるため、それを清めるために呼ばれることがある。神谷が唱えるお経の効果は絶大だが近隣に目立ちやすく、特殊清掃を行っていることがバレてしまうのが玉に瑕。

50代の女性 (ごじゅうだいのじょせい)

山田正人が最初に特殊清掃にやって来た部屋の元住人の女性。ゴミ屋敷化したワンルームのマンションにはグランドピアノが置いてあり、たくさんのゴミに埋もれていた。そのピアノの下のスペースで寝ている状態で、死後2か月が経過した頃、近所からの通報でようやく発見された。死因は病死だったが、遺体の腐敗が進んでいたこともあり、頭皮ごとはがれた髪の毛がカツラのような状態で現場に残されていた。

50代の独身男性 (ごじゅうだいのどくしんだんせい)

アパートの一室で亡くなった男性。玄関近くにあるトイレの中で、亡くなっているのが発見された。6畳一間の部屋の中は、ゴミとともに大量の女性用下着であふれかえっており、散乱していた未開封段ボールの中身も女性用下着だった。そのほとんどが大きなサイズのベージュ色の下着で、大量に発掘された女装系エロDVDから察するに、自分が女装プレイに使うためのものだったと推測される。大人のおもちゃを使って無理なプレイを繰り返し行ったため、肛門が緩む原因となり、おむつの代わりに生理用のナプキンを使っていた。最期を迎えた場所がトイレだったことは、これが原因だと思われる。

長期滞在の客 (ちょうきたいざいのきゃく)

有名高級ホテルに10泊の長期滞在をしていた60代の男性客。一週間ほど姿を見ないことを不審に思ったホテルスタッフによって、遺体が発見された。一泊2万円という高級な部屋で、酒浸りの時間を過ごしたあとに両手首を切って、スーツ姿でベッドの上に寝た状態で亡くなっていた。死因は失血死。死を覚悟しての宿泊だったと思われる。

M (えむ)

40代の独身男性で、アパレル会社を経営している。一人暮らしにもかかわらず、3LDKのマンション住まいというハイクラスな生活を送っていた。連絡が取れないことを心配した部下が訪ねたところ、ベッドの上で冷たくなっているところが発見された。死因は心不全だったが、死後比較的早く発見されたため、部屋はきれいな状態だった。生前、プライベートでも羽振りがよく毎夜飲み歩いていたが、その際にさまざまな店の女性と関係を持ち、とっかえひっかえ自宅マンションに連れ込んでいた。そのため、彼の死を知ったMの知人女性たちたちが部屋に押しかけ、形見分けという名目のもと残された高価な遺品を漁っていくという事態を招いた。

Mの知人女性たち (えむのちじんじょせいたち)

Mの知人を自称する四人の女性たち。アパレル会社の社長であるMが亡くなったことを聞きつけ、形見分けのためにMのマンションにやって来たと主張している。実は生前のMが関係を持っていたお気に入りのホステスたちで、形見分けとは名ばかりの、金目の遺品を漁るためだけにやって来ていた。

白川 (しらかわ)

上品そうなたたずまいの女性。シャッター商店街の一番端に建っている小さな一軒家に住んでいる。ある時から片づけができなくなり、持ち家の中すべてがゴミ屋敷と化したため、その片づけを山田正人に依頼した。

長井 文吉 (ながい ぶんきち)

特殊清掃の会社を経営している男性で、年齢は50歳。以前は、山田正人といっしょに仕事をしていたこともあり、正人の元先輩にあたる。独立してからは会っていなかったため、しばらくぶりに正人と再会。なつかしく食事をするのかと思いきや、正人が仕事で使うオリジナル消毒スプレーのレシピを教えてほしいと、ビジネスの話を持ち出した。

若い娘 (わかいむすめ)

1DKに一人暮らししていた若い女性で、亡くなってすぐに発見された。これまでに何度も自殺未遂を繰り返し、睡眠薬を飲んで手首を切って救急車で病院に運ばれたことがあった。死因は手首を深く切りすぎたことによる失血死で、本心では望んでいなかった自殺に、誤って成功してしまったことによるものだった。そのため、死ぬまでに相当苦しんだ結果、部屋中が血まみれになり、まるで殺人現場のようになってしまっていた。

D (でぃー)

山田正人のもとに、直接室内清掃の依頼電話をかけてきた男性。その後に自殺を図り、遺体で発見された。すべての後始末を最小限にしようと、おむつを身につけて何枚も重ねたレジャーシートの上で首をつっていた。部屋は片付いており、荷物は最小限しか残っておらず、警察への通報も自ら行って人生を終えた。

40代の息子 (よんじゅうだいのむすこ)

両親が自殺したあとの自宅内の清掃を山田正人に依頼した40代の男性。亡くなった夫婦の息子で、もともと近所に住んでおり、遺体の発見および警察への通報も行った。住人の死による室内の汚染は少なかったが、家のものはすべて処分を希望。未使用品やハイブランドのものであっても、気持ち悪いからとすべて引き取ることを拒否し、処分させた。精神を病んだ母親と何もしない父親のせいで自分の人生が狂ったと、両親を嫌っている。

井本 (いもと)

清掃会社で事務を務める女性。通常は現場に行って作業することはないが、人手が足りずに山田正人とペアを組んで現場へ行くことになった。死後2年が経過して発見された現場は、何もかも初めてのことばかりで、動揺しっぱなしだった。ただのハエにも怖がるビビりで、トイレに積まれた大量の汚物に驚き、それを正人に任せて自分は別の仕事を行った。

野口 清 (のぐち きよし)

山田正人にある部屋の片づけを依頼した男性。部屋の主は別れた妻の連れ子だった18歳の娘で、アパートの一室で亡くなった。娘とは血もつながっていなかったが、6歳の頃から5年間いっしょに暮らしていた。彼女が小さい頃はとても大事に思っていたが、妻と離婚後は疎遠になっていた。娘に対して何もしてやれなかった後悔の念があり、娘が遺した日記を正人と共に開いたことで、娘の本心を知ることになる。そしてこれ以降、正人とは定期的に連絡を取り合う仲になった。

山田 清塩 (やまだ きよし)

山田正人と山田可南子の1歳の息子。可南子の祖母が認知症で、正人も可南子もなぜか大量の塩を浴びせられたことがあったため、この名前をつけた。父親に似たのか、通常見えるはずのないものが見えている様子。何もないところに向かって話し掛けたり、手を振ったりすることがよくある。

クレジット

原案協力

天池 康夫(ラストクリーニング茨城代表)

書誌情報

不浄を拭うひと 6巻 ぶんか社〈ぶんか社コミックス〉

第4巻

(2022-11-30発行、 978-4821154654)

第5巻

(2023-06-29発行、 978-4821156207)

第6巻

(2024-01-30発行、 978-4821157556)

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