わたしは真悟

わたしは真悟

1982年、町工場の産業用ロボットに自我が芽生えた。自分を遊び相手にしていた小学生の男女を親と認識し、2人の名を取って真悟を名乗り、その行方を捜す。世界中のコンピューターと繋がり進化していく真悟は、人間の悪意がもたらす破滅の問題にも直面することになるSF長編。

正式名称
わたしは真悟
ふりがな
わたしはしんご
作者
ジャンル
その他SF・ファンタジー
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概要・あらすじ

1982年、豊工業という都内の町工場でモンローという愛称の産業用ロボットが、自我に目覚める。モンローは結婚を誓った小学生2人の子どもだと思い込み、両親である近藤悟山本真鈴の名前から1字ずつ取って、自ら真悟を名乗った。だが、2人は大人たちに引き裂かれ、まりんの家はイギリスへ行ってしまう。

真悟はさとるが残した「マリン ボクハイマモ キミヲ アイシテイマス」というメッセージをまりんに伝えるために行動を始める。同時に、世界中のコンピューターと繋がることで知能と能力が増大し続けていく。

登場人物・キャラクター

近藤 悟 (こんどう さとる)

『わたしは真悟』に登場する小学6年生で、町工場労働者の息子。主人公の一人。同学年で外交官の娘のまりんと、父親が働く豊工業のロボット見学で出会う。2人で工場内に忍び込み、産業用ロボットのモンローにプログラミングしながら親交を深め、互いに恋愛を意識する。親の反対を押し切り結婚を決意した2人は、どうしたら自分たちの子どもができるかをモンローに質問した。 その回答に従い、東京タワーの頂上まで登って救助ヘリに飛び移る。その後、2人は大人たちに引き裂かれ、まりんの家はイギリスへ行ってしまう。

山本 真鈴 (やまもと まりん)

『わたしは真悟』に登場する小学6年生で、外交官の娘。主人公の一人。さとるの父親が働く豊工業のロボット見学で、同学年のさとると出会う。2人で工場内に忍び込み、産業用ロボットのモンローにプログラミングしながら親交を深め、互いに恋愛を意識する。親の反対を押し切り結婚を決意した2人は、どうしたら自分たちの子どもができるかをモンローに質問した。 その回答に従い、東京タワーの頂上まで登って救助ヘリに飛び移る。その後、2人は大人たちに引き裂かれ、まりんの家はイギリスへ引っ越す。

真悟 (しんご)

『わたしは真悟』に登場する、さとるの父親が働く豊工業の産業用ロボット。主人公の一人。床にネジで固定され、センサーとハサミ型アームで組立作業をする。豊工業ではマリリン・モンローの写真を貼られ、モンローの愛称で呼ばれた。子どものつくり方を質問した小学生のさとるとまりんが、モンローの回答通りに東京タワーから救助ヘリに飛び移った瞬間、自我が芽生え、意識が進化しだす。 自分を2人の子供だと思い込み、モンローの名前を捨てて、悟と真鈴の1字を取った真悟を名乗る。

コンドウイサム

『わたしは真悟』に登場するさとるの父親。豊工業という都内の町工場に勤める35歳の労働者。農機具のモーターの組み立てをしていたが、組み立てロボットのモンローとリーが導入されたため、モーターを集めて運ぶ仕事に回されるが、その後、熟練工が退職したためロボットを動かす係になる。よく作業中に抜け出して喫茶店でさぼり、その間、さとるとまりんがモンローに自分たちの顔や名前を認識させていた。 不況により豊工業を解雇され、妻が新潟のバーで働くため引っ越してから、酒に溺れるようになる。

近藤はるひ (こんどうはるひ)

『わたしは真悟』に登場するさとるの母親。都内の豊工業の労働者だったさとるの父親が、産業用ロボット導入後に解雇されたため、元同級生のリエに新潟のバーの働き口を紹介してもらい、一家で新潟に引っ越す。おはるはバーでホステスをしているときの呼び名。

まりんの父

『わたしは真悟』に登場するまりんの父親。日本の外交官で、イギリスに赴任する。日本製のLSIを子どもが飲み込んだという事故の報せを受け、おもちゃ会社のラビット社を訪ねるがそこには主要先進国の政財界トップクラスが集まっており、万国旗から日本の旗が消されていた。まりんの父は、事故が彼らによって仕組まれたもので、日本は消されるということを予感する。 まりんの父は、その場で集団暴行を受け、重傷を負う。

まりんの母

『わたしは真悟』に登場するまりんの母親。夫は日本の外交官。まりんとさとるの付き合いを快く思わず、イギリスに引っ越してからは、イギリス外交官の息子であるロビンとの交際を勧める。

リー

『わたしは真悟』に登場する豊工業に導入されたモンローと同型のロボット。ベルトコンベアを挟んで、モンローの反対側に取り付けられた。ビビアン・リーの写真を貼られ、リーの愛称で呼ばれた。

ロビン

『わたしは真悟』に登場する、イギリス外交官の息子。年齢15歳。日本人を嫌悪しているが、イギリスの日本大使館でまりんに一目ぼれする。性欲を感じ、いきなりキスをしようとしたため、まりんは倒れて窓ガラスを割り、記憶喪失となる。ロビンの存在により、まりんの子どもの時は終わりが早まってしまう。まりんを地下室に監禁すると、核戦争で全滅したため2人きりになったと騙し、好きなように扱おうと企んだ。 エルサレムの神殿で強引にまりんと結婚の誓いをしようとするが、真悟が人工衛星から剥離させ落下させた耐熱タイルに体を貫かれる。

九鬼 (くき)

『わたしは真悟』に登場する、豊工業の熟練工の1人。産業用ロボットが導入され、ロボット係になるが、ロボットで物を作るのは作った気がしないと退職した。店員になるが、いかつい顔で愛想も言えないためうまくいかない。その後、クズ鉄回収業者になった。偶然出会った近藤父子に、払下げられたモンローの同型ロボットを解体するところを見せる。

沼田 (ぬまた)

『わたしは真悟』に登場する、さとるの同級生の少年。さとるの友達だが、内緒で同級生のむつみと付き合っている。いたずらにしか興味がないさとるを幼稚だと感じている。夏休みの間に急に背が伸びて、変わらないさとると身長差がつく。大人に引き裂かれそうになったさとるとまりんは子どもをつくろうと決意し、ホテルに隠れて沼田に電話する。 子どものつくり方を聞くためだが、行方不明の2人に捜査の手が回っていて、沼田はさとるにホテルの場所を聞き出そうとする。

むつみ

『わたしは真悟』に登場する、さとるの同級生の少女。さとるに追い掛け回され、髪の毛を掴まれるなどいたずらの対象となる。さとるの友達である沼田のガールフレンド。沼田の家で一緒に宿題をする。

しずか

『わたしは真悟』に登場する女児。さとるが住むマンションの隣室の住人で、さとるに好意を寄せて遊んでもらいたがる。まりんにさとるを取られたと思い、2人が会う邪魔をする。

松浦 美紀 (まつうら みき)

『わたしは真悟』に登場する少女。さとるが都内のマンションから新潟へ引っ越した後、その部屋に越してきた家族の一人娘。引っ越した当初、隣に住む女児のしずかが白い布を被されたベッドの中を覗き見て、手も足も顔も何もない「ぐにゃぐにゃしたわけのわかんないもの」を目撃する。下水道を通ってさとるの住んでいた部屋に向かう真悟と心で交信でき、「お友達」と呼ぶ。 真悟の姿を見て、「私も人間だから、あなたも人間よ」と話す。両親によりタンスに隠されていたが、真悟が再び訪ねてきたとき、少女の姿となる。

さんちゃん

『わたしは真悟』に登場する少年。しずかの友達。さとるの行方を追って引っ越した後のマンションにやって来た、自我を持つ産業用ロボットの真悟を匿う。真悟を回収しようとする東京コンピューター研究所]の人間たちから逃げるため、真悟を乗せた軽トラックを運転し、通行人をはねて隅田川まで暴走する。 衝突してさんちゃんも重傷を負い、死亡した。その後、別の世界におり、真悟がパソコンに接続してモニター越しにしずかたちと会話する。

たっちゃん

『わたしは真悟』に登場する少年。しずかの友達。さとるの行方を追って引っ越した後のマンションにやって来た、自我を持つ産業用ロボットの真悟を匿う。真悟を回収しようとする東京コンピューター研究所]の人間たちから逃げるため、真悟としずかとともに海に潜る。うまく潜れないたっちゃんを真悟が海底に引き込み、離さなかったため溺死する。 その後、別の世界におり、真悟がパソコンに接続してモニター越しにしずかたちと会話する。

オオタ・ナオヤ

『わたしは真悟』に登場する、産業用ロボット4­5号の制作者。ロボットは納入先の豊工業でモンローと呼ばれ、自我が芽生えて真悟を名乗る。東京コンピューター研究所]で、ロボットに農機具の部品を作るようプログラムしたはずなのに違う部品を作っていることを知り、ブラックボックスが仕組まれていることを疑う。 行方不明となっていた4­5号を処分するために、仲間2人と回収に向かう。各部品を回収し、最終的に新潟の港でメインアームを発見して再び組み立てるが、すでに知性はなかった。

たけし

『わたしは真悟』に登場する中学生男子。コンピューターが趣味で、ゲーム会社にシステム侵入して戦争ゲームを盗もうとしている。自宅のパソコンで偶然、自我を持つロボットの真悟と交信し、新しい脱出ゲームと思い込む。真悟の居場所が近所にある取り壊し中のビルの地下室だと特定し、そこで遭遇するが、たけしには化け物の姿に見えた。 手に持った石で真悟を破壊しようとするが、アームで腕を掴まれると虹が発生し、天使のような表情で外に出る。その後、真悟は暴力に無抵抗なたけしを目撃し、人間の暴力性を戻した。

社長 (しゃちょう)

『わたしは真悟』に登場する、都内の町工場である豊工業の社長。妻と男2人、女1人の3人の子どもがいる。産業用ロボットのモンローとリーを導入し、その後、さとるの父親を含む社員全員を解雇した。娘は、意識を持ったばかりのモンローのアームに頬の肉を引きちぎられ、大けがをする。モンローを解体業者に引き取らせようとして、社長の妻が立ち会うが、モンローによって逆に業者2人が重傷を負う。 その後、モンローは3人の子どもの目の前で、飼い犬のエスを殺害し、自力で外へ這いずり出て行方不明となる。

不良少年のリーダー

『わたしは真悟』に登場する不良少年の1人。松田という仲間の少年がいる。空き家となった都内のまりんの家に侵入してパーティーをしており、引っ越し先の新潟から訪ねてきたさとるを仲間に引き入れようとする。佐渡島で遊んでいるだけで100万円もらえるという条件に、金に困っているさとるは話に乗る。佐渡島では、侵入しようとする外部勢力に合図を送ろうとして、住民に頭を棒で殴られ重傷を負い意識を失う。 その後、全身が機械のようになり、指先からビームを発射する。

松田 (まつだ)

『わたしは真悟』に登場する不良少年の1人。不良少年のリーダーとさとると3人で、佐渡島に渡る。不良少年のリーダーから、佐渡島で「皆殺しの実験」が始まると教えられていた。「間引き」であり、島の人間は誰を殺してもいいのだという。

集団・組織

豊工業 (ゆたかこうぎょう)

『わたしは真悟』に登場する、都内の町工場。さとるの父親が勤める。産業用ロボットのモンローとリーを導入した。トイレに抜け道があり、さとるとまりんはそこから忍び込めた。金属片のゴミによりモンローが一時狂ったため、ゴミが入らないように警戒が厳重になって、抜け道もふさがれた。その後、不況により、従業員全員が解雇された。 社長が外交、社長の妻がロボットの操作を行う三ちゃん工場体制となる(この場合は、父ちゃん、母ちゃん、モンローちゃん)。後に、工場は火事で全焼。

針の目 (はりのめ)

『わたしは真悟』に登場する、イギリスの日本人を憎悪する暴走族。日本人を黄色いカラスと呼び、排除しようとする。日本人ばかりでなく、日本製品を扱う店や日本製品を身に着けている人も襲う。武器となる毒のキカイを偶然手に入れたメンバーは、日本に関係する建物を破壊するテロを企む。

ジャパン・コンピュータ・ホロン社

『わたしは真悟』に登場する、イギリスにある日本製おもちゃの会社。ラビット社の社員の子どもが、おもちゃのLSIを飲み込んで死んだとされる。しかし、それはジャパン・コンピュータ・ホロン社を追い払うための策略で、実際は、ラビット社のおもちゃであった。事故の知らせを受け、イギリスに赴任した日本の外交官であるまりんの父親がラビット社に向かうが、そこで集団リンチを受ける。

場所

東京タワー (とうきょうたわー)

『わたしは真悟』に登場する、東京タワー。2人の子どもをつくることを決意したさとるとまりんはモンローにその方法を質問し、「333のテッペンカラトビウツレ」という指令を得る。2人は「333」から東京タワーの高さを連想し、一番上まで登り続ける。しかし、地盤沈下により実際の高さは332.7mになっているため、頂上まで来たさとるとまりんはランドセルに登って高さを補い、そこから救助ヘリに飛び移った。 その瞬間、モンローに意識が芽生える。

東京コンピューター研究所 (とうきょうこんぴゅーたーけんきゅうじょ)

『わたしは真悟』に登場する、産業用ロボット4­5号を制作した研究所。農機具の部品を組み立てるようプログラミングした4­5号は、町工場の豊工業で違う部品を組み立てていた。ブラックボックスが仕組まれたことを疑う制作者たちは、裏の組織の存在を恐れながら、豊工業から行方不明になっている4­5号を探し、極秘裏に回収しようとする。

佐渡島 (さどがしま)

『わたしは真悟』に登場する、新潟県佐渡島。さとるが不良少年2人に、高額の仕事があると誘われ一緒に新潟港から船で渡る。嵐の中を謎のダイバーたちが上陸してきて、街の住民たちはソ連兵が攻めてきたと思い襲撃する。だが、ダイバーは日本人たちで、やがて機械のような姿になる。真悟はその後、佐渡で繰り返された大量殺戮を自分のユメと回想するが、新潟港に小型船が到着し、中から現れたさとると再会した時、その姿は傷だらけで服がボロボロだった。

新潟港 (にいがたこう)

『わたしは真悟』に登場する、佐渡島への連絡船が出る新潟県の港。サトル ワタシハ イマモ アナタガ スキデス マリンというまりんのメッセージを伝えるため、さとるの行方を追った真悟が、最後にさとるに再会した場所。メインアームだけになった真悟は、さとるの血痕の上に「アイ」の2文字を残そうとするが、最後の縦線を書く前にエネルギーを使い果たす。 佐渡島から小型船で戻ったさとると再会した時、その歩いてくる振動に合わせることで縦線を引き、「アイ」を完成させて動かなくなる。

その他キーワード

毒のキカイ

『わたしは真悟』に登場する、産業用ロボットのモンローが組み立てた部品。農機具の部品を組み立てるようプログラムされた産業用ロボットにブラックボックスが仕組まれ、導入された町工場でモーターのような毒のキカイを作り、それが世界にばらまかれる。メカに仕込まれビームを発射する武器としての用途があるが、それ以外にも、虹がかかったり、至近距離にいた人間が笑みを浮かべた表情で死亡するなど、異常な現象を引き起こす。 また、武器として使用した人間の体が、機械のように変化したりもする。

NISSIN号 (にっしんごう)

『わたしは真悟』に登場するタンカー。太平洋を航行中、自我を持つロボットの真悟が船を乗っ取り、行方を追う少女まりんがいるイギリスへ向かう。途中、真悟は船のコンピューターと交信し、さらに通信衛星を通じて世界中のコンピューターと接続する。

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