Piece

Piece

感情表現が下手で、他人とコミュニケーションをうまく取れない女子大生の須賀水帆が、高校時代のクラスメイトの折口はるかの死をきっかけに、彼女の元交際相手を探す事になる。これによってかつての思い人の成海皓と向き合う事になった水帆が、衝撃の真実へたどり着くまでの姿を描いた青春ラブサスペンス。「ベツコミ」2008年5月号から2013年5月号にかけて連載された作品。第58回小学館漫画賞少女向け部門受賞(2013年)。

正式名称
Piece
ふりがな
ぴーす
作者
ジャンル
青春
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あらすじ

第1巻

女子大生の須賀 水帆の高校時代の同級生、折口 はるかが、がんで亡くなった。当時水帆は、はるかとほとんどかかわりがなかったものの葬式に参列し、そこで折口はるかの母親から、衝撃の事実を知らされる。はるかは水帆の事を親しい友人として話しており、偽の年賀状まで書いて水帆との関係を偽っていたのである。困惑する水帆だったが、はるかの母親が水帆の生前について調べようとしている事を知り、協力を申し出る。はるかは高校時代に堕胎経験があったらしく、はるかの母親は、その父親が誰なのか知りたがっていた。こうして水帆はまず高校時代のクラスメイトの成海 皓から話を聞き、当時はるかが親しくしていた先輩の矢内 高史に会いに行く。高史は当時はるかに思いを寄せていたが、はるかにはほかに親しい男性がいる事を知り、身を引いたのだった。そんな高史も協力してくれる事になり、水帆と高史は手分けをして情報を集めていく。しかし、水帆の方はなかなかめぼしい情報が得られず、何人もの知り合いを当たっていくうちに、当時クラスのアイドルであった瀬戸内 円に行き当たる。一方の高史は、はるかの元アルバイト仲間から、はるかが店で柄の悪い男性と会っていたという情報を得ていた。

第2巻

須賀 水帆瀬戸内 円と話をして、円が高校時代に謎の人物から不審なメモを頻繁に送られており、その中には円のために折口 はるかを懲らしめてやるという内容のものもあった事を知る。円はこれが当時はるかがいじめに遭った原因と捉え、今も気に病んでいたが、水帆はひとまずこれを否定し、矢内 高史に報告する。その直後、水帆は高校時代の友人である西田 礼美達と旅行に出かけ、円にメモを送った犯人が、菅原 勇ではないかという情報を得る。そこで水帆は円にこれを報告し、いっしょに勇に会いに行く。すると勇は、当時自分は精神的に追い詰められていたが、円に親切にされた事で彼女に思いを寄せるようになり、つい干渉するようなメモを送り続けてしまった事を打ち明けるのだった。そして勇は、はるかのいじめを行ったのは、セクハラ教師として有名な宮本の事を、はるかがかばったからであると告白。しかし実際は、セクハラは事実無根だった。はるかはある日、偶然アルバイト先で宮本の息子の宮本 秋人と親しくなった事で、宮本家に入り浸っていたのだった。そんな宮本親子から、イニシャル「H・N」で、絵が得意な男性とはるかが親しくしていた事を知らされた水帆は、それは成海 皓の事ではないかと思うようになる。

第3巻

時はさかのぼる。高校2年生だった須賀 水帆は、成海 皓の事が気になり、友人とも恋人ともつかない不思議な関係を築いていた。皓は当時立派な家に一人で住んでおり、母親の成海 理沙子は一度も顔を見せる事なく、家政婦の七尾 君子が皓の世話をしていた。そんな皓の家に通ううちに、水帆は成海家の中に開かずの扉がある事に気づく。そこは君子曰く、理沙子の自室で、心療内科医である理沙子の大切な資料が保管されているらしい。そんなある日、皓への思いをコントロールできなくなっていた水帆は、理沙子の部屋へ入ってしまう。そしてそこにあったのは、皓の事を異常なほど詳細に記録した育児日記であった。水帆は理沙子の行動に恐怖を覚えつつも閲覧を続けるが、そこに皓がやって来る。そして皓はわざと水帆を傷つけるような発言を繰り返し、水帆を追い出すのだった。これ以来二人は疎遠になり、次に会ったのは3年後の折口 はるかの葬式だった。

第4巻

折口 はるかの元交際相手と思われていた「H・N」は、成海 皓ではなかった。そこで須賀 水帆矢内 高史瀬戸内 円の三人は、卒業生名簿をもとに「H・N」の手掛かりを探すが、行き詰まってしまう。そんな中、水帆は七尾 君子と再会。3年前のあの日、成海理沙子の自室を解放し、水帆に成海皓の過去を知らせようとしたのは、君子だった事を知らされる。理沙子は皓を完璧な子供に育成するため、四六時中皓を監視カメラで記録しながら、自分が定めたプログラム通りの生活を送らせていた。しかし、この異常さに耐え切れなくなった君子は、皓に少しでも人間らしい暮らしをさせようと、茨城で暮らす皓の1歳年上の兄、成海 比呂と皓を会わせていたのだ。これによって比呂の存在を知った水帆は、イニシャルが「H・N」であり、さらに特技が絵である比呂こそが、はるかの元交際相手であると考える。一方その頃、高史は松浦から別の情報を提供され、水帆も合流し、三人は茨城にある比呂の自宅へ向かう事になる。結局比呂はすでに引っ越して会えなかったが、現在の住人から比呂の写真を受け取った水帆達は、今度は理沙子とコンタクトを取る。

第5巻

成海 理沙子は、成海 比呂は極度の女性恐怖症で、女性と交際どころか触れる事もできないはずだと、折口 はるかとの交際を完全否定する。そんな理沙子の異常さに触れた須賀 水帆矢内 高史は、自分と母親との関係を思い返し、水帆は母親に改めて本音を打ち明ける。これによって、須賀家の母娘関係は少し改善されるのだった。その翌日、水帆は西田 礼美に現状を報告し、なぜか関心を示した礼美といっしょに、再び茨城へ向かう。そこで二人は、比呂と成海 皓の子供の頃の知人、町立図書館の館長に出会う。これがきっかけで礼美は、水帆の皓への思いを確信。帰り道、自分は高校時代から二人の関係を察していたが、一度も話してくれなかった事を悲しく思っていたと打ち明け、二人は気まずくなってしまう。後日、水帆は高史、瀬戸内 円と三人で茨城へ行き、当時比呂をいじめていた男性数人の情報を集めに行く。しかしその途中水帆は、理由は不明だが、礼美も今茨城に来ており、情報を集めているらしい事を知る。そこで三人は二手に分かれ、水帆と円は東京都に戻って礼美に話を聞きに行くが、礼美はもう自分と無理して付き合わなくていいと、水帆達を冷たく追い払うのだった。一方茨城に残った高史は、当時いじめグループの一員であった木戸 純平に会いに行き、皓がかつて人間を殺しかけたという、衝撃の事実を知らされる。

第6巻

須賀 水帆は、突然連絡して来た成海 皓に会いに名古屋まで来ていたが、成海 比呂の事は聞けずに別れてしまう。そんな水帆を矢内高史が叱りつつ合流。二人は木戸 純平から教わった、皓の友人の坂田 コウジを探す事になる。コウジは当時比呂のいじめていたグループの一員だったが、皓と何度も対峙するうちに親しくなる。しかし、これによって比呂は強い孤独を感じるようになり、さらにある日、丸尾 行児に襲われる。だがそこへ皓が現れ、行児に大ケガを負わせる事件を起こしてしまう。そしてあとからやって来たコウジは、真相を闇に葬るため、行児を崖から突き落とす。そして警察官僚であるコウジの父親の手によって事件はもみ消され、行児は足が不自由になり、皓達のグループもばらばらになる。結局二人はコウジには会えないまま東京に戻り、水帆はもう一度、西田 礼美に会いに行く。やはり拒絶される水帆だったが、先日礼美が茨城にいたのは、コウジを探していたからではないかと尋ねたところ、礼美は一瞬動揺する。一方の高史は、折口 はるかが亡くなるまで入院していた病院を訪れ、ここでも、はるかが柄の悪い男と会っていたという証言を得る。

第7巻

折口 はるかが生前よく会っていた柄の悪い男とは「便利屋NEO」に勤める岸辺の事だった。はるかは当時、岸辺に一件の相談と一件の依頼をしており、それは坂田 コウジ丸尾 行児を探してほしいというものだった。岸辺はコウジの件は相談のみで中止したため、よく知らないが、行児の件は覚えており、それは以前はるかの恋人に大ケガを負わされた行児に、謝罪をしたいというものだったと語る。この証言によって須賀 水帆は、遥の元交際相手は成海 比呂ではなく、成海 皓であると確信。そして二人が親密な関係であった事にショックを受ける。そこで水帆はこの悲しみを西田 礼美に打ち明け、二人は仲直りする。礼美もまた、コウジを探していた事を認め、二人は矢内 高史も交えた三人で、コウジの居場所を知っているかもしれない行児の住む京都府へ向かう。しかし行児はおらず、行児の恋人曰く、数日前に突然やって来た皓と、神戸へ出かけてしまったのだという。そこで三人は神戸へ移動するが見つからず、水帆は焦る。皓は成海 理沙子と、20歳になったら今の家を出ていく約束をしており、出て行ってしまえば、いよいよ消息がつかめなくなる。さらにそのタイムリミットは、あと3週間ほどに迫っていた。

第8巻

神戸で須賀 水帆成海 皓と勘違いして声を掛けたのは、成海 比呂だった。水帆は、皓と丸尾 行児が比呂を探して神戸に来たのだろうと察し、逃げる比呂を説得。比呂から、皓との関係がどんなものだったのか聞き出す。しかしそれは、かつて比呂が皓と成海 理沙子に振り回され、いじめにも遭った末に疲弊し、やがて出会った折口 はるかに救いを求めたが、うまくいかず別れてしまった。そして、今もはるかの死を知らないまま、はるかを思っているという悲しいものだった。一方の皓と行児は、比呂の手掛かりを見つけ、さらに水帆達が自分達を探している事を留守番電話で知る。そこで皓は水帆に電話をかけるが、代わりに出たのは電話を奪った比呂だった。そして比呂は、皓には二度と会いたくないと、水帆を連れて東京に帰るよう告げて電話を切る。このままで終わるわけにはいかない水帆は、比呂の自宅へ向かう。だが比呂はそこで、行児に大ケガをさせたのは皓ではなく自分であると告白し、部屋に火を放って自殺を図る。しかし、そこへ皓や行児、矢内高史西田 礼美が助けに来た事で、二人は事なきを得るのだった。

第9巻

丸尾 行児成海 皓成海 比呂を探していたのは、行児は、比呂が自分にお金を送って来た理由を知るため、皓は、折口 はるかが生前書いた手紙を届けるためだった。お金は比呂が慰謝料のつもりで送ったもので、はるかからの思いが綴られた手紙を読んだ比呂は号泣する。これによってはるかの元交際相手は比呂と確定するが、ここで新事実が発覚する。比呂とはるかのあいだに性的関係はなく、はるかに妊娠疑惑が出たのは、友人の西田 礼美のために妊娠検査薬を買ったからだった。礼美はかつて合コンで知り合った坂田 コウジと恋に落ちるがふられたうえ、妊娠が発覚。偶然それを知ったはるかが礼美を支え、最終的に堕胎するが、二人はこの事実をなかった事にするために、周囲には友人だった事を隠し、そのまま疎遠になったのである。これを知った須賀 水帆は、礼美にコウジに会いに行こうと提案。二人は名古屋へ向かい、コウジに当時の事を尋ねる。そしてコウジは、皓へのコンプレックスを解消するために礼美と関係を持った事、礼美を本気で愛していたわけではなかったが、当時の自分には必要な存在だった事を打ち明けるのだった。

第10巻

東京に戻った須賀 水帆は、成海 皓の自宅に向かっていた。皓は以前水帆に3週間も誕生日を偽っており、本当の誕生日は今日であった。つまり、今夜が今の家で暮らせる最後の日だったのである。そこで水帆は成海家に行き、出ていく前に家中に思いっきり落書きしようと提案。二人は家をめちゃくちゃにしながら、お互いの本音を言い合う。そして水帆は、自分は狂っているのかもしれないと言う皓に、そんな皓に惹かれる自分も狂っているし、皓のすべてを受け入れると伝えるのだった。こうして皓の誕生日は終わり、翌朝皓は水帆を置いて一人家を出ていく。水帆はもう皓に会う事はないと悟り、絶望感に襲われつつも、西田 礼美の支えで次第に元気を取り戻すのだった。そして後日、二人は折口 はるかの両親に自分達が調べたすべてと、礼美こそが本当のはるかの友人であり、妊娠していたのも礼美であった事を伝える。礼美はあまりにも身勝手な行動だった事を両親に謝罪するが、実は隠れてはるかの通夜にも参加していた事が発覚する。そんな礼美の思いを知ったはるかの母親は涙し、礼美を抱きしめるのだった。

メディアミックス

TVドラマ

2012年10月から12月にかけて、本作『piece』のTVドラマ版が日本テレビ系列で放送された。監督を河合勇人、脚本を大石哲也と松田裕子が務め、須賀 水帆を本田翼、成海 皓を中村優馬、折口 はるかを水野絵梨奈が演じている。

登場人物・キャラクター

須賀 水帆 (すが みずほ)

大学2年生の女子。年齢は19歳。前髪を顎の高さまで伸ばして真ん中で分けて額を見せ、顎の高さまで伸ばした黒のボブヘアにしている。クールで落ち着いた性格で、自分を表現する事が苦手。そのため、心の中ではさまざまな思いが渦巻いていても相手に伝えられず、周囲には何事にも関心の薄い、冷たい人間だと誤解されがちである。その原因は5歳の頃、両親に内緒で謎のお兄さんと親しくなったものの、彼が別の女児に性的虐待をして捕まり、さらに、彼と須賀水帆が知り合いだった事にショックを受けた両親が、水帆に心無い態度を取り、水帆もまた両親に心を閉ざすようになった事が強く影響している。しかし水帆本人にはあまり自覚がない。高校2年生のある日、成績が悪いはずの成海皓が、実は頭がいい事に気づき、彼に関心を抱くようになる。そこで成海家に入り浸り、友人とも恋人ともつかない関係を築くようになるが、成海家の異常性に触れた結果、疎遠になってしまった。しかし大学2年生のある日、折口はるかの死をきっかけに、皓をはじめとする高校時代の仲間達と向き合う事になり、これまでよりももう少し人とかかわってみようと決意。はるかの足跡をたどっていくうちに次第に感情表現ができるようになり、人間的に成長していく。

折口 はるか (おりぐち はるか)

浪人生の女子で、故人。亡くなった当時、年齢は19歳。髪型は、前髪を鼻の高さまで伸ばして真ん中で分け、後ろは胸の高さまで伸ばした黒のストレートロングヘア。眼鏡をかけており、服装は地味で、全体的に目立たない印象の人物。心優しく落ち着いた性格で、親しい人の前では明るく、冗談も言う。しかし、人見知りが激しく、同世代の人間があまり得意ではない。結果、高校では友人もおらず、浮いた存在であった。乳幼児の頃、折口はるかの母親が育児ノイローゼになってしまい、小学校入学まで、祖父母に預けられていた。これによって母親とは距離ができてしまい、いつもよそよそしく、お互いに気を遣う関係になってしまった。そのため小学生の頃いじめに遭っても言えず、どんどん母親に対して自分を偽るようになってしまった。そこで高校生になったある日、家族と距離を置くため書店でアルバイトを始め、宮本、宮本秋人とはこれがきっかけで親しくなった。その後、西田礼美の妊娠を偶然知った事で彼女が堕胎するまで支え続けた。さらに礼美の恋人である坂田コウジを探していた時に成海比呂と出会い、交際するが破局。そして卵巣がんが発覚し、亡くなった。特技は絵を描く事で、趣味は読書と花の手入れと、囲碁の対局を見る事。特に花には詳しく、矢内高史とは百合の花の話題がきっかけで親しくなった。

西田 礼美 (にしだ れみ)

N女子大学に通う2年生の女子。須賀水帆とはN高校時代からの友人。N女子大生でありながら、M大とS大のサークルも掛け持ちしている。前髪を目が隠れるほど伸ばして右寄りの位置で斜めに分け、顎の高さまで伸ばした金色の内巻きボブヘアにしている。髪型やファッションには相当なこだわりを持つ。明るく社交的な性格だが、太めの体型に強いコンプレックスを抱いている。幼い頃は両親に非常にかわいがられて育ち、自分は美少女だと認識していた。しかし、成長するにつれ決してそうではない事に気づき、女性として大切に扱われず、悩むようになる。高校1年生の春、体育の授業がきっかけで水帆と知り合う。この時、水帆の美しい容姿や落ち着いた性格にあこがれ、2年生で同じクラスになったのを機に、積極的に話し掛けるようになる。しかし水帆には高い心の壁があり、自分がどれだけ水帆を思っていても、決して距離が縮まらない事を淋しく思っていた。そんなある日、合コンで坂田コウジと知り合い恋に落ちるが、すぐに音信不通になってしまったうえに彼の子を妊娠。しかしこれを水帆には打ち明けられず、偶然事態を知った折口はるかに支えてもらい堕胎した。だがその後、堕胎の事実を忘れるため、はるかとは距離を置いてしまい、そのままはるかが亡くなった事を非常に悔やんでいる。

成海 皓 (なるみ ひかる)

F大学に通う1年生の男子。年齢は19歳。成海理沙子の息子で、成海比呂の弟。前髪を目が隠れそうなほど伸ばした、金色の短髪。美形で、女子には非常に人気がある。明るくマイペースな性格で、極端な女好き。そのためいつも女性をとっかえひっかえしており、理沙子からは、もはや病的であると評されている。いつもぼんやりしているように見えるが、他人の事を非常によく観察しており、突然的を射た厳しい指摘をして相手を傷つける事もある。しかし悪意はなく、基本的になにを考えているのかわからないミステリアスなところがある。結果、人によって評価が大きく変わり、成海皓に夢中になる人間もいれば、毛嫌いして近寄らない人間もいる。生まれた時から理沙子の研究材料として扱われ、17年前から理沙子によって比呂と引き離され、小学5年生のある日までは生活のすべてを監視、記録、コントロールされて育った。結果、感情を正しく表現できず、なにを考えているのかわからない性格に育ってしまった。須賀水帆とは同じN高校の卒業生で、非常に頭がいいが、試験ではわざと赤点ばかりを取り、1年浪人して現在の大学に入学した。水帆とは当時親しく、友人とも恋人ともつかない関係を築いていたが、水帆が自分の過去を知った事により疎遠になる。しかしその後、折口はるかの死をきっかけに、もう一度水帆とかかわる事になる。高校時代、比呂をいじめた長門と森田に復讐したが、これによって今でも二人に付きまとわれ、嫌がらせをされ続けているため、二人を殺したいと考えている。比呂の影響でアレルギーではないが、卵料理が食べられない。

住吉 大紀 (すみよし だいき)

大学2年生の男子。須賀水帆の恋人。前髪を目の下まで伸ばして真ん中で分けた短髪。明るく心優しい性格で、誰に対しても親切に接する。また単純な内容の映画やラブソングにも素直に感動できる、ピュアなところがある。水帆とは大学入学後に知り合い、その後1年ほど交際していた。しかし、どれだけいっしょにいても水帆が心を許してくれないため、自分に関心がないのではないかと、内心淋しさを感じていた。そして大学2年生のある日、同じ大学の文学部に通う知人の女子の恋愛相談を聞いているうちに彼女を放っておけなくなり、思いを寄せるようになる。そして、これが水帆にばれてしまったのを機に別れ、文学部の女子と交際を始めた。恋人には、色々な事を共有したり、辛い時は支え合ったりする関係を求めるタイプである。

矢内 高史 (やない たかし)

K大学に通う3年生の男子。須賀水帆のN高校時代の先輩。前髪を上げて額を全開にし、刈り上げた短髪にしている。眼鏡をかけており、背が高い。まじめで無口な努力家で、負けず嫌いな性格。また、一見近寄りがたく見えるが実際は面倒見がよく、世話焼きである。さらに容姿も成績もいいため、高校時代は女子から絶大な人気を誇っていた。しかし、その人柄のために周囲から高すぎる評価を受ける事が多く、その期待を裏切らないために、さらに努力を重ねている。高校3年生の夏、楠田未久と別れて意気消沈していたところ、委員会が同じだった折口はるかと、百合の花がきっかけで親しくなる。やがてはるかに思いを寄せるようになるが、ある日はるかが宮本秋人と電話しているのを、交際相手と電話しているのだと勘違いし、ショックを受ける。これによって身を引いてしまい、委員会も終了した事で疎遠になってしまう。その後、はるかの事を忘れて生活していたが、大学3年生の夏にはるかが亡くなり、さらにその直後、水帆がはるかの生前について調べている事を知って協力を申し出る。はるかの事を少し美化し過ぎており、調査中もはるかに関する悪い噂が出るだけで動揺し、デマに違いないと怒り出してしまう。

瀬戸内 円 (せとうち まどか)

大学2年生の女子。須賀水帆のN高校時代のクラスメイト。小池の恋人でもある。前髪を目の上で切って真ん中で分け、肩につくほどまで伸ばしたセミロングヘアにしている。かわいらしい容姿と周囲を和ませる雰囲気から、周囲から非常に人気があり、高校時代は学年No.1のアイドル的な存在だった。さらに性格も穏やかで心優しいため、一見非の打ちどころがないが、怒らせると非常に怖い。自分が男性に人気がある事を自覚しており、周囲の女性を不快にさせないためにも、つねに気を配って生きている。しかしある日、それゆえに友人から八方美人と評されてしまうが、それでも自分はできるだけ人とかかわり、親切にしたいと考えている。高校2年生のある日、机に不審なメモが届くようになり、瀬戸内円のために折口はるかを懲らしめるという、いじめをほのめかすその内容に驚く。結局メモは高校2年生の終わり頃に届かなくなったが、はるかへのいじめは実際に起き、それは自分のせいではないかとずっと悔やんでいた。しかし大学2年生の夏、はるかの過去について調べている水帆に協力する事になり、メモの真相を知る事になる。また、それ以降も水帆に手を貸し、いっしょに調査をし続ける。高校時代は体育が苦手で、宮本から気にかけられていた。そのためセクハラされているという噂が立ったが、円自身はまったく認識していなかった。

菅原 勇 (すがわら ゆう)

現在2浪中の浪人生の男子。須賀水帆のN高校時代のクラスメイト。前髪を眉上で短く切った短髪で、鼻の周りにそばかすが多くある。思い込みが激しい性格で、精神的に思いつめやすい。自分にも他人にも厳しく、高すぎる理想を求めてしまうところがある。子供の頃、知能指数が高いと言われ、菅原勇自身や家族も、勇はとても頭がいいと思い込んで育つ。そこで超難関のT大学の進学を目指すが、成績が思うように伸びず、父親にも責められて苦しむようになる。そんなある日、瀬戸内円に親切にされた事がきっかけで彼女に思いを寄せるようになるが、会話もできない自分に対し、授業中に平気で円の身体に触れる宮本を憎み、さらにそんな宮本をかばった折口はるかが許せなくなる。そこで、はるかを排除しようと考え、いじめを行うようになった。同時期に円に匿名で一方的な意見を書いたメモを送るようになるが、円はそれに従わなかったうえに、小池と交際を開始。それに失望し、高校2年生の3月にメモを送るのをやめた。その後は円とかかわる事はなかったが、水帆がはるかの過去について調べ始めた事で、水帆の協力者となった円に再会。円には嫌われてしまったが、水帆には当時自分がした事について正直に打ち明けた。

宮本 (みやもと)

N高校で体育教師をしている中年の男性。宮本秋人の父親。秋人と娘がいるが、すでに妻とは離婚しており、娘は母親についていったため、現在は秋人と二人暮らしをしている。前髪を眉上で短く切った短髪で、無精ひげを生やしている。まじめで寡黙な性格で、校則違反には厳しい。また、自分の意見を通すために無理やり相手を力で押さえつけるところがある。結果、相手と分かり合おうとする意欲に欠けるため、人間関係でトラブルを起こす事が多い。そのため3年前のある日、校則を破ってピアスをしていた女子生徒に、ピアスを外すよう注意し、身体に触れてしまった事で、セクハラと解釈される。以来、セクハラ教師の烙印を押され、「セクハラ宮本」と呼ばれるようになってしまった。これは事実無根であるために宮本自身は気にしていなかったが、妻は周囲の冷たい視線に耐え切れず、離婚を決意する。その後は秋人と二人で暮らしているが、本当は秋人も妻についていきたかったのではないかと思っていた。しかし、折口はるかと親しくなり、はるかのアドバイスに従った事で秋人との関係は改善する。三人で幸せな日々を送っていたが、菅原勇がはるかと宮本の関係に気づいた事で、はるかを守るために距離を置いた。

成海 比呂 (なるみ ひろ)

フリーターの男性。年齢は20歳。成海理沙子の息子で、成海皓の兄。前髪を目が隠れるほど伸ばし、顎の高さまで伸ばした焦げ茶色のボブヘアにしている。礼儀正しい性格で、やや気が弱いところがある。現在は心を閉ざし、人とのかかわりを避けるようになってしまっている。さらに極度の異性恐怖症で、女性には触れる事もできない。生まれた時から理沙子の研究材料として扱われており、17年前から理沙子によって皓と引き離され、生活のすべてを監視、記録、コントロールされて育った。それでも周囲の計らいで趣味の絵だけは続ける事を許されていたが、12年前からいじめに遭うようになる。しかしこの頃、比呂と皓の人生をどうにか守ろうとしていた七尾君子によって、皓と再会。いじめに遭う度に皓に守ってもらえるようになる。これによって次第に皓に依存するようになっていくが、皓はやがていじめグループと親しくなり、強い孤独を感じるようになる。その結果、丸尾行児に襲われた際一人で反撃し、彼に大ケガを負わせた。さらに事件はもみ消されたうえ、関係者には行児にケガをさせた犯人は比呂ではなく、皓であると誤解される。しかも、次第に皓が自分に関心をなくしていった事で疎遠になった。その後、孤独な人生を送る中で折口はるかと出会い、行児とのあいだに起きた事件を打ち明けたところ彼女に拒絶された。現在もはるかが亡くなった事を知らず、いつか関係を修復したいと願っている。

坂田 コウジ (さかた こうじ)

愛知県名古屋市にあるバー「BLOO」で働く男性。年齢は20代前半。前髪を眉上で短く切り、もみあげを長く伸ばした焦げ茶色のウルフカットヘアにしている。顎ひげを伸ばしており、耳にはいくつものピアスを付けている。12年前、成海比呂のいじめグループのリーダー格で、山根直紀、木戸純平とほか数名を子分のように扱っていた。父親は警察官僚だが、母親はその愛人で、母子家庭で育つ。さらに母親は家に頻繁に別の男性を連れ込んでいたため、非常に荒(すさ)んだ生活を送っていた。やがて比呂を助けにやって来た成海皓と出会い、お互いに通じ合うものを感じて、グループに加える形で親しくなる。しかし、比呂が丸尾行児に大ケガを負わせた事で、証拠をもみ消すために行児を崖から落とし、父親の権力を使った事で仲間達は離れていった。その後も皓とだけは付き合いが続いていたが、ある日皓から現在比呂をいじめている長門と森田に復讐するため、長門の恋人を奪ってほしいと頼まれる。これによって二人に激しく恨まれ、以来二人からお金をせびられたり、仲間を傷つけると脅されたりするようになる。そのため、自分がまともな人生を送るのは厳しいと感じており、西田礼美と親しくなっても、彼女とは住む世界が違いすぎる事に耐え切れず、音信不通になってしまう。

丸尾 行児 (まるお ゆきじ)

京都府に住む社会人の男性。年齢は20代前半。高校を卒業してすぐ働いている。前髪をカチューシャで上げて額を全開にした、金色のウルフカットヘアにしている。子供の頃から虫歯の悪化により前歯がなく、当時は「歯抜けの丸尾」と呼ばれていた。丸尾行児の恋人からは「丸ちゃん」と呼ばれている。ぶっきらぼうだが、なんだかんだで面倒見がよく、付き合いがいい。11歳までは茨城県に住んでおり、成海比呂達とは別の学区だった。しかし当時は、家族が多額の借金を背負っており、嫌な事が続くうちに性格も今とは違う残酷で意地悪なものになっていた。そこである日、比呂の存在を知り、痛めつけようとするが、思わぬ反撃を受けて大ケガを負う。そして気絶しているうちに、駆けつけた坂田コウジの手によって崖から突き落とされ、一命は取り留めたものの、左足が不自由になってしまった。その後、警察官僚であるコウジの父親の手によって事件はもみ消され、坂田家が丸尾家が抱える借金を肩代わりし、行児の治療費も払うという条件で口止めされ、京都府に引っ越す。これによって両親に売られた気分になってさらに荒れるが、今度はいじめられる側になってしまい、自殺を考えるようになる。しかし現実と向き合う決意をし、現在は恋人と共に平和に暮らしている。1年ほど前に謎の人物から少額のお金を2回送られて来ており、差出人が気になっていた。しかしある夏、成海皓と再会した事により、それが比呂が慰謝料のつもりで送ったものと知る事になる。

七尾 君子 (ななお きみこ)

成海家の家政婦を務める中年の女性。数年前まで成海皓の生活全般の世話をしていたが、ある日皓と大喧嘩になる。そこで現在は、たまにやって来ては皓の様子を見るだけに留めている。前髪を上げて額を全開にし、ロングヘアを後ろでお団子にして一つにまとめている。ぶっきらぼうだが心優しい性格で、包容力がある。子供の頃は教師を夢見ていたが経済的な事情で叶わず、大学進学を断念する。その後、シングルマザーとして娘の知花を育てるが、16年前知花の結婚相手の件で喧嘩になり、疎遠になってしまう。そこで自分の生き方は間違っていたのかもしれないと、精神的に不安定になっていたところ「成海クリニック」の存在を知り、成海理沙子と出会った。しかし、通院するうち理沙子に依存するようになり、ある日理沙子の役に立ちたいという理由で、皓の家政婦となる。しかしすぐさま理沙子の異常性に気づき、彼女に抗議するが、自分がいなくなったところで、ほかの家政婦が理沙子に従うだけだとあきらめる。そこで、可能な範囲で理沙子の方針に抵抗しながら、皓に寄り添う事を決意し、成海比呂と皓を再会させる。しかし、これがきっかけで二人の心が決定的に狂ってしまい、これを悔やみつつも修復できずにいる。須賀水帆とは3年前に知り合い、水帆であれば皓の心の扉を開いてくれるのではないかと期待し、協力している。

成海 理沙子 (なるみ りさこ)

「成海クリニック」で心療内科医を務める中年の女性。成海比呂と成海皓の母親。前髪を目が隠れるほど伸ばして真ん中で分け、肩につくほどまで伸ばしたウルフカットにしている。医師としては非常に著名で、何冊も本を出版して雑誌にも連載を持っている。しかし、極めて残忍な性格で、わざと他人を自分に依存させて利用したり、自分の息子達を所有物のように扱ったりと、人を人とも思わない冷酷な一面がある。ある日、自分の女性としての機能に関心を持ち、出産してみようと考える。そして、遺伝子的に優秀な男性と関係を持ち、シングルマザーとして比呂と皓を出産した。その後、二人の人格をコントロールしてみたいと考えるようになり、二人を別々の場所で、ほぼ同じ環境で生活させながら、自分のプログラム通りに育成する計画を立てた。二人には一切の愛情はなく、観察対象としか思っていない。そのため、実験と称してわざと二人にストレスを与え続けたり、お互いの存在を人質にして、自分に従わなければ、もう一人がもっと辛い目に遭うと脅したりしてコントロールした。これによって比呂と皓は精神的に非常に不安定な人間に育ってしまったが、それでも虐待には該当しないという理由で裁かれず、何食わぬ顔で現在も暮らしている。比呂と皓には、20歳になり次第解放する約束をしているが、これも単に20歳の誕生日を過ぎたら二人を自宅から追い出そうとしているだけである。 

丸尾行児の恋人 (まるおゆきじのこいびと)

京都府に住む若い女性。丸尾行児の恋人。前髪を目の上で切り、胸の高さまで伸ばしたロングウェーブヘアを、高い位置で二つに結んだツインテールにしている。明るく穏やかな性格で、京都弁でしゃべる。行児とは中学時代に出会い、いじめに遭っても負けずに現実を受け止めて生きている姿に強く惹かれ、思いを寄せるようになる。現在は行児と同棲している。折口はるかとは会った事がないが、行児によく手紙を送ってくる女性として認識していた。さらに1年ほど前、はるかではない謎の人物から、行児あてにお金の入った封筒が二回届いている事も把握している。そこである夏、行児を訪ねてきた須賀水帆たちをもてなし、情報提供した。

宮本 秋人 (みやもと あきと)

小学生の男子で、宮本の息子。前髪を目の上で切った短髪で、明るく元気な性格をしている。3年前のある日、宮本が生徒に対するセクハラ疑惑をかけられた事で両親が離婚し、宮本が好きだからという理由で宮本についていく。しかし、家の周辺でも宮本のセクハラは話題になっており、友人の母親まで警戒して宮本秋人の事も避けるようになってしまう。そんなある日、秋人は折口はるかがアルバイトする書店に行ったのがきっかけで、はるかと親しくなる。そしてはるかと年の離れた友人となるが、やがて思いを寄せるようになり、あたかもはるかの恋人であるかのように振る舞っていた。このために矢内高史が、はるかに交際相手がいるとカンちがいした。その後、宮本にもはるかとの関係を知られ、三人で幸せな生活を送っていたが、菅原勇がはるかと宮本の関係に気づいた事で、宮本がはるかを守るためには距離を置くしかないと判断し、疎遠になってしまった。そのため、秋人は3年後もはるかの死すら知らずにいたが、須賀水帆たちが自宅を訪れた事ではるかの死を知り、宮本と共にはるかの元交際相手を探すのに協力する。

須賀水帆の父親 (すがみずほのちちおや)

須賀水帆の父親。前髪を目の上で切って真ん中で分けた短髪にしている。水帆が中学生の頃に不倫していた須賀水帆の父親の不倫相手には「信ちゃん」と呼ばれていた。まじめで厳格な性格で、家ではまったくスキを見せない。しかし、職場では温厚な人間として知られており、また不倫相手にはべったり甘えていたなど、自分の立場によって他者への態度を大きく変えるタイプである。自分の母親に強い苦手意識を感じており、子供の頃はいつも怯えて過ごしていた。母親とは正反対の女性と結婚しようと考えて須賀水帆の母親と結婚したが、それはそれで物足りなさと不満を感じ、不倫に至った。しかしある日、不倫相手とデートしていたところを偶然水帆に目撃されたのがきっかけで不倫がばれ、問題になる事を恐れてすぐに別れてしまった。母親に似た雰囲気の水帆に対してはやはり苦手意識を感じており、冷たく接している。

木戸 純平 (きど じゅんぺい)

茨城県のコンビニエンスストアで働く男性。年齢は20代前半。かつて成海比呂をいじめていたグループの一人でもある。がっしりとした体形で、坊主頭で顎ひげと口ひげを生やし、鼻にピアスを付けている。強面で近寄りがたい雰囲気を醸し出しているが、意外に面倒見がいい性格。12年前、坂田コウジたちと共に比呂をいじめていたが、比呂を積極的に嫌っているというよりは、複雑な家庭環境にあるコウジを案じていた。その後、比呂をいじめるたびに復讐にやって来る成海皓が、コウジとなかよくなった事で木戸純平自身も親しくなるが、ある日、比呂が自分たちよりも質の悪いいじめっ子の丸尾行児に連れていかれた事を知る。そこですぐさま皓たちに報告し、即座に出て行った皓を追いかける形で合流するが、到着した頃には行児は血を流して気絶していた。この時、皓が血の付いた金属パイプをにぎっていた事から、犯人は皓であると誤解している。さらに同じく誤解したコウジが、皓をかばうために父親の力を使って隠蔽しようとした事で、もはやついていけないと判断し、すぐに警察に通報した。中学生になる頃にはコウジたちと疎遠になっており、現在は妊娠した恋人のためにまじめに働いている。そんなある日、矢内高史が職場を訪ねてきたため、情報提供をし、さらに皓にはかかわらない方がいいと伝えた。

きょうちゃん

須賀水帆とはN高校時代の友人の女子。西田礼美、メグちんの仲間も交えて同じグループだった。前髪を長く伸ばして真ん中で分けて額を見せ、胸の高さまで伸ばしたロングウェーブヘアにしている。明るい性格ながら、恋愛に関しては暴走しがち。高校2年生の頃、成海皓の抱えている孤独を察し、自分であれば彼をいい方向に導けるのではないかと考え、思いを寄せるようになる。しかし、その愛情が真剣なものであったがゆえに、これを察した皓からは避けられてしまい、思いが届く事はなかった。のちに別の恋人ができ、幸せに暮らしている。

高田 (たかだ)

成海家の元家政婦。17年ほど前まで、成海比呂と成海皓の世話を務めていた女性。家政婦だった頃の年齢は20代後半だった。前髪を眉上で切り、髪の毛を顎の高さまで伸ばした内巻きボブヘアにしている。明るく前向きな性格で、正義感が強い。そのため一見従順そうに見えるが、まちがった事には、決して従わない強さがある。成海家の初代家政婦として成海理沙子に雇われ、比呂と皓の世話をするようになる。しかし、理沙子が二人を別々に生活させると言い出した事で、茨城県の家で住み込み家政婦として比呂と二人で生活する事になる。その後、理沙子の異常性に愕然とするが、明確に虐待されているわけではないために児童相談所にも相談できずに、追い詰められていく。それでも監視の目をかいくぐって比呂をできるだけ自由にさせようとしていたが、ウソの報告がついに理沙子に見抜かれ、解雇された。当時、卵料理を使って、比呂にだけ通じるサインを送っていた。そのために高田が解雇されて以来、比呂は悲しみのあまり卵料理を食べられなくなってしまった。

お兄さん (おにいさん)

移動図書館と露天商を営む謎の若い男性。前髪を目の高さまで伸ばして真ん中で分け、髪の毛を肩より上まで伸ばしたぼさぼさのボブヘアで、無精ひげを生やしている。須賀水帆が5歳の頃、須賀家からバスで行ける範囲の地域で移動図書館と露天商を開いていた事で、水帆と知り合う。以後、水帆に図書館の本を貸したり、ほかの子供たちも交えていっしょに遊んだりするようになる。そのため、水帆にとっては明るく物知りな、面白い男性であった。しかし、子供がケガをしても無視したり、まじめに将来を考えている水帆に対して、絶対にまともな大人にはならないと冷たく言い放ったりと、おかしな言動が多かった。そしてある日、女児に性的虐待をした事で逮捕される。しかし水帆の成人式の日に偶然再会し、再び水帆に呪詛の言葉を吐く。

神戸の老人 (こうべのろうじん)

兵庫県神戸市にあるギャラリー「KAWAI」に務める年老いた男性。名画の複製販売およびオーダーメイドの絵画販売を行っている。神戸の女性の祖父。前髪を上げて額を全開にし、肩につくほどまで伸ばしたちりちりのボブヘアを、頭の低い位置で一つに結んでいる。眼鏡をかけており、京都弁でしゃべる。絵に関しては非常に厳しいが、面倒見のいい性格をしている。ある日、孫の紹介で成海比呂と出会うが、当初は社会性に欠けている比呂の事を快く思っていなかった。しかし孫の説得もあり、彼の画家としての癖の強さを案じつつも、アシスタントとして雇えるかどうか見極めるため、ひとまず何枚か絵を描いてもらう事にする。

町立図書館の館長 (ちょうりつとしょかんのかんちょう)

茨城県にある町立図書館の館長を務める年老いた男性。目が細く、いつも目を閉じているように見える。穏やかでおっとりとした性格で、やや抜けたところがある。15年前、図書館に来館していた成海比呂と出会い、比呂が絵画に興味を示している事に気づく。そこで館内の美術書を与え、いっしょに過ごすうち、比呂は絵を見るのが好きなだけではなく、画家としても非常に才能がある事を知る。この才能をぜひ伸ばしたいと考え、比呂にスケッチブックと画材一式をプレゼントするが、これによって成海家の異常性に気づいて驚く。しかしそれでも屈せず、比呂の家政婦である馬場に、比呂から絵を描く事を取り上げないでほしいと頼んだ。その後、これが受け入れられて安堵していたが、やがて比呂がいじめられるようになり、そのたびに東京都からやって来ては助ける成海皓の関係に不安を感じ始める。それでも二人を見守り続けていたが、二人が中学生になった頃に比呂はほとんど図書館に来なくなってしまい、疎遠になった。現在も二人の事を案じており、須賀水帆たちが図書館を訪れた際に情報提供をする。

折口はるかの母親 (おりぐちはるかのははおや)

折口はるかの母親。前髪を顎の高さまで伸ばして真ん中で分け、髪の毛を胸の高さまで伸ばしたストレートロングヘアにしている。穏やかな性格で、やや気が弱い。はるかを出産後、育児ノイローゼになってしまい、小学校入学までは両親にはるかを預けていた。その後、はるかといっしょに暮らすようになるが、離れている時間が永すぎたため、お互いに気を遣いすぎて息苦しい関係になってしまった。そんな関係のまま、はるかが亡くなった事を非常に悔いており、須賀水帆との出会いをきっかけに、生前のはるかについて調べ始める。

森田 (もりた)

成海皓と坂田コウジにつきまとっている若い男性。長門と共に何年も皓とコウジに嫌がらせを続けている。前髪を上げて額を全開にし、肩につくほどまで伸ばしたドレッドヘアにしている。高校時代は成海比呂をいじめのターゲットにしており、長門と共にいじめていた。しかしこの事を知った皓が復讐を誓い、森田の交際相手をコウジに奪わせるという作戦を思いつく。これによって恋人を奪われ、森田は皓とコウジを激しく恨むようになる。そこで反撃を決意し、やがて皓たちが丸尾行児に大ケガを負わせた事件の事を知る。事件をネタにまずはコウジの父親を脅し、金銭を受け取る。これに味を占め、以来皓とコウジにつきまとっては金銭をせびったり、親しい人を傷つけたりしている。

山根 直紀 (やまね なおき)

20代前半の男性。かつて成海比呂をいじめていた。前髪を目が隠れるほど伸ばした、ウェーブがかった癖の強い短髪にしている。臆病なうえに面倒事を嫌う性格のため、坂田コウジには、友人というよりも下僕扱いされており、姉にも頭が上がらない。12年前、コウジたちと共に比呂をいじめていたが、やがて成海皓が比呂を助けに来るようになった事で皓におびえ、いじめをやめたいと考えていた。その後、皓とコウジがなかよくなった事で山根直紀自身も親しくなるが、ある日、比呂が自分たちよりも質の悪いいじめっ子の丸尾行児に連れていかれた事を知る。そこで先に向かった皓を追いかける形で現場に到着するが、その時には行児は皓と比呂の前で、血を流して気絶していた。この時、皓が血の付いた金属パイプをにぎっていた事から、犯人は皓であると誤解している。さらに同じく誤解したコウジが、皓をかばうために父親の力を使って隠蔽(いんぺい)しようとした事で、もはやついていけないと判断し、すぐにグループを抜けて皓たちと疎遠になった。現在でもこの事件の影におびえており、西田礼美がコウジを訪ねてきた際は冷たく対応し、須賀水帆、矢内高史、瀬戸内円がやって来た時も何も答えなかった。そのため、いっしょにいた姉が代わりに情報の提供をした。

長門 (ながと)

成海皓と坂田コウジにつきまとっている若い男性。森田と共に何年も皓とコウジに嫌がらせを続けている。前髪を目の高さまで伸ばして真ん中で分け、髪の毛を顎の高さまで伸ばした外はねボブヘアにしている。顎ひげを伸ばし、耳にはいくつもピアスを付けている。高校時代は成海比呂をいじめのターゲットにしており、森田と共にいじめていた。しかしこの事を知った皓が復讐を誓い、長門の交際相手をコウジに奪わせる作戦を思いつく。これによって恋人を奪われ、長門は皓とコウジを激しく恨むようになる。そこで反撃を決意し、やがて皓たちが丸尾行児に大ケガを負わせた事件について知る。事件をネタにまずはコウジの父親を脅し、金銭を受け取る。これに味を占め、以来皓とコウジにつきまとっては金銭をせびったり、親しい人を傷つけたりしている。

馬場 (ばば)

成海家の元家政婦。成海比呂の世話を務めていた中年の女性。前髪を目が隠れるほど伸ばして左寄りの位置で斜めに分け、耳の高さまで伸ばしたショートカットヘアにしている。比呂の家政婦ではあるが比呂にあまり関心はなく、毎週月曜日には仕事をサボってパチンコ屋へ行っていた。その時は、比呂には町立図書館で過ごすように伝えており、比呂と町立図書館の館長が知り合うきっかけを作った。金銭的に困っており、成海理沙子の教育方針の異常性に気づいていたが、おとなしく従っていた。そのため、比呂が町立図書館の館長から画材を受け取った時も、理沙子の方針に反すると判断し、返却しようとした。しかしこの時、町立図書館の館長に、比呂から絵を描く事を取り上げないでほしいと頼まれた事で、渋々ながらも理沙子の説得を決意。比呂が好きに絵を描ける環境作りを手伝った。

須賀水帆の父親の不倫相手 (すがみずほのちちおやのふりんあいて)

須賀水帆の父親の不倫相手の若い女性。前髪を目が隠れるほど伸ばして左寄りの位置で斜めに分け、胸の高さまで伸ばしたロングヘアにしている。気が強く感情的になりやすいが、恋人には尽くすタイプで、自分の中にある強い母性を持て余している。須賀水帆が中学生の頃、水帆の父親と不倫関係になり、彼の見せる弱い一面に母性本能を刺激され、なかなか抜け出せないという状況に陥っていた。しかしある日、水帆の父親とデートしているところを水帆に目撃されてしまい、それを水帆が須賀水帆の母親に伝えた事で、あっさり捨てられてしまう。その直後、水帆に呼び出されて水帆の父親と別れてほしいと頼まれるが、すでに別れた事を伝え、自力では関係を終わらせる事ができなかったので、水帆には感謝していると告げて去っていった。

神戸の女性 (こうべのじょせい)

兵庫県神戸市で、清掃のアルバイトをしている女性。年齢は20代前半。前髪を目の高さまで伸ばして左寄りの位置で斜めに分け、胸の高さまで伸ばしたロングヘアにしている。明るく面倒見のいい性格で、京都弁でしゃべる。ある日、新しいアルバイトとして入って来た成海比呂が、休憩時間に絵を描いている事を知る。そこで、祖父である神戸の老人が経営しているギャラリーのアシスタントに適任ではないだろうかと、比呂に声を掛ける。

小池 (こいけ)

大学3年生の男子。N高校の卒業生。瀬戸内円の恋人であり、矢内高史の友人。前髪を眉上で短く切った短髪にしている。明るくピュアな性格だが、ややストーカー気質な一面がある。まどかに高校時代は思いを寄せていたが、遠くから見つめるばかりで、会話すらできずにいた。しかし高校3年生の卒業式の日、このままではいけないと考え、告白して交際を始めた。円の事を非常に大切に思っており、ずっと仲がいい。須賀水帆とは面識がなかったが、大学3年生の時、円と高史に紹介されて知り合った。

楠田 未久

矢内高史の高校時代の恋人の女子。S女子高校に通っていた。前髪を目の上で切り、肩につくほどまで伸ばしたセミロングヘアをハーフアップにしている。高史とは別の高校に通っていたが、以前から一方的にあこがれていた。そこで3年前に告白して交際を始めるが、実際に交際してみると、高史が思ったような人物ではなかったため、次第に不満を募らせるようになる。そして最終的に、高史は見掛け倒しな人間であると評して別れた。

岸辺 (きしべ)

「便利屋NEO」に勤める男性。前髪を上げて額を全開にした、癖のあるウルフカットヘアにしている。無精ひげを生やし、サングラスをかけている。正体がわかるまでは、須賀水帆たちには便宜上「柄の悪い男」と呼ばれていた。一見近寄りがたい雰囲気を漂わせているが、気に入った客には料金を安くしたり、急な変更があっても受け入れたりするなど、意外と親切である。便利屋として、探偵に近い仕事を行っていた2年前、「便利屋NEO」の向かいの書店で働いている折口はるかがうろついており、そこで声を掛けた。この時にはるかが坂田コウジという男性を探している事を知る。しかし、その時は結局はるかは依頼を中止してしまう。だが再度はるかが現れ、コウジではなく丸尾行児を探してほしいと頼まれ、調査を行った。そして居場所を探り当て、はるかの書いた手紙を渡した。依頼はこれで終了したが、その後もはるかの事は気にかけていた。そのため、ある日訪れた須賀水帆たちに、はるかと行児に関して自分の知っている事をすべて伝えた。

メグちん

須賀水帆とはN高校時代の友人の女子。西田礼美、きょうちゃん、そのほかの仲間も交えて同じグループだった。前髪を長く伸ばして真ん中で分けて額を見せ、胸の下まで伸ばしたストレートロングヘアにしている。クールな性格で、少し斜に構えたところがあり、周囲に辛辣な発言をする事も多い。子供の頃から両親の仲が悪く、恋愛に対していっさい夢を見る事なく育った。そのため、同世代の女子が恋愛に振り回されている姿を冷めた目で見ていたが、ある日どうしても気になる男性ができ、交際を始めた。そこで、いきなり自分の醜い部分も相手に見せてしまえば彼が幻滅し、恋愛のくだらなさを身をもって実感できるのではないかと考えて実行する。しかしなぜかうまくいかず、そんな自分の弱さも彼が受け入れた事で、人間的に成長して優しくなった。水帆に対しては自分同様、素直に恋愛ができないタイプだろうと案じており、成海皓との関係についてアドバイスする。

松浦 (まつうら)

N高校の卒業生の男子。年齢は19歳。須賀水帆とは同級生だったが、在学中に面識はなかった。前髪を上げて額を全開にし、髪全体をツンツンに立てた短髪にしている。明るく人懐っこい性格で、絵を描く事を特技としている。3年前、美術の授業でいっしょになった折口はるかの描く絵に感動し、声を掛けるが逃げられてしまう。しかし、その後もはるかに興味を持ち続けていた。高校2年生の冬休み、茨城県にある祖母の家で過ごす事になり、最寄り駅の水戸駅で毎日趣味の歩行者デッサンをしていた。そこで、なぜかはるかの地元から遠く離れた水戸駅で度々彼女の姿を見かけるようになる。その時は不思議に思うだけで終わったが、3年後にはるかが亡くなり、はるかの生前について調べている水帆と矢内高史と知り合う。そこで自分の覚えている事を伝え、いっしょに茨城県まで行く事になる。この時、水帆が感情表現が下手な事に悩んでいると知り、アドバイスを送った。

須賀水帆の母親 (すがみずほのははおや)

須賀水帆の母親。前髪を眉上で短く切ったベリーショートヘアにしている。まじめな性格で家庭的だが、周囲に合わせようとするあまり、それを察した人たちにかえって気を遣わせてしまうところがある。結果、つねにオロオロして周囲の空気を読めず、失敗してしまう。そのため、そんな自分を変えようと自己啓発本や心理学の本、テレビで見聞きした事を鵜呑(うの)みにしては振り回されている、マニュアル人間である。水帆に対しては非常に過保護で、5歳の時に水帆が自分に黙ってお兄さんと遊んでいた事に、強いショックを受ける。これによってますます水帆に干渉するようになるが、水帆は自分に平気でウソをついて自由に行動するため、やがて水帆とどう接していいか悩むようになる。さらに夫の不倫が発覚し、精神的に追い詰められる。そして「成海クリニック」に通うようになり、成海理沙子に心酔するようになっていく。理沙子が面識のないはずの水帆に詳しかったのはこのためである。

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