低俗霊MONOPHOBIA

低俗霊MONOPHOBIA

奥瀬サキの漫画『低俗霊狩り』のスピンオフ2作目。奥瀬サキが原作を担当し、漫画は刻夜セイゴが担当。解離性同一性障害を患う女子高生が、同級生が心霊被害に遭ったことをきっかけに「口寄せ」の能力を開花させる。そんな彼女が、協力者たち、そして自分のもうひとつの人格と共に、いわくつきの事件に挑むオカルトホラー。KADOKAWA「ヤングエース」2009年Vol.2から2011年12月号にかけて連載された作品。

正式名称
低俗霊MONOPHOBIA
ふりがな
ていぞくれいものふぉびあ
原作者
奥瀬 サキ
漫画
ジャンル
お化け・妖怪
関連商品
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世界観

幽霊が題材。解離性同一性障害を患う女子高生の逢月舞入夏が、養護教諭である神花洸多郎に「口寄せ」の才能を見出される。そして彼女が「口寄せ」を用いて霊の意思を受け取り、時に対峙するようになっていくうちに、次第に積極性を見出し、成長する姿が描かれる。少しずつ深まっていく仲間たちとの絆も見どころのひとつ。

作品構成

本作『低俗霊MONOPHOBIA』は、主人公である逢月舞入夏と、彼女のもうひとつの人格である逢月舞入冬の2人がお互いの力を活かしながら、仲間と共にさまざまな事件を調査していくオムニバス形式の物語として語られる。並行して仲間である十野空家日芽偲乃のバックグラウンドが少しずつ明かされ、2人の心の悩みを晴らしていく戦いも描かれる。

あらすじ

高校1年生の逢月舞入夏は、心の中に双子の兄である逢月舞入冬の人格を宿しているという大きな秘密を抱え、人との接触を避けるように暮らしていた。解離性同一性障害と診断されながらもお互いを大切に想い、静かに暮らしていた舞入夏と舞入冬。しかしある日、養護教諭の神花洸多郎が舞入夏の「幽霊が見える」という能力に気づく。これをきっかけに、舞入夏は「口寄せ」を通じて少しずつ前向きになっていく。

登場人物・キャラクター

逢月 舞入夏 (ほうづき まいか)

楢久西高校1年1組に通う女子生徒。目が隠れそうなほどの長い前髪に、黒髪ボブヘアをしている。非常に内気で、他者とコミュニケーションを取るのが不得手なおとなしい性格。解離性同一性障害を患っており、もうひとつの人格である逢月舞入冬と身体を共有して生活している。舞入夏は月・水・金曜日と日曜日の朝から午後2時までの間身体を使用しているので、それ以外の時間のことは舞入冬から報告を受ける形で補完している。 校内に出没する女子生徒の幽霊の件において、幽霊を見ることができ、「口寄せ」の能力があることが発覚。神花洸多郎の勧めで「口寄せ」を行うようになる。最初こそ「口寄せ」に消極的だったが、次第に周囲のために力を発揮するようになっていく。

逢月 舞入冬 (ほうづき まいと)

逢月舞入夏の、生まれる前に亡くなった双子の兄。舞入夏のもうひとつの人格として、舞入夏と身体を共有して暮らしている。舞入夏の身体は火・木・土曜日と日曜日の夕方以降使用しており、その間のことは睡眠中に見る夢の中で報告しあっているが、なかには舞入夏にあえて報告していない出来事もある。舞入夏とは対照的に元気で喧嘩っ早い性格で、喧嘩もめっぽう強い。 しかし舞入夏と違って「口寄せ」の能力はなく、霊とコミュニケーションをとることはできない。舞入夏を非常に大切に想っている。

十野 空家 (とおの くうや)

楢久西高校に通う、逢月舞入夏のクラスメイトの男子生徒。長めの黒髪の持ち主。舞入夏に密かに想いを寄せていたが、女子生徒の幽霊の件がきっかけで彼女が解離性同一性障害であることを知る。その後は舞入夏、逢月舞入冬の両方と協力し、霊にまつわる事件を解決するようになっていく。中学生時代は野球部でピッチャーを務めており、名門高校からスカウトが来るほど優秀な選手だったが、飛行機事故で家族を亡くし、以降は野球もやめてしまった。 名前の由来は姉の「秋穂(あきほ)」にちなんで「あきや」にしたいという父親の意向が、漢字にだけ残ったため。結果彼は「あきや」とも読める「空家」という名前になった。

日芽 偲乃 (ひめ しの)

楢久西高校に通う、逢月舞入夏のクラスメイトの女子生徒。前髪を真ん中で分け、腰まである赤茶色のストレートロングヘアを低い位置でひとつに結んでいる。長身で大人びていてスタイルが良く、モデルのような美しい容姿の持ち主。父親の仕事の都合で、3歳から10歳まではカナダで過ごしていた。帰国後は十野空家と同じ小学校に転入し、空家とは当時からの知り合い。 同級生にいじめられた際、空家に助けられた経験があり、恩を感じている。実家は日之坂神社で、痴呆気味の祖父に手を焼いていたが、やがてそれが痴呆ではないことを知る。剣道を習っており、インターハイで優秀な成績を残すほどの実力者。

神花 洸多郎 (かんばな こうたろう)

楢久西高校で、養護教諭を務める若い男性。医師免許も所持している。前髪を右寄りの位置で斜めに分け、ストレートヘアを肩の下まで伸ばした中性的な雰囲気の人物。逢月舞入夏同様「口寄せ」の能力を持ち、高校教諭となるまでは口寄屋として活動していた。舞入夏の口寄屋としての天賦の才能を見抜き、彼女に「口寄せ」の仕事を始めるよう勧める。 ある理由から、動物の「口寄せ」はできない。

ジェーン

楢久西高校に、突如養護教諭助手として現れた若い外国人女性。前髪を眉の高さで切り、ストレートロングヘアを胸のあたりまで伸ばしている。長身でスタイルの良い体型と、セクシーな看護服姿が特徴。いつも笑顔を絶やさない割りに極端に無口なため、考えの読めないところがある。常に神花洸多郎と行動する。

椚 アイ (くぬぎ あい)

十野空家と神花洸多郎に会いに楢久西高校にやってきた、口寄屋の若い女性。前髪を目の高さで切り揃えた、紫がかった黒髪のストレートロングヘア。国土交通省の依頼を受け、鷺沢浅人死亡事件について調査している。普段は「ポー」という名前のクマの着ぐるみを着て行動しているが、着ぐるみを脱いで活動する際はSMの女王様のようなボンデージ姿で現れる。

藤原 充 (ふじわら みつる)

椚アイと共に行動する若い男性。左目の下から首にかけて入った大きな傷と、黒ずくめの服装が特徴。アイが口寄屋として担当する事件において、情報収集の役割を務めている。何かと深入りし、報酬外の業務までこなそうとするアイを案じている。しかし、マゾヒストの性癖があるため、アイには肝心のところで頭が上がらない。

祝迫 (いわいさこ)

楢久警察署に勤める若い男性。スポーツ刈りと、がっしりした身体が特徴。神花洸多郎とは知り合いで、職業柄口寄屋の存在や心霊現象による事件のことも知っている。そのため、彼に協力したり、彼を頼って現れることも多い。

女子生徒の幽霊 (じょしせいとのゆうれい)

20年前、楢久西高校で行方不明となった女子生徒。当日は通常通り登校し授業を受けたが、放課後失踪し、校内で消えたのではといわれていた。現在は新校舎1階の廊下に出没し、「口寄せ」の力を持つ逢月舞入夏に何かを伝えようとしている。その際、十野空家の身体を利用し、身体に引っかき傷としてメッセージを書き記す。

仲谷 陽二 (なかや ようじ)

楢久西高校に通う、1年生の男子生徒。前髪を眉上で切った短髪が特徴。校内で他の生徒と諍いが起きた際、ナイフを取り出し騒ぎを起こした。それがきっかけで上級生の仙道から目をつけられ、金銭を要求されるようになってしまう。父親は中央省庁のキャリア官僚で、海外留学中の1歳年上の兄、仲谷光一がいる。家族にまつわる、ある大きな秘密を抱えている。

仲谷 光一 (なかや こういち)

仲谷陽二の1歳年上の兄。現在は海外留学中とされているが、中学時代は不登校だった。父親から、愛情が行き過ぎるあまりの虐待を受けていた疑いがあり、神花洸多郎は、校内に現れた少年の霊と光一になんらかの関係があると捉えている。陽二とは仲が良かったが、父親には陽二よりはるかに溺愛されており、陽二はそれを密かにコンプレックスに感じていた。

仙道 (せんどう)

楢久西高校に通う男子生徒。短く刈った髪と顎ひげ、太い眉が特徴。ナイフを持ち出したことで騒ぎになった仲谷陽二に目をつけ、仲間と共に彼を脅し金銭を巻き上げようとしている。十野空家とは中学校が同じで、野球部の先輩後輩だった。

エッシー

大きな黒い犬の動物霊。神花洸多郎が所持している、チェスのビショップの駒に封じられていた。仲谷陽二の件で神花洸多郎が逢月舞入夏に譲り、以後舞入夏に懐くようになる。生前飼い主には英語でしつけられていたのか、日本語は通じず、舞入夏は英語でコミュニケーションをとっている。「エッシー」は愛称で、本名は別にあるようだが、舞入夏には見当もつかない。

日芽偲乃の祖父 (ひめしののそふ)

日芽偲乃の祖父。日之坂神社の宮司を務めている。白髪に顎ひげを蓄え、太い眉が特徴。3年前に妻を亡くして以来痴呆症気味になっており、家族に心配されている。日之坂神社にエッシーが出没した際も神刀「白申藤四郎」を振り回して家族を混乱させたが、実際は「白申藤四郎」に憑いた幽霊に取り憑かれそうになっている疑いがある。

鷺沢 浅人 (さぎさわ あさと)

十野空家の姉、十野秋穂の元婚約者。3ヵ月前、職場を無断で長期欠勤したのち、自宅で死亡しているのが発見された。椚アイは浅人の死のヒントを得るため、浅人の知人である空家に協力を要請。逢月舞入夏も同行し、彼の死んだマンションに立ち入ることになる。空家の姉と婚約する前は別の女性と結婚していたが、彼女と子供は交通事故で亡くなっている。

喜多村 博久 (きたむら ひろひさ)

恨み廻向師を務める49歳の男性。外出時はどこでも燕尾服を着ているのが特徴。恨み廻向師として活動する際は、本名を知られぬようカタカナで「キタムラ」とだけ名乗っていた。対象を呪殺する際の依代には、小型の野鳥を使う一門の出身。彼自身は特にツバメを好んで使っていた。恨み廻向師としての技量は並であったと言われているが、突如不審な死を遂げた。

倉橋 啓吾 (くらはし けいご)

22歳の無職の男性。細く吊り上がった三白眼が特徴の、不気味な雰囲気の人物。妊娠中と思われる女性、槌田綾乃の共犯者を名乗り、不審に思った逢月舞入冬と交戦後に勝利し、彼を誘拐した。19歳の頃、インターネット上で知り合った2人の女性と集団自殺を図ろうとしたのをきっかけに人生が狂ったと語っている。

メヌゥ

逢月舞入冬がたびたび訪れる公園に現れた、謎の女性。腰のあたりまでの伸ばしっぱなしの髪に、浮浪者のようなみすぼらしい服装をしている。長身で非常に目が大きいのが特徴。時々寝ぼけて他者の夢を自分の夢と勘違いし、勘違いした相手の「夢を掘る」という能力を持っている。夢を掘られた相手は、夢の中で過去の忌まわしい記憶と対峙することになり、負けると忌まわしい記憶に心を染められた、別人になってしまう。 舞入冬のことを「冬」と呼ぶ。

椴之女 一 (とどのめ はじめ)

参議院議員を務める中年の男性。刈り上げて立てた髪と口ひげ、こけた頬が特徴。元口寄屋である神花洸多郎のところへ、動物霊に憑かれた孫娘の狭山菜実の救助を依頼しにやってくる。洸多郎とは同郷だが、椴之女一が神花家のことを一方的に差別して土地から追い出した過去があり、洸多郎は彼を快く思っていない。

狭山 菜実 (さやま なみ)

椴之女一の9歳の孫娘。前髪を目の上で切り、肩につかない長さのボブヘアをしている。ごく普通の少女だったが、ある頃から幼児退行が始まり、次第に幼児というよりも動物化して暴れまわるようになった。動物霊に取り憑かれている疑いがあり、椴之女一ら家族は憑き物落としを神花洸多郎に依頼する。

場所

日之坂神社 (ひのさかじんじゃ)

室町時代に日吉大社を勧請奉祀(かんじょうほうし)して始まった神社で、日芽偲乃の祖父が宮司を務めている。日芽偲乃にとっては実家である。ちなみに日之坂とは近隣の旧い地名で、「穂割(ほのさけ)」が転じたもの。穂割には猿にまつわる民話が伝わっており、日芽偲乃の祖父が所持する神刀「白申藤四郎」の由縁もそのひとつ。

その他キーワード

口寄せ (くちよせ)

死者の発する言葉を、自分の身体を用いて伝える行動のこと。死者と自分の感情を同期させ、死者の発する言葉を引き寄せて実行する。「口寄せ」を生業とするものは口寄屋と呼ばれ、椚アイや、養護教諭になる前の神花洸多郎が該当する。「口寄せ」には死者と生者の感情をひとつにすることが必須とされるが、逢月舞入夏には「口寄せ」の素晴らしい才能があった。

恨み廻向師 (うらみえこうし)

人を呪い殺すことを生業としている者たちのこと。喜多村博久などが該当する。何らかの依代に、呪いの元「御呪子(おのろこ)」を宿し、その依代を用いて殺人を行う。対象の殺害に向かった依代は、呪いの成否を伝えるため、恨み廻向師のもとへ帰る。そのため、依代が戻らない場合は、恨み廻向師は呪いが失敗に終わったことを知る。また、恨み廻向師が殺人を依頼された場合、依頼者の記録は絶対に残さぬよう行動することを鉄則としている。

クレジット

原作

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