元ヤン

元ヤン

かつて地元で名を馳せた元ヤンキーの青年が、仲間の死をきっかけに再び不良の世界に舞い戻り、新たな戦いに身を投じていく。「不良戦国時代」をテーマに掲げたヤンキー漫画で、作品内では地名は一貫して「紀伊」や「薩摩」といった旧地名が使われており、現在の地名は「ワカヤマ」や「カゴシマ」など、片仮名で表記される。「週刊ヤングジャンプ」2015年23号から2018年36・37合併号まで連載の作品。

正式名称
元ヤン
ふりがな
もとやん
作者
ジャンル
グルメ
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あらすじ

第1巻

紀伊(和歌山県)の自動車教習所でバイクの教官を務める矢沢正次は、教習生の大迫和真から伝説のチーム、紀伊浪の現状を尋ねられた。たった七人ながら紀伊で敵なしと恐れられた「紀伊浪」だったが、中心人物だった八坂勝男の失踪により、その伝説を終えていた。そして、紀伊は現在、周辺地域から遠征して来る不良達から搾取されるだけの地域に成り下がり、伊勢の属国となる事を強要されている状態にあった。そう伝えられた正次は、自分はかつて「紀伊浪」のメンバーだったが、現在は紀伊を守るための手立てを持たない事を和真に伝えるのだった。そんな中、正次は勝男が事故で死亡したという事実を知らされ、地元のために再び立ち上がる事を決意する。だが、そんな正次の前に不良達から「死神」と恐れられる警官の村上辰が現れる。辰もまた正次と同じく「紀伊浪」のメンバーだったが、自身が不良だったという過去のため、警察内で浮いた存在となっていた。自分を変えたいと思っていた辰は、その反動から不良少年を目の敵としており、地元のために再び立ち上がった正次と対立する事となる。この事態に、「紀伊浪」の協力を得られないと悟った和真は、宇陀輝基率いる伊勢の軍勢に頭を下げ、属国となる事を受け入れようと考え始める。

第2巻

宇陀輝基率いる伊勢の属国になるための話し合いに出た大迫和真達は、宇陀に属国以下の奴隷となるよう命じられる。和真達はこれに反抗するが、強力な伊勢の不良達の前に追い詰められてしまう。そこへ現れた矢沢正次は、たった一人で数十人もの伊勢の不良達を倒していく。最後に残った宇陀は、そんな正次の強さに「八坂勝男ではないか」と口走る。さらに宇陀は、その場に駆けつけた村上辰と正次に対して、勝男が「山城の乱」と呼ばれる事件により5年服役しており、服役中に出会った四人の不良と共に「平成の五大老」と呼ばれていた事を話す。それに対し正次は、宇陀に勝男は事故で死亡したと告げて、その場をおさめるのだった。翌日、正次は勝男の葬式へと足を運んだ。そこに弔問客として現れた男、村雨アキラは、正次に対して「瑪瑙の刀」を渡すよう迫る。実はアキラは勝男と共に「平成の五大老」と呼ばれた不良の一人であり、水戸をまとめている存在だった。さらに、アキラの望む「瑪瑙の刀」は、「山城の乱」で五大老が分け合った宝物「七献宝樹」の一つで、勝男の遺品でもあった。「七献宝樹」をすべて揃える事が不良戦国時代の覇者の証であると語るアキラに、「瑪瑙の刀」は渡さないと答える正次。一触即発の空気の中、「平成の五大老」の一人、薩摩の陸王郷士が姿を現す。

第3巻

八坂勝男の葬式に現れた水戸の村雨アキラ、薩摩の陸王郷士の狙いが、勝男の持っていた「瑪瑙の刀」である事を知った矢沢正次は、アキラや郷士に戦いを挑む。そこへ元「紀伊浪」のメンバーだった真木聖も現れたため、村雨と郷士は一時撤退する。正次が勝男の遺志を継いで「紀伊浪」を復活させようとしている事を知った聖は、正次への協力を約束、まずは水戸に攻め込んで「七献宝樹」の一つを奪取する事を提案する。さらに聖は、自分達と同じく「紀伊浪」のメンバーだった安藤秀政が関東地方で働いているため、秀政と共に水戸へ行ってみてはどうかと話す。それを受けて正次は村上辰や聖、そしてなぜか同行する事になった宇陀輝基と共に水戸へと向かう。その途中で秀政と再会した正次達だったが、その秀政は「振り込め詐欺」を生業とする犯罪者集団の一員となってしまっていた。正次達と再会した事で、自分を見失っていた事に気づいた秀政は、犯罪者集団と決別、改めて正次達の仲間として共に水戸を目指すのだった。

第4巻

水戸に乗り込んだ矢沢正次ら「紀伊浪」のメンバーだったが、着いて間もなく正次は真木聖以外のメンバーとはぐれてしまう。はぐれていても水戸の頂点に立つ村雨アキラを目指して行けば、すぐに出会えるだろうと話す聖は、水戸の不良にケンカをふっかけ、「水戸で一番強い男」のもとへと案内させる。聖と共にその男の場所へやって来た正次だったが、そこで待っていたのはアキラではなく、本郷厚志という男だった。事情を知らないままにぶつかり合う厚志と正次だが、共にアキラを敵としている事に気づいた聖は、二人を制止して互いに事情を説明する事を提案する。その頃、正次達とはぐれていた村上辰達もまた「水戸で一番強い男」を探して、とあるボーリング場へとやって来た。そこで水戸の軍勢に囲まれるが、辛うじて脱出に成功した辰と安藤秀政は、なんとか正次達と合流する。その正次は水戸の実力者、厚志のもとに身を寄せていた。厚志は正次達を前に、かつてアキラとは小学校の頃からの親友であり、共に水戸の将来を背負うと誓い合った仲だったと話す。

第5巻

水戸の村雨アキラは、ボーリング場で取り逃がした「紀伊浪」の村上辰安藤秀政の行方を追っていた。ボーリング場で逃げ遅れた宇陀輝基は、保身のために紀伊の「七献宝樹」である「瑪瑙の刀」を差し出して、自分は助かろうとする。アキラは、その宇陀を人質として廃工場に矢沢正次ら「紀伊浪」を呼び出し、数百人もの水戸の不良で正次達を包囲する。多勢に無勢で苦戦を強いられる正次達だったが、真木聖の機転によって形成は逆転、「瑪瑙の刀」も奪い返す事に成功する。逆襲に転じようとするアキラ達の前に、今度はかつての水戸の頭、本郷厚志が現れる。水戸の不良達が見守る中、そのままアキラとのタイマン勝負に臨む厚志。互角の戦いの末にアキラは厚志に勝利するが、アキラは続いて「紀伊浪」のメンバーとの代表戦を提案する。厚志とアキラの勝負を見届けた正次は、紀伊の代表としてこれを受けて立ち、アキラを倒す。自らの敗北を認めたアキラは水戸の「七献宝樹」である「瑠璃の行縢」を正次に渡すのだった。水戸を制した正次達は紀伊への帰路につくが、水戸が敗れた情報はすでに薩摩の陸王郷士の耳に届いていた。

第6巻

紀伊に帰って来た矢沢正次は、教習所の教官としての日常に戻っていた。そんな矢先、伊武サキコという女性がバイクの免許の教習にやって来る。彼女は高校時代に正次と付き合っていたが、今では疎遠となっていた。久しぶりの再会を喜ぶ正次だったが、サキコの体に殴られたような痣(あざ)ができている事に気づき、事情を尋ねる。実はサキコは現在ある議員の愛人としてマンションで囲われているが、この痣はその議員のDVによるものだった。怒った正次はそのマンションへ向かうが、そこで待っていたのはその議員の用心棒の畑中元だった。実は元もまた正次と同じく「紀伊浪」のメンバーであり、「紀伊浪」解散後は自衛隊に所属していた。正次から事情を聞き、自分が「正義」と信じていた議員が、実は女性に暴力を働くような男だったという事実を知った元は、用心棒を辞める。そして、現在正次が八坂勝男の遺志を継いで、不良戦国時代に名乗りを上げている事を知ると、正次達にとっての次の標的である薩摩へ今すぐ行く事を提案する。真木聖を加えて、ろくに準備もしないまま薩摩へと乗り込んだ正次達だったが、彼らが薩摩に入った情報はすぐに陸王郷士に届けられていた。郷士は、薩摩からの先鋒として郡司利郎という男を差し向ける。

第7巻

薩摩の先鋒として名乗りを上げた郡司利郎は、陸王郷士に心酔する薩摩の不良の一人だった。その相手となった真木聖は、郡司の想像以上の強さに苦戦するが、辛くも勝利する。郡司は敗北を認め次鋒の影山巽のもとへと案内、棒術を得意とする影山の相手を矢沢正次が引き受ける。正次自身は棒術の経験はないものの、剣道が得意だった八坂勝男との経験を思い出し、影山との激闘を制する。影山が案内した次の相手は郷士の弟である陸王強平だった。かつて自衛隊に所属していた強平は、「紀伊浪」の畑中元と同じ部隊であり、強靭な体格と腕力を持つ元の事を、当時はつねに意識していたが、ついに直接戦う事がないまま元が除隊してしまっていた。元といつか戦いたいという気持ちを抱えていた強平と元との対決が始まった。

第8巻

畑中元陸王強平との戦いは、強平の優勢で進む。強平は、兄である陸王郷士に認められたいという気持ちから、自衛隊で自分自身を磨き、災害救助を通して「真の強さとは何か」という境地に達したのだという。自衛隊時代とは別人のような強さを見せる強平に苦戦する元だが、自分もまた「紀伊浪」の仲間のおかげで強くなれたという事を思い出し、その拳で強平を倒す。元に敗れた強平は、潔く敗北を認めると、次の対戦相手のもとに矢沢正次達を案内するが、郷士が紀伊の人間に殺されたという知らせが入る。郷士の死体には「紀伊浪」の旗がかけられており、郷士の弟である陸王羅門は、紀伊から来た正次達の仕業ではないかと疑う。配下の犬塚猛に犯人探しを指示すると共に、正次達にも身の潔白を証明するように要求する羅門は、郷士亡きあとの薩摩の動揺を鎮めるために奔走する。その頃薩摩へと入った村上辰ら「紀伊浪」のメンバーは正次達と合流、郷士殺害の犯人探しを始めるが、犬塚が羅門の指示に反して薩摩の不良達を扇動したため、正次達はあっという間に包囲されてしまう。さらに、その混乱に乗じて薩摩の「七献宝樹」である「珊瑚の鎧」が盗まれてしまうが、その首謀者とは「紀伊浪」のメンバーだった日野銀次だった。

第9巻

薩摩の陸王郷士の殺害にかかわり、犬塚猛と共に姿を消した日野銀次の行方を追う矢沢正次は、郷士の弟である陸王羅門の協力もあり、駅で銀次を追い詰める。郷士の死について問いただす正次だったが、銀次はそれには答えずに、そのまま新幹線に乗って再び正次達の前から姿を消す。あとに残った犬塚を尋問する羅門だったが、郷士の死の真相は結局わからずじまいだった。そこへ正次に水戸の村雨アキラから連絡が入る。アキラは郷士が死んだ理由について何かを知っており、その情報を実際に薩摩に行って直接正次達に話そうとするが、その途中で何者かに襲撃され、意識不明の重体となってしまう。郷士に続いてアキラが襲われた事から、正次は「平成の五大老」が狙われていると考え、残る「平成の五大老」である土佐の真田虎雄を守ろうと考えるが、警官である村上辰は自分達はもうかつてのような不良少年ではなく、大人なのだと、それを制止する。そして郷士を殺害したのが銀次であってもなくても、社会と折り合いをつけて生きていかなかければならない立場である事を正次達に伝える。紀伊に戻る帰路につく正次達だったが、正次だけはほかのメンバー達と離れ、一人で土佐へと向かう。

第10巻

土佐に単身やって来た矢沢正次は、「平成の五大老」の一人である真田虎雄を探すが、偶然立ち寄ったバーで、虎雄は既に死亡していると聞かされる。しかし、土佐の町はそんな虎雄を、仲間に引き入れようとする不良達であふれていた。正次は虎雄の恋人だったという梶田葵から、ほとぼりが冷めるまで虎雄のふりをするように頼まれる。だが葵の目的は、虎雄と同じ「平成の五大老」である八坂勝男陸王郷士が死亡した事を受けて、虎雄もまた殺されるのではないかとの不安から、正次をニセモノに仕立て上げたのだった。正次はそんな葵の気持ちを知らないまま、虎雄として土佐の不良達の抗争に巻き込まれるが、そこへ本物の虎雄が現れる。勝男と郷士を守る事ができなかった、と正次に悪態を突く虎雄だったが、正次と拳を重ねる事で、彼が覚悟を持って土佐に来ているという事を見抜くと、一転して和解する。だが、土佐の不良チームの一つ「キマイラ」を束ねる東八州だけはそれを認めず、配下の馬場時臣に命じて虎雄と正次を倒すように煽る。腕力では八州に勝てる時臣だったが、八州の持つ金の前に従うしかないという事を自覚し、虎雄と正次に戦いを挑むのだった。

第11巻

土佐の不良チーム「キマイラ」の特攻隊長、馬場時臣は、矢沢正次もろとも真田虎雄を倒そうとするが、正次の気迫の前に敗れ去る。土佐の海岸に正次を連れ出した虎雄は、かつて自身が服役するきっかけとなった事件「山城の乱」について語り始める。虎雄は中学時代に才原美智夫という男によって土佐から拉致され、山城のとある民家に連れ去られ、そこで陸王郷士村雨アキラ達「平成の五大老」と出会ったのだという。彼らはそれぞれ紀伊や水戸等日本各地から集められた不良達であり、才原は彼ら不良の力で日本を変えていこうと考えていた。日本を変えるほどの力を持った不良は従来の常識を超えた「超不良」という、才原の構想にすぐに従ったのが、紀伊から来た男だったと話す虎雄。だが、その紀伊から来た男とは八坂勝男ではなく、「竜崎」と名乗る男だった。そして、その竜崎こそがかつて正次達と共に「紀伊浪」のメンバーだった日野銀次だった。その銀次は正次と虎雄との話に割って入り、正次の目の前で虎雄を叩きのめす。かつてとは別人のような銀次の強さに驚きつつも、正次は銀次と相対する。

第12巻

矢沢正次を前に日野銀次は自身の生い立ちを語る。それは銀次が幼い頃両親に捨てられ施設に入れられた頃に、その施設で出会った金太郎という少年の話だった。職員による虐待が横行するその施設で、金太郎と銀次は日常的な暴力を受けていたが、それでも二人は反抗する事をやめなかった。しかし、施設の理事長による性的暴行を受けそうになった銀次を救うために、金太郎は理事長によって殺害されてしまう。時は流れて八坂勝男と出会った銀次は「紀伊浪」に加入するが、そこで出会った正次にかつての金太郎の姿を重ねるようになった。話を聞いた正次は、自身がこの5年のあいだ元ヤンとして過ごしていたのに対し、銀次はずっと「不良」として牙を磨いてきた事を知る。それが現在の自分と銀次との差だという事に気づいた正次は、渾身の力を込めたパンチを繰り出すが、銀次には及ばず倒される。

失意の正次は、土佐から浪速に渡るが、どうしても地元の紀伊に戻る事はできずにいた。同じ頃、紀伊に銀次が姿を現し、村上辰ら「紀伊浪」のメンバーの前で過去に何があったのかを話し始める。彼らが高校卒業を控えていた頃、銀次は自身の不良としての人生が終わりを告げようとしている事に焦りを感じていた。折しも全国の不良達を集めていた才原美智夫が勝男に接触する。「超不良」の構想を勝男に話しているところを偶然にも耳にした銀次は、ヤクザの金を盗み、その金と共に才原に自分を売り込む。こうして銀次は「竜崎秀久」を名乗り、才原と共に紀伊を去っていったのだった。

登場人物・キャラクター

矢沢 正次 (やざわ しょうじ)

かつての「紀伊浪」の「七番」。現在は自動車教習所の教官としてバイクを指導している男性。かつての仲間だった八坂勝男の死を受けて、勝男の「不良の世界で天下を取る」という夢を受け継ぐ事を決意し、「不良戦国時代」に身を投じる。勝男の結成した「紀伊浪」の中では最も遅れて加入したが、ケンカの実力は高く、一撃で相手の急所を狙うテクニックを持っている。 矢沢正次自身がかつてのような不良少年ではなく、「元ヤン」であるという事を自覚しつつも、そんな自分との折り合いをつけるために、日本各地の不良達と戦い、絆を深めていく。

八坂 勝男 (やさか かつお)

かつての紀伊浪の「一番」。創始者だった男性。物語開始時点の5年前に突如として姿を消し、それと共に「紀伊浪」も解散していた。その後、地元の紀伊に戻って来ていたが、バイクの事故で死亡する。失踪していた5年間は「山城の乱」と呼ばれる事件によって服役していたが、服役中に知り合ったほかの不良達と平成の五大老と呼ばれるようになり、不良の世界では伝説的存在となる。 地元である紀伊を誰よりも愛しており、日本の単なる地域でしかない紀伊を、自身の力で改革していく事を目指していた。

村上 辰 (むらかみ たつ)

かつての「紀伊浪」の「二番」。八坂勝男と共に「紀伊浪」を立ち上げた男性。現在は警察官として働いており、不良少年に対する強引な取り締まりをする事から、「死神」として恐れられている。自らも「紀伊浪」というチームに所属していた不良少年だった事から、警察内部でも風当たりが強く、こうした現状から、不良少年達に対しても強硬な姿勢を取っていた。 矢沢正次と再会した事で「紀伊浪」だった自身の過去と向き合うようになり、正次と共に水戸や薩摩といった他国との戦いに身を投じていく。

真木 聖 (まき ひじり)

かつての「紀伊浪」の「六番」。「紀伊浪」への加入は矢沢正次と並んで最も遅かった男性。モデルや芸能人かと見紛うほどの整った顔立ちと長身の持ち主だが、ケンカの際には相手に対していっさいの容赦をしない。また、戦う前に作戦を綿密に立てる等、「紀伊浪」の頭脳としての側面もあり、策士として「紀伊浪」メンバーからも信頼されている。 「紀伊浪」解散後は地元を離れて生活していたためか、メンバーの中で唯一標準語で会話をする。幼い頃から両親から虐待を受けて育った経緯がある。

安藤 秀政 (あんどう ひでまさ)

かつての「紀伊浪」の「五番」。「紀伊浪」解散後は関東地方で営業マンとして生活していた男性。地元を離れて、誰も自分の事を知らない場所で勝負をしたいという理由から、矢沢正次ら「紀伊浪」のメンバーにも連絡先を教えていなかった。しかし、自分が働いていた会社が、振り込め詐欺や麻薬密売を生業としていた犯罪集団だった事に気づいた矢先、偶然にも水戸と戦うために関東地方にやって来た正次達と再会した事から、再び紀伊へと戻る決意をする。

畑中 元 (はたなか げん)

かつての「紀伊浪」の「四番」。政治家の用心棒として働いている男性。正義感の強い性格で、「紀伊浪」解散後は自衛隊に所属していた。自分の思った事をうまく言葉にして伝える事ができないため、学生時代はさまざまな人達に利用されながら生きてきた。そんな頃に八坂勝男と出会い、彼の強烈な生き方に共感して「紀伊浪」に加入した経緯がある。 普段は口下手ながら、ケンカになると一気に饒舌になるという特徴があり、「悪は許さない」という信念の持ち主でもある。

日野 銀次 (ひの ぎんじ)

かつての「紀伊浪」の「三番」。「紀伊浪」解散後は長く行方がわからない状態だった男性。「平成の五大老」の命が狙われていると考えた矢沢正次が、土佐に渡った際に再会した。正次達と共に「紀伊浪」だった当時は、チームを大きくする事を考える血の気の多い性格だったが、ケンカの実力では正次や八坂勝男には遠く及ばなかった。 しかし、土佐で正次と再会した時には、かつてとは別人のような強さを身につけており、「平成の五大老」の一人である真田虎雄を一方的に叩きのめすほどの力を見せる。「竜崎秀久」を名乗り「山城の乱」の要因を作り出した人物。

村雨 アキラ (むらさめ あきら)

「平成の五大老」の一人。水戸の頭を張る男性。水戸では不良の力を利用したさまざまな事業を展開しており、若くして水戸の不良の頂点に君臨している。小学生時代に建設業を営む父親の仕事の都合で、水戸に転校して来た過去があり、その時に知り合った本郷厚志と共に、将来の水戸を背負っていこうと決意した。その後は厚志と並んで水戸の不良達を引っ張る存在だったが、「山城の乱」での服役後は厚志と敵対し、短い期間で水戸の不良達を掌握するまでの存在となる。 つねに冷静沈着で、勝利のためなら卑怯な手段も辞さないが、その根底にあるのは「水戸を日本一の強国とする」という信念であり、水戸の人間は絶対に見捨てないという信条を持っている。

本郷 厚志 (ほんごう あつし)

かつて水戸の頭だった男性。村雨アキラとは共に水戸の不良達を率いる存在だったが、「山城の乱」によって服役し、その後出所して来たアキラによって頭の地位を追われる。水戸に攻め込んで来た矢沢正次と交戦するが、共にアキラを狙う立場にあるという事から正次達と手を組む。水戸の不良達は誰でも一度は本郷厚志に世話になったという経験があり、アキラの下にいる者でも、今なお厚志を慕っているという者は多い。 アキラに対しては共に水戸を背負っていこうと誓い合った仲であり、友情を信じたかった事から決して手を出さずにいたが、正次達との出会いをきっかけに、アキラと対決する道を選ぶ。

宇陀 輝基 (うだ てるもと)

紀伊の隣国である伊勢で「伊勢酔象」というチームを率いていた男性。「不良戦国時代」にあって小国である伊勢では天下を取る事ができないため、紀伊を属国にしようと画策していた。大迫和真達紀伊の現役の不良を従えようとするが、矢沢正次によってチームを壊滅させられる。その後は伊勢から紀伊に引っ越して、紀伊の不良として働くようになる。 ケンカの実力はそれなりに高いものの、自分の保身を第一に考える卑怯な性格。

陸王 郷士 (りくおう ごうし)

「平成の五大老」の一人。薩摩の不良達を束ねる男性。薩摩の英雄である西郷隆盛に心酔しており、その銅像に手を合わせるのが毎朝の日課となっている。同じ「平成の五大老」だった八坂勝男に対しては一目置いていたようで、勝男の葬儀に出席した際には哀悼の意を表していた。陸王羅門と陸王強平という二人の弟がいる。 義理堅い性格で、配下である薩摩の不良達に対しても、ケンカはあくまでも正々堂々と戦う事を指示し、闇討ち等の卑怯な行動を嫌う。そのため薩摩の不良達にとってはカリスマ的な存在だったが、紀伊との抗争中に何者かによって殺害される。

陸王 羅門 (りくおう らもん)

陸王郷士の弟で、陸王強平の兄。薩摩では郷士に次ぐ実力者。薩摩の不良達の中では郷士を補佐する立場にあり、幼い頃から郷士を見て育った事から、誰よりも郷士の事を理解している男性。紀伊との抗争では、本来なら陸王羅門も戦うはずだったが、兄の郷士が何者かによって殺害されたため、薩摩の頭として矢沢正次達と共に郷士殺しの犯人探しをする事になる。

陸王 強平 (りくおう きょうへい)

陸王郷士と陸王羅門の弟。薩摩では手のつけられない暴れん坊であり、郷士によって強制的に自衛隊に入隊させられる。陸王強平自身は義理を重んじる郷士のやり方に反発していたため、兄を見返すために自衛隊で力をつけていく。自衛隊で出会った畑中元によって真の強さとは何かという事に気づき、自衛隊での災害救助を経て人間として大きな成長を遂げる。 紀伊との抗争では薩摩の中堅として登場し、自衛隊時代からの因縁のある元と死闘を繰り広げた。

影山 巽 (かげやま たつみ)

薩摩の不良達の次鋒として矢沢正次と戦った男性。棒術を得意とし、自身は武芸者であると語る。薩摩の頭である陸王郷士よりも年齢を重ねているが、自身が従うと決めた相手には年齢は関係ないと語る等、一本筋の通った人物。正次との対決では棒術を駆使して追い詰めるものの、紙一重の差で敗れる。その後は武芸者として潔く敗北を認め、中堅である陸王強平のいる場所へと正次達を案内した。

郡司 利郎 (ぐんじ としろう)

薩摩の不良達の先鋒として真木聖と戦った男性。もともとは陸王郷士と敵対するヤクザによって雇われた鉄砲玉であり、郷士の命を狙っていたが、郷士の人柄に惚れ込んで自ら舎弟となった経緯がある。薩摩に乗り込んで来た正次達「紀伊浪」のメンバーを郷士の指示で観光案内したあと、聖とのタイマン勝負に臨む。

犬塚 猛 (いぬづか たける)

薩摩の不良達の幹部の男性。紀伊との抗争では、本来なら陸王強平の次に戦う順番だったが、陸王郷士が殺害されたために、陸王羅門を補佐して郷士殺害の犯人探しを行う事となる。しかし、実際には郷士や彼の率いる薩摩の不良達のあり方に対して不満を抱いており、日野銀次と結託して、薩摩の「七献宝樹」である「珊瑚の鎧」を盗み出す。 薩摩を脱出しようとするが、銀次によって裏切られたため、薩摩の不良達によって包囲される。

才原 美智夫 (さいばら みちお)

日本各地で陸王郷士や村雨アキラ、のちに「平成の五大老」と呼ばれる男達を集めた男性。片目を失っており、つねにサングラスをかけている。日本という国家そのものを変えていく事ができる存在、「超不良」を育てるという構想を抱いており、そのために日本各地から有望な不良をスカウトしていた。才原美智夫の構想に最も関心を抱いたのが、竜崎秀久と名乗っていた日野銀次だった。

真田 虎雄 (さなだ とらお)

「平成の五大老」の一人で最年少の男性。「平成の五大老」に加入した当時はまだ中学生だったが、ケンカの強さではほかの「平成の五大老」にも決して引けをとらなかった。地元の土佐では、真田虎雄の名前は不良達にとって伝説ともいえる存在となっており、「山城の乱」で服役していた虎雄が出所して来たあとは、土佐の不良達のあいだで争奪戦が展開されたほど。 ジャッキー・チェンの映画が好きで、ケンカではその映画から影響を受けたスピーディーな動きで相手を翻弄する。

梶田 葵 (かじた あおい)

真田虎雄の恋人だった女性。土佐にやって来た矢沢正次が偶然立ち寄ったバーで出会い、その直後に虎雄を仲間に引き入れようとする馬場時臣達の襲撃を正次に撃退してもらった事から、正次と行動を共にするようになる。土佐でバーを経営しながら「山城の乱」で服役していた虎雄の帰りを待っていた。八坂勝男、陸王郷士ら「平成の五大老」が相次いで命を落としている事を知り、虎雄の命を守るために正次に虎雄のふりをしてもらうように頼む。

馬場 時臣 (ばば ときおみ)

土佐の暴走族「キマイラ」の特攻隊長の男性。真田虎雄とは直接の面識はなかったが、その伝説的な活躍を耳にして、一度会ってみたいと思っていた。虎雄に対してはあこがれに近い感情を抱いていたが、実際に虎雄と会った時には、自身は東八州に金で雇われているも同然の状態だった。その不甲斐なさを虎雄にぶつけるが、その場に居合わせた矢沢正次に説得され、八州と決別する。

東 八州 (あずま はっしゅう)

土佐の暴走族「キマイラ」の総長の男性。総長を務めているが、その座は腕力で手に入れたものではなく、会社を経営する実家の金の力で手に入れたもの。ケンカの腕前はかなり低く、学生時代にはいじめられていた過去もあったが、自身の金の力を利用して不良の世界でのし上がっていく事を決意する。語尾に「~ダス」と付ける特徴的なしゃべり方をする。 「平成の五大老」である真田虎雄を自分のチームに引き入れよう画策し、特攻隊長の馬場時臣をあおる。

大迫 和真 (おおさこ かずま)

紀伊の高校に通う男子高校生。バイクの免許を取得するために訪れた教習所で矢沢正次と出会う。紀伊全体の不良の強さの低下を嘆いており、それが「紀伊浪」が解散した事が影響していると考えていた。正次の事も、元「紀伊浪」でありながら牙を抜かれてしまった「元ヤン」に成り下がったと思っていたが、宇陀輝基率いる伊勢の不良達を正次が倒す様子を見て考えを改める。 その後は「不良戦国時代」で天下取りを目指す正次を地元で応援する事となる。

伊武 サキコ (いぶ さきこ)

矢沢正次と高校時代に付き合っていた女性。バイクの免許を取得するために訪れた教習所で正次と再会する。水商売で生計を立てていたが、ある議員によって愛人としてマンションに囲われている。その議員にとって性欲のはけ口にされていただけと気づいた伊武サキコは正次に助けを求め、その議員の用心棒をしていた畑中元と正次が再会するきっかけを作った。

土丸 (つちまる)

「平成の五大老」の一人とされる男性。尾張の不良達の頭。同じ「平成の五大老」である村雨アキラや陸王郷士とは異なり、八坂勝男の葬儀に参列せず、「不良戦国時代」でも目立った動きを見せていない。

金太郎 (きんたろう)

施設で日野銀次と同室だった少年。年齢は銀次よりも一つ年上で、自身の名前が「金太郎」という事で、名前が似ている銀次の事を気にかけていた。施設に入れられている子供達の中では最もケンカが強く、銀次にとっては兄のような存在であると共に、生きる指標ともなっていた。理事長の性的暴行から銀次を守ろうとして命を落とす。

集団・組織

紀伊浪 (きいろ)

八坂勝男が矢沢正次ら六人の不良仲間と結成したチーム。警察や自治体に所属せずに、地元のトラブルを自分達の力で解決していく事を目指し、どこにも属さないという意味の「浪」を付けたのがチーム名の由来。わずか七人という人数ながら少数精鋭であり、地元の紀伊では無敵のチームだった。物語開始時点より5年前に勝男が失踪した事で解散したが、今なお多くの不良達のあいだで伝説となっており、勝男の死を受けて正次が復活させた。

平成の五大老 (へいせいのごたいろう)

不良の力で現役ヤクザを壊滅させた「山城の乱」で伝説となった五人の不良達。紀伊の八坂勝男、水戸の村雨アキラ、薩摩の陸王郷士、土佐の真田虎雄、尾張の土丸の五人。「山城の乱」で服役していた彼らが出所し、それぞれの地元に戻って来た事で、「不良戦国時代」が幕を開けたといわれている。

イベント・出来事

山城の乱 (やましろのらん)

日本有数のヤクザ組織、双頭会に、竜崎秀久という不良が乗り込んで壊滅させた事件。その際に竜崎と共に戦った五人の不良達は、のちに「平成の五大老」と呼ばれる事となり、この事件がきっかけで、彼らは5年のあいだ服役する事となった。

その他キーワード

七献宝樹 (しちこんほうじゅ)

「山城の乱」で「平成の五大老」が持ち出した宝物。かつて室町時代に朝廷への貢物として使わていた7種類の宝物で、「山城の乱」で壊滅させられたヤクザの双頭会が所有していた。「山城の乱」のあとで「平成の五大老」がそれぞれ分け合っており、これをすべて揃えた者が「不良戦国時代」の覇者となるといわれている。現在のところ判明している七献宝樹は、紀伊の「瑪瑙の刀」、水戸の「瑠璃の行縢」、薩摩の「珊瑚の鎧」の三つ。

超不良 (すーぱーやんきー)

従来の不良の常識を超えた、日本そのものを変えていく事ができるほどの力を持った不良の事。才原美智夫が提唱しており、才原は自身の構想を実現するため、超不良になれる素質を持つ村雨アキラや陸王郷士といった不良達を、日本各地から集めていた。彼らと同じく才原に連れて来られた日野銀次はその構想に賛同し、「超不良」として完成する事となった。

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