八百比丘尼

八百比丘尼

人魚の肉を食べて800年生き続けたという八百比丘尼の伝説をモチーフにした、ファンタジー・ホラー。東京に来れば何かいいことがあると思っていたのに、BFはおろか、友達もできない。お金もない。さえない女子高生・江崎の内心は、常に不満だらけ。そんな江崎に、絶世の美女・八重子が「友達になろう」と近づいてくる。何かがおかしいと思いながらも、江崎は抗(あらが)えない。実は八重子は人間ではなく、江崎は格好の獲物なのだった。要求は多いのに自分からは動かず、誰かから働きかけられるのを待っているだけの人間に対する、皮肉に満ちた短編。「月刊ASUKA」誌で1987年12月号に掲載された。

正式名称
八百比丘尼
ふりがな
やおびくに
作者
ジャンル
和風ファンタジー
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概要・あらすじ

顔も性格も悪いと自認している女子高生の江崎は、全てにうんざりしている。男と服と化粧品の話しかしない同級生、人やぜいたく品があふれかえっている街、BFはおろか友達もいない自分。人混みの中を歩いていると、「もうたまんない!」と叫びたい衝動に駆られる。そんな江崎に、クラスメイトの八重子が近づいてきて、「あなたのような人を探していたの」と言う。

美しい八重子に誘われるまま、江崎は海辺にある別荘に遊びに行く。そこには、八重子にそっくりの美しい母と大叔母がいた。まるで映画のような世界に、江崎は有頂天になるが、体調がどんどん悪化していく。死にそうな苦しみの中で、江崎は大叔母たちが裸で交わっているところを見てしまう。だがそれは、交わりではなく、脱皮だった。

八重子たちは、300年に一度、人の精を栄養にして単性生殖で分裂していく生物なのだという。

登場人物・キャラクター

江崎 (えざき)

1人暮らしの女子高生。父親の再婚を機に、上京して私立の女子校に入学して2年。最初は寮に入っていたが、3か月で出てしまい、西陽の当たる四畳半のアパートから通学している。周囲に溶け込むことができず、暗い性格で、友達が1人もいない。ブスではないが、美人でもない。部活もとっくにやめて、進学をするかどうかも決めかねている。地味で目立たない存在。 だが、自分に対して優しくない周囲に、内心では常に怒っている。

八重子 (やえこ)

江崎の同級生。絶世の美女で、ある日突然、江崎の前に現れ、しつこくつきまとい始める。しかし、クラスの誰も八重子の名前を知らない。江崎に「あなたは一人ぼっちなの?」と言い、そうだと聞くと、海辺の別荘に遊びに来ないかと誘う。髪形は、カールのかかったセミロング。

八重子の母 (やえこのはは)

八重子の母親。遊びに行った別荘で、八重子から紹介される。髪形以外は八重子とそっくりの外見で、若くて美しい。髪を結い上げている。料理がうまい。

叔母 (おば)

八重子の母の叔母。八重子にとっては大叔母。八重子と母にそっくりで、3人とも同じ顔をしている。大叔母とはいっても、八重子の母と同じ年で、生まれた日も同じなのだという。常にパーティードレスを着ている。

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