凍牌 コールドガール

凍牌 コールドガール

志名坂高次の『凍牌』シリーズ第4弾。前作『凍牌 ~ミナゴロシ篇~』で主人公だったKに代わり、その数年後を舞台にした本作『凍牌 コールドガール』は、Kの妹で高校生となったアミナの視点で物語が描かれるバイオレンス・サスペンス。秋田書店「ヤングチャンピオン」2021年20号から掲載の作品。

正式名称
凍牌 コールドガール
ふりがな
とうはい こーるどがーる
作者
ジャンル
麻雀
レーベル
ヤングチャンピオン・コミックス(秋田書店)
巻数
既刊6巻
関連商品
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あらすじ

アミナ

ある日、ボコボコにされて歩道の隅に捨てられていた川島学神崎陣は、偶然通りがかったアミナに声をかけられる。闇医者を紹介するというアミナの申し出を陣は断るも、裏社会の雰囲気を感じ取った学はアミナを呼び止め、麻雀(マージャン)の代打ちを紹介してほしいと助けを求める。というのも二人は、陣が落としたスマホを拾った相手から、スマホを返してもらいたいなら、30万円払うか学と陣のカラミで地下ビデオに出演するよう要求されていた。そこで二人は麻雀で稼ぐことにしたが、学と陣がコンビ打ちの練習にガラの悪い雀(ジャンそう)荘に入ったところイカサマがバレてしまい、ボコボコにされたのだ。高校生の二人が払える謝礼は10万円が精一杯だったが、彼らの話を聞いたアミナはこの申し出を快諾する。だが勝負当日、半荘(ハンチョン)1回を終えても代打ちは来なかった。勝負は半荘2回目に入るが、1回目にトップを取られた学と陣は大ピンチに陥っていた。アミナと連絡が取れずに狼狽(うろた)える学を、陣は当初の予定どおりだと学を鼓舞する。そして南3局を迎え、3万2000点が必要な局面で雀荘の扉が開き、ようやくアミナが到着して学に代わって卓に着く。すると、対戦相手の一人がおもむろにアミナの胸をつかみ、交代を認める代わりに負けたらアミナにも地下ビデオの出演を強要する。するとアミナは、条件を飲む代わりに、自分が勝ったらスマホを返すほかに100万円支払うよう新たな条件をつける。賭代(かけだい)が大きくなり、恐怖心を抱いた陣はアミナを止めようとするが、当のアミナは満面の笑みを浮かべて「アミナにお任せ」と言い放ち、南3局が開始される。

元代打ち

金井タカシを麻雀同好会から追い出したアミナ川島学神崎陣増田夏目は打ち上げのあと、里中美雪の父親が経営する雀荘に遊びに来ていた。美雪も加わり楽しく麻雀をする面々だったが、渡されたおしぼりを見てアミナに一抹の不安がよぎる。この店が暴力団をバックにつけずに営業していることに気づいたのだ。アミナの不安が的中し、田伏らヤクザがやって来る。乗り込んできたヤクザたちはほかの客を追い出し、店内に残るのはアミナたちだけとなる。ヤクザが里中父に割高のおしぼりの契約をせまる中、アミナは美雪に用心棒代と割り切っておしぼりのレンタル契約をするのが一番無難だと説得する。そんな中、アミナはこれまでも田伏組以外のヤクザもやって来ていたはずだが、その時はどう対処していたのかと疑問を抱く。ヤクザとの話が終わった里中父は美雪を呼び、卓に座らせる。そして2対2の全荘麻雀で、田伏組が負けたら月額100円でおしぼりを契約し、里中組が負けたら白紙の契約書にサインをするという勝負が開始される。田伏は里中父がかつて「攻め中」と呼ばれていた代打ち時代を知っていた。そして田伏は、自らを元桜輪会一軍のメンバーであると自己紹介し、元代打ち同士の戦いが始まる。まずは里中父の攻めが冴(さ)え、満貫を上がる。脇で見ていたアミナも、元代打ちである里中父の麻雀を見て安心感を覚える。次いでの東2局、里中父とヤクザの2軒リーチ。すると田伏は、美雪に白紙の契約書にサインするということはAVに出演したり、風俗で働くことにもなると説明を始める。里中父は動揺する美雪を落ち着かせようと言葉をかけると、美雪はヤクザのリーチを掻(か)い潜(くぐ)り、里中父にのみアタる牌(パイ)を捨て、里中父が上がる。合計点数の勝負なので、チームでの点棒移動は勝負には関係なく、ピンポイントで当たり牌を切った美雪はピンチを乗り切ったことに安堵(あんど)し、美雪の鋭い読みに学たちは驚愕する。しかし、田伏からロンの声が上がりダブロンとなる。田伏の手牌(てはい)は明らかに美雪を狙い打ったもので美雪の表情が曇る。それからの場は美雪は守備に徹し、里中父が攻めるというスタイルとなるが、戦っているのは里中父だけという実質2対1の状況となり、徐々に差をつけられ始める。そんな中、アミナだけは田伏組がさらに「何か」を仕掛けてくる気配を感じていた。そして、ついに里中父が田伏に倍満を放銃してしまう。しかも上がった田伏の手牌には5筒が5枚使われており、5索は卓上に6枚見えてるという通常ではありえない明らかなイカサマの上がりだった。

登場人物・キャラクター

アミナ

かつて人身売買の「商品」として日本に密入国した国籍不明の少女。金髪のショートヘアで褐色の肌を持つ。桜輪会最高顧問を務める兄のKの尽力によって戸籍を取得し、現在は「榊原亜美菜」として生活を送っている。過去には拷問を受けたりロシアンルーレットを強要されたりと、壮絶な経験によって異常なまでに肝が据わっており、命を軽く扱う節がある。また、Kの人質となった際に足の指を凍傷で切断している。当初は拳銃を護身用に持ち歩いていたが、すぐに人を撃ってしまうため柏木から没収され、それ以降は、増田夏目をボディガードとしてつねにそばに置いている。川島学と神崎陣の通う高校に増田と共に1年生として転入して来たが、実年齢は不明。学校では学や陣、里中美雪と同じクラスに在籍している。育ってきた環境から暴力に対する耐性がついているため、友達のトラブルを解決しようする時は真っ先にトラブル相手の体が心配されるほど。困っている人を助ける時は「アミナにお任せ」という決め台詞(せりふ)を放つが、平和に解決したことはほとんどない。裏麻雀最強雀士(ジャンし)だったKから麻雀を仕込まれているため、麻雀の腕は超一流。さらにアミナ自身もイカサマを使えるうえに、小さな違和感から相手のイカサマを見抜くのも得意でスキのない麻雀を打つ。Kの妹ということで、高津組の増田や柏木など組関係者からは「お嬢」と呼ばれている。学からは「さん」付けで呼ばれているが、呼ばれるたびに呼び捨てにするように訂正している。実直な性格から、約束や契約を反故(ほご)にする者を「悪い人」と認定して容赦なく制裁を加える。飲食店や雀荘などのおしぼりを見れば、どこの組が面倒を見ているかすぐにわかる。漢字を書くのが苦手。

増田 夏目 (ますだ なつめ)

アミナのボディガードを務める女性。高津組に所属している。一人称は「俺」。長身でベリーショートの髪型をしている。筋肉質な体型で、身体のいたるところに傷跡がある。元女子ジュニアレスリングの日本代表選手だった過去があり、相手からは「女ゴリラ」と評されるほど強い。アミナに忠誠を誓っており、アミナのために死ぬか、アミナのために殺すかだけに生きることを決めている。銃で撃たれた相手に対しても、アミナに危害を加えようとする者には容赦なく頭部にサッカーボールキックを入れる。この異常な忠誠心は、アミナからは「頭がおかしい」と評されている。アミナと共に川島学と神崎陣が通う高校の同じクラスに転入したが、実年齢は不明。偏食家で、昼食は主にコッペパン、焼肉ではカルビばかり食べる。

川島 学 (かわしま がく)

神崎陣の親友で高校1年生の男子。年齢は16歳。麻雀は小学5年生の時に里中父から教わった。ガラの悪い雀荘で陣とコンビ打ちをしている際に、バレてボコボコにされていたところでアミナと出会う。そこそこ麻雀には自信を持っていたが裏麻雀の世界に触れ、川島学自身がただの素人(しろうと)だったことに気づく。陣と里中美雪の幼なじみで同じクラスに在籍しており、美雪に恋心を抱いている。また、美雪に恋心を抱く陣といっしょに美雪を隠し撮りした写真をスマホで共有している。アミナと出会って裏社会の危険性を感じ取り、同じクラスに転入して来たアミナと増田夏目と距離を置こうとするも、アミナとのコイントス勝負に負けて友達となる。

神崎 陣 (かんざき じん)

川島学の親友で高校1年生の男子。年齢は16歳。麻雀は小学5年生の時に里中父から教わった。ガラの悪い雀荘で陣とコンビ打ちをしている際に、イカサマがバレてボコボコにされていたところでアミナと出会う。喧嘩(けんか)っ早く単純な性格をしている。高打点を狙う麻雀スタイルながら、麻雀のレベルは学と同様。学と里中美雪の幼なじみで同じクラスに在籍しており、美雪に恋心を抱いている。また、美雪に恋心を抱く学といっしょに美雪を隠し撮りした写真をスマホで共有している。負けん気が強いため、敗色濃厚な勝負でも最後まで戦う姿勢を見せる。アミナと出会って裏社会の危険性を感じ取り、同じクラスに転入して来たアミナと増田夏目と距離を置こうとするも、学がアミナとのコイントス勝負に負けた結果、アミナと友達になる。

里中 美雪 (さとなか みゆき)

神崎陣と川島学が通う高校に通う1年生の女子。二人から思いを寄せられている。年齢は16歳。黒髪で眼鏡をかけ、地味な外見をしている。純粋で生真面目な性格の持ち主。父親が雀荘を経営しており、小学生の頃から麻雀をやっていたために大人顔負けの腕を持ち、家業の雀荘では里中父に次ぐ実力者として知られている。麻雀を覚えたての頃に、学と陣とはお年玉を賭けてよく麻雀をしており、当時から強かった。同じクラスに転入して来たアミナと増田夏目を、分け隔てなく友達として接している。

金井 タカシ (かない たかし)

アミナが転入して来た高校の麻雀同好会を根城にしている不良少年。茶髪で眉毛がない。以前までの麻雀同好会は、高校生らしいノーレートの麻雀だったが、金井タカシとその仲間二人が所属したことでギャンブル麻雀となった。実はKURENAIのメンバーである。仲間二人とカモを相手に卓を囲み、3対1で勝負する卑怯(ひきょう)な麻雀スタイルで、麻雀の腕は三流。カモを借金漬けにして男子は暴力で従わせ、女子からは身体を売らせて返済させている。また、自分が負けても開き直って絶対に負けを認めない不誠実な性格の持ち主。しかしKURENAIでの立場は弱く、アミナに敗れたのちに制裁として、城土千里から指を2本切断される。

柏木 (かしわぎ)

2代目「高津組」に所属する中年の男性。頭脳明晰(めいせき)な口達者。アミナから連絡を受ければすぐに駆けつけて問題を解決する。その際に相手の弱味はもちろん、負傷した相手の血の清掃代などなんでも請求する。大抵のことは解決できるが、アミナからの依頼は高額な料金が発生するため、小さな揉(も)め事で柏木を使うのは憚(はばか)られている。アミナと増田夏目が高校に転入する際に保護者代理人となり、学校内でのトラブルは柏木に連絡がいくことになっている。

里中父 (さとなかちち)

里中美雪の父親。開店して10年目になる雀荘を営んでいる。中年太りの体型で、七三分けのオジサン然とした外見をしている。しかし、元競技麻雀プロとして雑誌に載るほどの有名人。当時は麻雀プロとしてだけでなく、代打ちとしても活動しており、「攻め中」という異名で恐れられていた。その名に違わず攻撃的な麻雀のスタイルながら、正確な読みに裏打ちされた攻守のバランスが抜群の雀士。美雪だけでなく川島学や神崎陣にも麻雀を教えた。みかじめ料を要求する組関係者を麻雀勝負に持ち込んで勝ち続けることで、どのヤクザ組織にも属すことなく店を経営している。

田伏 (たぶし)

高津組が率いる最強代打ち集団「一軍」の元メンバーの男性。オールバックの髪型で、つねに爪楊枝(つまようじ)を咥(くわ)えている。Kが一軍を解散させた時には服役中だったため、出所後は小さな組に拾われた。相手のことを熟知し、定石を無視した打ち筋は「異常にして苛烈」と評されている。しかし、現在は里中父の店からみかじめ料を取るための代打ちなど、小さい勝負の場しかないことに不満を抱いている。一軍時代は一晩で1億円勝ったこともあり、金や女もすべてを手に入れていた過去に囚われており、一軍の再結成を熱望している。一軍の再結成を直訴するため、なりふり構わずアミナにKへの面通しを要求する。

城土 千里 (きど せんり)

アミナが転入した高校の2年生の男子。半グレ組織「KURENAI」のリーダーを務めている。年齢は17歳。茶髪で飄々として見えるが、賭代に城土千里自身の命を平気で差し出そうとするなど、一本ネジが足りないほどにイカれている。失態を犯した金井タカシの指を切り落とすなど、高校生らしからぬ肝の座り方をしている。教師の坂本香菜を騙(だま)して支配下に置き、成績を書き換えさせたり、セックスを強要したりと、さまざまなことをやらせている。初登場時の麻雀歴は4回という超初心者で、ルールをよく理解しておらずにチョンボを重ねるが、簡単に役満を上がるなどの強運と不気味さを持つ。

坂本 香菜 (さかもと かな)

アミナが転入した高校で教師を務める女性。年齢は26歳。担当科目は現国で、麻雀同好会の顧問も務めている。城土千里に麻雀を教える過程でハメられ、賄賂を受け渡しているように見える写真を撮られた。その写真をネタに脅されてセックスの動画を撮られ、KURENAIのメンバーからテスト問題の横流しや成績の書き換え、セックスの強要までさまざまなことをやらされている。非常に臆病な性格で、少し脅されただけでなんでもやってしまう。

K (けい)

日本最大の暴力組織「桜輪会」の最高顧問を務める男性。裏社会の絶対帝王として君臨している。高校1年生の時に、まだ幼かったアミナを守るために裏麻雀の世界に足を踏み入れ、高津組が率いる最強代打ち集団「一軍」に所属した。のちに裏麻雀最強となって裏社会の頂点に駆け上がり、麻雀日本一を決めるトーナメント「竜王位戦」を2連覇している。通り名である「氷のK」と共に裏社会では伝説となっている。数年前に一軍を解散させたが、田伏のような腕に自信のある代打ちからは大きな勝負の舞台を熱望され、一軍の再結成を願われている。アミナとは血縁関係もなく国籍も違うが、戸籍上は兄妹となっている。アミナに麻雀を教えたのもKである。

集団・組織

高津組 (たかつぐみ)

日本最大の暴力組織「桜輪会」系のヤクザ組織の一つ。「鵺」と呼ばれた伝説の雀士、高津が組を立ち上げ、現在は2代目が高津組を受け継いでいる。かつて高津が桜輪会最強の代打ち集団「一軍」を率いて多大な功績を残した。現在では裏社会の絶対帝王として君臨するKも、過去に一軍に所属していたことから桜輪会の中でもかなり立場が強い。Kの妹のアミナとも深いつながりがあり、増田夏目や柏木が公私にわたってアミナをサポートしている。

KURENAI (くれない)

城土千里がリーダーを務める半グレ組織。主な構成員はアミナが通う高校の生徒である。アミナからは「つまらない悪さをして小銭を稼いでパーティーを開いている集団」だと評されている。しかし、相手の弱味を握って脅迫したり、借金漬けにして売春を強要したりと、学校内外問わずにやりたい放題している。城土や幹部は「紅に染まる」ことにこだわりがあり、すぐに身体や命を賭代にしようとする傾向がある。

前作

凍牌 (とうはい)

後にシリーズ化される志名坂高次の代表作『凍牌』シリーズの1作目。裏社会の行う高額の裏レート麻雀をする高校生ケイは、冷静・冷酷な打牌から「氷のK」と呼ばれていた。ケイは自宅にかくまっている少女アミナを守... 関連ページ:凍牌

凍牌 ~人柱篇~ (とうはい ひとばしらへん)

志名坂高次の代表作「凍牌」シリーズの第2作目。現代日本を舞台に、謎の高校生雀士(ジャンし)榊原圭の命や名誉を懸けた麻雀バトルの数々と、裏社会に潜む陰謀の謎を描いた麻雀死闘黙死譚(たん)。前作『凍牌』と... 関連ページ:凍牌 ~人柱篇~

凍牌 ~ミナゴロシ篇~ (とうはい みなごろしへん)

志名坂高次の『凍牌』シリーズの第3弾で、「氷のK」を主人公にした物語の最終章。高津の死後、桜輪会は2代目の就任披露を延期し、組織の再編成を余儀なくされた。一方、敵対している関西の指定暴力団「山扇会」も... 関連ページ:凍牌 ~ミナゴロシ篇~

関連

牌王伝説ライオン (はおうでんせつらいおん)

志名坂高次の代表作『凍牌』の登場人物である堂嶋にスポットを当てたスピンオフ作品。「ライオン」の異名を持つ堂嶋が、強い打ち手を求めて麻雀を打つ姿を描く闘牌伝説。 関連ページ:牌王伝説ライオン

書誌情報

凍牌 コールドガール 6巻 秋田書店〈ヤングチャンピオン・コミックス〉

第2巻

(2022-07-20発行、 978-4253307024)

第3巻

(2022-11-18発行、 978-4253307031)

第4巻

(2023-04-20発行、 978-4253307048)

第5巻

(2023-09-20発行、 978-4253307055)

第6巻

(2024-01-18発行、 978-4253307062)

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