凪のお暇

凪のお暇

空気を読む事に疲れた大島凪は、これまでの人生をリセットして自分らしさを取り戻していく。そんな凪と、復縁したい元恋人の我聞慎二、アパートのとなりに住む、摑みどころのない男性、ゴンとの三角関係の日常を描くラブコメディ。物語中では、凪の節約料理のレシピも紹介されている。秋田書店「月刊エレガンスイブ」2016年8月号から連載の作品。「マンガ大賞2018」第3位、「このマンガがすごい!2019」オンナ編第3位、第22回 「文化庁メディア芸術祭」マンガ部門優秀賞を受賞。

正式名称
凪のお暇
ふりがな
なぎのおいとま
作者
ジャンル
ラブコメ
レーベル
A.L.C.DX(秋田書店)
巻数
既刊11巻
関連商品
Amazon 楽天

あらすじ

凪のドロップアウト

節約を趣味とする社会人の大島凪は、つねに周囲の空気を読むことに専念し、目立たずに謙虚に振る舞う生活を送っていた。凪は同僚から仕事を押し付けられたり便利に利用されたりするだけでなく、見下されていることもわかっていた。しかし、自分には社内恋愛をしているエリートの我聞慎二がいるからと割り切り、文句や愚痴をいっさい言わずに我慢し続けていた。そんなある日、足立に任された業務をこなしながら残業していた凪は、同僚が忘れたスマートフォンを通して、同僚たちがSNSで凪の陰口を言っているのを目にする。怒りや悔しさの感情を飲み込んで、仕事を続けようとする凪だったが、営業部で慎二が凪との関係を揶揄して同僚たちに吹聴している姿を目撃してしまう。凪は慎二の言葉を聞いた瞬間に、これまで積もり積もったストレスとショックから過呼吸を起こし、そのまま倒れてしまう。この出来事をきっかけに会社を退職し、慎二にも別れを告げた凪は、家財を処分してこれまでの人間関係も断ち切り、人生初の大規模な断捨離を行う。さらに都心を離れて郊外のアパートに引っ越した凪は、人生を大きくリセットし、気持ちを入れ替えて新しい生活を始めるのだった。無職になった凪は少ない貯金を切り詰めながら、これまでに得た節約知識を生かして日々を乗り切ろうとするものの、カーテンすらない部屋での生活は思った以上に問題も多かった。そんな中、凪のことを追って、別れたはずの慎二がいきなり押し掛けてくる。そこで凪は、勇気を出して彼に隠してきた事実と本音を話し、今後自分とはかかわらないでほしいと告げるのだった。

凪とバーベキューの思い出

他人に合わせすぎて長らく自分を見失っていた大島凪は、すべてを捨てて始めた新生活でさまざまな困難にぶつかりながらも、新しい人間関係とつかの間の休息を楽しんでいた。そんな中、凪は隣人の安良城ゴンへのときめきを隠せず、新しい恋の予感に胸がざわつき始めていた。一方、凪と別れたものの、未練を引きずる我聞慎二に説教され、女心がわからないままでは凪との復縁もままならないと言われてしまう。自棄を起こした慎二は、手土産を持って凪のアパートに赴き、しつこくチャイムを鳴らすものの彼女は留守だった。イラつく慎二に声を掛けたのは、上の階に住む吉永だった。その頃、凪は町中でゴンからいっしょにバーベキューをしないかと誘われる。凪はゴンの友達と親しくなれる気がしないとその申し出を一度は断るものの、彼のバーベキューとは、簡易コンロと安い食材だけを使った節約バーベキューだった。快晴の空を見上げながらゴンと二人きりで楽しい時間を過ごした凪だったが、その一方で彼女は過去に慎二に連れられて行ったバーベキューでの、トラウマ同然の出来事を思い出す。みじめな思いをした過去を気にすることなく、慰めてくれるゴンに心地よさを感じた凪は、今の方が何倍も楽しい毎日を送れていると実感する。そして凪はゴンと共に家に戻ると、吉永の部屋で時間を潰して待っていた慎二と遭遇する。凪は予定があると言って慎二を避けようとするが、その場の流れで慎二、白石うらら、吉永、ゴンといっしょにトランプをすることになってしまう。

凪の新しい恋愛

何かと優しい安良城ゴンのゆるくてやわらかな空気に癒される大島凪は、彼との関係が深まるにつれて、気持ちが大きくゆらぎ始めていた。そんな凪は、ゴンにもらった合鍵で彼の部屋を出入りした際にエリィと遭遇し、彼をよく知る彼女からある忠告を受ける。それはゴンが今まで付き合ってきた女性は、何人もが精神を病んでいるというものだった。エリィの話が信じられない凪だったが、ゴンの部屋で一晩をいっしょに過ごした時に、どこまでも自由な彼に感じたモヤモヤした気持ちを思い出す。それでもゴンの心地よさから離れられない凪は、ほかの女性と親密にしている彼から目を逸らし続け、やがてゴンのイベントに参加するうちに昼夜逆転し、生活が不規則になっていく。さらにゴンとその友人たちとの関係を気にする凪は、節約も自炊もやめてコンビニ食を買い込み、ゴンに会えない時間は布団にこもる自堕落な日々を過ごすようになる。そんな中、凪とゴンの関係を気にする我聞慎二は凪のアパートを訪れるが、耳栓をして熟睡していた凪は気づくことはなかった。そこへ帰宅したゴンが慎二を部屋に招き入れ、自由奔放なゴンに翻弄されながらも、慎二は人当たりのいいゴンの態度にすぐ打ち解ける。しかし、風呂場で複数の女性との関係を匂わせる化粧品の数々を発見した慎二は、ゴンの女性関係に強い危機感を覚える。思わずゴンの部屋を出て帰宅しようとした慎二は、コンビニで買い物をしている顔色の悪い凪を目撃する。

凪とゴンの別れ

コンビニ帰りに遭遇した我聞慎二の言葉をきっかけに、大島凪は安良城ゴンへの気持ちを整理すべきだと考え始める。だが、ゴンに別れを告げるまでの道のりは険しく、彼との心地よい環境から抜け出すのは簡単なことではなかった。雨に濡れてふらふらになった凪は、久しぶりに白石うららと白石みすずに会い、みすずに言われるまま風呂に入ることになる。爽やかな入浴剤を使った風呂につかりながら、凪はあらためて自分の気持ちを整理していた。久々にうららと遊び、みすずの手料理を食べた凪は、自分が長らくうららと遊んでいなかったこと、長らく節約や自炊をしていなかったことを反省。みすずに恋愛相談をした凪は自室に戻り、部屋を見渡すと大切にしていた豆苗や扇風機を放置していたことに気づくのだった。後日、本当にダメになってしまう前に、元の生活を取り戻してゴンと距離を置こうと、うららと作ったちぎりパンを持ってゴンの部屋に赴いた凪は、感謝と本音を打ち合けて別れを告げる。こうして、凪は元のリセットライフに戻り、再び節約や就職活動を始めるのだった。そんな中、凪は久しぶりに大島夕と電話で話す中で、凪の祖母から受け継いでいたぬか床の存在をすっかり忘れていた。かつて慎二と交際していた時に、彼の家にぬか床の一部を保存していたと思い出した凪は、ぬか床を取り戻すべく慎二の家に向かう。凪のことが忘れられずにもどかしい思いをしている慎二は、凪の態度に苛立ち、自分の心を乱す鬼だと怒りをあらわにする。

凪の新しいアルバイト

大島凪への気持ちが忘れられない我聞慎二だったが、会社の飲み会で出会った好みの女性といい雰囲気となる。それでも凪の顔が脳裏をよぎって心から楽しめず、交際していた時のストレートヘア姿ではなく、現在の天然パーマ姿の凪が浮かんでしまう。凪を以前のような従順な女性に戻そうと奮闘する慎二だったが、深層心理の中では現在の凪を受け入れているのではないかと気づき、ますます自己嫌悪に陥る。一方、紆余曲折の末に安良城ゴンへの恋心を断ち切った凪は、リセット人生を再開する中で中禅寺森子に声を掛けられ、スナック「バブル」でボーイとして働くことになる。裏方仕事の多い凪は、森子たちの接客の邪魔にならないように雑用をこなしていたが、接客経験のない彼女は時折客に話を振られても、うまく会話が続かず落ち込んでいた。図書館で本を借りて、接客や会話の仕方を勉強しようとするもののうまくコツがつかめない凪は、心配した森子からあるアドバイスを受ける。一方、凪に別れを告げられたゴンは、今まで付き合ってきた女性のように自分が彼女の通過点として終わることに、淡い違和感や虚無感を覚えていた。出会った当初のような隣人関係に戻ったはずの凪に会うたびに緊張したり、一人で彼女のことを考えるたびに胸に小さな痛みが走ったりすることに気づいたゴンは、自分の中に起きている感情の変化にとまどっていた。

凪の転職活動

季節が冬に変わり、スナック「バブル」でアルバイトを続けながら、大島凪は本格的な転職活動を始めていた。転職エージェントの縁田に紹介された転職先を幅広く吟味し、紹介された企業への転職がようやく決まりそうになる。実家への反抗心から自分で漬けたぬか漬けを楽しむ凪は、貯金や就職の不安もなくなり、周囲の人々に起こるさまざまな変化を感じながら順風満帆な日々を送っていた。だが、その一方で凪は実家からの呪縛から離れ切れていないこと、そして焦りから転職先を急いで決めてしまったことを後悔していた。周囲からの指摘もあって、もう一度これからのことを考え直そうと思った凪は、再びバブルのアルバイトに戻り、もうしばらくは中禅寺森子たちの世話になることを決める。そんな凪には、東京に来ることが決まっている大島夕に、彼氏を紹介しなければならないという、人生の一大イベントの日がせまっていた。一方、凪のことを考えるたびに締めつけられるような胸の痛みを感じるようになった安良城ゴンは、その痛みの理由がわからずにエリィに相談する。エリィからいくつかのアドバイスを貰っても結局原因がわからないままのゴンは、これまで体験したこともない気持ちに悩み続けていた。そんな中、後輩の市川円と急接近する我聞慎二は、なかなか忘れることのできなかった凪への未練を断ち切り、円との新しい恋に踏み出す。

凪の地元帰り

市川円と交際を始めた我聞慎二は、新たな交渉を成功させて仕事も恋愛も順調な日々を送っていた。そんな慎二はある日、スナック「バブル」の常連である五十嵐タロを通して、東京に来ることになった大島夕に大島凪が彼氏を紹介するという話を耳にする。凪は今の状況を正直に夕に話すと、確実に失望されて実家に連れ戻されることを危惧し、偽の彼氏を夕に紹介してやり過ごそうとしていた。だが、当日に凪の彼氏役を務めるはずだった桃園が骨折して行けなくなり、彼は代わりの彼氏役を慎二に依頼する。渋々彼氏役を引き受けた慎二は、さっそく凪との待ち合わせ場所に向かい、驚く凪をよそに夕と対面する。慎二が現れたことに混乱し、必死に慎二と口裏合わせをしながらも不安ばかり募る凪だったが、夕はすぐに慎二のことを気に入り、疑ったりする様子もなかった。夕の反応や慎二の指摘を受け、昔からずっと自分を支配し続けていた夕が「ただの人間」であったことを悟った凪は、ウソをついていることに強い罪悪感と虚無感を覚える。耐えられなくなった凪は夕に本当のことを打ち明けると決意し、慎二は彼氏ではないこと、就職もしていないことを正直に話す。慎二と別れてアパートの自室に夕を連れていった凪は、引っ越し後に出会った友人たちを紹介する。夕は今の凪を受け入れて納得して北海道へ帰ったかのように見えたが、それは凪の願望に過ぎず、結局凪は北海道の実家に戻ることとなる。

凪とゴンの再会

北海道の実家に連れ戻された大島凪は、オンラインで東京の友人たちと連絡を取り合いながら、地元で新たな人間関係を築いていた。雪かきや家の雑用をこなしながら、複雑な家族関係と日常をなんとかやり過ごす中で、大島夕の過去と現状を知った凪は彼女のことを見捨てらなくなり、東京に戻るきっかけを失ってしまう。一方、安良城ゴンは凪への強い思いから勢いで北海道を訪れるが、凪の実家の住所もわからずにスマートフォンが壊れたことで途方に暮れながら、あちこちをさまよっていた。そんなゴンはエリィたちの協力を得て、なんとか凪の実家にたどり着く。その頃、東京で出会った武のことや、凪が生まれた時のことを思い返していた夕は、凪に対して抱き続けている淡い希望を打ち砕いてほしいと願っていた。そんな夕のもとにゴンが訪問するが、その姿を見て武のことを思い出した彼女は、思わずゴンを追い返してしまう。困惑しながら再び凪の家を探そうとするゴンは雪の上ですべって倒れるが、そこに学校帰りの岩井勝が通りかかり、凪を知る彼の協力を仰ぐことになる。その頃、凪は宇堂愛恋から映画の主役になってほしいと依頼を受け、原始人のような格好をして雪道を走り回っていた。

メディアミックス

TVドラマ

2019年7月から9月にかけて、本作『凪のお暇』のTVドラマ版『凪のお暇』が、TBS系列で放送された。脚本は大島里美が務めている。キャストは大島凪を黒木華、我聞慎二を高橋一生、安良城ゴンを中村倫也が演じている。

登場人物・キャラクター

大島 凪 (おおしま なぎ)

デンモクメーカーの経理部に所属する女性で、年齢は28歳。三軒茶屋のマンションに住んでいる。ストレートのロングヘアだが地毛は酷い癖毛で、手を加えないとアフロに近い天然パーマになる。我聞慎二と付き合っているあいだは彼が好むサラサラのストレートヘアを維持するために、毎朝1時間かけて縮毛を直していた。地味と評されがちだが、実は巨乳でスタイルは抜群。争いを好まず自己主張の少ない穏やかな性格で、幼少期から場の空気を読んで行動することを何よりも優先してきた。また、人間関係に淡白なように見えて、他人にどう思われているのかをつねに気にしており、空気を読もうと過剰になるあまり空回りすることがある。同僚たちに見下されている事実を知りながらも、エリートの慎二と結婚して勝ち組女性になることを夢見ながら耐えている。職場でもつねに他人に合わせて自制していたが、同僚や慎二の陰口を偶然聞いてしまい、それまでのストレスが爆発して過呼吸を起こし、倒れてしまう。これを機に会社を辞めて慎二とも別れ、家財をほとんど処分して立川市の古アパートに引っ越し、人生をリセットして外見も内面も大きく変わろうと決意する。心を落ち着かせたことで、空気を読むのをやめて再会した慎二や同僚に言い返すなど、少しずつ自分の本音を出せるようになり、人との交流にも積極的になっていく。唯一の趣味は節約で、低コストの料理を中心に家事のスキルは非常に高く、手先も器用で身近な道具を使ってアクセサリーやおもちゃを作っている。アパートに引っ越したあとは郊外のおいしい空気と節約生活を堪能しながら、人生をリセットするための無職期間を「お暇」と称して満喫している。慎二と付き合っていたことがトラウマとなり、しばらく恋愛はしないと決めていたが、隣人の安良城ゴンに心惹かれるようになる。

我聞 慎二 (がもん しんじ)

大島凪の同僚の男性で、年齢は28歳。黒の短髪で、笑ったときの八重歯が特徴。つねに成績トップを誇る営業部のエースで、後輩はもちろんほかの部署からも信頼と期待を寄せられている。また人心掌握に長けており、相手が何を期待しているかを瞬時に読み取って対応する器用さを持つ。気配りや空気を読むのも得意で、凪のように空回りすることもないが、凪に対してはあまり適応していない。好みのタイプは、サラサラストレートのロングヘアの女性で、その外見に合致するという理由で凪と付き合っている。同僚たちに体目当てで凪と付き合っていると吹聴しているところを凪に聞かれてしまい、ストレスが爆発して退職した凪とは音信不通状態になる。しばらくは連絡を取れず、ようやく凪の引っ越し先をつき止めて直接会いに行くものの、今後は自分とはいっさいかかわらないでほしいとあらためて別れを告げられる。付き合っていた頃は凪が自分に惚れているという自信から、見下すような発言やモラルハラスメント紛いの行為を繰り返していた。当初は見た目が好みという理由で付き合い始めたが、凪の健気なところや空気を読むことで精一杯な彼女を守りたいと思うようになった。凪は隠していたつもりでいたが、彼女が酷い縮毛で毎朝必死にストレートヘアに直していることも知っていた。凪を実家に招いて両親にも紹介しており、ゆくゆくは結婚するつもりでいた。しかし、本当に好きな相手には素直になれないひねくれた性格が災いし、高圧的で意地悪な態度を取ることが多かったため、凪に愛情はほとんど伝わらず、彼女のストレスの要因となっていた。別れてからも凪のことを忘れられずにいるが、彼女の前では一気に不器用になるため、うまくいかず焦っている。自分を変えようと奔走する凪に、以前のような従順な女性に戻ってほしいと願い、わざと心を折ってあきらめさせるような言動を繰り返す。

安良城 ゴン (あらしろ ごん)

郊外に引っ越した大島凪のとなりに住む男性。職業はクラブイベントなどを企画するイベントオーガナイザー。黒髪の長髪で腕にタトゥーを入れており、パーカーなどラフな服装を好んで着用している。穏やかながらよくも悪くも奔放な性格で、男女問わずハグしたり、親しくなるとすぐに部屋の合い鍵を渡したりと、かなりの自由人。ベランダで育てていたゴーヤを放置し、それが気になった凪に声を掛けられたのをきっかけに交流するようになる。交友関係が広く、仲間はダンサーやDJが多いため、当初は凪から住む世界の違うパーティーピープルと警戒されていた。交流するうちに優しい人だと悟った凪から好意を寄せられ、彼女に合鍵を渡して付き合うようになる。来る者拒まずですぐに受け入れるため、友人が多く女性にもモテる。これまで多くの女性と付き合ってきたが、同時に何人もの女性と体の関係を持ったり約束をあっさり破ったりするなど、不誠実なところがある。誰に対しても寛容で距離感が近く、心地よく中毒性の高い優しさを与えるが、誰か一人を特別扱いすることがないため、かかわった女性の大半が精神を病んでいる。この女性を次々とダメにしていくさまを、エリィから「モーゼの海割り」や「メンヘラ製造機」などと揶揄されている。その一方で、ゴン自身は悪気があるわけでもないのに、かかわった女性が壊れていくことに悲哀や虚無感を覚えている。凪も一時期は自分を見失い、廃人寸前になっていたが、周囲の指摘や励ましを受けながら距離を置くと決意した彼女から、別れを切り出される。その時はあっさりと受け入れて元の隣人同士に戻るが、凪のことを思い出すたびに、今まで体験したことのない感情を抱くようになる。

坂本 龍子 (さかもと りょうこ)

大島凪とハローワークで知り合った求職中の女性。年齢は28歳。明るく礼儀正しい性格ながら、訳あって就職活動に失敗し続けている。理想と現実の自分とのギャップに悩み、自分を変えようと奮闘している凪に親近感を抱く。パワーストーンや占いなどスピリチュアルなものが大好きで、空気が読めない性格も災いし、周囲から勧誘と誤解されて距離を置かれていた。凪にも勧誘とカンちがいされてはっきりと断られたが、その後に涙ながらも謝罪と後悔の思いを語り、すぐになかよくなる。あらためて凪から友達になってほしいと頼まれ、節約料理や恋愛の話などに興じて、いい友人関係を築く。おとなしそうに見えるが、いきなり凪を婚活パーティに連れていくなど思いつきで行動するアクティブな一面もあり、時折彼女を振り回している。幼少期から成績優秀で、名門と知られるT大学に通っていた。卒業後はコミュニケーション能力の低さから就職に失敗し、やっと入社できた会社では高学歴であることを同僚や上司にやっかまれ、転職を繰り返していた。凪と共に就職活動に励む中で、あこがれの先輩である沖田と合同企業説明会で再会し、彼の会社の面接を受けて再就職を決意。しかし、沖田の会社がブラック企業であることに気づいた凪の忠告を受け、一度は反発するものの断念した。別の有名企業に再就職したあとは、沖田を説得してブラック企業から離職させ、彼と交際するようになった。これ以降はいつも手放せなかったパワーストーンへの依存もなくなる。凪が北海道の実家に戻ったあとはノートパソコンとWi-Fi機器を送り、ビデオ通話で連絡を取り合っている。

足立 (あだち)

大島凪と同じ会社の同僚の独身女性。表向きは江口、織江を交えて凪と親しそうにしているものの、凪に対して雑務を押しつけている。プレゼンテーションなど目立つ業務を中心に行っているため、社内での評価は高い。凪を「自分の時間を節約してくれる人」と見下しており、ランチの時間の雑談でも一方的なダメ出しをする事が多い。 凪が退職してから一度偶然にも再会した際には、相変らず凪を見下した発言を繰り返していたが、凪からの反論に言い返せなかった。

江口 (えぐち)

大島凪と同じ会社の同僚の独身女性。表向きには足立、織江を交えて凪と親しくしているが、実際は面倒な業務を押しつけている。また、内心受け身の凪との会話はおもしろくないとも感じていた。母親が骨折したという雑な理由をつけ、何度も凪に残業を代わってもらっていた。

織部 (おりべ)

大島凪と同じ会社の同僚の独身女性。江口、足立と共に凪と親しくしており、忙しい時は自身の仕事を凪に手伝ってもらっていた。江口と足立とは異なり、凪が余裕で仕事をこなしているように見えたからであり、都合よく利用していたわけではない。凪が退職してからは凪が担当していた業務を引き継ぐ事になり、あまりの作業の多さに凪の凄さを改めて認識した。

(あん)

キャバクラ嬢として働く女性。容姿は会社を辞める前の大島凪によく似ている。取引先に接待として連れて来られた我聞慎二に気に入られ、以降ずっと指名されている。慎二にとって唯一の相談相手で、もう凪は慎二に未練はないと思うなど、言いたい事ははっきり言う毒舌家。

白石 うらら (しらいし うらら)

小学5年生の女子で、郊外に引っ越した大島凪と同じアパートに住んでいる。父親は他界しており、母親の白石みすずと二人暮らし。黒髪を二つのおさげにまとめた、子猫のようにかわいらしい少女。クールな性格のしっかり者で、家事なども積極的に手伝っている。凪の犬のような癖毛を気に入っており、時折触らせてもらっている。みすずが多忙なため、学校以外は家で留守番をしていることが多く、あやとりで遊んだり、おやつのビスケットを食べたりして過ごしている。大人たちに対してはクールに振る舞っているが、学校では明るい性格を演じ、空気を読んで周りに合わせたり、流行の遊びやゲームにも敏感なフリをしている。それを目撃してそのギャップに驚いた凪に対し、みすずとあまりいっしょにいられない寂しい気持ちを、泣きながら打ち明けた。この本音を聞いた凪からは、自らも母子家庭で育ち、寂しい少女時代を送っていたことから共感を抱かれ、励まされるようになる。凪に身近な材料でできる遊び方やアクセサリー作り、おやつのアレンジなどを提案され、凪に心を開くようになった。これ以降、凪を慕っていっしょに節約レシピや遊びに興じるようになり、クラスメートにもありのままの自分を見せたり、凪に教わった遊びを広めたりしている。みすずと過ごせる時間が少ないのを寂しく思う一方、クレーンの操縦士として活躍する母親を勇ましく思い、心から誇りに思っている。凪のことを姉のように慕い、彼女が困難にぶつかったときなどは、みすずやほかの住人たちと協力して励ましている。年齢の割に大人びて達観したところがあるが、みすずや凪の前では子供らしい一面を見せる。

白石 みすず (しらいし みすず)

白石うららの母親。夫が亡くなってからは、女手一つで娘のうららを育てているシングルマザー。礼儀正しく謙虚な美人で、家族思いな優しい性格をしている。仕事で多忙なために家に不在なことが多いが、在宅時は極力うららと遊ぶことを優先し、愛情を注いでいる。うららと遊んでくれる大島凪と知り合い、年齢が近く境遇が似ていることなどから親しくなり、交流が始まった。うららに不自由で寂しい思いをさせていることを申し訳なく思っており、代わりに面倒を見てくれる凪には感謝している。うららの学校の保護者と会うたびに、マウンティングされたり粗探しされたりしているが、あまり気にすることなく仕事やうららのことを優先に考えている。ショッピングモール建設現場の職長を務めており、大きなクレーン車を操縦する仕事をしている。うららからはたくましい母親と尊敬され、誇りに思われている。凪にとっては引っ越し後に出会ったよき相談相手の一人で、彼女が壁にぶつかったり悩んだりしているときは、うららやほかの住人と共にサポートしている。趣味はドライブで、学生時代に付き合っていた夫と初めて乗ったバイクで海までドライブした思い出を大切にしている。のちに凪をドライブに誘ったのをきっかけに、ペーパードライバーだった彼女に運転を教えた。おしとやかに見えるが重機の運転士ということもあり、たくましく男らしい一面を見せることがある。

エリィ

ゴンの知り合いで、ダンサーをしている女性。派手で個性的な外見をしているものの、世話好きで常識的な性格の持ち主。大島凪がゴンに恋している事をすぐに見抜き、相手は自由人だから絶対に止めておいた方がいいと釘を刺した。その後も凪の恋に対し、厳しくも温かいアドバイスを送る。エリィ自身も過去に寂しさを覚えていた際に、ゴンに身体を許した事があり、激しく後悔している。

大島 夕 (おおしま ゆう)

大島凪の母親で、彼女を女手一つで育て上げてきたシングルマザー。ストレートのロングヘアで、OL時代の凪によく似た容姿をしている。現在は凪の実家である北海道の一軒家で、凪の祖母と二人暮らしをしている。夏はとうもろこし農家で、冬はクリーニング店で働いている。おっとりした優しそうな女性に見えるがいわゆる毒親で、体裁や世間体を強く気にするあまり、凪を思いどおりにあやつろうとしている。凪に対してはこういう娘になってほしいという、一方的な願望を押し付けながら厳しく育ててきたため、凪の幼少期の体験や家族との関係性は、彼女が必要以上に空気を読む体質になった要因となっている。凪とは良好な親子関係を築けていると思っているが、凪からは心底嫌われていると同時に、畏怖に近い感情を抱かれている。たまに凪に連絡しているが、そのたびに彼女を辟易させており、彼女がOLを辞めて変わろうと決意したあとも、唯一逆らえない相手となっている。しかし、地元では同級生や近所の人から見下されがちで、閉鎖的な田舎での人間関係にうんざりしているため、凪がいつか東京でいい男性と結婚した際は、大島夕自身も東京に住みたいという淡い期待を抱いている。黒沢優の結婚式で東京に行くことになり、凪から現状報告と彼氏の紹介を受けるために再会。紹介された我聞慎二を気に入るものの、自分を変えようとする凪に本当のことを打ち明けられる。たくさんの友人に囲まれる凪の姿に納得して帰ったように見えたが、足のケガを理由に彼女を実家に呼び戻す。若い頃に親に反発して東京に住んでいたことがあり、そこで出会った武とのあいだに凪を身ごもるものの彼に見捨てられ、凪を連れて実家に戻った過去を持つ。

慎二の母 (しんじのはは)

我聞慎二の母親。専業主婦で、夫の慎二の父は公務員。大島凪とは、かつて慎二が交際していた時に一度顔を合わせている。表向きは少し天然で抜けたところのあるかわいらしい女性だが、裏では夫の愛人関係に悩んでいる。自分に振り向いてほしい気持ちから若さに固執しており、整形中毒に陥っている。

慎二の父 (しんじのちち)

我聞慎二の父親。公務員として働いている。ゴルフが趣味の、一見よき夫に見えるが、実は外に愛人が四人もおり、子供までもうけている。慎二の母が整形中毒に陥っているのは愛人の存在が大きいが、慎二の父は行動を改める気はいっさいない。

我聞 慎一 (がもん しんいち)

我聞慎二の兄。「自分探し」と称して家出を繰り返しては、すぐに挫折して家へ戻って来ていた。弟の慎二とは声がよく似ている。受験に失敗したのをきっかけに、ある日突然、誰にも告げずに逃げるように家を出て行った。これ以降は実家に長らく帰っておらず、家族とは音信不通状態となっている。

縁田 (へりた)

大島凪が出会った転職エージェントの女性。親身な対応をモットーにしているが、水滴が凪の履歴書についていても気づかなかったり、凪の名字を何度も間違えたりするなど、いい加減な態度が目立つ。さまざまな企業を転職先として紹介している。凪が大企業への転職に成功することを願っているように見えるが、本音は凪のためではなく自らの成績を上げることを目的としている。

吉永 (よしなが)

大島凪と同じアパートの住人の老女。彼女の真上の部屋に住む。アップリケを縫い付けた服を身につけ、おっとりした性格をしている。アパートの住人の中で、凪が最初に知り合った女性でもある。自動販売機のおつりを探ったり、パン屋でパンの耳を貰ったりしているなど、その見た目や行動から、近所の人たちに「おつり漁りババア」と呼ばれている。当初、このみすぼらしい姿を見た凪に、「無職のままではこの人のようになってしまう」と恐怖心を抱く対象となっていた。しかし、ベランダから落下した服を凪が届けに行くと、大の映画好きで心が豊かな人物であったことが判明。シニア料金でレンタルしたあらゆるジャンルの映画を、ホームシアターと化した自宅で毎日のように鑑賞している。貰ったパンの耳を使った節約菓子も楽しんでおり、さまざまな工夫をこらしながら日々の生活を満喫している。この姿に凪は強い影響を受け、狭い部屋や持ち物の少ない生活でも、全力で楽しもうと決意をするきっかけとなった。のちに、凪のことが忘れられずアパートを訪れた我聞慎二と遭遇し、彼女が帰るまでの時間つぶしと称して、彼を部屋に招いた。いっしょに映画鑑賞をしてさりげないアドバイスを送るなど、悩み多き若者たちを温かく見守っている。

井原 (いはら)

我聞慎二と小倉の後輩で、同じ営業部に所属している青年。明るい性格で、パーマをかけたような髪型をしている。小倉が呆(あき)れるほどに慎二のことを尊敬し、あこがれを抱いている。慎二の仕事の能力の高さはもちろん、決して人の悪口を言わない人柄を高く評価している。

モル

安良城ゴンの恋人の女子大学生。ゴンが大島凪と同時進行で関係を持っていた女性でもある。絵を描くことが大好きで、美術大学に通っている。ゴンのことは「ゴンゴン」と呼んで慕っている。凪と同様にエリィからゴンの中毒性や危険性について忠告されていたが、流されるままにゴンと付き合っていた。やがて大学の課題も手がつかないほどゴンへの依存が進んでいき、精神を病んで彼の腕に鉛筆を刺して流血騒ぎを起こす。最終的に置き手紙を残し、ゴンに別れを告げる。

小倉 (おぐら)

我聞慎二と同じ営業部に所属する男性。眼鏡をかけている。慎二に彼女がいることは知っていたが、その相手が大島凪であることは知らなかった。慎二に付き合っている女性の話題を振った際に、彼の言葉にショックを受けた凪の過呼吸の現場に居合わせた。のちに大阪から異動して来た市川円の悪評をほかの同僚から聞いており、彼女のことを警戒している。

凪の祖母 (なぎのそぼ)

大島凪の祖母。北海道にある凪の実家で、娘の大島夕と二人暮らしをしている。いつも熊耳の付いたニット帽をかぶっており、耳が遠い。昔から凪のことを溺愛して事あるごとに褒めていたが、その際に夕と比較しては彼女を貶(けな)す発言をする癖がある。また、面倒事は夕や凪に押し付けてばかりで、彼女たちからは心底邪悪な人物と思われている。実家に戻って来た凪が夕のノートを発見したのをきっかけに、夕が若い頃に体験した過去を語る。

ロン

スナック「バブル」でホステスをしている中国人の女性。アヒル口でセミロングヘアをお団子にまとめ、大きめのピアスを付けている。日本のアニメーションを学ぶ目的で来日したため、絵を描くのが得意。キュートなボケや、さりげないボディタッチが好評で、愛されキャラとして客に人気がある。学校のクリエーター展で中禅寺森子にスカウトされ、学費を稼ぐためにバブルで働き始めた。初対面の大島凪にもフレンドリーに接して、のちに彼女がボーイとして雇われたことで同僚となる。また、ジェーンと共に凪の家でささやかな女子会を開いたことで、凪と友情を深めた。

桃園 (ももぞの)

スナック「バブル」の新規客の男性。金払いがいいため、中禅寺森子からは「桃ちゃん」と呼ばれて気に入られているが、かなり毒舌で無神経な性格をしている。新入りの大島凪の癖毛を茶化し、会話の内容も悪口ばかりで、凪からは苦手意識を持たれている。我聞慎二とどこか似たところがあり、戦隊シリーズの話題でバブルで意気投合した慎二とは、「がもち」「ももち」の愛称で呼び合って連絡先も交換している。子供の頃から戦隊シリーズやヒーロー作品にあこがれているため、困っている人を放っておけない正義感の強い一面もある。大島夕に紹介する彼氏役を探している凪に渋々協力することになるが、やるからには完璧にやり遂げたいと、綿密な対策マニュアルの作成まで行った。しかし、夕が東京に来る前日に骨折してしまい、代理を慎二に依頼した。以降もバブルを通して凪の近況を聞き、彼女が北海道の実家に戻ったことを慎二に報せた。実はひそかに森子に片思いしており、家から遠いバブルの常連となったのも彼女に会うため。

中禅寺 森子 (ちゅうぜんじ もりこ)

スナック「バブル」のママを務める女性。バブル時代を彷彿とさせる個性的な洋服を身につけている。前髪が大きく盛り上がってカールしており、大きなフープピアスを付けている。誰に対してもぶっきらぼうな態度を取るが、心根は優しく、とても面倒見のいい性格をしている。知らない土地でケガをした大島凪が、店に駆け込んだのをきっかけに知り合う。当初は金にならない客として凪に塩対応だったが、彼女の話を聞くうちに放っておけなくなり、得意料理の鳥照り丼を振る舞った。人を見る目には自信を持っており、ロンとジェーンも自らスカウトしたうえで雇っている。同様に凪に対しても勘が働き、店のボーイが辞めた穴埋めとしてスカウトした。凪の仕事の几帳面さや節約レシピのアイディアを高く評価しているが、その自覚がなく自己評価が低くなりがちの彼女を心配している。店はもちろんのこと、凪が本格的な転職活動を始めたあとも応援し、時には相談に乗りながら彼女を何かと気にかけている。のちに、大島夕にウソをついてしまった凪のために家まで急行し、夕に挨拶しながら凪のことを涙ながらにフォローした。

岩井 勝 (いわい まさる)

大島凪の実家の近所に住む高校生の男子。サッカー部に所属している。大きめのニット帽をかぶった爽やかな容姿で、ほかの高校の女子からの人気も高い。小さい頃は凪とよくいっしょに遊んでいたが、その当時のことはあまり覚えていない。毎日雪かきに勤(いそ)しんでいる凪を見て、根雪に挑もうとする彼女のことが気になっていた。昔のことを思い出してからは、彼女を「凪ねね」と呼んでいる。学校帰りに偶然出会った安良城ゴンと知り合い、腰を痛めた彼を凪のもとに案内する。

五十嵐 タロ (いがらし たろ)

スナック「バブル」の常連客の中年男性。小太りな体型で、大らかでおっとりした性格をしている。通称「タロさん」。常連客の中では金払いがよく、店ではいつもリッチな飲み方をして、新入りの大島凪にも時おり優しく話しかけている。実は飲食業界の大手「チャオッコフーズ」の重役で、我聞慎二たちの重要な取引先でもある。慎二を気に入り、仕事の話を進めるために彼をバブルに誘う。

沖田 (おきた)

坂本龍子の大学時代の先輩の男性。優しい性格でいつも笑顔を浮かべ、朗らかな雰囲気を漂わせている好青年。合同企業説明会で龍子と再会し、彼女と大島凪に自分が勤めている会社を紹介する。しかし、勤めている会社はいわゆるブラック企業で、面接後に凪の忠告を受けた龍子は別の企業に就職した。のちに龍子から説得を受けて現在は転職し、彼女と交際を始めた。

布施 (ふせ)

大島凪の小学校時代の同級生の男性。昔からフケだらけの頭をかくクセがあり、名字をもじって「フケ」というあだ名を付けられていた。天然パーマをいじられていた凪と同様に、クラスからは孤立がちだった。家を出てからは東京に住んでいたが、パン作りに目覚めて北海道に戻り、実家のパン屋「フセパン」を引き継いでいる。しかし、極上の小麦粉を使ってもふつうの味のパンしか作れず、あまり店は繁盛していない。実家に連れ戻された凪が店を訪れた際に再会し、友人となる。また、凪を通じて岩井勝や宇堂愛恋とも知り合った。週2回、広場でフェスを開催してパンを販売している。

オシオ

スナック「バブル」の常連客の中年男性。小太りな体型でおとなしい性格をしている。サッカー観戦が趣味で、有名サッカー選手の物まねが得意。Jリーグチップのカードをコレクションしている。新入りの大島凪にサッカーの話題を振るも、彼女がサッカーに興味がないため、会話が続かずにいた。その後、中禅寺森子のアドバイスを受けた凪から、好きなサッカー選手を聞かれたのをきっかけに会話が弾んだ。

黒沢 優 (くろさわ ゆう)

大島凪の年下の従妹。銀行に勤める男性との結婚が決まり、凪と大島夕を結婚式に招待した。手先が器用で、幼少期は凪といっしょに「節約工房」と称して、さまざまなおもちゃを作って遊んでいた。凪のことを「凪姉」と呼んで慕っていたが、親同士が不仲になったことで疎遠になっていた。

(たけし)

大島凪の父親。ミュージシャンを生業としている。凪の祖母に反発して東京に飛び出した若い頃の大島夕と、同じアパートの隣室に住んでいた。夕と出会って嵐のような恋に落ちる。凪とよく似た天然パーマで、大らかで奔放な性格の自由人。見た目や雰囲気が安良城ゴンとよく似ている。夕が凪を身ごもってからは、結婚して大切にすると約束を交わすが、彼女と凪のことを捨ててアパートから出て行き、現在も行方不明となっている。このことから夕にとってはトラウマ同然の経験で、本当のことを凪に隠しており、凪は父親が蒸発したとしか聞かされていなかった。

宇堂 愛恋 (うどう あれん)

北海道に住む女子高校生。趣味は映画鑑賞で、いつか自分の映画を撮りたいと夢見ており、さまざまなジャンルの映画を見ては日々研究を重ねている。黒髪の癖毛ロングヘアで、丸い眼鏡をかけている。ニキビが多いため、いつもマスクをしている。姉の慈優とミーハーな母親、会社員の父親と四人暮らし。学校では孤立しており、クラスメイトからは名前負けしているとバカにされているが、誰かを恨んだり田舎だからと言い訳する暗い人生は望まず、現状に抗(あらが)うためにも映画を撮りたいと思っている。別の高校に通う岩井勝にあこがれを抱き、いつも遠くから見つめてストーカー紛(まが)いの行為をしていた。しかし実際は、勝と話している大島凪のことが気になっていただけで、自分のイメージにぴったりな彼女に映画の主役を依頼するのが目的だった。なかなか話しかけられずにいたが、勇気を出して凪に熱意を伝えながら協力を申し出る。その申し出を快諾した凪と親しくなり、お礼として大量のタピオカをプレゼントした。

市川 円 (いちかわ まどか)

我聞慎二の後輩で、営業部に所属する女性。年齢は25歳。大阪から慎二たちの部署に栄転し、いっしょに仕事をするようになる。サラサラストレートのロングヘアで、慎二の好みにぴったりと合った容姿をしている。可憐でかわいらしい見た目はもちろん、八方美人な言動で多くの取引先を獲得するなど、営業成績もよく上司からの評価も高い。周囲と円満な関係を築きたいと思っているが、場の雰囲気を悪くしたり同性を敵に回してしまうことが多いため、周囲からは「空気クラッシャー」呼ばわりされている。また、能力や努力よりも容姿を評価されることや、色目を使って業績を挙げてきたと噂されている現状にも虚無感を覚えている。さらには、大阪にいた時に獲得した取引先が短期間で契約を打ち切った事実を、再会した元同僚を通して知る。そんな中、悪評を一蹴して純粋に仕事ぶりを評価してくれる慎二に励まされ、彼に惹かれていく。八方美人という悪評に悩んでいることを慎二に打ち明けた際には、八方ブスよりはいいと励まして貰ったことで彼への恋心を自覚し、付き合うようになる。生まれつきの直毛で、カールやウェーブのある髪にあこがれを抱いている。

ジェーン

スナック「バブル」のホステスをしているフィリピン人の女性。黒髪ロングヘアを大きなお団子にまとめている。セクシーな顔立ちで明るくサバサバした性格と、ノリのいい会話で客に人気がある。日本のお笑いが大好きで、お笑い番組やコントライブに足を運んでいる。お笑いを通して日本語を覚えたため、関西弁で話す。故郷の家族を支えるための出稼ぎで来日していたが、中禅寺森子にスカウトされてバブルで働き始めた。初対面の大島凪にも親身に接して、のちに彼女がボーイとして雇われたことで同僚となる。また、ロンといっしょに凪の家でささやかな女子会を開いたことで、凪と友情を深めた。

書誌情報

凪のお暇 11巻 秋田書店〈A.L.C.DX〉

第1巻

(2017-06-16発行、 978-4253156370)

第10巻

(2022-08-16発行、 978-4253156820)

第11巻

(2024-02-16発行、 978-4253156875)

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