冥府の花嫁

冥府の花嫁

短編集『ニッポニア・ニッポン』に収録された短編三部作馬の耳に風の第三作。馬風、おかつ、若がのんびり釣りをしているところに、前橋先生の未亡人・千枝が通りかかり、夫の形見分けとして馬風に『解體新書』を託して去っていく。馬風は二人に前橋先生と千枝の命がけの恋愛沙汰について語り始める。

正式名称
冥府の花嫁
ふりがな
めいふのはなよめ
作者
ジャンル
時代劇
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概要・あらすじ

馬風によれば、千枝は元々、三千石の旗本の姫君だったが、当時駆け出しの医師であった前橋先生と恋に落ちた。前橋先生は仮死状態になる薬を千枝に飲ませ、墓から掘り出して、蘇生させ、駆け落ちする。しかし、二人で暮らしていることが露見し、役人に取り調べられることになる。前橋先生は墓場を通りかかった時に人の声がしたから掘り出したと言い張り、千枝は蘇生は地蔵菩薩の御慈悲によるものと語り、放免された。

この件は地獄見聞譚として当時の瓦版でも書き立てられたという。その熱情の相手もすでに故人。三人は、渡し場から川にそっと夫婦雛を流す千枝の姿を遠望する。

登場人物・キャラクター

馬風 (ばふう)

馬風庵に住まいする32歳の学者。馬の耳に風シリーズ三部作を通じて登場する。総髪を後で束ね、不精髭が目立つむさ苦しい風体だが、知恵者。本作では、語り手。

野火止 勝四郎 (のびどめ かつしろう)

馬の耳に風シリーズ三部作を通じて登場する馬風の遊び仲間。与力・野火止彦十郎の双子の弟。双子を忌む風習があったためか幼時より女装をさせられていた。一見、おきゃんな江戸娘。21歳。シリーズ第一話に当たる馬の耳に風では姓を「火火止」と表記しているが、本作の扉では作者の手書きで野火止と表記されている。 本作では、馬風の話の聴き手。

守屋 弓弦 (もりや ゆづる)

馬の耳に風シリーズ三部作を通じて登場する馬風の遊び仲間。旗本の若様で三味線の名手という風流人。26歳。本作では、馬風の話の聴き手。

千枝 (ちえ)

馬風の知人、町医者・前橋先生の未亡人。遺品の『解體新書』を馬風に形見分けとして託す。元は三千石の旗本のお姫様だったが、死を偽装して前橋先生と駆け落ちした過去がある。

前橋先生 (まえばしせんせい)

馬風の知人だった町医者(故人)。千枝と命がけの駆け落ちの末、結ばれた。

その他キーワード

解體新書 (かいたいしんしょ)

『冥府の花嫁』で馬風が前橋先生の形見分けとして千枝から受け取ったオランダの医学書の翻訳本。原著はヨハン・アダム・クルムス著のドイツ医学書をオランダ語訳したもの。杉田玄白によって翻訳され、1774年に刊行された。

関連

『馬の耳に風』シリーズ (うまのみみにかぜしりーず)

江戸時代を舞台に、三人の若者の呑気な姿を通じて、江戸の人々の日常と心情を浮き彫りにする時代劇漫画の短編連作シリーズ。 関連ページ:『馬の耳に風』シリーズ

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