天の神話 地の永遠

天の神話 地の永遠

赤石路代の『永遠かもしれない』の続編。強大な巫女の力を持つ黄金原こすもが、彼女を守る仲間とともにさまざまな事件解決に臨む。同時に八百万の神々と心を通わせたこすもが、その力を借りて周囲を穏やかに癒していくという、ミステリーとヒーリングの両面を備えた作品。「ミステリーボニータ」2003年8月号から連載。

正式名称
天の神話 地の永遠
ふりがな
てんのしんわ ちのえいえん
作者
ジャンル
和風ファンタジー
関連商品
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世界観

主な舞台は現代の日本。日本最高位の巫女である黄金原こすもが、巫女守の日嗣とともにさまざまな場所へと赴き、数々の事件を解決していく。そこには毎回、元凶となる人物とそれに関わる神の存在がある。こすもが仲間たちとともに邪気を封印し、神々と対話することでその場、そして人々を癒し問題を解決するというのがお決まりの流れとなっている。前作『永遠かもしれない』の中心人物でもあったこすもと日嗣のその後を描いた物語であり、主な設定や世界観はそのまま踏襲されている。

作品構成

基本的に1話完結、もしくは前後編の2話完結で構成されており、各話読み切りの連作短編となっている。時として、関連人物にスポットを当てた、本筋とは異なるエピソードが挿入されることもある。なお、3巻巻末には、番外編「太陽に逢った夏」が収録されている。これは、赤石路代のサイン会で配布された冊子に掲載されたエピソードである。

あらすじ

日本最高位の巫女である「100代目日巫子」を務める黄金原こすもは、巫女守である日嗣とともに訪れた町で、いたるところにぶら下がる不気味なカラスの模型を目にする。それが、町を守るため何者かの手によって作られた結界であることを知ったこすもは、神社の息子である能瀬王士との出会いを経て、穏やかな町に起ころうとしている異変を察知し、立ち向かうこととなる。こうしてこすもと日嗣は、訪れる町々でさまざまな神の力を借り、人々に巣食う悪しきモノを浄化し、凍ってしまった神の心までも溶かしていく。

登場人物・キャラクター

黄金原 こすも (こがねはら こすも)

日本最高位の巫女である「100代目日巫子」を務める女子高生。もともと重い心臓病を患っており、99代目日巫子から心臓の提供を受けたことが日巫子として覚醒するきっかけとなった。実は彼女自身が月神「ツクヨミ」の血を引いており、太陽神「アマテラス」と月神「ツクヨミ」の両方の憑代という、日巫子の中でも稀有な存在となった。 巫女としての器は計り知れないほどに大きく、さまざまな神を降ろすことができる。一方で気取ったところは一切なく、どんなものでも平等にその命を大切にする優しい心を持った人懐こい少女。その外見も普通の女子高校生そのものである。99代目日巫子に代わって、突然日巫子の座に据えられたため、神に関する知識は薄い。それを快く思わない者は多く、99代目日巫女に心酔していた者ほど、黄金原こすもの存在を認めない傾向にある。 巫女守の日嗣を愛しているが、自分が日巫子である以上、恋が成就しないことを自覚している。

日嗣 (ひつぎ)

日巫子を守る「巫女守」を務める青年。幼い頃に身寄りをなくし、養護院で生活していたところを99代目日巫子によりその秀でた能力を見出され巫女守となった。死の国を司る「スサノオ」の血筋を最も強く継ぐ者。黄金原こすもを愛しており、命を懸けて守っている。のちに体の不調をきっかけに脳に腫瘍があることが発覚し、長い闘病生活を送ることになる。

能瀬 王士 (のせ おうじ)

鷲神社の神主の息子。神様を信じていなかったが、日巫子である黄金原こすもと彼女を守る日嗣に出会い、人生観が変わる。こすもが荒ぶる神を鎮めたところを見て以来、自分もこすもを守りたいと、実家である神社を出てこすもや日嗣と行動をともにするようになる。鷲神社の神を降ろし、鳥を呼ぶことができる。

西渡 美春 (にしわたり みはる)

淡島神社の宮司の娘で、西渡秋穂の妹。兄想いの優しい子供だが、病気のせいで床に臥せっていた。諸事情により、のちに家族と離れ、黄金原こすも、日嗣、能瀬王士らと幽宮でともに生活することになる。人形を抱くと淡島神社の神を降ろすことができるため、次代の日巫子候補となる。

天狼 景正 (てんろう かげまさ)

狼の神「大口の真神」を祀った真神神社の神和(かむなぎ)。犬神を呼ぶことができる。日嗣とともに99代目日巫子を守る者として働いていた過去があり、99代目日巫子を慕っており、その忠誠心は厚い。しかし紆余曲折の末、100代目の日巫子となった黄金原こすもに対しても心を開くようになった。のちに病に倒れた日嗣から直々に頼まれ、代わりの巫女守としてこすもと行動をともにするようになる。

海道 由良 (かいどう ゆら)

資産家である海道家当主の息子、虎之助の愛人の娘。戸籍上は女性だが、男性の心を持つ性同一性障害であり、風貌、ふるまいも含めて、周囲には男性として認識されている。16歳の時にニューヨークで遭った事故が原因で失明するが、3年後に99代目日巫女の角膜を移植されたことで視力が回復した。しかし以降は他人には見えないさまざまなものが見えるようになってしまった。 日本に帰国して海道家の呪いに関わった際、黄金原こすもと出会い、幽宮で巫女守としてともに生活をすることになる。のちに、太陽神「アマテラス」の招神に成功し、次代の日巫子候補となる。その後、八条秀人から氷雪神の主人の座を継ぐ。

99代目日巫子 (きゅうじゅうきゅうだいめひみこ)

日本最高位の巫女である歴代日巫子の、99代目を務める少女。太陽神「アマテラス」の血を継ぐ者であり、歴代の日巫女とは比べ物にならない強力な力の持ち主。正義感が強く、まっすぐで神秘的な彼女を崇めるものは多い。事故により帰らぬ人となるが、その際、心臓を当時病気だった黄金原こすもに、角膜を海道由良に提供した。

砂崎 銃郎 (さざき じゅうろう)

一部マニアに熱狂的な人気のある人形師の男性。左目に眼帯をかけており、にやけた顔が印象的。99代目日巫子の頭部を模した人形を作り淡島神社に持ち込み奉納したり、歌手のシーナの人形を制作するなど、人形と死に関わることの多い謎の人物。彼が手掛けた等身大の人形は、魂を持ち、生きている人間のように動き出すことがある。

八景 周水 (はっけい しゅうすい)

京都の「貴船神社」の神和(かむなぎ)で、水の神である龍神を呼ぶことができる青年。特徴的な京都弁を使う。幽宮が用意した日嗣の代わりの巫女守として登場する。100代目日巫子である黄金原こすもが、守るに値する人物なのかどうかを判断するためにこすものもとを訪れた。少々荒っぽいところがあるが、強い力を持っており、のちに海道由良を慕い、彼女からも信頼を得て、由良の巫女守として主に行動をともにすることになる。

日吉 (ひよし)

幽宮で神職を務める女性。99代目日巫女に心酔していたが、彼女に代わり、100代目日巫子となった黄金原こすもに対しての信頼は次第に厚くなっている。慣例により、101代目の日巫子候補を確立するために動き始めている。

警視総監 (けいしそうかん)

警視庁で警視総監を務める男性。警察で扱うさまざまな事件のうち、この世の者ならざる者による、警察で手に負えないような事件、事故について、日巫子の力を頼りに幽宮に依頼にやってくる。

氷雪神 (ひょうせつしん)

雪や氷を司る神様。残酷に人間を愛し、その人間が裏切ることを決して許さない。嫉妬深く、主人への想いが強すぎるせいで、主人である白羽司に危害を加えようとする者や、司が好意を抱く相手に対して危害を加えてしまう。その愛情の強さは加減を知らず、主人にも氷雪神を制することはできない。のちに主人は八条秀人に移り、さらに移って海道由良を主人とするようになる。

八条 秀人 (はちじょう ひでと)

宮家及び徳川将軍家の血を引く22歳の男性。頭脳明晰で切れ者。野心家で、常に場のリーダーとなる生まれながらの素質を持つ。白羽司から意図的に氷雪神を自分に移すことを画策し、その力を手に入れたうえで、日巫子である黄金原こすもに結婚の申し込みをする。のちに氷雪神を失い、オニワタリを手に入れるも、その器に見合わなかった結果、鬼が取り憑いてしまい、攻防の末に左手を失うこととなる。

安芸宮 真理子 (あきのみや まりこ)

宮家の血筋を引く「花頂宮家」の末裔。しかし婚外子だったため彼女の存在は大きくは知られていない。日々心に浮かぶものを絵に描くことでこれから起こることを予知できる特殊な能力を持っている。そのため、その力を我が物にしようと、彼女を妻にと願う者も多くいる。ある日、絵を描いていたところ何者かによって誘拐され突然行方不明となる。

生駒 実勝 (いこま さねかつ)

飲料のCMに出演している元モデルで俳優の男性。馬術に長けている。実家は小さな神社で、「天斑駒」という馬を祀っている。その馬がスサノオに殺された馬であることから、スサノオを敵視しており、黄金原こすもを自分のものにしようと画策する。

小島 大輔 (こじま だいすけ)

能瀬王士と同じ学校に通う同級生の男子生徒。いじめが要因となり不登校になっている。安が町中に下げてまわっていたカラスの作り物を、入院中の彼に代わり下げ続けている。

(やす)

ホームレスの男性。気の良いおじさんで、孤立していた小島大輔に対して唯一声をかけ、話をすることがあった人物。町を守る風習として昔から行われていたこととして、カラスの作り物を吊り下げてまわっていたが、不良少年らに目を付けられ、暴行を受けたことで意識不明となり入院中。

少彦名神 (すくなひこなのかみ)

田畑が広がり穏やかな街並みだった町を悪しきものより守っていたとされる神様。その姿は一本の足であったり、笠と蓑をまとった案山子のようであったりとさまざま。

曽根 美南 (そね みなみ)

神隠しに遭ったとされる津田加奈と同じアパートの隣に住む女性。加奈を探すため、有名な占い師に捜索を頼もうとしていたところ、日嗣と出会う。

緒方 和成 (おがた かずなり)

神隠しに遭い行方が分からなくなっている津田加奈の彼氏。加奈を探すために曽根美南とともに占い師を頼ろうとしていたところ、日嗣と出会う。

津田 加奈 (つだ かな)

会社の寮であるアパートの自室から行方不明になった女性。朝食を作っている途中、火の着いたコンロにフライパンが乗った状態で、鍵もチェーンもかかった部屋から忽然と姿を消した。

一言主大神 (ひとことぬしのおおかみ)

悪いことも善いことも一言ならその願いを叶えてくれる神様のこと。使神は大蜘蛛の姿をしている。

園部 奈桜 (そのべ なお)

白髪村に住む女子中学生で、野田あやのとは友達同士。99代目日巫子と出会ってから、見えるはずのない物が見えるようになる。村で次々に人が死んでいくことに恐怖を感じている。

野田 あやの (のだ あやの)

白髪村に住む女子中学生で、園部奈桜とは友達同士。体育の授業中、上から落ちてきた鉄パイプにより危険な目に遭うが、日嗣のおかげで一命をとりとめる。

二階堂 沙月 (にかいどう さつき)

日本屈指の資産家、二階堂家の長女で二階堂晃太郎の双子の妹。兄が亡くなってから、耳が聞こえない状態が続いている。死にたいという気持ちが強く、周囲には死神がつきまとっている。

二階堂 晃太郎 (にかいどう こうたろう)

日本屈指の資産家、二階堂家の長男で二階堂沙月の双子の兄。兄妹仲が良く、ナイーブな妹をいつも気遣い、守っていたが、10歳の時に交通事故で帰らぬ人となった。

五条 美羽 (ごじょう みう)

「犬頭神社」の巫女を務める女性。99代目日巫子に心酔していた者の1人。「100代目日巫子」である黄金原こすもに対して思うところがあり、彼女に代わって自分が日巫女になりたいと考えている。

刀屋の娘 (かたなやのむすめ)

刀屋「和泉刀剣屋」の娘。日嗣に想いを寄せているが、彼を想うあまり、「犬頭神社」に黄金原こすもの消失を願う。

高塔 瞬 (たかとう しゅん)

17歳のアイススケーターの青年で、世界進出を目指す実力の持ち主。自分が生まれた時に手に握っていたという石が成長していることを相談するため、黄金原こすもを呼ぶ。

村松 翔太 (むらまつ しょうた)

吸血鬼殺人事件を捜査している刑事の男性。神や目に見えないものの存在を信じない性格のため、日巫子である黄金原こすもや、巫女守である日嗣の存在に半信半疑。

ゴスロリの少女 (ごすろりのしょうじょ)

ゴシックロリータ風の服を着た少女。近頃連続して起きている殺人事件の現場で目撃されているため、その行方が警察によって追われている。

近藤 まさこ (こんどう まさこ)

末期がんで入院中の女性。女手一つで育てた大学生の息子を1年前に亡くした。事件性はあったものの、警察が立件できず、その恨みを晴らそうと神社でお百度参りを行っていた。その後心労がたたり病に倒れる。

姥神 (うばがみ)

乳母が殉死したり、子の身代わりになった時に生じる神で、本来は子供の無事を祈る神。姥神のお礼参りには竹筒にお茶を入れて供えるのが慣例となっている。

白羽 司 (しらは つかさ)

北白高校の男子生徒。彼をいじめていた生徒が次々殺されるという事件が起き、容疑をかけられる。人にも動物にも嫌われると自負する。いじめを苦に自殺しようとした際、氷雪神と心を交わしたため、常に氷雪神に守られている。

ひな

ママと二人暮らしの幼い少女。母親想いの優しい子で、いつも母親の幸せを願っている。体が弱く、喘息発作を頻繁に起こしては入退院を繰り返すなか、黄金原こすもと出会い、仲良くなる。

ママ

ひなの母親。夫は出ていったきり帰らず、入退院を繰り返す病弱な娘を抱え、孤独に苛まれ、貧困にあえいでいる。そのため、借金を繰り返し、育児も放棄気味となっている。

稲荷神 (いなりしん)

全国に5万の社を持つ狐の神様。子狐の姿をしており、怒らせると集団となって襲い来るという。真っ直ぐな心で祈るひなの願いを叶えようとひなの前に姿を現す。

高円 しいな (こうえん しいな)

アイドルグループ「ほーかご7」のメンバーの1人で、無口でクールなキャラクターを担当している。グループ内で横行しているいじめまがいのことに悩み、疲れている。現在の顔は整形によるものだと噂されている。

京野 百合 (きょうの ゆり)

アイドルグループ「ほーかご7」のメンバーの1人で、おっとりした姫キャラクターを担当している。しかし実際は気が強く、気に入らない仲間を陥れようと衣装を切ったり、本番中に裾を踏んだりと、嫌がらせを繰り返している。

青野 まりん (あおの まりん)

アイドルグループ「ほーかご7」のメンバーで、リーダーを務めている。気が強く、高円しいなにきつくあたっていたが、大量の犬神に襲われ、マンションから転落し、意識不明の重体で現在も入院中。

犬神 (いぬがみ)

人の心に棲みつき、闇の部分を増幅させるという神様。米粒大から小動物くらいの大きさまでそのサイズはさまざまで、代々家に受け継がれると言われている。犬神憑きの人の感情のままに周りに凶事を起こすという。

西渡 秋穂 (にしわたり あきほ)

淡島神社の宮司の息子であり、神和(かむなぎ)。死者が蘇り、帰って来るといわれている問題について、なにか事情を知っている様子。

小池 ほのか (こいけ ほのか)

能瀬王士の同級生の女子生徒。王士に想いを寄せているが、気付いてもらえずにいる。友人とダンスの練習をしていた公園で猫を拾い、病院へ連れて行ってあげた。鶏をたくさん飼っており、生き物に優しい。

海道 羊子 (かいどう ようこ)

海道家当主の娘で、呪いが自分に波及することを怖れている。海道由良が、想像していた人物と違い、その風格ある姿に態度を一変させ媚びるようになるが、彼女が女性であることを知り、また態度を変える。海道家の使用人に対して、必要以上に厳しく接し、恨みを買いやすいタイプの女性。

橋田 美咲 (はしだ みさき)

海道家で使用人を務める橋田一家の娘。海道由良と接し、互いの手が触れた際双方に痛みが走る。海道家の人間には良い感情を抱いていないが、由良だけは慕っている。

大平 (おおひら)

能瀬王士のクラスメイトの女子生徒。黄金原こすもと王士の電脳神社の話を立ち聞きした後、電脳神社を使って鬼の手を発見し願いを叶えようとして鬼の霊を出現させてしまう。

石巻 征治 (いしまき せいじ)

みなみと同棲中の彼氏で、消防士。海道家の消火活動に参加した際、鬼の手を拾い、持ち去った。それからというもの、消防士として目覚ましい活躍を見せ、表彰もされている。

みなみ

石巻征治と同棲中の彼女で、好奇心旺盛な変わり者。彼が持ち帰った鬼の手を使って「征治を有名にしてあげたい」という願いを叶える。また、電脳神社を立ち上げ、鬼の手を拡散させている。

美玖 (みく)

黄金原こすものクラスメイトの女子生徒。自殺により亡くなった歌手、シーナが歌う「君恋する歌」を夜中に聞いた際、亡くなったはずの母親に遭ったと語っている。

シーナ

ラブソングが人気だった女性歌手。しかし5月10日自室で突然自殺を図り、ナイフの刺し傷によって亡くなった。もともと浮き沈みの激しい性格だったことと遺書が発見されたことにより、突発的な自殺と判断された。その後、生前にレコーディングされたとして新曲「君恋する歌」がリリースされ、この曲を聞くと亡くなった人に会えるという都市伝説を作り大ヒットとなる。

敷島 拓人 (しきしま たくと)

歌手のシーナを発掘して売り出した、プロデューサーの男性。シーナとはかつて恋人関係にあったが、彼女が自殺した時にはすでに別れていた。

宮地 はるか (みやじ はるか)

歌手のシーナの付き人だった女性で、シーナの遺体を最初に発見した人物。シーナの歌の大ファンでもある。シーナと交際していた敷島拓人が、何度も浮気を繰り返してシーナを裏切っていたことを知り、彼を嫌悪している。

桂 美和 (かつら みわ)

かつて、よく桜王の絵を描いていた地元の画家の女性。5年前にスケッチをしていた際、桜王のそばに画材を置いたまま行方不明となっている。

桜王 (さくらおう)

「桜郷村」にある桜の巨木、及びその神。5年前に一度枯れそうになったが、樹木医の力により再び生気を取り戻した。神の姿が見られるのは女性のみで、その姿は男性のようであるという。村で連続して起こっている、少女の意識がなくなる事件に何らかの関わりがある様子。

松坂 千夏 (まつざか ちなつ)

テレビドラマで活躍中の女優。偶然通りかかった古道具屋で手に入れた鏡を夜中に覗いたところ、そこに自身が共演女優を殺す姿を見る。この事実に怯え、日巫子である黄金原こすものいる幽宮に鏡を持ち込み、相談に訪れる。

村木 俊介 (むらき しゅんすけ)

疑惑の鏡を作ったとされている男性で、海外では賞も受賞している鏡アーティスト。すでに故人で、妻に刺されて亡くなったとされている。

源 結香 (みなもと ゆいか)

彼女が行く先にはたとえ砂漠であろうとも雨が降るという、雨女として知られる女優。長野県でロケ中に倒れたが、現在もそのまま意識が戻らずにいる。

久美 (くみ)

長野の蕎麦屋「三河屋」の女将。幼なじみである源太一の娘、源結香を心配し、店を訪れた黄金原こすもに助けを請うように太一を説得する。

源 太一 (みなもと たいち)

源結香の父親。娘の結香について話を聞きに来た黄金原こすもたちを当初は警戒していたが、幼なじみの久美からの助言を聞き入れ、こすもに助けを請う。

(みやび)

巫女カフェ「舞舞」で店員を務める少年。突然いなくなった姉を探すため、女性になりすまして巫女カフェに潜入し、調査を行っている。

井畑 (いはた)

店員の女性がロッカールームから神隠しのようにいなくなっている事件が連続して起きているという巫女カフェ「舞舞」の店長を務める男性。

神葉 ちひろ (かんば ちひろ)

心臓病を患っており、入退院を繰り返している少年。神や霊などの存在を見ることができる能力を持っている。日嗣のことを慕っている。

和泉 桜子 (いずみ おうこ)

目が不自由なヴァイオリニストの少女。人懐こく、人目を惹く美少女で、過去に何度も誘拐事件に巻き込まている。目は見えないが、光を感じることはでき、小さい頃から人のオーラのようなものを感じ取れた。そのオーラは体調によって変化するため、人の不調を把握することができる。

容疑者 (ようぎしゃ)

和泉桜子に好意を抱いていた弟のために、彼女をさらい、話をしようとした誘拐の容疑者。何者かによって瀕死の重傷を負い、右足を失った状態で病院に担ぎ込まれた。

天使様 (てんしさま)

和泉桜子を守っている者。その正体は不明だが、桜子を守った後にはいつも羽根のようなものが降って来ることから、「天使様」と呼ばれている。事件に際して、天使様の働きにより桜子は常に無傷で助かっているが、その犯人と現場はいつも悲惨な状態となっており、生きて帰る者も少ない。そのため、天使様が何者なのかを知る者もいない。

高徳 陽菜 (こうとく ひな)

新幹線の中で能瀬王士に襲い掛かった少女。4歳の頃急に変わってしまい、「キツネツキ」と言われるようになった。お祓いや滝行、催眠術など、さまざまな手を講じてみたものの、変化はなかった。また、彼女が気に入らない人物に対してはさまざまな「呪い」症状が現れ、事故や不幸が起こる。海道由良を慕っている。

龍王 (りゅうおう)

吉野の金峰山にある龍王院に祀られている水の神様。首から上の病気を治してくれることで知られている。手術後目覚めない日嗣のため、黄金原こすもたちに助けを求められる。

本郷 徳子 (ほんごう とくこ)

西渡美春の祖母にあたる女性。長野県の山中に住む資産家で、認知症気味。遺産相続のための遺言状を作成している途中で倒れ、床に臥せっている。

本郷 太郎 (ほんごう たろう)

本郷徳子の長男で、本郷静香の夫。自分と妻が母親の面倒を見ているのに、自身の事業に援助してくれない母親に対して不満を持っており、他の誰にも遺産を分け与えたくないと考えている。車で外出中、ブレーキが利かなくなり事故に遭って怪我を負う。

本郷 静香 (ほんごう しずか)

本郷太郎の妻。認知症で寝たきりの義母を夫に代わり甲斐甲斐しく介護をしている。一方で、日々義母から辛くあたられているため、ストレスを抱えており、衝動的に医療器具の電源を抜こうとしてしまうこともある。

香川 結衣 (かがわ ゆい)

黄金原こすものクラスメイトの女子生徒。徳永に密かな想いを寄せている。最近、覚えのない場所での目撃情報が増えており、困っている。

徳永 (とくなが)

黄金原こすものクラスメイトの男子生徒。日嗣不在の間、校内で単独行動が多いこすもに起きる数々のトラブルから彼女を守った。こすもに想いを寄せており、巫女守という存在に興味を持っている。

高山 明穂 (たかやま あきほ)

自分の彼氏を奪われたと思い込み、親友の少女を殺すように死神に願ったことで、その友達を亡くしてしまった。現在、彼氏を奪われたというのは実は誤解であったことに気付き、後悔している。

西野 みゆり (にしの みゆり)

「死神神社」と呼ばれている稲荷の管理をしている家の娘。面白半分で巫女のコスプレをして、稲荷の掃除などをしていた。神社に深刻なお願いをしに来た人のために、神様に祈っていた。

淳也 (じゅんや)

自室引きこもっている男子高校生。淳也の母親に頼まれ、幼なじみである西野みゆりが月に一度、電話で話し相手となっている。

竜太 (りゅうた)

安芸宮真理子を誘拐した一味のうちの1人。昨日から、小学生の娘が帰宅せず、別れた妻が連れて行ったのだろうと思いながらも心配している。

すばる

父親から虐待を受けていた少年。ある日ベランダで倒れていたところ、雪虫とともに雪婆が現れて連れ去られた。それ以降、行方不明となっている。

山野 勇矢 (やまの ゆうや)

能瀬王士のクラスメイトの男子生徒。別れたお父さんは「鶏神社」の神主。現在は父親と離れ、病気がちな母親と暮らしており、アルバイトに明け暮れる日々を送っている。

お父さん (おとうさん)

山野勇矢の父親。オニワタリを祀った「鶏神社」の神主で、その身にはオニワタリが憑いている。癌で老い先が短いことを知り、息子に神社を任せようと考えていた矢先に、何者かに命を脅かされ、路上で倒れる。

オニワタリ

「鶏神社」に祀られた鬼神。ニワトリは、「荷渡」や「水渡」の変形であり、さらには「鬼渡」の変形であるとされている。オニワタリは、黒い靄のような姿をしており、強い力を持つ。そのため、手に負えない人間がその神を降ろすと、心を鬼に食われ、人でなくなると言われている。

乙待 美雨 (おとまつ みう)

京都にある一条戻り橋の近くで仕事をしている人形師の女性。砂崎銃郎の手掛けた日嗣の等身大人形に、欠けていた腕をつけた。

揚羽姫 (あげはひめ)

巫女の恰好で占いをするタレントの女性。「あなたの未来を守ってア・ゲ・ハ」が決まり文句。知名度が低いため、世間からは「エセ占いタレント」と揶揄されている。

愛田 くるみ (あいだ くるみ)

大人気子役タレントの少女。ドラマのロケのために向かった先の山中で、体の不調を訴え入院。その後意識不明となり昏睡状態に陥る。

大賀 沙羽 (おおが さわ)

オシラサマを祀る大賀家の娘であり、揚羽姫の付き人として常に行動をともにしていた双子の姉妹。以前、生きる気力をなくしていた揚羽姫に声をかけ、オシラサマに願うように言い、「占い師の揚羽姫」を作り上げた張本人。揚羽姫が正気を取り戻してからしばらくは消息不明となるが、名雲虹太と芸能活動をともにしていた。

大賀 沙菜 (おおが さな)

オシラサマを祀る大賀家の娘であり、揚羽姫の付き人として常に行動をともにしていた双子の姉妹。揚羽姫が正気を取り戻してからしばらくは消息不明となるが、名雲虹太と芸能活動をともにしていた。双子の大賀沙羽を怖れている。名雲虹太に想いを寄せている。

名雲 虹太 (なぐも こうた)

イケメンのパティシエとして人気を集めている男性。高速道路で大事故を起こし、首の骨を折る重傷を負い、一時は絶望的と言われるも回復し、奇跡の生還を果たす。

柊 竜香 (ひいらぎ りゅうか)

蛇を祀った「長虫神社」の巫女。巫女守の「雷」と授かり婚をし、妊娠中。その後、日巫子を殺すと予言されたしるしを右手に持った赤ん坊を産む。

(おに)

鬼の面を付け着物を身に着けた謎の人物。小学生の少年が連続して包丁で襲われている事件の犯人と思われる。身体能力は人間をはるかに超えている。

タケル

岩手県に住む少年。川の上にいる謎のモノによって川の事故が起き、人が亡くなることが見える。しかしそれを予知するために周囲の子供からは嫌われ、いじめられている。

前田 なずな (まえだ なずな)

17歳で自殺し、亡くなった少女で前田せりなの姉。彼女のために奉納されたムサカリが、ペンキをかけられ、斬りつけられた。

前田 せりな (まえだ せりな)

自殺した前田なずなの妹。姉のためにムサカリを描き奉納した。姉の横に描いたのは、姉が好きだった三門明卓真に似せた男性だったが、それが知らず知らずのうちに八景周水に似てしまっていた。

三門明 卓真 (みかどめ たくま)

自殺した前田なずなと付き合っていたという男性。女性にだらしなく、軽い性格。ムサカリに描かれてからというもの、車に突っ込まれたり、火事に遭ったりと災難が続いていたため、原因と思われるムサカリにペンキをかけ、斬りつけた。

三門明夫妻 (みかどめふさい)

三門明卓真の両親。日巫子としてやってきた海道由良を、息子の嫁にしようと画策。また、息子と似ている八景周水の出生に覚えがあり、関わりがあることをほのめかす。

山田 夕子 (やまだ ゆうこ)

安芸宮真理子の家で使用人として働いている女性。幼い頃に虐待に遭い、瀕死の状態で発見された過去を持つ。そのため、見た目は幼い子供くらいの背格好をしている。

集団・組織

ほーかご7 (ほーかごせぶん)

大人気の7人組女性アイドルグループ。メンバーが続けてトラブルに遭い、次々に入れ替わっているため、いわくつきのアイドルとして有名。ファンの間では呪われているという噂まで流れている。

海道家 (かいどうけ)

日本の名門の資産家。引退した当主は病で瀕死の状態で、その妻は他界。当主の子である長男の虎之助は会議中に突然ビルから投げ出されるようにして転落死。次男の竜次郎はその知らせを聞き駆けつける途中で車が横転し圧死。虎之助や竜次郎の子供たちも数週間のうちに次々と変死を遂げている。残された一族は、そのすべてを虎之助の愛人の子が恨んで起こした呪いによるものであると恐れ、海道家に集まり結界を張ることで身を守っているが、その結界を張っている宮司も次々に倒れてしまっている。

場所

幽宮 (かくれのみや)

代々日巫子と、彼女を守る巫子守が住む場所。横浜ランドマークタワーにある本部「天の宮」、金沢にある「雪の宮」の他に、「京の宮」「華の宮」「水の宮」など複数あり、日本各地に点在している。横浜ランドマークタワーについては、建物全体が大きな人造の岩倉で、神の御座所となっており、他の幽宮とは一線を画す。

犬頭神社 (けんとうじんじゃ)

「犬頭」が祭られた神社。鳥居から矢代まで青銅をくわえ、四つ這いで行くと願いが叶うという言い伝えがあり、それが流行した時代もあったというが、近年ではその願掛けを行う者は見かけなくなった。昔、主人が寝ていた傍で吠えた犬が主人の怒りを買い、斬り殺されたが、その犬の首は宙を飛び主人を襲おうとしていた蛇にかみついたという。その犬を哀れに思った主人が犬を丁重に祀ったことがこの神社の始まりとされている。

淡島神社 (あわしまじんじゃ)

千葉県緑が浦にある、婦人病や安産の神様が祀られている神社。最近、この神社で祈ったところ、亡くなったはずの人物が蘇ったという話が出始めている。神様の元となった人物は、住吉大神の妃と言われ、婦人病で淡島に流され神になったという言い伝えがある。神社では人形供養も行っている。

汐汲峠 (しおくみとうげ)

子供の乗った車が軒並み行方知れずとなる神隠しが多発しているトンネルがある場所。そのトンネルを抜けた先には「汐汲村」がある。

一条戻り橋 (いちじょうもどりばし)

京都にある有名な橋のこと。その橋を通った時、死人が生き返ったり、鬼に会ったなど、昔から不吉な噂の絶えない場所。ほかにも安倍晴明の式神がそこに隠れたという話や、刑場になったという話もある。また、戦場に行く者が「戻ってくるように」と願い渡った橋でもある。さまざまな逸話がある場所であり、生と死をつなぐ橋となっている。

虫封じの井戸 (むしふうじのいど)

日嗣が意識不明になる原因を作った井戸。この井戸の水を覗くことによって井戸神様が悪鬼を吸い取ってくれるという言い伝えがあり、古くから愛されてきた。ある時から井戸水が赤黒く濁ったため、調査を試みるも、その都度虫が山のように湧き出てくるようになった。それ以降ふさがれてしまった井戸から地響きが聞こえるようになる。

その他キーワード

日巫子 (ひみこ)

太陽神「アマテラス」の血を継ぐ日の巫女。神を呼ぶ力を持っており、日本で最も強力な力を持つとされている。日巫子の力は冬至の日には最小となり、また、夜や雨天など太陽の恩恵が少ない場合にも小さくなるとされている。初代の日巫子である卑弥呼が暗殺されて以降、表舞台に出ることはなく幽宮で暮らし、その存在は一般には知らされていない。 時の為政者は決断に困ると神の力に頼っていたため、日巫子は日本を守る要の存在と言える。また、代替わりするため、次の代が決まっていれば、引退し結婚することも可能。ただし、宮家の血筋で神を降ろせる男性に限っては在位の状態で日巫子と結婚することができる。

(いし)

高塔瞬が生まれた時に手に握っていた石。高塔を愛した女性が彼を守るために時を超えて生まれ変わったもの。高塔の身に病気やケガなどが発生するたびに、この石が彼を癒した。そのたびに少しずつ石は大きくなっていったため、高塔の手に負えなくなり、黄金原こすもの手に託されることとなる。

鬼の手 (おにのて)

鬼の手のミイラ。その手にこもった力は拾い主の憎悪と合体して呪いとなる。それは人間を何人も殺すほど強力な力を持つ。また、その実体は人型をした靄のようなもので、その姿を見ることができる人は限られている。

電脳神社 (でんのうじんじゃ)

インターネット上で何でも願いを叶えてくれると評判のバーチャル神社。すぐにURLが変わってしまうため、皆が夢中になって探しているという。その祭神は鬼の手であり、ホームページ上のどこかに隠されている鬼の手の写真を見つければ、その画像を持ち帰ることができる仕様になっている。

(かがみ)

花の絡んだ金の淵の鏡。その鏡を覗くと、人が誰でも持っている砂粒ほどの小さな思いを、大きく拡大した映像を見せてくるため、自分にとって恐ろしい場面が映し出される。

廃墟の鏡 (はいきょのかがみ)

最近流行している都市伝説。岡山県にある廃墟にあった鏡を手にし、覗いた人物が次々に変死を遂げるというもの。鏡には呪いがかかっており、その鏡の行方はわかっていないと伝えられている。

氷冬の将軍 (ひょうとうのしょうぐん)

最近1か月、連続して起こっている殺人事件の犯人と思われる人物が予告状に記している名前。殺人の日時を記した予告状を送りつけたうえで、氷雪神を利用した殺人が遂行されている。

蒼ざめた水 (あおざめたみず)

悪しき縁を切るという伝説の水のこと。都市伝説として口コミで広がっており、縁を切りたい男性にその水を飲ませるとその男性は死に至り、縁が切れると言われている。

キツネツキ

まるでキツネが取り憑いたかのように変わってしまった人間のこと。キツネのような動作をし、犬を嫌い、食物を貪る。使い魔を出し、人に害をなす者もいるという。

オシャグリ様 (おしゃぐりさま)

信州に伝わる自然神。お参りすれば「失せ物が出てくる」「記憶がよみがえる」と言われている。願いが叶ったらしゃもじをまつることから、この名が付いた。大きな木の下の小さな祠に居り、「御社狐狸様」とも書く。

影わずらい (かげわずらい)

魂が体から出て勝手に飛んだり歩き回ったりする、いわゆる生霊のことで、「離魂病」とも言われる。その様は、実体を持たないながらも、まるで本当にそこにいるかのように見える。

雪婆 (ゆきんば)

子供をさらうと言い伝えられている妖怪。このほかにも、「雪姥」「雪女郎」「白粉婆」など地域によって呼ばれ方は異なっているが、いずれも雪の日に子供をさらったり、ツララを抱かせたりという悪さをすると言われている。その真意は雪の日に子供を外に出すなということだという。

オシラサマ

願えば命をも守ってくれるという神様。昔、長者の娘に恋した馬が、娘の父親に殺された無念から、娘を道連れに昇天した。翌年天から降ってきた虫は蚕となり養蚕が始まり富をもたらしたとされている。東北地方では桑の木で作った男女一対の御神体をオシラサマと呼ぶ。現状は虫が宿主の体内に入り込むことで宿主を操る、もしくはこん睡させており、その原因となっている。

ムサカリ

若くして亡くなった者へ、あの世で寂しくないようにと花嫁や新夫と一緒の絵を奉納する風習のこと。このムサカリに描かれる相手の絵は、決してこの世にいる人間を描いてはいけないことになっている。この世にいる人間を描くと、その者も冥界に連れていかれると言われており、それは「ムサカリの呪い」と呼ばれている。

鬼子母神 (きしもじん)

一般的に子供を守ると言われている神のこと。昔、インドで人間の子供を捕まえては食べてしまう鬼女がいた。釈迦が鬼女の子供をさらって隠したことで、鬼女は悲しみ、初めて自分の悪行に気付く。それ以降は子供を守る神として崇められるようになったと伝えられている。鬼子母神が人間の代わりに柘榴(ざくろ)を食べるという説や、柘榴を食べると子宝に恵まれるなど、鬼子母神には柘榴のイメージが結び付けられている。

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