天堂家物語

天堂家物語

人を助けて死ぬことを目的に、危険を顧みず人助けに励む少女が、伯爵令嬢の身代わりとなって名家に嫁ぐ。何かと不穏な噂の絶えない名家で知り合った冷徹な令息と、彼を生きるための理由にした少女の、命を懸けたラブストーリー。「ララDX」2014年9月号から連載の作品。

正式名称
天堂家物語
ふりがな
てんどうけものがたり
作者
ジャンル
時代劇
レーベル
花とゆめコミックス(白泉社)
巻数
既刊14巻
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概要・あらすじ

舞台は明治維新後の日本。育ての親である「じっちゃん」を病で亡くした、孤独な少女がいた。彼女の願いは、人助けをして死ぬこと。そして空の上でもう一度じっちゃんに会うことだった。そんな彼女はある日、川に身を投げた伯爵令嬢の鳳城蘭を助ける。蘭はいわくつきの天堂家に嫁ぐことを怖れ、自らの命を絶とうとしたのだ。そんな蘭に少女は、自分が蘭になり代わって天堂家へ赴くことを約束し、蘭に逃げて生き延びるようにと伝える。

一方で、跡目争いが起きている天堂家では、家の人間が変死したり、使用人が行方不明になったりとよくない噂が絶えず囁かれていた。そんな天堂家の令息・天堂雅人は、嫁いできた蘭が偽物であることをすぐに見破ってしまう。一度はその罪をとがめ、少女を厳しく叱責しようとするも、その少女が自分の命をかけて人助けをしようとしていることに興味を持つのだった。

やがて少女は新たに「らん」と名乗り、日常は使用人として、時には雅人の婚約者の「鳳城蘭」として、天堂家で新しい暮らしを始める。そしてさまざまな策略、謀略が渦巻く天堂家の跡目争いに巻き込まれていくこととなる。

登場人物・キャラクター

らん

身寄りのない名無しの少女。幼い頃、山に捨てられていたところを、山奥で1人で暮らしていた老人「じっちゃん」に拾われた。じっちゃんから「チビ」と呼ばれ、家族のように育てられたが、じっちゃんが病で亡くなり、天涯孤独の身となった。それ以降は、じっちゃんから教え込まれた体術、棒術、弓術などの武術や、薬法、蘇生法など、さまざまな技術を用いて人を助け、「困っている人がいたら身を投げうってでも助けろ」というじっちゃんからの教えを胸に、自らの命をまっとうすることを望んでいる。 じっちゃんのいないこの世に未練はなく、自殺を図ったこともあったが、死にきれなかった。ある時、川から流れてきた鳳城蘭を助けたことで、彼女の身代わりを務めることになる。その後、天堂雅人の策略にはまり、立花修一郎の遠縁の娘「らん」として、天堂家の使用人として働くことになる。 当初はただ恐ろしいだけの存在だった雅人に対し、時間をともにするうちにだんだん理解できない感情が芽生え始める。

天堂 雅人 (てんどう まさと)

素封家である天堂家の今は亡き長男・天堂貴人の息子。姿かたちが父親によく似ていることを理由に、叔母の天堂操からは何かと貴人の代わりをさせられており、強い反感をにじませている。広い天堂家の敷地内にある離れで暮らしており、離れには決まった人間の出入りしか許していない。婚約者の鳳城蘭の身代わりとなってやって来たらんと時間をともにするうちに、彼女に惹かれていく。 らんを自分のもとに置いておくために、彼女が執着するものをなくそうとらんが山で暮らしていた小屋に火をつけるなど、目的のためには手段を選ばない。均整の取れた顔だちで、年齢にそぐわない威圧感を持っている。表向きには、冷徹で無表情を装っているが、らんに対しては特にあまのじゃくで、感情豊かないじめっこになりがち。 自分の存在が、天堂家の跡目争いの火種となっているため、周囲に味方がいないことを自覚しているが、天堂家そのものに対し、譲れない想いを秘めている。

鳳城 蘭 (ほうじょう らん)

鳳城伯爵家の三女で、左目尻にほくろがある女性。天堂雅人に嫁ぐことが決まっていたが、天堂家の跡目争いに巻き込まれ命を狙われてもおかしくない状況にあることを聞かされ、怖気づいてしまう。そのため、自害しようと人のいない隙を見て川に身を投げたが、偶然通りかかったらんに助けられた。事情を知ったらんの提案により、らんが鳳城蘭の身代わりとなり、自身は身を隠すことになる。

天堂 操 (てんどう みさお)

天堂直人の姉であり、天堂雅人にとっては叔母にあたる女性。兄である亡き天堂貴人に対して家族以上の歪んだ愛情を持っており、兄に生き写しの雅人に兄の面影を見ている。心が病んでおり、自分に従わない者には暴力的になる一面を持つ。天堂家の母屋に住んでいる。

天堂 貴人 (てんどう たかと)

天堂操と天堂直人の兄で、天堂家の長男。聡明で人望の厚い人物だったが、独身のまま戦争で帰らぬ人となった。彼が亡くなったことにより、直人が家督を継ぐことになったが、天堂貴人の息子を自称する貴人に良く似た天堂雅人の存在が明らかになり、跡目争いが巻き起こる。

立花 修一郎 (たちばな しゅういちろう)

天堂家で天堂雅人と生活をともにしている書生の男性。かつて戦争で命を失うところだったのを上官の天堂貴人に救われた過去があり、その恩義に報いるため、天堂家に仕えている。雅人の忠実な臣下であり、天堂家で暮らし始めたらんに対して教育を施したり、礼儀作法を教えたりといった役割も担っている。左の肘から先は戦争で失ったため義手を装着しているが、それが見えないように普段は常に手袋をはめている。

天堂 直人 (てんどう なおと)

天堂雅人の叔父にあたる男性。天堂貴人亡き後、天堂家の家督を継ぐはずだったが、雅人が現れたことによりその処遇は宙に浮いている。いたずら好きで、茶会の時には雅人とらんを罠にはめようと落とし穴を用意したが、あと少しというところで自分が落ちる羽目になった。その後、自分に恥をかかせたとらんを逆恨みし、割れた瓶を手に襲い掛かろうとする。

タキ

天堂家の使用人を務める女性で、噂とおしゃべりが大好き。らんと一緒に働くことになり、仲良くなった。何かとらんに話しかけることが多いが、いつも気のない返事ばかりされているので、よけいにらんのことを気にかけ、心配もしている。らんと2人で内緒のおつかいに出た際、偶然にもらんの優れた体術を目の当たりにし、思いがけず2人だけの秘密を共有することになる。

(ふき)

下町で私娼として働く女性。噂では勧められた結婚が嫌で家出をし、下町で働いているのだという。しかしある時、想い人ができたことを理由に逐電した。幸せになりたい一心でのことだったが、結果として身を引き受けてくれた下町の旦那を怒らせてしまい、命を狙われることになる。

(からす)

川で溺れていたところをらんに助けてもらった男性。子供の頃、右目をからすにつつかれて失ったため、その名で呼ばれている。常に笑顔でやたらと愛想がよく人当たりもいいが、自宅に拳銃を隠し持っていたり、らんを縛って手籠めにしようとしたりと謎が多い人物。

(あきら)

神秘的な美貌を持った潔癖症の女学生。双子の周に対しては、嫌悪感を抱きながらもいつも近しい距離感を保っている。何でも自分の思うとおりにならないと気が済まないところがある。天堂雅人にご執心で、彼と婚約をしたと噂される鳳城蘭を殺すよう周に命じる。

(あまね)

男色家の淫乱な男子学生。いつも全裸または半裸で暮らしている。双子の晶からは、何かと命令されたり、いつも上から目線で物を言われている。天堂雅人にご執心の晶から、雅人の婚約者の鳳城蘭を殺すよう頼まれる。

有賀 (ありが)

男子学生で、天堂雅人の学友を自称している。雅人の整った顔やその存在感と、天堂家にまつわる陰惨な噂により、学校でひときわ浮いている雅人を心配しており、腹を割って話がしたいと天堂家を訪れた。実際は雅人とは一度将棋の相手をしただけの関係でしかないが、もっと自分を頼ってほしいと考えている。

村上 (むらかみ)

天堂雅人からの依頼で、消息不明の鳳城蘭の行方を探している男性。その報告のために、時々立花修一郎と連絡を取り合っている。天堂家のことは気味が悪いと嫌っているものの、天堂貴人から遺言を残されているため、雅人に協力している。

その他キーワード

天堂家 (てんどうけ)

素封家の旧家。広い敷地に建つ邸宅には母屋と離れがあり、渡り廊下でのみ行き来が可能。出来の良かった長男の天堂貴人が独身のまま戦争で帰らぬ人となったため、いったんは病弱な弟・天堂義人が家督を継いだ。しかしその後、貴人の息子を名乗る者が現れたことにより、後継ぎや相続のことで揉めることになった。また、家の人間が変死したり、使用人が行方不明になったりとよくない噂が絶えず、出入りしている呉林という名の巡査が、「天堂家から金をもらって何体もの死体を処分している」という話を娼婦に聞かせるほど世間にも広まっている。 他にも、2年前、離れで女性が惨殺されたという噂がある。

書誌情報

天堂家物語 14巻 白泉社〈花とゆめコミックス〉

第1巻

(2015-08-05発行、 978-4592210535)

第12巻

(2022-11-04発行、 978-4592212485)

第13巻

(2023-06-05発行、 978-4592212492)

第14巻

(2024-02-05発行、 978-4592221449)

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