奥州藤原四代

奥州藤原四代

今東光の同名小説のコミカライズ作品。平安時代後期に東北地方を支配した奥州藤原氏の、初代の父親である藤原経清から、初代・藤原清衡、二代目・藤原基衡、三代目・藤原秀衡を経て、滅亡に至るまでの歴史を描く。特に、前九年の役、後三年の役という戦乱があった、経清期から清衡期にかけての複雑な過程が、丁寧に描写されている。

正式名称
奥州藤原四代
ふりがな
おうしゅうふじわらよんだい
作画
原作
ジャンル
時代劇
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概要・あらすじ

舞台は平安時代後期の東北地方。一豪族の藤原経清は、有力豪族の安倍頼良に気に入られ、その娘を娶った。これにより経清は強力な味方を得ることに成功するが、東北の豪族を従えようとする中央政府と、それに抵抗する豪族との争いに巻き込まれていく。のちに、経清は前九年の役で敗れて処刑されるが、遺児の藤原清衡は、苦難の末に奥州藤原氏の基盤を築いていく。

登場人物・キャラクター

藤原 経清 (ふじわらの つねきよ)

東北地方の豪族で、鎮守府将軍・藤原秀郷の子孫。端正な風貌の青年。安倍頼良を屋敷に招いた際、見事な弓術を披露して気に入られ、頼良の娘・阿古女を妻に迎える。前九年の役では、国守の源頼義の強引なやり方に憤り、蝦夷の側に立って朝廷の軍と戦った。実在の人物、藤原経清がモデルとなっている。

藤原 清衡 (ふじわらの きよひら)

藤原経清と阿古女の息子。経清が戦いに敗れて処刑された後に清原武貞の養子となり、以後「清原清衡」を名乗る。幼少期から、血の繋がらない弟の清原真衡、清原家衡に遠慮し、忍耐強く控えめな性格の少年に育った。真衡と家衡の対立がきっかけで生じた後三年の役を勝ち抜き、奥羽における最大の実力者となった。 実在の人物、藤原清衡がモデルとなっている。

藤原 基衡 (ふじわらの もとひら)

藤原清衡と正室の間に生まれた息子。清衡の死後、藤原氏の家督を継承する。家督継承に不満を持った異母兄の藤原惟常は、基衡を襲撃しようとするが、事前に情報を摑んだ基衡は、逆に惟常の軍を打ち負かした。以後、奥州藤原氏の支配を安定させ、毛越寺などの寺社造営に力を尽くした。実在の人物、藤原基衡がモデルとなっている。

藤原 秀衡 (ふじわらの ひでひら)

藤原基衡の息子。基衡の死後に家督を継いだ。藤原秀衡の時代、中央では源氏と平氏の争いが始まっていたが、奥州は秀衡の手腕で安定していた。平氏と争って敗死した源義朝の遺児たちの動向を気にかけ、彼らを奥州にかくまおうとした。実在の人物、藤原秀衡がモデルとなっている。

安倍 頼良 (あべの よりよし)

東北地方の6つの郡を治める豪族。厳しい髭面の中年男性で、統率力に優れている。安倍一族は、東北地方の俘囚と呼ばれる人々の中でも有力な勢力だった。息子たちを伴って藤原経清の屋敷を訪れた際、経清の人柄に魅了され、娘の阿古女を嫁がせる。のちに、「安倍頼時」に改名した。実在の人物、安倍頼時がモデルとなっている。

安倍 貞任 (あべの さだとう)

東北地方の豪族である安倍頼良の長男。堂々たる体格の青年。源頼義が国守として赴任していた時、貞任配下の武士が頼義の部下を襲撃する事件が起きる。しかし、これは頼義が安倍一族を討伐するための陰謀だった。安倍貞任は濡れ衣に怒り、前九年の役が勃発する。実在の人物、安倍貞任がモデルとなっている。

安倍 宗任 (あべの むねとう)

東北地方の豪族である安倍頼良の次男。父親とともに藤原経清と対面した際、その器量と人柄に感服する。前九年の役では、父親や兄の安倍貞任とともに、源頼義の軍を相手に奮戦する。父親の頼良が、配下の裏切りで不慮の死を遂げた後には、態勢を整えて父親の仇を討ち果たした。実在の人物、安倍宗任がモデルとなっている。

平 永衡 (たいらの ながひら)

東北地方の豪族。藤原経清とは、長らく所領の境界線をめぐって争っていたが、それは陸奥国守の藤原登任が、支配を容易(たやす)くするために密かにしかけたものだった。安倍頼良の娘を妻としており、経清の結婚後は義理の兄弟となる。以後は経清と和解し、同盟者として行動する。実在の人物、平永衡がモデルとなっている。

阿古女 (あこめ)

東北地方の豪族・安倍頼良の娘。控えめな性格だが、美しい女性。藤原経清との縁談が決まった時、夫から愛されるかどうか不安に感じていた。しかし、経清と対面した時、その素朴で優しい人柄に触れ、経清と一途に愛し合うようになった。のちに藤原清衡を産む。

藤原 登任 (ふじわらの のりとう)

陸奥の国守として、中央から派遣された貴族。小太りの中年男性。名門の藤原氏であることを鼻にかけ、東北の豪族に威張り散らしているため、反感を買っている。豪族の安倍頼良が自分に屈服しないことに怒り、安倍一族を討伐しようと試みる。実在の人物、藤原登任がモデルとなっている。

源 頼義 (みなもとの よりよし)

藤原登任の後任として、陸奥の国守になった武士。赴任した先で、俘囚の有力者である安倍頼良の饗応を受ける。そこで東北に産出する富を目の当たりにし、安倍一族に対し強い警戒心を抱いた。「安倍貞任の部下が狼藉を働いた」という讒言(ざんげん)を利用して安倍一族の討伐を開始し、前九年の役の原因となる。実在の人物、源頼義がモデルとなっている。

源 義家 (みなもとの よしいえ)

源頼義の息子。「八幡太郎」という通称がある。血気にはやりやすい父親と異なり、慎重で義理堅い性格をしている。前九年の役では、蝦夷の抵抗に苦戦する父親を諫め、清原武則を味方に引き入れる工作を行って勝利に貢献した。頼義の死後、陸奥の国守として再び東北に遠征する。実在の人物、源義家がモデルとなっている。

清原 武則 (きよはらの たけのり)

東北地方の豪族。前九年の役では、「味方をすればどのような褒賞も取らせる」という条件のもと、源頼義に味方する。この助力により、前九年の役は安倍一族の滅亡という形に終わり、藤原経清も殺された。経清の死後、残された阿古女を息子の清原武貞の妻とした。実在の人物、清原武則がモデルとなっている。

清原 武貞 (きよはらの たけさだ)

清原武則の息子。藤原経清が処刑された後、武則の希望によって未亡人の阿古女を妻とする。その際、経清の遺児の藤原清衡も引き取って養育した。正義感の強い人物で、血の繋がらない清衡にも愛情を注ぐ。しかし、末っ子の清原家衡には溺愛が過ぎ、わがままな少年に育ててしまう。実在の人物、清原武貞がモデルとなっている。

清原 真衡 (きよはらの さねひら)

清原武貞と、武貞の前妻の息子。藤原清衡は、血の繋がらない兄である。武貞が、異母弟の清原家衡を溺愛したため、意地が悪くひがんだ性格に育った。武貞の死後に清原家の家督を継ぐが、邪魔になる清衡に適当な土地を与えて遠ざけようと試みる。実在の人物、清原真衡がモデルとなっている。

清原 家衡 (きよはらの いえひら)

清原武貞と、後妻の阿古女の息子。武貞に非常に溺愛されたため、わがままな性格に育った。異母兄の清原真衡には、邪魔者として密かに目を付けられている。真衡の策略にかかり、藤原清衡に敵意を抱くようになる。実在の人物、清原家衡がモデルとなっている。

吉彦 秀武 (きみこ ひでたけ)

清原真衡の叔父。清原一族の長老格にあたる人物。真衡の養子の縁談がまとまった時、真衡のもとに祝い金を持参した。しかし、この時の真衡の非礼な態度に怒り、真衡と対立する。吉彦秀武は、真衡の異母弟の清原家衡を擁立し、この内紛が後三年の役の発端になった。実在の人物、吉彦秀武がモデルとなっている。

阿具里 (あぐり)

藤原清衡の所領であった豊田の郷の娘。清衡の所領を狙う清原家衡が、清衡の屋敷に夜襲をかけた際、村娘の阿具里は、危うく逃れてきた清衡を家にかくまい、命を救った。その際、清衡に対して儚い恋心を抱く。のちに陸奥の国守になった清衡に呼び出されて、その側室となり、以降は「小舘殿」と呼ばれた。

自在坊蓮光 (じざいぼうれんこう)

藤原清衡の支配する奥羽を訪れた旅の僧侶。中央に抵抗した安倍氏などの蝦夷の境遇に同情し、安倍一族の霊を供養するために奥羽を訪れた。蓮光が徳の高い僧侶であると感じ取った清衡は、彼を屋敷に招いて語り合う。清衡が蓮光の話に感銘を受けたことがきっかけで、中尊寺が建立された。実在の人物、蓮光がモデルとなっている。

藤原 惟常 (ふじわらの これつね)

藤原清衡と、阿具里の間に生まれた息子。側室の子であり、清衡の死後は異母弟の藤原基衡が家督を継いだ。しかし、我が子を後継者にしたい阿具里にそそのかされた藤原惟常は密かに兵を率い、基衡を襲撃しようとした。これに気づいた基衡に先手を取られて敗走し、基衡の追手に討たれた。実在の人物、藤原惟常がモデルとなっている。

宗形宮内卿師綱 (むなかたくないきょうもろつな)

陸奥の新しい国守として赴任して来た貴族。陸奥の支配者である奥州藤原氏は、中央から来た貴族には賄賂を贈り、自分の領地に干渉させないのが通例だった。しかし、硬骨漢の宗形宮内卿師綱は、藤原基衡の付け届けを受け取らなかったため、基衡と対立を生じることとなる。実在の人物、藤原師綱がモデルとなっている。

信夫庄司 季春 (しのぶのしょうじ すえはる)

藤原基衡の家臣。基衡が異母弟の藤原惟常と家督を争った時、敗走する惟常を追って討ち果たした。基衡が、宗形宮内卿師綱と対立した時は、師綱が土地を検分しようとしているのを妨害した。実在の人物、佐藤季春がモデルとなっている。

金売吉次 (かねうりきちじ)

奥州の産物である黄金などを都に運んで売りさばいている、有力な商人。ひげの濃い大男。都の情報を奥州にもたらしてくれる貴重な存在であり、藤原秀衡に気に入られている。源義朝の遺児に興味を持った秀衡のため、都に上って情報収集をする。

源 義経 (みなもとの よしつね)

源義朝の息子。幼名「牛若丸」、稚児名「遮那王」。義朝が平清盛に敗れて殺された後、幼いうちに鞍馬寺に預けられた。わんぱくな少年で、子供たちを集めてしばしば戦ごっこをしている。京都を訪れた金売吉次の誘いにより、密かに京都を抜け出して陸奥に向かった。陸奥への道中で元服し、以後「源義経」と名乗る。 実在の人物、源義経がモデルとなっている。

武蔵坊弁慶 (むさしぼうべんけい)

「遮那王」こと源義経が、京都の鞍馬寺で出会った僧兵。逞しい大男で、人柄も豪快。義経ら子供たちが遊んでいるところに現れ、相撲の相手をしてやった。弁慶は義経を気に入り、彼の後を追ってともに陸奥に向かう。実在の人物、武蔵坊弁慶がモデルとなっている。

藤原 国衡 (ふじわらの くにひら)

藤原秀衡の長男。源義経を嫌う弟の藤原泰衡に対しては、冷静になるようたしなめるなど、落ち着いた人物。平氏が攻めて来るかもしれないという脅威に対しても、自国の守りの堅さに自信を持ち、楽観的に構えている。実在の人物、藤原国衡がモデルとなっている。

藤原 泰衡 (ふじわらの やすひら)

藤原秀衡の次男。秀衡に招かれて陸奥にやって来た源義経に対し、あまり快く思っていない。平家の滅亡後、義経は兄の源頼朝と対立し、再び陸奥に逃れたが、藤原泰衡はこの時も匿うことに消極的だった。秀衡の死後に後継者となるが、頼朝から義経を討つよう度々督促される。実在の人物、藤原泰衡がモデルとなっている。

藤原 忠衡 (ふじわらの ただひら)

藤原秀衡の三男。秀衡の招きによって、陸奥に落ち延びてきた源義経に同情的な態度を取る。理想主義的で、血気盛んな性格。義経の兄である源頼朝が挙兵した時には、義経の心情を思いやり、彼が出奔して兄と合流できるよう手を貸した。実在の人物、藤原忠衡がモデルとなっている。

集団・組織

俘囚 (ふしゅう)

東北地方に住んで中央に従わなかった人々「蝦夷」の中で、中央政府の派遣した軍隊や政治工作に従った者たち。ただし、俘囚も常に中央に従っていたわけではなく、しばしば反乱を起こした。平安時代後期には、俘囚の中から安倍頼良率いる一族が台頭する。

イベント・出来事

前九年の役 (ぜんくねんのえき)

平安時代の後期に東北で起きた戦乱。陸奥の国守である源頼義が、陸奥の支配権を確立しようとしたことが原因で起きた。この戦いで、俘囚の有力な一族だった安倍頼時らは滅亡する。また、藤原経清が殺されたため、息子の藤原清衡は苦難の多い前半生を過ごすことになった。

後三年の役 (ごさんねんのえき)

平安時代の後期に東北で起きた戦乱。陸奥の有力豪族である清原真衡と、異母弟の清原家衡の対立がきっかけで起きた。真衡は乱の最中に急死し、家衡も敗死したため、清原清衡が最終勝者となる。陸奥の支配者となった清衡は、以後実父の姓である「藤原」を名乗り、奥州藤原氏の祖となった。

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