奴隷遊戯

奴隷遊戯

ごくふつうの高校生・市原海は、不気味なアプリをダウンロードしたことから、秘密組織「ソサエティ」の準会員となった。奴隷として拉致された幼なじみ・伊達凛奈と、仲間の解放を目指してデスゲームを戦い抜く姿を描いた作品。集英社「少年ジャンプ+」で2017年6月9日から2019年11月8日まで連載。同年12月6日からは同サイトにて。第2章となる『奴隷遊戯GUREN』の連載が開始された。

正式名称
奴隷遊戯
ふりがな
どれいゆうぎ
原作者
ヤマイ ナナミ
漫画
ジャンル
デスゲーム
レーベル
ジャンプコミックス(集英社)
巻数
既刊11巻
関連商品
Amazon 楽天

あらすじ

謎のアプリ

高校生の市原海は、授業中に居眠りをして教師に怒られ、幼なじみの伊達凛奈にかばわれるという、いつもの日常を送っていた。そんなある日、海のスマホに「最新ゲームの招待状」というタイトルのメールが送られてくる。興味本位で本文のダウンロードリンクから「奴隷業(SLAVE GO)」というアプリゲームをスマホにダウンロードする。不気味なアイコンとスタート画面に訝しむ海であったが、ゲームがスタートすると、「捕獲対象」として周辺マップとナビと共に、先ほど自分を叱り飛ばした数学教師の小林が表示される。海はナビの正確さに驚きながらも面白半分で小林を撮影し、表示されている「ガムテープ」を使い「捕獲」に成功する。画面の中にはガムテープでグルグル巻きにされた小林が表示されるが、現実では変わった様子はない。海は面白いと思いながらも、ただのジョークアプリだと認識する。放課後、凛奈と別れて親友の国木田冬哉と帰宅していると、浜口武斗ら三人のヤンキーが、海と同じ高校の1年生をカツアゲしている場面を目撃する。浜口たちが傘を振り回して、1年生を殴る様子に腹を立てた海のスマホに通知が来る。発信元は昼間にダウンロードした奴隷業からで、目の前の浜口を「捕獲」できるという内容だった。アプリの意味はわからないながらも、証拠の写真を残そうとスマホを構えて写真を撮ると、浜口を「捕獲」してしまうこととなった。しかし、先程と同様に現実で何かが起こるわけではなく、写真を撮られたことに気づいた浜口は、海と冬哉に狙いを変えて追ってくる。なんとか逃げ切った二人はそれぞれ家路に就き、家族と夕飯をとって何事もなく一日が終わる。数日後、海は朝のホームルームで担任から小林と連絡がつかず、行方不明になっていると聞かされる。さらに、廊下で浜口に暴力を振るわれていた1年生に遭遇し、お礼を言われると同時に、浜口に毎日駅で待ち伏せされていたが、海が写真を撮った日から浜口が現れなくなったことを知る。嫌な予感を抱いた海は、学校からの帰り道、街頭演説をしている政治家・柏崎純一を見かけ、試しに奴隷業のアプリで「捕獲」してみる。そこに冬哉から連絡が入り、昨日の夜から凛奈と連絡が取れていないことを知る。海は凛奈が行きそうな場所を探し回っていると、突然白のスーツに身を包んだ男が声をかけてくる。男は自らの名を「ゴトウウィリアム」(ウィル)と明かして、怪しむ海に凛奈のヘアピンを渡し、「我々が伊達凛奈を預かっている」と告げるのだった。警戒しながらも、海が迎えの車に乗り込んだ瞬間、車内にガスが噴き出してきて意識を失ってしまう。その後、海はアーケードゲームのような筐体が置いてあるだけの部屋で目を覚ます。すると、突然「SLAVE GO」というかけ声とともに、ガラス張りの正面の部屋の電気がつき、二人の男が現れる。目隠しとヘッドセットを装着させられた二人の男は武器を振り回し、一人が片方の男を殺害する。殺された男は、海の通う高校の教師・小林であった。よく見ると筐体の画面に表示されているゲームキャラクターは、海が奴隷業のアプリで捕獲した人たちだった。訳もわからずに混乱する海のもとにウィルが現れ、筐体からヘッドセットに指示を飛ばして相手の奴隷キャラを倒せば勝ちだと説明するものの、納得できない海はウィルに椅子を投げつける。しかし、ウィルは投げられた椅子を物ともせず、海を威圧してゲームの続行を強要する。しかも、負けた場合は海に奴隷になってもらうと言い出し、このゲームに勝つか奴隷に身を落とすかの二択をせまる。選択の余地のない海は、浜口と柏崎のどちらを戦わせるかを選ぶ。海は明らかに戦闘向きではない柏崎をパスして浜口を選択。そして、所有武器を決めるルーレットが回され、コンバットナイフと目隠し、ヘッドセットを装備した浜口がガラス越しの部屋に対戦相手と共に現れ、殺し合いのスタートを意味する「SLAVE GO」のかけ声が響く。

ソサエティ

突然巻き込まれた「ゲーム」をなんとか勝ち抜いた市原海は、ゴトウウィリアム(ウィル)の案内のもと、ソサエティの地下都市を見て回る。人々がふつうに奴隷を連れ歩く光景に嫌悪感を感じながらも、海はソサエティに拉致された伊達凛奈を捜していた。すると、「奴隷オークション」の会場で凛奈が出品され、阿能姉妹に落札される場面を目撃する。オークション会場の出口で待ち構えていた海は、阿能姉妹に凛奈を譲ってくれないかと交渉するが、姉妹から提案された条件は「1か月以内に1億デロス持ってくること」であった。ほかの会員のゲームに賭けたり、闘技場で稼いだりするにも相当の数の勝利が必要となる金額に、海は途方に暮れる。そして一度地上へ戻った海は、凛奈が依然として失踪している事実を確認したのち、警察署へ拉致の被害を申し出る。しかし、別室に通された海に対して警察署長は、凛奈の殺害を仄めかされたうえに、これ以上騒ぎを大きくすると証拠を捏造して海を逮捕すると脅される。なんと警察までもソサエティの支配下に置かれていたのだった。失意に暮れる海のもとに再びウィルが現れ、余計なことをした海への監視が強化されることを伝え、明日の地下都市行きを告げる。奴隷を増やしてゲームを勝ち抜くことしか凛奈を助けるすべがないことを理解した海だったが、たとえホームレスだとしても理不尽な殺し合いに巻き込めないと思い悩み、良心と現実の狭間で葛藤する。

バサラシティ

再び地下都市「バサラシティ」へとやって来た市原海ゴトウウィリアム(ウィル)に案内され、ソサエティの街の仕組みを教えてもらう。そして海自身が所有する奴隷の浜口武斗柏崎純一が収容されている劣悪な環境を目の当たりにし、罪悪感を感じる。さらに主人から慰み者にされている女性の奴隷や、闘技場で戦わされて惨殺される奴隷を見て目を背けながら、海は自らの無力さを痛感する。一方で、凛奈を買い戻すために1か月で1億デロス稼ぐには正攻法では無理だとも感じていた。そして、海は人だかりができている部屋の中を覗くと、久保谷爽助が「公開拷問」を行い、見物している会員と親睦を深めている場面に出くわす。海は見物人の中から飛び出し、久保谷に拷問をやめるように声を荒げ、拷問されている奴隷を助けようと駆け寄る。久保谷と見物人は、なぜ海がそのような行動を取るのか理解できない様子で眺めていた。我に返った久保谷が所有奴隷の一人に合図を送り、海を追い出そうとするものの、奴隷はウィルに一撃で吹っ飛ばされる。ウィルと久保谷の話し合いで、この一件は表面上は穏便に収まったように見えたが、久保谷は海とのZEXを希望し、邪悪な笑みを浮かべる。そして地上に戻った海は、なんとかして強い奴隷を手に入れようと考えていたが、あてもなく途方に暮れる。そんな中、海のせいで理不尽な闘いに巻き込まれて殺された小林のSNSを発見した海は、罪悪感から小林が一人暮らししているアパートに向かい、ビールを供えて涙ながらに謝罪する。すると、となりのアパートからヤクザの怒号が周囲に響き渡る。その怒号を受け、アパートの一室から出て来たのは筋骨隆々の大男・勅羅野烈だった。拳銃を突きつけられながらも難なく三人のヤクザを叩きのめした勅羅野を見て、海は勅羅野を仲間に引き入れることを決意する。勅羅野に声をかけ、ファミレスへと場所を移し、ソサエティのことを伏せながら海は事情を説明する。地下格闘技の依頼と受け取った勅羅野は、条件付きでその申し出を承諾。その条件の内容も聞かないまま、海は勅羅野が揉めているヤクザ「中条組」の事務所に連れて来られる。事務所には別室から悲鳴が響き渡り、瀕死の男が運び出される。平然としている勅羅野とは対照的に、海は震えが止まらないほど恐怖していた。そこに悲鳴が聞こえていた別室から鼻歌混じりで有村架図志が現れる。

天蠍地獄

勅羅野烈有村架図志を手持ちの奴隷として加えた市原海は、さっそくソサエティの地下都市へ赴き、もともとの所有奴隷である柏崎純一浜口武斗を召喚し、全員で顔合わせをする。海は柏崎と浜口とまともに話すのは今回が初めてであったため、なぜ二人がこの場所に拉致監禁されて殺し合いをさせられることになったかを、自らの軽率な行動からの成り行きだったと説明する。訳もわからず二度も殺し合いをさせられた浜口は激怒し、海を殴りつける。ソサエティの黒服が止めようとするものの海は黒服を制し、自分のやってしまったことにケジメをつけるため、浜口からボコボコにされることを受け入れる。そしてあらためて四人に土下座して、伊達凛奈を救出するために力を貸してほしいと懇願する。渋々ながらも同意する浜口、事が済んだら海との食事を要求する有村、自分の立場を理解して海に擦り寄ってくる柏崎、望んで地下にやって来た勅羅野と、それぞれがさまざまな反応を示すが、ひとまずこれで凛奈救出のための陣営が結成された。その直後、阿能姉妹に呼び出された海は、再度凛奈を買い戻す期日と金額の確認を受ける。海自身の陣営が整ったことを阿能姉妹に伝え、凛奈の安否を姉妹に確認すると、渡されたタブレットで牢に拘束された凛奈とテレビ通話がつながる。ほんの一瞬言葉を交わすだけで通話は切られてしまうが、海の闘志を燃やすには充分だった。一方、海に公開拷問を邪魔された久保谷爽助は大きな興行でソサエティに貢献し、ロイヤル会員へ昇格したいと考えていた。そして海に声をかけ、ZEXを共に開催しようと提案する。久保谷を担当する白服のオズワルドから参加人数は五人であると聞かされた海は、自らの所有奴隷が四人しかいないことを打ち明けるものの、久保谷は海が五人目として参戦することを強要する。しかも、海が出場するなら1億デロスを賭けると言い出す。凛奈を買い戻すため、1億デロスが必要な海はこの条件を承諾するが、久保谷は「幼なじみを助けるために奴隷と共に自ら命を賭けてZEXに身を投じる」という触れ込みで興行を盛り上げ、ソサエティにアピールするもくろみがあった。そしてバサラシティで数年ぶりの開催となるZEX「天蠍地獄」が始まる。開始前の武器ルーレットではろくな武器を引けず、火力に不安が残る中、市原陣営は最大戦力となる勅羅野を自陣のゲートキーパーに据える作戦を取る。しかし開始早々に勅羅野が暴走し、ゲート付近の「砦」を一瞬で制圧する。「双眼鏡」を難なく手に入れた海は勅羅野を再度説得し、自陣ゲート前に据える。砦の守備は柏崎に任せ、浜口とペアを組み、有村と別れてジャングルを捜索する。久保谷陣営もリューゴが砦を一つ制圧し、ジャングルに罠を仕掛けていた。さらにフィールド中央の砦を制圧した久保谷陣営は、圧倒的に有利な状態であった。そこでヘッドセットを外した有村がリューゴと遭遇し、久保谷と話すためにリューゴにヘッドセットを渡せとせまる。不審な動きと判断したら殺す条件で、リューゴはヘッドセットを有村に渡し、久保谷と有村の取り引きが開始される。有村は勅羅野の危険性を説き、自分が勅羅野を始末する代わりにZEX後には久保谷に自分自身を買い取るように要求。その頃、久保谷側の奴隷二人と海・浜口ペアは戦闘となっていた。辛くも勝利を収めた海たちは拳銃を手に入れる。一方、ゲート前の勅羅野のもとにも久保谷側の奴隷が一人たどり着く。技をすべて受け切られ、勅羅野の猛攻を食らった久保谷側の奴隷は戦闘不能となる。そこへ勅羅野の背中に有村から毒吹き矢が撃ち込まれ、なすすべもなく勅羅野は意識を失ってしまう。

コンピラシティ

バサラシティでのZEX天蠍地獄」をクリアした市原海は、1億デロスを稼いで阿能姉妹から伊達凛奈を買い戻した。しかし、凛奈は海の所有奴隷となっただけで、解放にはさらに1億デロスが必要だという。海は阿能姉妹から解放代金を借り受け、凛奈を地上へ戻す。海は阿能姉妹から、コンピラシティでスレイブランキングのトップを獲得することを借金の条件として提示され、それを承諾する。海は市原陣営の四人も地上に戻してやりたいと考えていたため、さらなる金が必要だったのだ。そんなある日、海の通う神威高校に鷹司一郎が転入してくることとなった。さっそく鷹司は海に接触し、自分も「奴隷業(SLAVE GO)」のプレイヤーで、しかもロイヤル会員であることを打ち明ける。そして鷹司は、同世代のソサエティ会員である海を自らの統治するコンピラシティへと招待する。海と鷹司はリトル京都ともいえる和風都市を見て回るが、そこで行われるゲームはバサラシティと本質は変わらない人間の命を使い捨てるものばかりだった。海は嫌悪感を抱きながらも、鷹司からコンピラシティ名物の「アクションゲーム」のプレイに誘われる。賭け金は100万デロスで、クリアできたら3000万デロスという破格の金額からもわかるように難易度は非常に高く、数々の奴隷たちの命が散っていくのを見て、海は怒りをあらわにする。完全に海を舐めきっている鷹司に一矢報いるため、海は勅羅野烈をエントリーする。持ち前の運動神経とパワーで、アクションゲームのトラップを次々と突破していき、ステージボスも一撃で仕留める勅羅野を見て鷹司は目を丸くする。バサラシティよりも格段に稼げる場所ではあるものの、一度ミスすれば死んでしまうゲームを所有奴隷に何度もさせるわけにはいかず、海には命の危険と金とのあいだで葛藤が生じていた。そして鷹司から、市原陣営の四人を解放するために必要な金額は23億5000万デロスだと試算され、さらに海は途方に暮れる。そんなある日、ソサエティの力を使って学校でもやりたい放題の鷹司から海はZEXを申し込まれる。鷹司からの条件は、市原陣営解放代金の23億5000万デロスを賭ける代わりに、負けたら海が鷹司の奴隷になるというものだった。そのため、参戦人数を五名そろえなければならず、今回は海の奴隷側での参戦は禁止となった。仲間に相談する海だったが、腹をくくった市原陣営は前向きな姿勢を見せる。海はオークションを見て回るものの、収穫を得られず時間だけが過ぎる中、オバサン会員が愛玩奴隷ガチャでSレアのイケメンを出す光景を見て、希望を見いだす。学校で国木田冬哉から聞いたソーシャルゲームのガチャの確率操作にヒントを得た海は、鷹司が奴隷ガチャを引くタイミングを狙って市原陣営総出で騒ぎを起こし、ドサクサにまぎれて鷹司の代わりにガチャを回す。海は二回目で、「目玉商品」の賀東重一をみごとに引き当てて撤収する。しかし、その後に鷹司は顔面がタトゥーだらけの男を引き当て、その男を見た海は震えが止まらなくなる。

LEX前半戦

コンピラシティで開催されるZEX天秤地獄(LEX)」がついに始まる。鷹司一郎の最強の奴隷布陣「花鳥風月」と桐島真咲人に対するは、賀東重一を加えた市原陣営の対戦となった。事前に市原海は桐島が両親の仇であることを仲間に打ち明け、解放と海の私怨のためにこの戦いは絶対に負けられないと、市原陣営はかつてないほど一丸となってLEXに臨む。今回は奴隷五人が天秤のコートで戦いながら落ちてくる重りボックスを処理するというもので、海は鷹司と共に別室で自陣に指示を出しながらボックスを落とす位置を決定する。対戦開始直前に海たちと対峙した鷹司は、賀東の解放代金も上乗せして賭け金を35億デロスまで引き上げる代わりに、海が負けたら海の妹・ソラノを徴収すると告げる。鷹司に挑発され、頭に血が上った海は鷹司に明確な殺意を覚える。それぞれに戦う理由があり、覚悟を決めた海の仲間たちはコートへ向かう。互いの陣営が配置につき、勝負の火蓋は切って落とされる。さっそく100キロの重りがコートに落ち、勅羅野烈は難なくこれをコート外に投げ捨てる。海の作戦でコートの四方に散った市原陣営は、ボックスの処理を賀東、柏崎純一浜口武斗で手分けしながら行い、敵陣付近には勅羅野と有村架図志を配置して敵の襲撃に備える。一方で、鷹司陣営は絶対の自信から、桐島は横になって眠り、ボックスの処理を誰がやるかを押し付け合っていた。結局鳥立がやることになり、難なくボックスを処理していく。そこで市原側に「?ボックス」が投下され、中から武器を持ったソサエティの奴隷(NPC)が現れる。賀東がこれを瞬殺し、海陣営はNPCから武器を奪って快調な滑り出しとなった。一方で、鷹司側に「?ボックス」が3個同時に投下されるものの、鳥立が落下する前に空中で蹴り飛ばしてコート外のマグマに落とし、戦力の違いを見せつける。このパフォーマンスに、佐川をはじめとする観客は大いに盛り上がる。そこで鷹司陣に両コートを磁力でつなぐ「ブリッジ」が投下される。誰が市原陣営に乗り込むかでまた内輪もめを始める鷹司陣営だったが、スピードに長ける風間が行くことになり、ブリッジを市原側のコートに投げる。しかし風間が渡る瞬間、有村が磁力で張り付いているブリッジの固定具を蹴り上げる。ブリッジが外れるより速く市原側コートにたどり着いた風間は、有村の顔面を切りつける。ルール無用の有村と、それをかわした風間の対決に会場は熱狂に包まれる。顔面から流血しながら有村は風間に対してすごむが、そのスキを突き、海は風間を狙ってボックスを投下し出す。しかし、海が有村への指示でミスを冒し、海が落とした300キロのボックスで有村の脚を潰してしまう。満身創痍で立ち上がる有村が風間のスピードについてこれるわけもなく、容赦ない攻撃が続く。有村の折れた脚で放った蹴りもなんなく防がれ、立つこともままならない有村に風間は接近し、とどめを刺そうと身構える。そこで有村は風間を抱き寄せ、まるでキスをするような体勢に組みつく。その態勢からなんと有村は風間の鼻を食いちぎり、顔面を血に染めながら立ち上がる。さらに食いちぎった鼻のあとに渾身の頭突きを決め、形勢は逆転する。立ち上がることができない風間に対して、有村は折れた脚で容赦なく踏みつけ続けて風間を撃破する。鷹司陣営の一角を潰して安堵するヒマもなく、有村は幻覚に包まれて倒れてしまう。有村の背後には鷹司陣営の「毒針使い」の花杜が立っていた。海の呼びかけにまったく反応のない有村に賀東が近づき、生きていることを確認する。そして賀東と花杜の戦いが始まるものの、戦地で毒の耐性をつけた賀東に花杜の攻撃は効かず、絞め技で賀東は花杜を倒し、鷹司陣営の二人目を撃破する。

LEX後半戦

鷹司一郎陣営に単身乗り込んだ勅羅野烈は、月ヶ瀬九十九と対峙する。勅羅野は必殺のラリアットとエルボーを放つものの、月ヶ瀬にかわされて正拳突きでカウンターを食らってしまう。ダウンした勅羅野に目がけて鷹司が、300キロのボックスを落とすとこれがクリーンヒット。勅羅野はボックスの下敷きとなり、生死不明の状態になるが、誰の目から見ても戦闘を続けられないことは明らかだった。有村架図志と勅羅野を失った市原海は、さらに月ヶ瀬がコートに穴を開けたことで、鷹司側はその穴にボックスを落とし続ければ負けることはないという、絶体絶命の状況に追い込まれる。市原陣営に残った浜口武斗が絶望する中、柏崎純一は服を脱ぎ捨てて褌一枚の姿になり、あきらめない姿勢を見せる。柏崎は日本刀を構え、「一人一殺」という思いを胸に秘め、刺し違えてでも一人は倒す決意をしていた。賀東重一は鉄パイプをコートに打ち込むという、謎の行動を取って観衆を困惑させていた。柏崎は代議士として、人の一人や二人斬れないようではやっていけないと、浜口に政治家としての心構えを聞かせる。意味が理解できない浜口だったが、柏崎から代議士バッジを託され、漢の覚悟として受け取る。そして両コートにブリッジが投下され、月ヶ瀬が市原陣営に乗り込んでくる。柏崎は月ヶ瀬に日本刀で斬り込んでいくが、刀を指で受け止められて弾かれてしまう。完全に丸腰となった柏崎は、なんとかしようと動きを見せるが、月ヶ瀬に首をつかまれ、あと数秒で柏崎の命が尽きようとしていた。そんな中、柏崎は自らの褌をまさぐり出す。誰もが理性を失った行動に困惑するが、その行動の意味を海だけが理解しており、声を荒げて柏崎を止める。しかし柏崎が褌から手を出すと、握られていたのは手榴弾のピンだった。その瞬間、爆音と共にコートが揺れる。爆風が収まり姿を現したのは、風間の死体を盾にして生き延びた月ヶ瀬の姿だった。浜口は死を覚悟しながらも、日本刀を手に立ち向かおうとする。海は賀東に月ヶ瀬への勝算を確認するものの、賀東からは勝てるかもしれないが、その間にコートは沈むという無情な回答が返ってきた。完全に心が折れた海は涙を流しながら絶望する。するとそのタイミングで、勅羅野を潰したボックスが弾け飛び、下から左眼をなくした勅羅野が立ち上がる。勅羅野は自身の左眼を口に入れて飲み込み、月ヶ瀬との第二ラウンドが始まる。勅羅野の生存に希望を見いだし、沸き立つ市原陣営と観客の熱気も最高潮に達する。そして前座として柏崎は最高の仕事をしたと言い放つ勅羅野の言葉が浜口の心を打つ。勅羅野は月ヶ瀬にプロレスで勝つと宣言。そこで、勅羅野の生存を確信していた賀東が二人に近づき、先ほどから鉄パイプをコートに打ち付けていた行動は、簡易リングを作っていたと説明し、リングロープの代わりにブリッジのヒモを使うことを提案する。リングに入って準備する勅羅野に、月ヶ瀬は賀東を踏み台にした三角蹴りをお見舞いする。しかし勅羅野はロープに捕まり、攻撃をすべて受け切ると言わんばかりの体制をとる。月ヶ瀬の猛攻は止まらず、うずくまる勅羅野だったが、過去の興行を思い出し、劣勢から逆転する「オイシさ」を意識していた。勅羅野はヨロヨロと立ち上がるものの、月ヶ瀬の一瞬のスキを突き、タックルから首投げを決める。さらに顔面をストンピングし、横たわった月ヶ瀬を見下ろしながら、観客に吠える。観客は最高の盛り上がりを見せ、大歓声が起こる。立ち上がった月ヶ瀬をさらに勅羅野は挑発し、本気になった二人の壮絶な乱打戦となる。勅羅野が打撃を制し、ロープ際まで追い詰められた月ヶ瀬に変化が起こる。月ヶ瀬は体から蒸気を発しながら肉体が金色に輝き、先ほどまでより明らかに攻撃力が上がっていた。月ヶ瀬の猛攻に耐える勅羅野はロープ際まで追い詰められるものの、反動を利用したカウンターでドロップキックを放つ。そのまま直下型スープレックスを決め、月ヶ瀬の肩を脱臼させる。しかし、月ヶ瀬は外れた腕を鞭のように振り回しながら、まだ戦う意思を見せる。そこへラリアットを決め、ダウンした月ヶ瀬を押さえ込んでカウント勝利を収める。月ヶ瀬と死闘を演じた勅羅野は緊張の糸が切れ、その場で意識を失う。そして、大詰めとなったこの場面で鷹司から桐島真咲人に「皆殺し」の命令が下る。

登場人物・キャラクター

市原 海 (いちはら かい)

神威高校に通う男子高校生。年齢は17歳。ジャーナリストである父親譲りの非常に正義感の強い性格をしている。そのため、ヤンキーに絡まれている一般人を放っておけず、つねにトラブルに首を突っ込んでしまう。過去に大スキャンダルをつかんだ父親ともども両親を口封じのため、桐島真咲人に惨殺されている。現在は妹・ソラノと共に叔父夫婦の家で面倒を見てもらっている。恋愛には奥手で、幼なじみの伊達凛奈に思いを寄せられているが、気づいていないどころか、親友の国木田冬哉が凛奈に思いを寄せていることを知っているため、応援しようとしている。両親が殺された直後は、心が壊れて無気力に過ごしていたが、冬哉と凛奈のサポートによってふつうの高校生として生活できるまでメンタルが回復したという経緯がある。父親の影響で飲み始めたコーヒーは、達人レベルで味の違いを見分けられるほどの域に達している。ある日、「奴隷業(SLAVE GO)」のアプリに招待され、ソサエティの準会員となり、デスゲームに巻き込まれることになる。曲がったことが許せないため、奴隷を酷く扱う主人に対してルールを無視してでも止めようとすることがあり、地上でも一般会員より強い監視がついている。自分の周囲の人たちを守るという目的遂行のためには手段を選ばない節があり、勅羅野烈からは「自分のことしか考えてない大悪党」と評されている。しかし、市原海自身が捕獲した奴隷に「仲間」として接する中で、市原陣営をまとめあげ、ロイヤル会員である鷹司一郎にも対抗できるほどのチームを作る。目的を達成するためにどうすべきかを効果的に考えることができ、勝負に対しては適応力が高く、発想を転換させて窮地を何度も脱するが、ZEXでは勅羅野と有村架図志に頼っている部分が大きく、二人が戦線離脱した際には絶望して心が折れる場面もある。どこかかわいらしい外見を男色家である有村から気に入られ、「お嬢ちゃん」と呼ばれ、体を狙われている。ちなみに海自身は童貞である。

伊達 凛奈 (だて りんな)

神威高校に通う1年生の女子。年齢は17歳。身長160センチで、体重43キロ。ショートヘアでかわいらしい外見をしており、いつも星型のヘアピンをつけている。好物はチキンカレー。市原海の幼なじみで、海が両親を惨殺されて抜け殻のようになっていた頃に、国木田冬哉と共に海のメンタルを支えていた。少しガサツな一面があるが、海と海の妹・ソラノを大切に思い、何かと気にかけている。海に淡い恋心を抱いているが、海にまったく気づかれておらず、海の親友である冬哉から思いを寄せられて三角関係となっている。ちなみに処女である。海がソサエティの準会員となったタイミングでソサエティに拉致されて奴隷となり、オークションで阿能姉妹に5000万デロスで落札された。しかし、阿能姉妹が凛奈を海に売る際に提示した金額は、落札金額から上乗せされた1億デロスであった。また、ソサエティからの解放金額も同様に1億デロスである。

浜口 武斗 (はまぐち たけと)

毎日、神威高校の生徒を駅で待ち伏せては恐喝しているヤンキーの男性。年齢は19歳。地上にいる時は金髪を立てた髪型で、ジャージを身につけている。父親はおらず、母子家庭で育てた。実は中学時代は剣道に打ち込んでおり、二段の腕前。高校でケガをして剣道をやめ、自暴自棄となって現在に至った。いつものように神威高生をカツアゲしているところを、市原海に「奴隷業(SLAVE GO)」のアプリで「捕獲」され、ソサエティに拉致されて海の奴隷となった。その時の捕獲ランクはDだった。奴隷となってからは整髪料がないため、立ち上げていた髪は下ろしている。もともとはふつうのヤンキーなので、殺し合いのステージでは完全にビビってしまいうろたえていた。しかも、初戦の闘技場では主人である海に「今日中に先輩に金を返さないとヤバい」と発言するなど、自分の状況がまったく把握していなかった。柏崎純一と話す際にも「現政権」を「幻聖剣」と認識し、会話が嚙み合わないほど頭が悪い。しかし、コミュニケーション能力はあるようで、団体戦に臨むために市原陣営の奴隷たちがタコ部屋から大部屋に移った際には、有村架図志とチョコレートを賭けてゲームをして遊んでいた。物語後半では、柏崎から議員バッジを託されるほど信頼されるようになる。剣道の有段者ということで、ZEXでは木刀などを与えられることが多い。相手が視界に入るとビビってしまうため、作中では目隠しや目潰しを食らい、海の指示で戦った方が実は勝率が高い。ちなみにソサエティからの解放金額は5000万デロスである。

柏崎 純一 (かしわざき じゅんいち)

代議士を務める男性。年齢は56歳。白髪を七三に分け、いかにも政治家然とした外見をしている。政治家のすべての言動はパフォーマンスであり、自らのことを「役者」だと考えている。パンツはブリーフ派だが、勝負下着は褌を身につける。お互いの立場を瞬時に理解する能力に長け、ソサエティに拉致されて市原海に初めて会った時にもすぐに「様」付けで呼んで擦り寄った。所属政党の汚れ仕事を担当しており、反社会勢力とも太いパイプを持ち、政権の中でも「消えて喜ばれる存在」だと自認している。有村架図志が所属する中条組ともつながっており、有村とも顔見知りだった。汚職が発覚した時は、秘書を「人身御供」として自殺するように指示し、政には必要な犠牲だと割り切っている。ちなみに自殺させた秘書は、海の妹・ソラノの友達の父親で、その話を聞いていた海から「奴隷業(SLAVE GO)」のアプリで失踪するかどうかの真偽を確かめるため、「捕獲」されて海の所有奴隷となった。捕獲時のランクはC。ソサエティからの解放金額は10億デロスである。自分を個人でなく、組織の一人として見ており、柏崎純一自身を「国士」と自称し、つねに全体の利を考えている。コンピラシティでのZEX「天秤地獄」では自分が死ぬのを承知で「一人一殺」を掲げ、月ヶ瀬九十九を巻き添えにして自爆した。物語後半では浜口武斗を信頼するようになり、純一自身の議員バッジを彼に託す。団体戦の市原陣営の一員だが、身体能力と戦闘能力は低く、接近戦で柏崎が勝てる相手はほとんどいないため、無難でなるべく安全な場所に配置される。ただし、演説で鍛えた言葉は邪魔なNPCの説得に大いに役立つ。

格闘家を務める男性。年齢は26歳。金髪の筋骨隆々な大男で、とにかく「デカい」という印象を与える。長い睫毛と牙のように発達した八重歯がトレードマーク。高校を卒業後、有村架図志が所属する中条組の下部組織が... 関連ページ:勅羅野 烈

有村 架図志 (ありむら かずし)

広域暴力団征神會系二次団体の中条組で、若頭を務める男性。年齢は38歳。組長は長期刑で服役中のため、事実上中条組のトップに立っている。本家筋からも一目置かれ、直参になる日も近いと噂されている。部下からは若頭という役職から「カシラ」と呼ばれている。坊主に近い短髪で顎髭と口髭を生やし、顔には額左上から顎右下まで切傷が残っている。筋肉質の体型ではあるものの、肉弾戦が強いとは思えない細身の体型をしている。しかし蹴り技が得意で、その体型に似合わない威力は、ヤクザの事務所に置いてある頑丈な金庫を足の形にへこませるほどの破壊力がある。ちなみに男色家で、好みのタイプは若くてかわいくて気が強い男性。神戸の広域暴力団虎道會ともめており、相手組の幹部をリンチしたために命を狙われている。「有村架図志を殺したい人間を集めれば街が一つ出来上がる」と自称するほど敵が多い。当初、勅羅野烈をかわいがって面倒を見ていたが、金銭トラブルによって逆に追い込むこととなり、敵対している。市原海が勅羅野を仲間に引き込む過程の成り行きで有村と海は遭遇したが、有村は海に一目惚れして口説いた。再び会う約束を取り付けるものの、海が「奴隷業(SLAVE GO)」のアプリで有村を捕獲するために呼び出したことを知り、傷つく純情な一面もある。ちなみに、勅羅野でさえも衝突を避けたいと思っているほどの暴力団の実力者ではあるが、敵が多すぎて捕獲ランクはCであった。ソサエティからの解放金額は8億デロスである。ZEXでは市原陣営の一人として、エゲツない攻撃を繰り出し、ルールの裏をかいたり、時にはルールを無視したりと、セオリーにない柔軟な戦い方で強力な戦力となる。直接の戦闘はもちろん、時には敵や味方にも威圧するような態度で接するが、惚れた弱みから海にだけはいつも優しい態度を取る。また、ピンチのときこそひょうひょうとした態度を取り、相手から自身の真意を読ませないなど心理戦にも長けている。昔から、ヤクザを自分たちの道具と考えている頭のいい奴や金持ちを嫌っており、そんな奴らを破滅に追い込み、ヤクザにかかわったことを後悔させようとしている。

賀東 重一 (がとう じゅういち)

陸上自衛隊のレンジャー隊員だった男性。民間軍事会社にも在籍していた時期があり、戦争のプロフェッショナル。戦争とは国家がクライアントのビジネスで、殲滅(せんめつ)戦は「営業」であり「納品」であると考えている。長髪を束ねてちょんまげにした髪型で、細い目がトレードマーク。戦地で鍛えられた屈強な肉体を武器に戦場格闘技はもちろん、射撃やヘリボーンなど生き残ることに特化したスキルを持つ。つねに冷静でのんびりしているように見えるが、分析力に長けている。コンピラシティの「Sレア奴隷ガチャ」の目玉として出品された。アフガニスタンで活躍したと一部の会員たちのあいだで噂になり、賀東重一を所有奴隷にしたいと人気を博している。戦争では重要な情報を知りすぎて「発注元」から命を狙われることもあるが、殲滅戦を仕掛けてきた小隊を返り討ちにし、唯一人生き残った経験がある。食い意地が張っており、レンジャー訓練で生で食べた蛇の味が忘れられず、マムシやハブを捕食していた。その食欲がエスカレートし、単身南米に渡って食欲のために体長10メートルのアナコンダと死闘を繰り広げて勝利した過去がある。勅羅野烈からも一目で「戦いたい」と思わせるほどの強者の雰囲気を漂わせている。しかし賀東自身は、闘争本能よりも理性的で冷静に戦うタイプで、やれることをやるというスタイルで闘う。格闘術は相手を殺すことを前提としているため、素手でも武器でも攻撃は一撃必殺となる。本来ならソサエティ運営の確率操作で鷹司一郎の奴隷となる予定だったが、鷹司が引くはずだったガチャを市原海がジャックして引き当てたため、海の所有奴隷となった。ソサエティからの解放金額は市原陣営での最高額11億5000万デロスである。

ゴトウ ウィリアム

ソサエティの白服を務める青年。端正な顔立ちと金髪のロングヘアで、「ウィル」という愛称で呼ばれている。柔らかな物腰と言葉遣いとは裏腹に、ゴトウウィリアム自身や会員への凶行を阻止したり、反逆者を粛清したりするほどの圧倒的な戦闘能力を持っている。市原海を担当し、いきなりソサエティの準会員となった海の「チュートリアル」として、案内やサポートをしている。久保谷爽助を担当する白服・オズワルドから出自についての秘密がほのめかされているが、本作で明かされることはない。

阿能姉妹 (あのうしまい)

ソサエティのロイヤル会員で、バサラシティに君臨する姉妹。姉の京子は「ペニ喰い凶子」、妹の蜜柑は「毒汁ミカン」という異名を持つ変態二人組。美しい容姿と華やかなドレスに身を包み、優雅に立ち振る舞って見る者を魅了する。蜜柑はオイルマッサージを日課としている。奴隷オークションで伊達凛奈を落札し、凛奈を取り戻そうとする市原海に1億デロスを要求した。バサラシティのスレイブランキングの上位のほとんどは、阿能姉妹の所有奴隷が占めている。自分たちの世話をする奴隷は男女問わずスキンヘッドにさせている。ZEXで海が久保谷爽助に勝利したのち、海をコンピラシティのロイヤル会員にしてコントロールし、自分たちの権力を盤石なものにしようとしている。失態を犯した奴隷に対して容赦なく鞭打ちや酷い仕置きをするが、失態さえなければ理不尽な仕打ちをしないことから、意外にも所有奴隷から慕われている。

久保谷 爽助 (くぼたに そうすけ)

有名なIT企業の社長を務める男性。年齢は32歳。横分けにした髪型に柔和な表情を貼り付けているが、本性が垣間見える笑顔が醜悪。ソサエティのノーブル会員で、バサラシティを活動の場とし、オークションで競り落とした奴隷を会員たちと拷問を加えて楽しそうに親睦を深めている。オズワルドという子供の白服が担当としてついており、ほかの会員との勝負が不公平になるほど肩入れされている。佐川と昵懇(じっこん)の仲で、久保谷爽助自身が主催するZEXの観戦に招待した。現状では飽き足らず、さらに権力を求めてロイヤル会員を目指しており、前代未聞である一般人から高校生会員となった市原海に目をつけ、興行を盛り上げてソサエティに貢献するために対戦を希望する。残虐なチビ・デブ・ハゲの三人の奴隷を使い、さらにコンピラシティから買ってきたリューゴを加え、海の惨殺シーンを見せ物にするためにZEXを開催する。

鷹司 一郎 (たかつかさ いちろう)

ソサエティのロイヤル会員を務める少年。年齢は17歳。薄いアッシュの髪色で、両耳にピアスをつけている。戦後から続く和風都市コンピラシティの権力者として君臨し、市原海の噂を聞きつけ、海と同じ神威高校に転校してきた。「ウィロビー」という名の日本かぶれの外国人が担当白服である。ロイヤル会員ということもあり、「奴隷業(SLAVE GO)」のアプリで捕獲できる対象人物が海に比べて格段に多い。軽口を叩き、軽薄な雰囲気を漂わせているが、性根は惨虐で悪い意味でソサエティの会員らしい人物。所有奴隷はコンピラシティのスレイブランキングの上位を独占しており、ランキング1位から4位の奴隷布陣「花鳥風月」を使役し、ZEXにおいて無敵ともいえる強さを誇る。花鳥風月最強でありスレイブランキング1位の月ヶ瀬九十九は、鷹司一郎の叔父である。ロイヤル会員という立場からコンピラシティで行われるゲームや、奴隷ガチャにはソサエティの運営から確率操作の調整が入り、よい結果となりやすい。

桐島 真咲人 (きりしま まさと)

過去に市原海の両親を惨殺した少年。当時の年齢は14歳で、「少年A」として報道されたことで、全国的に有名になった。顔面にタトゥーを入れ、全身には体の表面を塗り潰すように漆黒の刺青が入っている。コンピラシティで開催された「奴隷ガチャ」の目玉商品の一人として出品され、鷹司一郎が引き当てて鷹司の奴隷となった。14歳当時はオカッパ頭でタトゥーも入っておらず、一見いかにも生真面目そうな外見でヤンキーに絡まれたりしていた。しかし内面の狂気は現在と変わらず、殺人を犯すことをなんとも思っていなかった。殺人の罪で少年院に入っていたが、表向きは素行優良として2年で出てきている。だが、実はソサエティが裏で手を回して出所させたという経緯がある。また少年院に服役中、大した理由もなく合気道の先生を殺害しているが、出所後に出版された自伝では、更生に向けた師弟関係という感動のエピソードに捏造された。当然ながら海からは死を望まれるほど憎まれており、海が桐島真咲人との因縁を仲間に打ち明けたことにより、市原陣営から命を狙われることとなる。身体能力が異常に高く、相手を殺害することにためらいがないため、敵対すると非常にやっかいな存在となる。

月ヶ瀬 九十九 (つきがせ つくも)

鷹司一郎の叔父で、コンピラシティのスレイブランキング1位の猛者。鷹司が所有する奴隷で、鷹司の必殺の奴隷布陣「花鳥風月」の最強を誇る。ヘミングウェイと、ラムのストレートをこよなく愛している。短髪で筋骨隆々な屈強な体で、空手を主に使うが中国拳法なども相当高いレベルで使いこなす。山で修行していた際に大熊と真正面から殴り合い、勝利した過去があり、鍛え抜かれた体はまさに全身凶器といえる。そのパワーは、天秤地獄のフィールドである厚さ50センチのコートの鉄板を打ち抜くほどの威力を発揮する。戦闘において、瞬時の判断と行動を迅速に遂行し、密着状態で瀕死の相手から手榴弾を使われても近くの死体を盾に使うなど勝利が確定している状況でもスキがない。戦闘が激化すると、肉体が金色に輝いて髪が逆立ち、さらに強さが増す。

リューゴ

久保谷爽助が所有する奴隷の男性。元コンピラシティのスレイブランキング20位だったが、久保谷に買われてバサラシティにやって来た。バサラシティでのキャリアは浅いことからランキングは圏外。瘦せ体型の長身で黒の長髪を逆立てており、死神のような顔をしている。久保谷が所有する奴隷の中では一番強い。殺人に愉悦を感じる性格で対戦相手に「お願いだからヤ(殺)らせてくれよ」と頼むことから、「お願いリューゴ」という異名を持っている。動きが素早く危険察知能力も高く、サバイバルナイフなどの近距離武器を得意としている。

佐川 (さがわ)

過去何度もZEXを観戦している男性で、天田の友人。ZEX観戦初心者の天田にルールや、システムを教えるという形で本作の解説役を務めている。なぜか会員や街の情報にも明るい。いかにもモブ小金持ちといった容姿で、顎髭を生やしている。初登場時は久保谷爽助と昵懇(じっこん)の仲ということで、ZEXの観戦席を取っていた。何かと話題になっている高校生会員の市原海が苦しんで殺される場面を見たいがため、海の対戦するZEXは欠かさず観戦している。相方の天田と共に、物語後半ではZEXで活躍する勅羅野烈や、有村架図志のファンになって応援している。

集団・組織

ソサエティ

ビジネスで成功した起業家や、海外の資産家が名を連ねる組織。地下に広大な施設を有し、バサラシティやコンピラシティといった12の街が存在する。街では奴隷の所有が認められており、飲食店や宿泊施設もあり、地上とは違う「デロス」という通貨が流通している。施設への出入りは厳重に管理および秘匿され、過去50年以上にわたってソサエティの施設が公になったことはない。警察の上層部や政治家など国の中枢に圧力をかけることもでき、ソサエティの会員が地上でソサエティ絡みで問題を起こしてももみ消される。会員には階級があり、メインの層は「ノーブル」と呼ばれる貴族階級の会員である。「ロイヤル」と呼ばれる王族階級の会員は、一つの街に原則として唯一の存在として絶対的な権力を有している。ソサエティの審査を受けている状態の「準会員」は、上級会員に比べれば街での行動は制限されるが、奴隷の所有も許可されて店舗も自由に利用できる。闘技場や奴隷オークションなどの施設があり、会員たちは奴隷を使い、ゲームのように人間を使い捨てている。地上では「奴隷業(SLAVE GO)」というスマホアプリを使い、会員は奴隷として人間を捕獲して自身の奴隷として持ち駒を増やすことができるが、捕獲アイテムの価格が対象人物のランクによって異なる。捕獲ランクはその人物を拉致する際の物理的な難易度のほかに、失踪後の社会的な影響力なども反映される。ゴトウウィリアムのように会員には白服が案内役としてつく。白服の部下として黒服がおり、黒服は地上で会員が奴隷業を使用した際の対象人物の拉致や、ZEXでの雑用が主な仕事である。12人のソサエティの最高権力者は、「十二使徒」と呼ばれるがキリスト教とは関係ない。

場所

天蠍地獄 (てんかつじごく)

バサラシティで開催されるZEXのフィールドと対戦方法。12星座の蠍座の名を冠し、別名「ScorpioEXODUS」と称される。サッカー場8個分くらいの広さのジャングルに猛毒を持つ「ボルネオ大サソリ」が大量に放たれ、参加奴隷はスタート地点から対角線上に位置する敵陣の最奥部にある脱出ゲートを目指す。参加人数は各チーム五名ずつで、一名でも敵陣ゲートを通過すればそのチームの勝利となる。また、敵チーム五名を全員殺して全滅させた場合も勝利となる。開始時に所持する武器をルーレットで決めるが、手持ちの「武器カード」を使って任意の武器を選ぶことも可能。ジャングル内にはいくつかの固定式の機銃が設置された「砦」が配置され、ソサエティが用意した守護奴隷(NPC)が待ち構えており、その奴隷を倒して砦を制圧することで戦況が有利になり、さまざまなアイテムが手に入る。また奴隷たちの主人は、各奴隷のヘッドセットのカメラのほかに制圧した砦のカメラにもアクセスでき、視界の確保が勝敗の肝となる。

天秤地獄 (てんびんじごく)

コンピラシティで開催されるZEXのフィールドと対戦方法。12星座の天秤座の名を冠し、別名「LibraEXODUS」と称され、略称の「LEX」が一般的な呼び名となっている。天秤を模した「コート」と呼ばれるワイヤーで、二点を吊った厚さ50センチの鉄板が舞台となる。参加奴隷は各チーム五名ずつで、約7メートル離れた左右のコートをそれぞれ自陣・敵陣とし、迎え撃とうが攻め入ろうが戦いの場はどちらでも可能。コートの下にはマグマの濁流が煮えたぎっており、対戦中は各コートの真上の穴から「ボックス」という箱が落ちてくる。ボックスの中身は、最低100キロの重りからアイテムまでさまざまな物が入っている。敵陣を攻撃しながら自陣のボックスを、コート外に捨てていかなければならない。開始時はマグマからコートの距離は高さ6メートルほどであるが、ボックスの重さで自陣がマグマに沈めば敗北となる。ボックスの落下点は、それぞれのチームを率いる主人が手元のパネルで操作して決定する。時間が経つにつれて落下ペースが加速していき、次第に落下点をコントロールするのは困難となる。主人の操作が遅れれば、ボックスの落下位置はランダムとなる。各コートを磁力でつなぐ「ブリッジ」が落ちてくることもあり、これを使えば敵陣と自陣の行き来が可能となる。

その他キーワード

ZEX (ぜっくす)

ソサエティで行われる興行。ソサエティに存在する黄道十二宮になぞらえられた地獄から、放り込まれた奴隷たちが命を賭けて脱出(エクソダス)しようとするさまを、会員たちは安全地帯から愉悦の心地で眺める。12星座の名を冠した魔のフィールドで、人の命を弄ぶ悪徳の極みと評される一大行事である。正式名称は「ZodiacEXodus」。一説によれば古代ローマの奴隷たちが、脱出するのを防ぐために考案された数々の設備がZEXのステージの由来だという噂がある。ソサエティの地下施設の各街に一つずつフィールドが存在し、奴隷の参加人数はそれぞれのZEXによって異なるが、よりすぐりの奴隷を持ち寄っての団体戦が基本である。条件の厳しさから数年間も開催されないこともあり、一度開催されれば街の内外から観戦者が殺到し、観戦チケットの値段は高騰する。

クレジット

原作

ヤマイ ナナミ

続編

奴隷遊戯GUREN (どれいゆうぎぐれん)

同作者による『奴隷遊戯』の第2章。続編に『奴隷遊戯DIDI』(原作:井深みつ、作画:宗像夏潼、原案:ヤマイナナミ)がある。現代の日本、「ソサエティ」と呼ばれる会員制の地下都市が舞台。普通の会社員・花純... 関連ページ:奴隷遊戯GUREN

書誌情報

奴隷遊戯 11巻 集英社〈ジャンプコミックス〉

第11巻

(2020-03-04発行、 978-4088822686)

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