安住の地

安住の地

あの世ともこの世ともつかない「谷」の住人たちと、そこに迷い込んできたミナミたちのシュールな物語が展開されるエロティック・ファンタジー。山本直樹の前連載作『ビリーバーズ』から世界観を引き継いだ作品。「スピリッツ増刊IKKI」第1号(2000年12月30日刊行)~第12号(2002年11月1日刊行)にかけて連載された。

正式名称
安住の地
ふりがな
あんじゅうのち
作者
ジャンル
その他サスペンス・ミステリー・ギャンブル
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概要・あらすじ

地球上のどこか、「谷」に囲まれた「」の番人であるニシは、女子高の制服を着た少女、ミナミを発見する。ミナミは何やら訳ありの様子だったが、ニシともう一人の番人であるヒガシは、深く追求することもなく彼女を受け入れる。3人のセックスに耽るだけの日常が過ぎていくなか、ミナミの正体を知る親切屋により、南の町「アリエル」で売春をしていた彼女の過去が明らかになっていく。

ミナミの過去に強い嫉妬を覚えるニシを尻目に、ヒガシはミナミに求婚し、2人は夫婦となる。このことはニシが平静を失っていくきっかけとなり、やがてミナミも、戦場の後遺症と麻薬による錯乱で記憶が混沌し始めていくのだった。

登場人物・キャラクター

ミナミ

「谷」に迷い込んできた少女。女子高生の格好をしている。不感症のためエクスタシーには達しないものの、「しなきゃいられなくなる」時があるらしい。実は、転勤してきた父親と共にアリエルで暮らしていた日本人。大空襲で両親を失い、収容所で院長の「オモチャ」にされながら過ごすようになるが、父親の元部下の「おとこ」に引き取られ、以後は、売春をしながら生活していた。 やがて常連の男に誘われて脱走。常連の男を殺害して、行くあてもなく彷徨ううちに「谷」へと至る。

ニシ

西の崖の番人。自称28歳の男性で、ボサボサ頭の白髪と無精髭を生やしている。ミナミの第一発見者となった。感情の起伏が小さく、物事に動じることがないが、ミナミには恋愛感情を抱いており、ミナミの過去やヒガシに嫉妬心を覚えるようになる。口内細菌により「大吟醸 西」なる美酒を生み出すことができ、借金の返済のため、親切屋に言われるがまま「大吟醸 西」を作らされている。 ヒガシによれば戦場で恋人を目の前で失い、以後、卒塔婆にある恋人の遺骨だけを愛し続けているらしいが、真偽は定かではない。

ヒガシ

東の崖の番人。自称19歳の男性で、坊主頭がトレードマーク。能天気かつ陽気な性格で、初対面時、眠っていたミナミの足を舐めたり、欲情するとところかまわず女性を犯したりと、行動が常軌を逸している。コンニャク岩を食べると勃起する体質。ミナミに求婚し受け入れられるも、結婚生活ではほとんどセックスをしているだけだった。 売春をしていた頃のミナミの姿をビデオで見て取り乱すなど、ミナミに対しては人並の愛情を注いでいた様子。

リアルマン

「谷」で一番偉い人物。白髪でいつも眠たそうな目をしている男性。ニシによれば、「街」を作った張本人で何でも知っているらしいが、その正体は不明。廃墟となったボーリング場に一人で住んでいる。日々、「夢」と称してパソコンに見てきたことを入力しているが、セーブをしたことはない。

親切屋 (しんせつや)

「谷」にやって来る何でも屋。「街」にある物はすべてリアルマンが親切屋から買い取ったものだという。アジア系男性の風貌だが、日本語を話す。「大吟醸 西」の密売をしており、借金と引き換えにニシに醸造をさせている。以前、ミナミと買春したことがある。いつも胸に「田中」と書かれたジャージを着ている巨乳の女を連れている。

アイ

「谷」で行き倒れていた日本の女性お笑いコンビ「カジワライッキ」のツッコミ担当で、ヒステリックな性格。ショートカットに色気のないシャツとジーンズを着ている。岩コンニャクで勃起したヒガシに犯されるなど、幸が薄い。「谷」を出てから1ヵ月後に成功者となり、飾り立てた身なりで「街」に帰ってきた。

マコト

「谷」で行き倒れていた日本の女性お笑いコンビ「カジワライッキ」のボケ担当で、常に無表情。ヒガシの性交を目の当たりにしても顔色ひとつ変えなかった。テレビ番組向けに、毎日日記をつけている。「谷」ではリアルマンの秘書となり、毎日お風呂(水風呂)に入れるようになった。

店長 (てんちょう)

「街」で唯一のコンビニの女店長。フランチャイズをとった元夫と共に「街」にやってきたが、未亡人となって店長を引き継いだ。本店との契約のため、1分たりともレジを離れることができず、「バイト君」と共に不眠不休で業務にあたっている。亡き夫の言いつけを守って常にパンツを履いていない。目の下に濃いクマができている。

バイト君 (ばいとくん)

「街」で唯一のコンビニのアルバイト店員。店長に恋心を寄せており、店長を休ませるために代理で20時間レジに入っていたこともある。店長と心も体も結ばれたいと願っているが、いつも肝心なところでお客が来て、邪魔をされてしまう。

おとこ

ミナミの父親の元部下。社員遠足で見かけたミナミに一目惚れし、空爆で孤児になったミナミを引き取った。しかしそれからはヒモとなり、ミナミに売春をさせるようになる。頭に血が上りやすく、少しでもミナミが口答えをすると暴力を振るう。ときどき「ブンガク的」になり、自作の歌をミナミに捧げたこともあった。

おとくいさん

ミナミが売春をやらされていた頃の日本人常連客。ミナミに脱走を持ちかけ、車に乗せて逃走。アリエルの町が空爆に遭うのを遠目で眺めながら欲情し、性交中にミナミから傘を後頭部に突き立てられて殺された。その正体は日本のバラエティー番組を告発するために調査していたジャーナリストだった。

場所

(まち)

ニシとヒガシが警護している「谷」に囲まれた場所。リアルマンによって作られたという。「死んだ者」だけが足を踏み入れられる場所であり、ニシもヒガシも自らを「死人」と称している。「生きている人間」は「敵」と見なされ、谷に辿り着く前に射殺されてしまう。

アリエル

「国」の南にある都市。日本企業の支店があるなど経済的に繁栄していたが、「戦争」によって3年前に大空襲を浴び、都市機能が崩壊した。以後は荒廃の道を辿り、暴力や売春、強姦が溢れる無秩序な地帯と化している。ミナミは元々、アリエルの住人だった。

その他キーワード

コンニャク岩 (こんにゃくいわ)

「街」に多く存在するやわらかい岩。高温で一週間熱した後、クエン酸で3年漬けたものをニシやヒガシが食料にしている。これを食べるとヒガシは欲情し、勃起してしまう。「戦場」の後遺症で食べ物が食べられないニシは、コンニャク岩しか喉を通らない。

大吟醸 西 (だいぎんじょう にし)

特殊な口内細菌を持つニシが、イモを噛み砕いたものを醗酵させて作り出す酒。かつては「本醸造 西」と呼ばれていたが、嫉妬心により口内細菌の働きが増すことが判明し、ミナミの生い立ちを聞きながらニシが酒造りをした結果、美味さがレベルアップしたことで名称が変わった。親切屋により、大々的に流通する。実は強力な麻薬成分が含まれており、「人類史上最大の麻薬物質」と言われるまでになる。

みんな

ニシの夢の中で、過去のニシらしき人物が口走った言葉。山本直樹の前作『ビリーバーズ』に登場した宗教団体が、信者同士を指して使用していた名称。「街」の成り立ちに、その宗教団体の生き残りが寄与している可能性が示唆されている。

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