坂道のアポロン

坂道のアポロン

1960年代の長崎・佐世保を舞台に、当時の高校生達の恋愛、友情を通した彼らの成長を描く。当時流行していたジャズやロック、レコードに魅了される若者達の文化や、学生運動の様などが描かれており、現代を舞台にした少女マンガにはない時代風景、また登場人物達のノスタルジックな服装などもこの作品の大きな魅力となっている。また、作者、小玉ユキの故郷である長崎の方言が作中では巧みに使用されており、キャラクター達の魅力を増幅させている。

正式名称
坂道のアポロン
ふりがな
さかみちのあぽろん
作者
ジャンル
その他芸能・音楽
レーベル
フラワーコミックス(小学館)
巻数
全9巻完結
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概要・あらすじ

1966年の初夏、高校1年生の西見薫は船乗りの父親の仕事の都合で、横須賀から長崎県の佐世保市にある佐世保東高校に転校してきた。幼い頃より転校を繰り返してきた彼は、周囲となじもうとする行為が無駄であると悟っており、同級生らと関わりをもとうとしなかった。だが、クラスメートである川渕千太郎や彼の幼なじみ迎律子らとの出会いをきっかけに、ジャズに魅了される。

千太郎との友情、律子への恋心、これまでと全く違う生活に心を踊らすであったが、それぞれの想いが交錯し、複雑に絡み合い、想いを伝える難しさを同時に経験する事となる。

登場人物・キャラクター

西見 薫 (にしみ かおる)

船乗りである父の仕事の都合で、横須賀から長崎・佐世保の、病院を経営する叔父の家に移り住む。母親は幼い頃に家を出ており、父も仕事の都合上会えない期間が多く、愛情不足で育った。転校が多かったため周りと合わせる事には長けていたはずであるが、繊細な性格故、5年生の頃から心のバランスを崩し、ちょっとした事で吐く癖がついてしまう。 以前の学校でも成績トップの秀才。メガネをかけており細身で背も低く、男らしさからはかけ離れた見た目ではあるが、片思いの相手である迎 律子に対してデートに誘ったり、ピアノを弾きながら告白したりと積極的な行動をする。幼い頃よりクラシックピアノを習っていたが、川渕千太郎らの影響でジャズに魅了されていく。

川渕 千太郎 (かわぶち せんたろう)

西見薫が転校してきた佐世保東高校に通う同級生。長身のがっちりした体格で喧嘩っぱやいため、年上からも目をつけられている。そのため、「札付きの不良」として同級生からは恐れられているが、理由のない暴力はふるわないカラっとした単細胞な性格。授業中は屋上で寝ている事が多い。日本人の母、アメリカ人の父を持つハーフであるが、西見薫同様、母親は幼い頃に彼を残し家出をし、その後叔父夫婦に引き取られ、弟妹達同様、実の子として大事に育てられるが、祖母の死をきっかけに、父との間にわだかまりを持つようになる。 心を閉ざした彼であったが、実の母親を探すためにアメリカ人の集まる繁華街をうろついている際にジャズに触れ、生き甲斐を見つける。

迎 律子 (むかえりつこ)

西見薫のクラスメイト。そばかすとツインテールがチャームポイント。優しく思いやりがあり、転校生である西見薫に対して親切に接する。川渕千太郎の幼馴染であるため、不良として恐れられている彼と対等に接する事のできる唯一の人物。幼い頃より川渕千太郎に片思いしてきた。実家はレコード店ムカエレコードで時々店を手伝っている。 クリスチャンであり、日曜日は千太郎と共に教会に礼拝に通っている。

深堀 百合香 (ふかほり ゆりか)

西見薫たちの通う佐世保東高校の1年上の先輩。美術部所属。ストレートのロングヘアで大人っぽくミステリアスな雰囲気の美女。中学一年の時に東京から引っ越してきたため、方言を使わない。近寄りがたい印象で誤解されやすいが、実は明るく活発で友人も多い。海で不良達にからまれている所を川渕千太郎に助けられた。 その際千太郎は彼女に一目惚れし、恋に落ちる。兄の影響でジャズにも精通しており、薫と千太郎らのライブに招待された際にバンドメンバーの一人である桂木淳一と知り合い、恋に落ちる。

桂木 淳一 (かつらぎ じゅんいち)

東京に住む大学生。実家は迎律子の家の隣の、「しらゆり」というケーキ店を営んでいおり、川渕千太郎と迎律子とは幼なじみ。千太郎はまるで実の兄のように慕っている。帰郷するたびに、ムカエレコードに顔を出し、千太郎や薫とジャズの演奏に興じている。担当パートはトランペット。 元々実家を継ぐのを拒み、東京の大学に進学したが、後に、政治活動にのめりこみ大学にもろくに通わずフーテンのような身なりで地元に帰ってきたため、勘当され安アパートで一人暮らしを始め、そこに深堀百合香が出入りするようになる。

丸尾 重虎 (まるお しげとら)

高校生。西見薫らのクラスメイト。背が低く小太りでメガネをかけており、クラスでは目立たない存在ではあるが、転校生である西見薫を、自身の所属する無線部に勧誘したり、回りに冷やかされながらも積極的に交流を持とうとする。気弱ではあるが、頼まれると断れない優しい性格。兄の影響でベンチャーズをよく聴いており、ギターを弾く事が出来るため、川渕千太郎や松岡星児らと共に文化祭でロックバンドザ・オリンポスを結成し、その腕を披露してからはモテモテに。

松岡 星児 (まつおか せいじ)

西見薫と同じ佐世保東高校に通う同級生。川渕千太郎が二年に進級した際のクラスメイト。深堀百合香と同じ美術部に所属している。八重歯がチャームポイント。ビートルズのファンであり、ロックに心酔している。自分らのロックバンドザ・オリンポスに千太郎を引き入れようと画策している。 人前で歌うのが得意で将来はスターになるのが夢。チャラチャラくねくねしており、一見軽薄な人物のように見えるが、両親や兄弟を楽にさせたいがためであると千太郎に語る。スターになるためにはなまりは禁物と、標準語を話す。

山岡 竜之介 (やまおか りゅうのすけ)

西見薫と同じ佐世保東高校に通う通う同級生。家は裕福で取り巻きに囲まれている。目障りだからという理由で西見薫に集団でからむ卑怯者。その際、川渕千太郎に前歯を折られる。ビートルズのファンで松岡星児と共にロックバンドザ・オリンポスを組み、文化祭でライブを披露する。

室井 (むろい)

桂木淳一と同じ大学に通い、ジャズ仲間でサックス奏者であった。その後淳一と共に学生運動にのめり込むようになり、バンドの練習そっちのけで資本論などの本を読みあさるようになり、受験勉強や音楽しかやってこなかった自分を恥じるまでに。デモの際前線に立ち、両手の骨がくだける重傷を負い、二度とサックスは吹けないようになるるが、名誉の負傷と割り切る。

迎 勉 (むかえつとむ)

迎律子の父親で、レコード店ムカエレコードを経営。川渕千太郎らのジャズバンドの一員で、店の地下室を防音仕様にし、バンド練習のために解放している。気難しい見た目に反し、千太郎や桂木淳一らを息子のようにに思っており、淳一が実家を勘当された際には、自宅でこっそりとかくまっていた。 バンドでの担当はウッドベース。

小夜子 (さよこ)

西見薫の母親。薫が三歳の頃、父とは離婚しており長い間音信不通であったが、東京の家で雇っていた家政婦シヅが東京で偶然再会。その際に連絡先を知らせる。上京した薫と再会。薫の想像に反し、ハスキーボイスでサバサバしたよく笑う明るい性格の人物。農村出身のため文字の読み書きができず、薫に手紙を出せなかったと語る。 離婚したいきさつは出身を西見家に責められ居場所がなくなったせいであった。

川渕 幸子 (かわぶち さちこ)

川渕千太郎の一番年の近い妹で小学生。養子である千太郎とは血の繋がりは遠いが、実の兄のように慕い一番なついている。一下の妹の面倒を良く見ている。おませで、千太郎に迎律子の好きな相手を聞かれたり、松岡星児に心をときめかせたりする。

幸子 (さちこ)

川渕千太郎の妹。千太郎には血の繋がらない康太(こうた)・太一(たいち)・千恵(ちー子、ちえ)と4人の弟妹がいるが、特に幸子は千太郎になついている。

集団・組織

佐世保東高校 (させぼひがしこうこう)

『坂道のアポロン』に登場する高校。西見薫が転校してくる高校。ここで川渕千太郎や迎律子と出会う。長い坂の上に位置している。共学であるが、男子クラスも存在し、薫や百合香のような優等生も多いが、一方で校内で喫煙したりする三年生がいたりと不良も存在する。文化祭では千太郎らがロックバンドを結成し、多いに盛り上がる。

場所

ムカエレコード

『坂道のアポロン』に登場する店。迎律子の父親の迎勉が経営しているレコード店。店の地下には防音設備が完備された練習用のスタジオで、ピアノもある。西見薫や川渕千太郎、迎勉らを交えたジャズ仲間たちのたまり場となっており、部外者は立ち入り禁止。ここでピアノを弾きながら律子に告白するなど、薫にとっては特別な場所。

アニメ

坂道のアポロン

1966年の夏、横須賀に住んでいた主人公の高校生西見薫は、叔父の一家がいる九州へ引っ越してくる。そこで「札付きのワル」として恐れられるクラスメイトの川渕千太郎と出会い、ジャズの魅力を教えられる。 そこ... 関連ページ:坂道のアポロン

書誌情報

坂道のアポロン 全9巻 小学館〈フラワーコミックス〉

第1巻

(2008-04-25発行、 978-4091316707)

第9巻

(2012-04-26発行、 978-4091344656)

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