ヒミズ

ヒミズ

『行け!稲中卓球部』などのギャグ漫画で名を馳せた古谷実が描く、閉塞感に満ちた青春群像劇。巧みな画力で表現されたリアリティのある描写が魅力だが、逼迫した主人公が怪物の幻覚に語りかけられるなど、幻想文学的なアプローチなども特徴。それまで自身が得意としていたギャグ要素を極力封印し、シリアスな作劇に徹する新境地が話題を呼び、舞台化、小説化、実写映画化など、さまざまなメディアミックス展開が成された。

正式名称
ヒミズ
ふりがな
ひみず
作者
ジャンル
ホラー
 
推理・ミステリー
 
サスペンス
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概要・あらすじ

寂れた貸しボート屋として、母親と二人で日々を慎ましく暮らす中学生・住田は、閉塞的な日常に順応するべく「平凡な人生を送る」ことを強く夢見ていたが、ある日、母親が蒸発したことにより、人生の歯車がゆるやかに狂い始める。ろくでなしの父親との再会によって、ついに越えてはいけない一線を越えてしまうと、自らの余生を「おまけの人生」と定め、破滅的な思考に取り憑かれていくのだった。

登場人物・キャラクター

住田 (すみだ)

中学3年生の平均的な少年。父親のギャンブル癖によって、幼少時に両親は離婚しており、母子家庭。複雑な家庭環境で育った経験から、平凡に一生を終えることを望みとしており、過剰な夢や希望といったものに対して冷笑的な態度を取るが、本心では強い憧れを抱いている。衝動的に父親を殺害してしまったあとは、「平凡な生活」という望みが絶たれたことを察し、その後の人生を「おまけの人生」と定義。 全身にタトゥーを施し、世にはびこる「悪人」を断罪することで社会に貢献しようと考えた。時折、自分にだけしか見えない怪物のような存在が現れることが悩み。

茶沢 景子 (ちゃざわ けいこ)

住田のクラスメイトである少女。住田のことを気にかけている内に好意を抱きはじめ、貸しボート屋を手伝うようになる。恋人となった住田の破滅的な精神傾向に危機感を抱いており、大事に至る前に止めようと考えていた。

夜野 正造 (よるの しょうぞう)

住田と同級生の少年であり、過去にイジメを救ってもらったことから住田に対して強い友情を感じている。スリの常習犯でもあり、借金苦に喘ぐ住田を救うべく、ひょんなことから知り合ったスリ仲間・飯島テル彦と一緒に空き巣計画を企てるが、成り行きで殺人の片棒を担いでしまうことになる。

塚本 とし夫 (つかもと としお)

住田の家に立ち寄ったことが縁で貸しボート屋を手伝うようになったホームレスの男性。普段は人が良い性格をしているが、実は内面に過剰な性的衝動を秘めた性犯罪者であり、茶沢景子を監禁・暴行した。

赤田 健一 (あかだ けんいち)

住田の同級生のいじめられっ子であり、小野田きいちの従兄弟。ある夜遭遇した「トランプのババ」に予言されたことがきっかけで、漫画家を目指すこととなる。漫画に対する態度は誠実とはいえず、それが原因で様々な失敗を繰り返している。

小野田 きいち (おのだ きいち)

赤田健一の従兄弟で、通称「きいっちゃん」。漫画家を目指しており、投稿作が賞を受賞するなど、その実力は本物。夢に対してひたむきであるが故に住田と衝突してしまうこともあったが、持ち前の性格の良さでわだかまりを残さずに友人関係を続けていた。

飯島 テル彦 (いいじま てるひこ)

スリの常習犯であり、電車内で夜野正造のスリ現場を目撃したことから夜野を気に入り、空き巣計画の共犯に誘った。計画の失敗により殺人を犯してしまうと、それまでの強気な性格が一転し、夜野が自分を密告する悪夢にうなされてしまう。その後、口封じに夜野を殺害しようとするものの、失敗する。

金子 (かねこ)

住田の父に金を貸した暴力団の構成員の青年。自分たちに恭順するどころか反抗する住田に対し、ナイフで頬を大きく切りつけて制裁した。その後、再び出会った住田を気に入り、拳銃を渡す。

野上 ヨシヒサ (のがみ よしひさ)

幼なじみの隣人・タエに異常な執着を見せる青年。幼少の頃、溺れたふりを見せて助けに来た友人を殺してしまうなど、自己中心的で冷酷な性格の持ち主。タエの恋人を騙し打ちして殺害しようとするものの、自身を付け狙っていた住田の妨害に合い、失敗する。

内田 (うちだ)

住田のアルバイト先で出会った女性。「女彫り師」という夢を抱いており、住田の全身にタトゥーを施す。同僚の青年と密かに付き合っている。

住田 祐一 (すみだ ゆういち)

中学3年生。幼少時に両親は離婚し、母親と川沿いに住み、貸しボート屋を営んでいる。冷徹な性格で、常に現実的で平凡な生活を望む。周りの人には見えない化け物が見えることが悩みであり、本人を夢見ることから遠ざける一因になっている。母親が駆け落ちし、自身を虐待する父親を衝動的に殺害したことで、中学生にして天涯孤独の身となり、自分が特別な存在に墜ちてしまったことに絶望する。 それ以来学校へは行かず、悪い奴を殺すためにひたすら街を徘徊するようになる。

お巡りさん (おまわりさん)

住田の住む町の警官。母親が蒸発してしまい、身寄りのいなくなった住田を心配してたまに様子を見に行っている。

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