太閤記

太閤記

豊臣秀吉の生涯を、ガキ大将だった「日吉丸時代」から朝倉義景との戦いのあたりまでを描いた。史実的正確さにはあまりこだわらず講談的に、主人公が知恵と機転と度胸でトントン拍子に出世する心地よさを第一として、杉浦茂独自の手法で面白おかしく描かれた時代劇ゆかいまんが。昭和29(1954)年に刊行された単行本『太閤記』(集英社おもしろ漫画文庫53)と、昭和32(1957)年に刊行された単行本『太閤記--第二集・藤吉郎編』(集英社おもしろ漫画文庫142)の2冊をまとめたもの。児童向けであったため、登場人物の名前などの多くがひらがなで表記されている。

正式名称
太閤記
ふりがな
たいこうき
作者
ジャンル
時代劇
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概要・あらすじ

村のガキ大将だったひよしまる(日吉丸)は、悪さが過ぎて寺に預けられてしまう。が、その地方の権力者に恥をかかせたためにそこにもいられなくなり、放浪の旅に出る。武芸者の家に住みこみで弟子になったり、野武士集団のはちすかころく(蜂須賀小六)のところに世話になったり、兵法の先生だったまつしたかへい(松下嘉兵衛)のもとで学んだりした。

学んでいくうち「これからは鉄砲の時代だ」という考えを持ち、鉄砲の研究をしているというおだのぶなが(織田信長)の家来になる。そこできのしたとうきちろう(木下藤吉郎)という名をもらった彼は、知恵を使ってのぶながにも気に入られる。とうきちろうは、のぶながのもとで活躍し、どんどん出生していくのだった。

登場人物・キャラクター

ひよしまる

日吉丸は豊臣秀吉の幼名で、木下藤吉郎に関しては諸説あるが、作品中ではおだのぶなが(織田信長)からもらった名前ということになっている。顔の輪郭は横に長い楕円形で、どんぐり眼に丸い鼻。子供の頃はガキ大将で、悪さばかりするので寺に預けられていた。寺で権力者に恥をかかせたので出奔して武芸を習ったり、まだ野武士集団だったはちすかころく(蜂須賀小六)に世話になったり、まつしたかへい(松下嘉兵衛)のもとで兵法を学ぶなどした。 その後おだのぶなが(織田信長)に仕官し、知恵と機転と度胸で頭角を現し、やえ(八重)という娘と結婚し、織田家の第一の大将となる。 史実的正確さにはあまりこだわっていないので、現在一般的になっている名前やエピソードと異なる点が多い。豊臣秀吉をモデルにしたと思われるキャラクター。

くずもち きなこのすけ

寺を出奔したひよしまるを住み込みの弟子にして、武芸を教えた侍。史実には存在しない、作品オリジナルのキャラクター。横に長い楕円形の顔で、どんぐり眼にボサボサのヒゲを生やしている。

はちすか ころく

野武士集団の頭領として登場し、矢作橋で野宿をしていたひよしまるを、「同郷だから」と屋敷に連れて行き、面倒を見る。ころくから刀を計略で譲り受ける有名な話も描かれている。その後、ひよしまるが兵法を学びに行ってしまい、いったんころくは物語から退場するが、すのまた城(墨俣城)建造のエピソードでとうきちろうの手助けをする形で再登場する。 その後、ころくはとうきちろうの部下となった。蜂須賀正勝をモデルにしたと思われるキャラクター。

まつした かへい

兵法の大先生。誠実そうな中年の男性で、八の字ヒゲを生やしてモミアゲを長くしている。ひよしまるは彼の屋敷で働きながら、末席で兵法を学ぶ。まつしたかへいは、いまがわよしもと(今川義元)の家来で、ひよしまるを有能な生徒と感じて、彼に今川家への仕官を斡旋しようとするが、「これからの合戦の主役は鉄砲だ」と考えたひよしまるは、言葉を濁して仕官を断り、いまがわよしもとと敵対するおだのぶながのところへ行ってしまう。 松下嘉兵衛(松下之綱)をモデルにしたと思われるキャラクター。

おだ のぶなが

きよす城に居を構える戦国大名。ドジョウヒゲをはやし、おだやかな顔をしている。ひよしまるは、彼が鉄砲の研究をしていると知り、将来性を考えて仕官を頼みに行く。のぶながは、狩りの途中に現れたひよしまるが暴れ猪を退治したのを気に入り、家来にしてきのしたとうきちろうという名を与える。 その後、知恵と機転と度胸をうまく用いるとうきちろうを重用する。おけはざまの合戦で、いまがわよしもとを倒し、その名を日本中にとどろかかせる。その後もみの(美濃)のさいとう家や、えちぜん(越前)のあさくら家と戦う。織田信長をモデルにしたと思われるキャラクター。

うわじま もんど

おだのぶなが(織田信長)に仕官した男。史実には見当たらない名前なので、この作品のオリジナルの可能性が高い。「長槍と短い槍ではどっちが良いか」というのぶながの問いに、「短いのが良い」と主張して、長槍を推すきのしたとうきちろうと対立した。主張を証明するため、各々50人の足軽が与えられ、長槍組と短槍組で模擬戦が行われることとなった。 もんどは足軽たちにプレッシャーをかけ、練習もへとへとになるまで行ったのに対し、とうきちろうは自分の組をリラックスさせ、手順の練習と作戦のみ伝えた。模擬戦は、疲れきった短槍組が一方的に長槍組に囲まれて負け、さらにはもんどがさいとうたつおき(斎藤龍興)のスパイで、きよす城を調べていたことがわかる。

いまがわ よしもと

天下を手にしようと、京の都を目指して大群で侵攻をかけた東海一と謳われた戦国大名。おだのぶなが の治める尾張に攻めこもうとする。きのしたとうきちろうは「逆にこちらから討って出ましょう」とのぶながに進言し、受け入れられる。とうきちろうの様々な策略で今川軍は混乱し、織田軍の士気は上がった結果、よしもとは討ち取られてしまう。 今川義元をモデルにしたと思われるキャラクター。

しばた かついえ

織田家の重臣。さくまのぶもり(佐久間信盛)と二人で、おだのぶながが新参のきのしたとうきちろうを重用するのをよく思っていない。悪役顔をしている。のぶなががさいとうたつおき(斎藤龍興)と戦う際、国境のすのまたに城を建てる必要が生じ、かついえとのぶもりがとうきちろうに対抗してこの難しい工事を引き受けるが、さいとうたつおきの家来の襲撃を受けて失敗した。 とうきちろうはあとを引き受け、知略とはちすかころくと野武士団の援助でこれを完成してしまい、かついえとのぶもりの面目は大いに潰れた。柴田勝家をモデルにしたと思われるキャラクター。

たけなか はんべえ

さいとうたつおき(斎藤龍興)につかえていた軍師だったが、職を辞して山にこもっていた。オールバックの長髪で、やたらと長い鼻の下にボサボサのヒゲを生やしている。きのしたとうきちろうは彼を織田家の軍師にしようと山中に入るが、あさいながまさ(浅井長政)の家来のほしいもすきのすけも同じ任務ではんべえのもとに向かっていた。 二人は壮絶なだまし合いと競争を行い、結局とうきちろうが勝ってはんべえを織田家の軍師に迎える。竹中半兵衛をモデルにしたと思われるキャラクター。

さいとう たつおき

みのを治める戦国大名で、隣接するおわりのおだのぶながと争っている。いなば城に居を構えていたが、きのしたとうきちろうとおだのぶながの奇襲によって、城を追われる。斎藤龍興をモデルにしたと思われるキャラクター。

あさくら よしかげ

えちぜんを治める戦国大名。きのしたとうきちろうのいるおうみのながはま城を攻めようとおおの山に陣をはっているところに、逆にとうきちろうと少年組に奇襲されて敗北する。朝倉義景をモデルにしたと思われるキャラクター。

やえ

きのしたとうきちろうの結婚相手。ぎふ城の足軽組頭であるふじいまたえもんの娘。結婚時期と相手は史実とは異なるが、とうきちろうの結婚は、この作品の締めを飾るイベントとなった。一般的に、木下藤吉郎の妻はねね(もしくはおね)であるが、山岡荘八の大河小説『徳川家康』では、木下藤吉郎は足軽頭・藤井又右衛門の娘、お八重と結婚したとあるので、ここから引用したか類似のことが講談で語られていたのではないかと推測される。

集団・組織

少年組 (しょうねんぐみ)

『太閤記』に登場する集団。きのしたとうきちろうの名声を聞き、武将になるために彼の下に集まった元服前の若者たちの呼称。だんごだんぺい、ほりおもすけ、いちまつ、すけさく、さきち、とらのすけの6人。オリジナルキャラクターであるだんごだんぺい以外は作品の最後に元服してそれぞれはほりおよしはる(堀尾吉晴)、ふくしままさのり(福島正則)、かたぎりかつもと(片桐且元)、いしだみつなり(石田三成)、かとうきよまさ(加藤清正)と名乗る。 それぞれの名前と同じ実在の人物が、モデルとなったと思われるキャラクター。

のぶながのりっぱなけらい

『太閤記』に登場する集団。織田家の重臣たちで、にはひでなが(丹羽長秀)、あけちみつひで(明智光秀)、さくまのぶもり(佐久間信盛)、しばたかついえ(柴田勝家)の4人に「第一の大将」としてきのしたとうきちろう(木下藤吉郎)を加えたもの。それぞれの名前と同じ実在の人物が、モデルとなったと思われるキャラクター。

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