柳都物語

柳都物語

かつて水の都として栄え、その景観の美しさから「柳都」と呼ばれた新潟市。この市の最大の繁華街である古町は、京都の祇園、東京の新橋と並び称された花柳の街であった。柳都の花柳界を舞台に、戦後の時代を懸命に生きた1人の女性と、彼女を愛しのちに総理大臣にまで上り詰める男性との数奇な運命を描く。「週刊漫画ゴラク」2007年6月号から2008年6月号にかけて掲載された作品。原作は倉科遼。

正式名称
柳都物語
ふりがな
りゅうとものがたり
作者
原作
ジャンル
政治家・政界
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概要・あらすじ

「柳都」と呼ばれた新潟市の花柳界・古町で暮らしていた松本雅代は、ある日孫の寿美恵から「祖父・山田泰造の血を引く者として初の女宰相になってみせる」という決意を聞き、万感の想いに駆られるのだった。太平洋戦争開戦の年、雅代は福島の会津からこの街に嫁いできたが、終戦後帰還した夫・松本周作は精神を病んで間もなく死亡。

家族を養うため魚の行商に明け暮れる中、雅代はある雪の日に山田泰造という新米議員から、リヤカーを押してもらうという親切を受ける。ほどなくして、雅代は古町の料亭「柳亭」で仲居として働くことになるが、そこで泰造と思いがけない再会を果たすのだった。

登場人物・キャラクター

松本 雅代 (まつもと まさよ)

料亭「柳亭」の女将として、戦後の激動の時代を力強く生きた女性。美人ながら芯が強くどんな苦労もいとわない性格。福島県会津の商家の生まれで、18歳の時に松本周作と結婚し新潟市に移った。夫の死後、料亭「柳亭」の大女将である阿部ハナにセンスを見出され、仲居を経て女将となる。ここで山田泰造に見初められ、葛藤の末に妾という立場を受け入れることとなった。 旧姓は「佐藤」。

山田 泰造 (やまだ たいぞう)

新潟県の北里村という貧しい農村出身の衆議院議員の男性。最終学歴は小学校だが、頭脳明晰で経営者としての能力にも長けている。議員1年目に魚の行商でリヤカーを引く松本雅代に出会い一目惚れする。豪放磊落に見えるが実は寂しがり屋で、その人間的魅力により誰からも好かれている。東京に本妻がいるが、雅代を妾にし生涯最後の女性とすることを誓う。

松本 周作 (まつもと しゅうさく)

新潟市の魚屋「魚源」の跡取り息子。陸軍の憲兵で松本雅代の夫。結婚後すぐ戦地へ出征し、帰国後は人が変わったように酒浸りの生活を送っていた。優しく気が小さい性格で、筆舌に尽くしがたい戦争体験と戦争犯罪人逮捕への恐怖から精神を病み、息子である松本周一の誕生前に吐血し死去する。

松本 周一 (まつもと しゅういち)

松本雅代が24歳の時に生んだ男の子で、死亡した父親の松本周作と入れ替わるように生まれてきた。雅代の生きる希望であったが、山田泰造が手掛けた鉄道会社「寺泊鉄道」の開通祝いの宴が料亭「柳亭」で行われた際、雅代が一瞬目を離した隙に1人でふらりと外に出て、堀に落ちて亡くなってしまう。享年4歳。

松本 幸子 (まつもと さちこ)

松本雅代と山田泰造との間にできた子供。松本周一を失った雅代を心配した泰造が、世間の中傷や批判を覚悟のうえで雅代の生きる希望になってほしいと生ませ、認知した。後年、母親の後を継ぎ料亭「柳亭」の女将となり、娘の寿美恵をもうける。

寿美恵 (すみえ)

松本雅代と山田泰造の孫で、松本幸子の娘。25歳になり、衆議院選挙に立候補することを決意する。総理大臣にまでなった祖父の泰造を誇りに思っており、かねてより夢半ばで亡くなった泰造の無念を晴らしたいと思っていた。日本初の女宰相を目指すと言い切る、気概のある人物。

義母 (ぎぼ)

松本雅代の義母で松本周作の母親。息子、夫を次々と亡くし寝たきりになってしまう。本来なら自分が家業の魚屋「魚源」を守る立場にありながら、義娘の雅代にばかり苦労をかけていることを気に病んでいる。

阿部 ハナ (あべ はな)

料亭「柳亭」を一代で築き上げた大女将。貧しい農家生まれで、花柳の世界に売られ芸者から身を立てて料亭を起こし、結婚もせずに働き続けてきた苦労人。子供と寝たきりの義母を抱えた松本雅代に料亭の女将としてのセンスを見出し、店を託す決心をする。

高橋 (たかはし)

山田泰造の後援会長を務める老人。泰造と松本雅代の良き理解者。先見の明があり、のちに泰造が躍進する土台となった鉄道会社「寺泊鉄道」の経営を泰造に勧めた。妾という立場の雅代を優しい言葉で励ますことも多い暖かい人物。

トメ

料亭「柳亭」の仲居を務める中年女性で四角い顔に四角いメガネをかけている。山田泰造と松本雅代との関係に理解を示す大人の女性。雅代からの信頼も厚い仲居のリーダー的存在で、雅代の相談に乗ることも多い。

板倉 達彦 (いたくら たつひこ)

新潟の新聞社「柳都日報」の記者の青年。料亭「柳亭」の女将である松本雅代に真っすぐな想いでぶつかるが、腐れ縁である元恋人の杉村貴子を断ち切れない優柔不断な性格が、間接的に雅代を苦しめることになる。

杉村 貴子 (すぎむら たかこ)

老舗の名門料亭「金山楼」の若女将となった女性。伝統ある古町を新参者の松本雅代の好き勝手にはさせられないと宣戦布告にやってきた気性の激しい性格。学生時代に板倉達彦と付き合っていたが、独善的でわがままな言動を嫌われている。打倒雅代のためなら手段を選ばない狡猾な人物。

渡 一郎 (わたり いちろう)

山田泰造と同じ、新潟3区選出の衆議院議員の初老男性。料亭「金山楼」の若女将である杉村貴子の色仕掛けに乗り、泰造が手掛ける鉄道会社「寺泊鉄道」の開通式を妨害するよう画策する腹黒い政治家。

千代 (ちよ)

料亭「柳亭」の仲居の中年女性。料亭「金山楼」の若女将・杉村貴子の画策で、子供が大病という弱みに付け込まれ、倍の給料を払うという条件で「金山楼」の引き抜きに応じてしまう。だが義理は欠かさず、のちに貴子と渡一郎の悪企みを知ってからは、世話になった松本雅代にいち早く知らせた。

中尾 康正 (なかお やすまさ)

群馬選出の代議士で、山田泰造と同期で初当選した男性。弁が経つ切れ者と評判だが、風見鶏タイプな軽さがある政治家。泰造の秀でた実務能力を高く評価しているが、上から目線でエリート気質が強い。

池沢 勇平 (いけざわ ゆうへい)

大蔵大臣を務める男性で、山田泰造にものちの総理大臣にふさわしいと慕われている。泰造のキャリアに大きな影響を与えた人物で、大蔵省出身の経済通にして国民の声を代弁していると思わせる言動を取る泰造に一目置いている。

福岡 岳志 (ふくおか たけし)

大蔵官僚出身の代議士で、大蔵省きっての切れ者といわれる男性。総理大臣を目指す池沢勇平が自身の両輪となってほしいと山田泰造とともに声をかけた人物。後年、総理の座をかけて泰造と争うことになる。

正岡 明憲 (まさおか あきのり)

山田泰造がかつて世話になった、勘が鋭いやり手の男性弁護士。多方面に顔が利くので、鉄道会社「寺泊鉄道」の経営基盤を強化したがっていた泰造に、バスやトラックなどの鉄道以外の交通に長けた実業家を紹介してほしいと頼まれる。

小野寺 謙吾 (おのでら けんご)

都内で手広くバス事業を運営している「太平洋興業」の社長を務める男性。山田泰造に依頼を受けた正岡明憲が紹介した実業家で、ホテル経営も手掛けるやり手。男たるもの仕事第一という考え方を持ち、身なりにも頓着せず、これに大いに共感した泰造と終生の盟友となる。

佐竹 綾子 (さたけ あやこ)

山田泰造の後援会長の高橋が、経理の専門家として泰造に紹介したやや化粧が濃い女性。新潟の女学校を卒業後、上京して簿記専門学校に入学したという経歴を持つ。夫と離婚後に泰造に雇われて辣腕を発揮し、のちに「山田泰造の金庫番」と呼ばれるようになる。

岩田 (いわた)

老舗の名門料亭「金山楼」の上客で新潟の花柳界に通じている初老の男性。「金山楼」の女将である杉村貴子には「社長」と呼ばれている。貴子が松本雅代を貶めようと悪い噂を口にした際、自身の知る事実を語り、貴子を諫めた人格者。

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